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1.  グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 《ネタバレ》 
まず冒頭の前作のあらすじ動画が素晴らしい。簡潔だけれどアート的でもあって、でも前作の流れはクリアによみがえる。で、本編。対立構図が単純だった前作と比べると、政治劇の要素も濃くなり、そこでデンゼル・ワシントンが素晴らしいくせ者っぷりを発揮しています。あまり明確には語られないけれど、おそらく元奴隷でそこから権謀術数を駆使して這い上がってきた男。ただ権力が欲しいというよりは、「この世界のありよう」に対する復讐や破壊衝動みたいなもののほうを強く感じる。彼の行動の数々は、ローマ帝国を「終わらせる」ことを目的としてきたと考えると、いろいろ腑に落ちる。一方で、主人公ルシアス=ハンノは、それでもこの世界に可能性を見出したい人で、その対比が見事なラストでした。ただ、ルシアスは勝利したとはいえ、ここから帝国の「再興」はほぼ不可能でしょう。もう腐るところまで腐ってしまった指導者たち、倫理よりも刺激を求める大衆、そこでハンス・ジマーをバックに「夢」を語ったところで、どこか空しく響いてしまう。熱血歴史劇っぽいのに、ラストの寒々しい感触は、リドリー・スコット御大の真骨頂だったと思います。  ただ、前作と今作の大きな違いは、この間に『ゲーム・オブ・スローンズ』という文字通りの「ゲーム・チェンジャー」が存在してしまっていること。ドロドロ政治劇も、絡み合う復讐心も、痛そうな剣闘(これはむしろ元祖は前作だが)も、憎たらしいサイコな若い皇帝も、どうしても既視感が先に来てしまう。コロッセオでの船上戦(文字列だけだと何言ってるかわからない)とか、びっくり映像はあるけれど、2作目でありかつGOT以降ということで、新鮮な驚きは少ないままでした。あと、ハンノがルシアスであろうことは観客もみんな知ってる(公式もそう言ってる)のに、物語中ではそこは「謎」っぽく扱われて、何をどこまで誰が知っているのかがはっきりしないまま、物語が進んでいくのがなんだか居心地が悪い。だいたいルシアスがマキシマスの子であることは前作では匂わせていたけど明言してたっけとか、マキシマスは妻と実子のいる天国へみたいなラストだったのに、天国でマキシマスも複雑な心境なんじゃないかと余計なことまで考えてしまった。
[映画館(字幕)] 7点(2024-11-19 18:49:08)
2.  クリード 過去の逆襲 《ネタバレ》 
第1作にはドハマりしたこのシリーズですが、主演俳優が監督というシリーズものの「地雷」を感じるところもあってなかなか手が出ませんでした。でも、見てみれば思ったよりはよくできてた。なにより、マイケル・B・ジョーダン監督でスタローン不在ということで、思い切って「ロサンゼルスの物語」になったのが何よりも本作の良かった点。ロッキーシリーズとクリード1作目が「フィラデルフィアの物語」を通してきたのに、2作目は微妙な感じになっていたところ、今作では、デイムとアドニスの「LAストリート物語」へと転化したことで、3作目のマンネリ感や「闘う意味」をちゃんと再定義できていたと思います。ジョナサン・メイジャースの佇まいや、人懐っこそうなのにどこか暗さを秘めた表情もいい。アドニスが「捨てた」過去への後悔や後ろめたさと、これまでのライバルにはない、何をするかわからない怖さが伝わってきました。最後の試合のアドニスのパンツが、あの星条旗の「CREED」ではなく、白の「ADONIS」であったのも、この試合は、アポロ・クリードの息子として生きる前の、アドニス対デイムの対決だというのもうまく表現されていました。シリーズものの常でビル・コンティの音楽の引用は評価が分かれるところかもしれませんが、ロッキーのテーマではなく、Going the Distanceのみという選択も本作については正解だったと思います。  ただ、演出面や脚本面ではやっぱり疑問も。何よりチャンピオンになった後のデイムの変貌が急すぎて戸惑うレベル。母の取って付けたような病気エピソードも。そして、妻ビアンカの立ち位置もちょっとわかりにくい。彼女が「ボクシング」というものをどう考えているのかがちょっとわからないまま、いきなりエイドリアンの「勝って、ロッキー」みたいな立場になるのにも違和感のほうが大きい。デイムの試合は娘に見せたくないのに、アドニス対デイムのときにはその葛藤が消えてるのもわからない。デイムを巻き込んだことを怒ってたデュークが、結局アドニスのセコンドになった経緯もわかりにくい。各キャラの立場とその論理が掴みにくいまま、勢いで押し切ってる感じは、ロッキーシリーズっぽいですが、やっぱり残念。試合の演出など工夫もみられるし、なんだかんだで最後まで楽しめた一作でしたが、もう続編はないと思いたい・・・(でも、マイケル・B・ジョーダンは『クリード4』あるよ、と言っているらしい、うーむ)
[インターネット(字幕)] 5点(2024-08-17 00:08:44)
3.  来る 《ネタバレ》 
序盤〜中盤の不穏な「家族もの」の展開はベタながら、妻夫木君、黒木さんのハマりっぷりも見事で楽しく見た。とくに、子どもが生まれてからの展開は、「異物」としての子どもが持つ不気味さを見事に体現していたようにも思える。ただ、中島監督が「家族こそが最も不気味なもの」みたいな、ありがちなオチに満足するわけでもなく、最後はなぜかオカルト大戦争。これはこれで面白かったし、岡田准一君の貫禄とか、小松菜奈さんの成長とか、松たか子さんの格好良さとか、それぞれの魅力も十分に引き出してる。でも、全体にチグハグな印象が拭えないことと、物語全体をつなぐ怨霊が思ったより迫力不足だった。とくに、個人的に一番気になったのは、怨霊が何に「憑いている」のか不明な点。少年時代から今までの妻夫木君に憑いているように見えたけど、妻夫木君自身は中盤に退場しちゃうし、その後は「家族」なのか、それともあのマンションの「部屋」という場所に憑いてるのか、よくわからない。こうゆうハチャメチャな作品は、相手側の論理の一貫性があってこそ、面白さが増すと思うのだけれど、この作品は、主役が途中交代する三幕構成、怨霊側の攻撃方法、撃退する側の論理なども行き当たりばったりな上、もっとも大事な怨霊がなぜ怨霊として存在するかの論理もさっぱり。これでは残念ながら楽しめない。
[インターネット(邦画)] 5点(2021-08-27 08:46:16)(良:1票)
4.  愚行録 《ネタバレ》 
『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督作品ということで鑑賞。まったく質の違う物語なのに、映像や音響で作られる空間はよく似ていて、しかもどっちもそれぞれの物語にぴったり合っている。特筆すべきは演技面。冒頭のバスのシーンから終始「死んだ目」の妻夫木聡、満島ひかりの狂気をはらんだ表情、そして登場人物たち1人1人のちっぽけな悪意と自尊心。役者陣の演出がどれも素晴らしく、必ずしも演技力で売ってるキャストばかりでないのに、みんな演技派に見えてしまう。原作どおりとはいえ、ステレオタイプな登場人物たちの言動にはうんざりするものの、いずれも他人から見た「回想」ということで、実はステレオタイプなのは1人1人の人間ではなく、私たちの人を見る目なのだ、というふうにも読めて、原作の難点を逆に活かしているのも感心でした。まあ、あんなに覇気がない事件記者なんているか?とか、兄は大手出版社で働き、妹は一流私大に進学と、それまでの境遇を考えると兄妹のポテンシャルの高さに驚くなど、いろいろ違和感はありますが、最初と最後のバスのシーンだけでも、この監督ただ者ではないということで、その力量にこれからも期待です。
[インターネット(邦画)] 7点(2021-01-29 14:10:03)
5.  黒い司法 0%からの奇跡 《ネタバレ》 
アメリカで本当にあった黒人死刑囚の冤罪を明らかにした弁護士が主人公。日本公開がコロナ危機と被って興行的には苦しんだと思うけど、黒人が経験する構造的な差別を描くという意味で時宜にも適った佳作でした。描き方は主人公であり原作者のブライアン・スティーブンソンの生真面目さを反映したような真面目な正統派。演出的にも脚本上もひねった表現はあまり見られず、アメリカの人種主義とそれと闘う人々の姿をまっすぐに描く。その愚直さは現代劇としてはやや工夫不足な気もするけれど、黒人の命がいかに軽んじられてきたのかが問いなおされている現在には、その真っ直ぐさこそが希望に見えるから不思議だ。それから本作の出色のシーンは、実は本筋にあたるジョニー・D事件裁判の法廷劇ではなく、ジョニー・Dの仲間の死刑囚の死刑執行シーン。いまや世界中で見直しが進む死刑(それも準公開型の電気椅子方式であることに驚く)の執行の様を丁寧に描き、そこに見える死刑制度の暴力と人間の尊厳が交差するシーンは本当にすばらしかった。本筋のほうが、あまり意外性がなく、予定調和にも見える演出・内容だったなか、このシーンはすさまじく重い澱のようなものを心に残してくれた。マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソンの主要キャストはいつもながらに素晴らしい演技だったけど、強烈な印象を残すティム・ブレイク・ネルソンの怪演も印象的。アメリカの黒人問題に関心を持った方には素直におすすめしたい良作です。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-08-24 16:08:57)
6.  クリード 炎の宿敵 《ネタバレ》 
もともと陳腐で使い古されたストーリーを新しい語り口で描き直したところに前作の成功ポイントがあったと思います。続編でも、その流れを継承し、基本的には前作でよかったことをそのまま素直に繰り返している感じで、監督が代わったことも忘れそうでした。さらに、挑戦者がチャンピオンになる物語よりも、チャンピオンになった後の物語のほうが圧倒的に難しいのは、『ロッキー』シリーズがすでに物語っているわけで、その意味ではけっこう困難なチャレンジだったけれども、それを淡々とこなした一作だと思います。 ただ、見ているうちに徐々に違和感が・・・。たぶん、一番の違和感は台詞や絵作りの平板さ。そこは監督交代の影響をもっとも受けた部分でしょう。ライアン・クーグラーの挑発的な絵作りや凝った台詞回しに比べると、序盤のプロポーズをめぐる顛末などベタ過ぎてちょっと恥ずかしくなるくらいの作り。ドラゴ親子の台詞や環境もベタ過ぎてひねりが足りない。それから2番目はロッキーの位置が微妙だったこと。病気の件が前作から続いているのに、今回のロッキーのミッションは孫に会うこと・・・というのがあまりにもドラマとして弱い。自分の体よりも家族のほうがはるかに難しいというのはわかるのですが、ちょっと無理矢理とってつけたようなドラマでした(ただ、孫が本当にエイドリアンの面影を持ってたのには感心したけど)。そして3番目はドラゴ親子の妙な存在感。ドルフ・ラングレンのキャリアや老けたブリジット・ニールセンなど、スクリーンの外のドラマがあまりに強烈過ぎて、後半はアドニス側の物語を完全に食ってしまいました。それは、この映画の強烈な魅力でもあるのですが、ちょっとバランス崩し過ぎかなあと。そして、4番目はフィラデルフィアという街の存在感が完全に消されてしまったこと。フィラデルフィアは『ロッキー』という物語の魅力と一体だと思うのですが、今回の作品はレストランのベタな描写以外はあっさりと切り捨ててしまいました。ということで、楽しく揺さぶられる一作だったけど、あの強烈な完成度の一作目と比べれば、残念ながら数段落ちてしまったかなあ。それは、この物語にとってはある種の「宿命」なのかもしれませんが。
[ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 6点(2019-05-05 08:16:31)
7.  クレイジー・リッチ! 《ネタバレ》 
サンフランシスコ都心の映画館に公開3週目の週末に見に行きました。予想外の大ヒットで各所で話題になっていたこともあり、座席は予約でほぼ満席。在米中国人向けなのか、中国語字幕付きの上映館もあったようでした。アジア系住民が多い土地柄でしたが、観客の6〜7割は非アジア系の方々でした。映画はいたってありがちな古典的な「彼氏の家族に会いに行く」モノの範疇を出るものではないし、バチェラー・パーティあたりのセレブ文化描写はあまりにベタでクドいなあと思いつつも、終わってみれば、心からこの映画を楽しんでいました。たぶん理由は3つ。1つは、シンガポールの大富豪の派手な金持ちぶりが話題ではあるのですが、物語の中心は、主人公レイチェルが自分自身のルーツを発見する典型的な移民家族物語になっていて、そこがぶれておらず、映画としての芯がしっかりしていたこと。2つは、映画の軸がはっきりしているがゆえに、オークワフィナやケン・チョンのコメディ部分を物語のもう一つの華として心から笑えて楽しめる作りになってること。そして、3つめは、何よりも満員の観客の反応が素晴らしかったこと。人種や民族関係なく、みんなゲラゲラ笑い、ときには突っ込みも入れ、口笛を鳴らし、ラストの飛行機の機内のシーンでは、みんなで「オオーーーー」と声をあげて驚き、そして終幕後は大拍手。何度かアメリカの映画館で映画を見てますが、そのなかでも最良の体験でした。そして、何よりもそうやってみんなが喝采した映画が、いわゆるハリウッド映画スターは誰も出てこない(ミッシェル・ヨーぐらい)、俳優も主要なスタッフもアジアにルーツも持つ人々で作り上げた映画であるということが、その感動を何倍にもしてくれた。はっきり言えば、映画としての出来は6点くらいだと思うが、何よりもすばらしい観客によって忘れられない経験になりました。あと、難を言えば、なぜ邦題で「Asians」が消えてしまったのか・・・。語呂が難しいのは理解できるけれど、これはCrazyやらRichなだけではなく、何よりもアジアにルーツを持つ人々の映画なのに。その映画を、人種や民族関係なくみんなが楽しんだことが重要なのに。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2018-09-27 22:54:20)(良:1票)
8.  牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(188分版) 《ネタバレ》 
幸運なことに、最初の公開後しばらくして名画座で鑑賞しました。ただ、まだ若かった私は、まだこの映画のよさを十分に堪能できず、まったりした退屈な映画という印象でした。で、昨年のリマスター版再公開後、久々に再見。本当は映画館で観たかったが時間がとれず、結局は真っ暗にした部屋で大画面テレビで鑑賞。今回は、全く違った経験でした。国際政治に翻弄される戦後台湾の時代背景、外省人という主人公家族の立場、先が見えない大人の世界の不安さを体現した学校内の人間関係など、退屈だと思った画面の数々が濃厚な緊張関係に包まれていて、4時間の長尺なのにまったくダレることはない。台詞などでは明示されないけれど、日本刀や写真が描く日本植民地支配の名残り、反中国共産党の名のもとの過剰なまでの抑圧、プレスリーと音楽が体現する「自由の国」への憧れ(でもその「自由の国」がその後、この国を追い詰めるわけだが)など、なんてことない不良少年たちとその家族の日常にちりばめた時代の痕跡が、この映画が描く「歴史」を雄弁に物語る。視覚的にもとにかく凝った構図が満載で、暗闇から突然現れる光とそこに照らされる限定された世界が、この映画が描く社会そのものを象徴しているかのよう。技術的なことはよくわからないけど、冒頭の教師と父親の会話シーンから、背景と人物の配置が印象的な場面が続き、映画が持つ手法をこれでもかと詰め込まれている。そして、そこに描かれる青春の淡い物語は、実はとってもビター。あのブラスバンドの演奏のさなかの告白シーンなんて、おっさんの涙とノスタルジーを誘うには十分過ぎるのに、その後の展開は、問題だらけの時代と家族を懸命に生きようとする主人公をどこまでも打ちのめす。でも、本作の魅力は、単なるバッドエンドもので括れないところ。賛美歌を歌いながら涙する姉、リトルプレスリーからの手紙、「唯一の友」を失って涙するお坊ちゃんの姿からは、主人公が「生きた」証を感じることができる。そして、冒頭と同じ大学合格者の名前を淡々とラジオが読み上げるラストは、何も変わっていないのに、どうしようもないと思っていた世界も「変わる」のかもしれないという一抹の光のような、不思議な余韻を残してくれます。ぜひ1日休みができた日に、ゆっくりとこの「映画」そのものを体現したような作品を味わってほしいと思います。
[DVD(字幕)] 10点(2018-01-23 15:02:37)
9.  クリーピー 偽りの隣人 《ネタバレ》 
かみ合わない会話、とくに社交辞令に絡むあたりから、するするっと隣人が心の奥に入っていく過程は、同じ黒沢清監督のCUREを思い出す。そういえば、本作の展開もよく似てた。ただ、CUREが「あんたは誰だ」というわかりやすい問いで絡んできたのに対し、本作は、どこで入り込まれたのかよく分からないままに気づいたら支配されてしまうというのが怖い。そのプロセスについては、いろんなメタファーが劇中に用意されている。たとえば、西島さんの演技が終始下手くそに見えるのだけれど、「刑事」「犯罪心理学者」「大学教授」のベタな役柄を演じている人という設定なんだろう(とくにあのわざととしか思えない棒読みの大学講義シーン・・・)。冒頭の刺されるシーンでの、それは「致命的だ」という教訓から結局学ばず、事件に首を突っ込んで、刑事ごっこ、犯罪心理学者ごっこに夢中になる。そして当然ながら「夫」としての演技も基本に忠実すぎて、まったく中身がない。妻はそれに気づいているからこそ、役割や社交辞令を逸脱して踏み込んでくる西野に、なんだかんだで近づいていってしまう・・・。あと「隣人」ではあるのだけれど、家と家のあいだにある「空き地」も象徴的。これは6年前の事件とも共通しているのだけれど、人と人の「距離」を象徴するようなあの場所は、西島さん演じる主人公、そして役割演技に忠実な現代人の対人距離でもあり、西野はその向こう側からいつもこちらを眺めつつ、いったんそこを越えれば、いきなりつけ込んでくる。そう考えれば、アイデンティティっていうものの自体を問うたCUREよりも、より現代的な問題設定であり、2010年代の黒沢映画らしい一作でした。ただ、後半のバランス崩れるところも同じ。前半の緊張感、妻が取り込まれるまでの恐怖はどこへやら、結局はサイコパスvs間抜けな警察、薬と銃をめぐるドタバタ劇で終わってしまう。最後の絶叫シーンで救われる部分はあるけど、もはやこのがっかり感、チープ感こそが黒沢印の様式美となっているようにも思えます。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-12-16 09:30:51)
10.  クリード チャンプを継ぐ男 《ネタバレ》 
『フルートベール駅で』は2013年の個人的ベスト映画でした。そのクーグラー監督とマイケル・B・ジョーダンのタッグで、あのアポロの息子を描きます。『ロッキー』は個人的に映画にハマるきっかけになった作品なだけに、期待と不安の混じった状況で鑑賞。結果的には、これが大正解だったと思います。『フルートベール駅で』のたぐいまれな構成力や脚本のすばらしさはそのままに、でもちゃんと『ロッキー』的な「アガる」要素やドラマティックな演出もばっちり。見方によっては、『フルートベール』がそうであったように、新世代のブラック・ムービーにもなってて、そこは『ロッキー』シリーズとしては賛否分かれるところだと思うけど、この2人に賭けようとしたスタローンの懐の深さに、この不器用すぎる俳優のまた新しい魅力を見た気がします。恵まれていても「何か」を渇望しているアドニスのドラマは、『ロッキー』1作目とは違う現代的なテーマではあります。でも、根底にあるもの、自分自身が何者であるかを問い続けてきた1人の若者の物語であるという点では同じであったようにも思います。加えて、ドラマパートでの生きた台詞の数々(ただし字幕にはかなり不満あり)と斬新なカメラワークで構成されたボクシング・シーンも素晴らしい。あのダウン→走馬燈→最終ラウンドまでの流れは、もうドラマティックな演出、役者の演技、そしてなんと言っても音楽との奇跡的な相乗効果で、魂ごと持っていかれて、上映後しばし放心状態でした。公開日数も回数も少ないけど、映画館で見て本当に本当によかったと思える作品でした。
[映画館(字幕)] 10点(2016-01-16 00:16:03)
11.  グッドフェローズ 《ネタバレ》 
実は公開直後にも見たのだけど、当時はピンとこなかった。最近、なぜかこの映画が急に見たくなり、久々の再見。すると、なんと素晴らしい作品だったのか。暴力と犯罪と些細な日常が交錯するギャングの下っ端の世界。物語全体を包むのは、人間の愚かさ、偏狭さ、そしてユーモア。淡々としているけどスピード感のあるタッチと効果的な音楽(「レイラ」のメロディの美しさをああいうふうに使うのは、狙いすぎと見る見方もあると思うけど、やっぱり凄いと思う)。主役3人のキャスティングは言うことなし。あと、個人的に評価したいのは、実はアイルランド人の親を持っていることでイタリア人ギャングの世界の中心にはなれないというヘンリーたちの立場。そのギャング世界の構造のなかでもがき破滅する姿は、どこか普遍的な人間の生き方を描いているようにも思えて妙な共感を導く。現代の多くの映画にも影響を与えた演出で、愚かで魅力的な登場人物たちを描いたスコセッシの傑作。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-03-20 14:28:24)
12.  グランド・イリュージョン 《ネタバレ》 
よく回るカメラ、主人公なのに存在感の薄い4人組、無駄に豪華なキャスト(コナン・オブライエンまで!)、特殊効果頼みで魅力薄のマジック・・・。エンターテイメントとして「飽きさせない」ことは大事ですが、「飽きさせない」ことが自己目的化したような、とってつけたようなアクションシーンや薄っぺらい演出にもがっかり。壮大なイリュージョンの「タネ」も、正直そこまでやるか?というもので、もはやマジシャンとしての能力とかそういう話ではなくなっているし・・。まあ、メラニー・ロラン観賞ビデオとしてはまずまず。
[DVD(字幕なし「原語」)] 5点(2014-03-07 02:14:20)
13.  クヒオ大佐
冒頭とラストに姿を見せる政治パートは、金さえだせば自分たちに都合がいい幻想を見せてくれる、という風刺だったのかもしれないけど正直前面に出しすぎ。さまざまな解釈がありえるクヒオ大佐と女たちのドラマの可能性を「ワイドショーのコメンテイターが無理して国際政治を語ってる」みたいな中途半端なものに貶めてしまったように思いました。主演の堺雅人をはじめ役者陣は誰もがすばらしかっただけに、本当にもったいない。
[DVD(邦画)] 5点(2011-08-30 14:10:01)
14.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
ウォルトと家族、モン族の隣人とギャングとのトラブルなどは、アメリカ映画ではおなじみの設定ですし、「チンピラ」として描かれるギャングたちも、(顔が「アジア人」になっただけで)ギャング映画の定番といえます。彼らが登場するシーンに必ずヒップホップが流れているのには思わず苦笑してしまいました。しかし、最近のイーストウッド映画にはない「ユーモア」が、なによりもこの映画を特別なものにしている。どんなに差別的な表現を伴っていても、ウォルトの言葉にはすばらしいユーモアがあります。関係ない話かもしれませんが、僕の周りにも「毒舌家」がいて、僕はその人からかなり酷いことを言われたこともあり、正直その人をどうしても好きにはなれませんでした。でも、なぜか、その人の周りには、数は多くはないけれども心を許せる友人が集まっていて、そういう関係を自分はどこか「不公平」に感じていました。そんな僕には、ラストの葬儀のシーンのウォルトの息子がタオを見る表情が痛く突き刺さりました。そういう人間関係の微妙な襞を見事に描いたからこそ、ありきたりの設定ながらも暖かいユーモアと重厚な深みに包まれた傑作になったのでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2009-11-14 14:42:18)(良:1票)
15.  グエムル/漢江の怪物
『殺人の追憶』で80年代を描いたポン・ジュノ監督が描いた現代韓国社会はなんとモンスター映画! しかし、主人公家族から、警察、在韓米軍まで、どうしようもない間抜けな人たちを愛情をもって描く監督のスタンスは変わらず、このへんはハリウッド産怪物映画と一線を画する印象だった。ストーリーが荒唐無稽になったぶん、つっこみどころは満載だし、監督の政治的メッセージを過剰に読み込むことも可能かもしれないけど、個人的には、愛すべき家族のやりとりを見ているだけで十分に満足だった。怪物は、なぜか『千と千尋・・』の「カオナシ」を思いだしてしまった。なんでかなあ。
[DVD(字幕)] 7点(2007-08-22 07:42:19)
16.  クラッシュ(2004)
サンドラ・ブロックが後半に言う「私がこんなにイライラしているのは、黒人に車を盗まれたことだけが理由じゃない」という一言が重い。この登場人物たちは、自分が抱えている問題を、「見た目」「言語」「文化」「宗教」という、わかりやすい<ちがい>に押しつけ、自分の境遇を「やつら」のせいにして、なんとか自分を納得させて生きている。しかし、そんな人たちの人生が重なり合い、自分で作り出してきた殻を破ろうとする後半の展開は本当に感動的だった。難をいうなら、舞台がLAじゃなくて、どっかの小さな町なんじゃないかと思うくらい、登場人物どうしの偶然の出会いが続くことかなあ。最初から最後まで、そのあたりがちょっと都合よすぎ・・・。せめて、PTA監督の『マグノリア』くらい、微妙な登場人物どうしのつながりが存在していれば、そのあたりも気にならなかったのかもしれないけど。
[映画館(字幕)] 8点(2006-04-07 09:05:26)
17.  クローサー(2004) 《ネタバレ》 
あまり期待していなかったし、感情移入が難しいかと思ったけど、見応えのある恋愛劇でした。「真実」と「嘘」と「愛」の一筋縄ではいかない関係は、ここまで極端ではないにしても、誰もが思い当たるフシはあるのでは。一番ナイーブそうだったナタリー・ポートマンと、一見ジゴロ的なキャラのジュード・ロウの立場が逆転するラストがいいですねえ。そして、クライヴ・オーウェン! オトコの嫌らしさを見事に演じきってます。個人的には、4人の演技対決では、この人が圧勝でした。ただ、風景や環境の描写などの変化で、時間の経過をもう少しわかりやすく表現してくれれば、4人の関係に集中して物語を楽しめたかなあ、という点が残念。
[DVD(字幕)] 7点(2006-01-05 13:36:38)
18.  クライシス・オブ・アメリカ
荒唐無稽な設定も、淡々とした演出と実力派俳優たちの締まった演技で、上質なサスペンスに仕上がっています。政治心理スリラーっていうんでしょうか。アクションや政治劇よりも、そのなかの登場人物の心理戦に的を絞った演出は、さすがジョナサン・デミという感じです。また、大統領が民主主義のシンボルであるという「神話」が生きているアメリカだからこそ、「大統領がもし誰かに洗脳されてコントロールされていたら」という恐怖が映画のテーマとして成立するのでしょう。黒幕がテロリストでも共産主義者でもなく○○ってところが、今のアメリカを体現しているように思います。ただ、いまいち「見せ場」がわかりにくく、ストーリーもやや冗長なので、大作的な展開を期待すると肩すかしをくらいそう。
[DVD(字幕)] 7点(2005-12-10 12:49:36)
19.  クリフハンガー
予告編で「下は奈落の谷底、ロープ一本で、女性の手をかろうじてつかむスタローン、ああっ、手が滑った!!さあ、どうなる!?」。そして映画館で本編を見る「そのまま落ちてしまった・・・」。この冒頭シーンは、ある意味、掟破りだったけど、当時としては衝撃でした。そのあとはダイハードばりのアクションの連続。『ロッキー』で映画に目覚め、『ランボー(の2と3)』で失望したぼくにとって、本作での「スタローン復活!」はちょっとうれしかった。しかし、この後、彼が選んだのは『デモションマン』『スペシャリスト』『ジャッジドレッド』・・・・。どうやら、幼き日のヒーローはもう帰ってこないらしい。
6点(2005-03-04 11:10:49)
20.  グリーン・デスティニー
アン・リーは好きな監督ですけど・・。話が中途半端だし、特別新しさを感じませんでした。彼の器用さが裏目にでた作品だと思います。チャン・ツィイーだけが印象に残りましたね。ネイティブの英会話の先生に絶賛されて見たんですが、この映画を見て以来、西洋人の「東洋趣味」をアテにしないことにしました。
5点(2004-03-13 23:50:43)
010.15%
120.31%
260.92%
3345.19%
4467.02%
511717.86%
612919.69%
716825.65%
89314.20%
9436.56%
10162.44%

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