1. グラン・トリノ
へんくつな老人って、どこにでもいて、普通まわりの人は、自分が嫌な思いをするだけなんで相手にしません。この映画も、そんな普通の老人と、勇気のない少年との交流を描いた物語なんですが、おじいさんの突き放し方が本当にうっとうしそうに思って言ってんだなと思えるので、言葉の裏を読み取るわざとらしさがなく、なんとなく情感に訴えるものがありました。登場人物がお互いわざと名前を言い換えるところが神父との距離、スーとの距離、タオとの距離の縮み方を捉えやすくて、とても印象的でした。ところで先日、うちの近所のおじいさんの木造の家が火事になりまして、全焼してしまいました。幸いケガ人なく消火しました。原因は、ガスを止められてて、しかたなく家の中で煮炊きしてた火が燃え移って火事になったのですが、本人は「よう燃えてますわ、はっはっは」とあっけらかんとしてました。あのおじいさんにもこういう一面があるのかなー…、とちょっと感慨。 [DVD(吹替)] 9点(2009-09-15 22:31:33) |
2. グエムル/漢江の怪物
《ネタバレ》 この映画は尖端恐怖症の映画でした。イカの足に始まり、アーチェリーの矢、砕いた道路標識、便利屋の脅し道具、頭に穴を空ける医療機器、そして注射針。尖った物を自分に向けられた時に恐怖を感じるのはもちろん、先が自分に向けられて居ない場合にも恐怖を感じるという病気だそうです。そういう小道具の使い方で、地味に恐怖を煽っていて非常に面白い。この映画、グエムルという異形の怪物はもとより、それが誕生した経緯、混乱する社会生活、色んな分野で恐怖が渦巻いている映画でした。しかしテーマは恐怖に立ち向かう家族愛であり、韓国人に独特の、食事を共にし家族の結束を第一とする点、怒りっぽく泣きっぽい感情の起伏や、お金に細かく、融通が利かない韓国人文化をとっても面白おかしく綴っていたと思う。序盤の葬式のシーン、叔父・叔母が姪のためにあんなに泣けるなんて、日本ではないことだと思う。あれなら死にがいがあるっていうか(笑)。あの怪物に立ち向かう家族が、どこにでもある韓国人の家庭像を分かりやすく伝えてくれていると思います。とりあえず、カニサハムニダをカニハサムニダと言い間違えないように気をつけます。 [DVD(吹替)] 8点(2007-03-07 21:31:59) |
3. グッドフェローズ
『ゴッド・ファーザー』がファミリーを題材とした映画なら、この映画は末端の”チンピラ”たちの映画ですね。「なぜそこで怒るかなぁ」とついついツッコミを入れたくなる、ジョー・ぺシのキレどころが分からない、ムチャクチャなキレっぷりが恐怖です。考えをコロッと変えるジミーはもっと怖い。面倒見のいいポーリーは一番こわい。この世界で生き残るには、仲間をも平気で裏切る。これって、すごく怖い。誰も信用できない裏社会を露骨に表しています。ポーリーをドンとする、ヘンリー・トミー・ジミーの絆は感動的ではなく、濃いようで渇いてもいる、いかにもスコセッシの演出らしい息苦しさを感じる繋がりでした。ヘンリーという、マフィアに憧れた男のだらしなき(しかし実際の末端の”チンピラ”たちもこうなんだろうなぁと思わせる)生き様を如実に表した、ズズィと一歩、踏み込んだ映画であることは間違いないと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2005-09-12 21:13:14)(良:1票) |
4. クライシス・オブ・アメリカ
《ネタバレ》 「これは何かの陰謀だ」。この”何か”が非常に恐怖心を煽っていました。あのとき砂漠の嵐作戦は終わっていたのに…。自分はもしかしたら洗脳されているのでは…?という魅せ方が上手かったです。そう簡単に政界を動かせないとは思いますけど、二転三転する登場人物たちの正体がこの映画の醍醐味と言えます。何よりもメリル・ストリープの存在理由がああいった形で出てくるとは衝撃的でした。息子レイモンド・ショーの髪をさする母親である彼女の表情が、優しくもあり、恐ろしくもありました。サイコ路線も上手く型にはまっていたと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2005-07-29 23:34:48) |
5. 群衆(1941)
《ネタバレ》 偽りのヒーローであっても、”隣人を愛する”ということを伝えたい、フランク・キャプラ監督の作品です。最初は小銭が欲しかっただけなのに、群衆が良い方向に勘違いして自分をヒーローに祭り上げていく様、政治ゲームにまで巻き込まれていく様、本当の善意とは何か?に苦悩するゲイリー・クーパーの演技が秀逸です。思うに、『ここまで来たら、もう引き下がれない』ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2005-06-15 19:54:14) |
6. グレン・ミラー物語
《ネタバレ》 ジャズに興味がなくても、この映画は大好きですね。名曲ムーンライト・セレナーデの曲名が、ムーンライト・セレナーデであるということをこの映画でやっと知りました(笑)。相変わらずジェームズ・スチュワートは純朴な青年役がうまいですね。音楽に生き、音楽で死んだものの、音楽の中で生き続ける。偉大な作曲家だったんですね。ありがたいことにこの映画のDVDには吹き替えがありますので、観やすいですよ。 [DVD(吹替)] 9点(2005-05-31 09:17:30) |
7. クライム&ダイヤモンド
《ネタバレ》 あらゆる部分で”芸術的”でした。若き日のリチャード・ドレイファスの強奪のシーンといい、ティム・アレンの一癖も二癖もある役どころといい、セオリー通りの映画を作っていないところに好感がもてました。映画の尺は短いですが、ファンタジーとコメディが、サスペンスの血生臭さをうまく打ち消してくれています。空想と現実の交錯がこの映画の醍醐味ですね。観ながら、「ん? あれ? …あぁ」と、うなずきながら観てました(笑)。初めて観る人は、パッケージのあらすじを読まないで観た方が、ほんわかした気分になれるのではないかと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2005-05-27 20:11:11) |
8. グッドナイト・ムーン
《ネタバレ》 離婚した前妻と再婚する予定の後妻との、お互い相手を認めたくてもどこかで認めにくい、家庭をテーマにした映画です。いくら前夫の恋人が疎ましいとはいえ、スーザン・サランドンが最初は嫌な女に思えました。しかし、それは子供たちにいつまでも自分に頼らず、新しい母親のことを支え、また言うことを聞いて、死に行く自分の分まで生きてほしいという願いだったのですね。最後まで、ジュリア・ロバーツに「あとのことを頼むわね」と頼まなかったのが、最後の最後まで、(ジュリア・ロバーツに安心して我が子を任せられる強い母親になってほしい)と願う演技に映りました。 [DVD(吹替)] 8点(2005-05-25 19:03:33) |