1. くちづけ(1957)
《ネタバレ》 鬱屈を振り払う意志(即決の決断力)が生む猛烈なスピード。なるほど増村が志すように非主体的な日本映画の対極に見える。だが映画である以上、意志や主体が絶えず視覚の対象へと(つまり客体レヴェルへと)引き落とされて(やみくもの即決というのは熟考という人間的能力からの疎外態でしかないだろ!)、皮肉にもそういう疎外態が魅力なのである、増村の場合も。 [DVD(邦画)] 7点(2014-11-26 09:17:48) |
2. 苦役列車
《ネタバレ》 n 個の事例からの選りすぐりの二三のものがプロットであり、それを基にして全体的なストーリーを観客が頭の中で構成するならば、友人から相手にされなくなるためにはこの映画に描かれた二三の絶望的な事例ですべてである(選りすぐりではない)と思える。主演がんばっている。 [DVD(邦画)] 7点(2014-03-27 15:16:19) |
3. グラン・トリノ
《ネタバレ》 上手に無駄無く一本制作したという感じ。手慣れたものである。ところで、銃社会では老人でも銃を手にすれば本格的な暴力主体となりうる、ということの裏返しで「丸腰」の結末はある。 [DVD(字幕)] 7点(2012-04-14 13:23:28) |
4. 空気人形
韓国の女優さんを使っての、こういう「隠喩的な」映画は、ただ恥ずかしい気持ちにさせただけだ。韓国の素材に触れるなら大島渚を通ってからにしてほしい(映画人としてそういう真剣さがないなら資格なし)。 [映画館(邦画)] 1点(2011-03-19 11:17:36) |
5. 黒い罠
《ネタバレ》 ウェルズのローアングル手法(まさにこの作品で炸裂)が巨大な堆積の「悪」ウェルズを見上げる。ジャネット・リーがいい。 [映画館(字幕)] 6点(2011-03-18 15:41:39) |
6. グリニッチ・ビレッジの青春
《ネタバレ》 教養小説的な成長発展物語に憑かれる青春時代が、誰しもある。個人の成長発展には付きものの別れ。主人公が都会に出てあれこれの経験をして、一旦帰郷したのちまた旅に出るところで終わっているが、バイオリンのエレジーが野心を燃やすこの主人公を送り出すところに奥深さがある。故郷喪失の哀しみはこの先けっしておさまることがないということ、それが人生だ。思い出の映画である。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-15 21:32:46) |
7. 熊座の淡き星影
《ネタバレ》 ヒロインのカルディナーレが親の屋敷に帰る。ざわめく庭園、地下空間での弟との絡み、それだけで絵になる。エレクトラ系の物語への仄めかしもあるが、決定的な次元には至らない(踏みとどまっている)。こういう堂々たる美しさの映画はぼーっと映画館で眺めているだけで(正直一回目は居眠りをしたが、その後映画館で二回観た)満足できる。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-14 17:12:18) |