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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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1.  Cloud クラウド 《ネタバレ》 
黒沢清の映画は多作故に当たり外れが非常に大きい。 本作は明らかに後者。  タイトル通り、雲のようにあやふやで掴みどころがない。 それは主人公のはっきりしない対応であり、転売で当たるかどうか分からないギャンブル要素であり、 ネットで増幅する姿の見えない悪意である。 悪びれることなくどこか他人事で、常に棒読み台詞で人の形をした空虚みたいに。  射幸心。 一山当てたいがために中毒性のある一過性の幸福を手に入れ、ひたすら視野が狭くなっていく。 主人公の関心は如何に安く仕入れた大量の商品が高く売れるかで、 物欲大好きな恋人よりも、猟友会の男が死んでも、殺人による死の危機を脱しても、 売り物が無事であるか、そして売れるかどうかしか見ていない。 それはSNSの「いいね」にそのまま当てはまる。 不特定多数の何かに依存し、四六時中ウォッチして、「いいね」が少なければ人は病んでしまう。  黒沢清ならではのダークな画作りと演出に、おおっと思わせるシーンはあった。 ところが中盤以降の廃工場のガンアクションで映画が既視感だらけの薄っぺらになってしまった。 ほぼ『蛇の道』のクライマックスのまんま。  助手にパソコンを使われたり(パスワード掛けろよ…)、主人公が攫われて殺されるかもしれないのに忍び込む恋人、 なぜか主人公に執着する狙う側の元職場の経営者と守る側の助手(どこかボーイズラブらしさがある)、 それぞれの背景がはっきりしないまま終わってしまった。 100%描き切れば良いわけではないが、この曖昧さのバランスの悪さが足を引っ張っている。  素性がバレ、恋人に裏切られ、これから巨大な組織に取り込まれるだろう主人公には深い地獄の入り口が待ち受けている。 自業自得と言えばそれまでで転売ヤーに対する目が厳しくなっている以上、 彼らに一切関わらない、ネットに依存しすぎない、真面目に働こう、という教訓が得られるくらいか。
[映画館(邦画)] 5点(2024-09-27 22:58:18)
2.  クイール 《ネタバレ》 
遠い昔見たことがあるが、無味無臭で終わった映画。 実話の映画化でありながら犬が主役の映画としては焦点が合わず中途半端さを感じる。 演技する犬の労力やストレスを考えれば仕方ないが、盲導犬の啓発だけならドキュメンタリーで十分だろう。 ファミリー層を中心に盲導犬とはどういうものかを知って貰う意味で、この言い方は野暮かもしれない。  視覚障碍者の目となり、道標として自由を制限された生き方を決められ、老いて役割を終えていく。 長きに渡って連れ添ったパートナーの飼い主からしたら代わりが利かない存在だが最期までいられない。 かつて無償の愛情を受けたパピーウォーカーの元に戻り、看取られながら生涯を終える、 その一生に切なさと儚さを感じてしまう。  雇われ仕事かもしれないが、同年の『血と骨』を撮った監督とは思えない。
[地上波(邦画)] 5点(2024-08-17 23:24:08)(良:1票)
3.  グランツーリスモ 《ネタバレ》 
原作ゲームは4から最新作の7まで万年素人プレイヤーながらある程度やり込みプレイしている。 事実、プレイしているからこそ分かるツボを押さえた演出がいくつか見られる。  既にプレイしている人なら分かるが原作ゲームにはストーリーが無く、 新車購入→チューニング&セッティング→レースで勝利→賞金で新車購入→… という流れなので、トッププレイヤーが本物のレーサーを目指す実話の映画化にした方が最適解だろう。 そのため、原作をプレイしなくても万人受けしやすい作りになっていて、 モータースポーツ版『トップガン マーヴェリック』と称した方が分かりやすい。 本物志向のアクションに、結末も分かり切った超王道で熱すぎる師弟関係も共通する部分がある。 ソニーが製作に関わっているため、ウォークマンのステマに笑ってしまったが。  実話と言ってもヤンがGTアカデミーを卒業したのが2011年なので(PS3の時代)、 劇中で既にPS5やスマホが存在している地点で、独立したフィクションとして見た方が良さそう。 とは言え、モデルになった人物や実際にあったエピソードが多数含まれていて捻った展開を作り辛いこともあり、 ニール・ブロムカンプ監督作としては肩透かしを食らうのは確か。 アウトサイダーの逆襲と辛気臭い展開をすぐ飛ばすテンポ良い編集に監督のテイストを感じる。  面白い映画ではあるが、秀作以上かというと少し厳しい。 あまりに行儀が良い作りで物足りないくらいだ。 思考停止で楽しむのであればこのくらいが丁度良いかもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2023-09-15 22:54:36)
4.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 《ネタバレ》 
かなりの高評価でテレビアニメの映画化の枠を超えた名作なのは事実で、 ファミリー映画としてのエンタメを確保しつつも芯を持ったメッセージ性を放ち、 その後のクレしん映画の方向性を決めたのは周知のとおり。 だからこそ、クレヨンしんちゃんでなければならない理由があまり感じられず、 今後の作品群に息苦しさを与えた罪な作品だと思っている。  ひろしの回想からしても、'60年代~'70年代を生きていないとなかなか共感しづらい。 (本作が2001年製作で35歳とすると1966年生まれ)。 それにずっと歳を取らないサザエさん時空を生きている野原家にとって、価値観をアップデートしていかないと、 本作のメッセージが20年後30年後の視聴者に響かない可能性もあるし、 元来のギャグアニメのキャラを使っているからこその中途半端さがある。 もっとも当時のスタッフはそこまで考えていなかったと思うが。  "古き良き昭和"については意図的に悪い部分を排除したある種のディストピアとして扱っており、 ここらへんは実写映画版『ALWAYS 三丁目の夕日』よりも誠実だろう。 とは言え、自分にはあまり記憶には残らない、どっちつかずの間口の狭い作品に感じてしまった。  あれから20年以上が経ち、令和の今も閉塞感あふれるトンネルの中を我々は走り続けている。 イエスタデイ・ワンスモアのケンとチャコは令和をどう見ているのだろうか?
[地上波(邦画)] 5点(2023-08-15 01:12:43)(良:1票)
5.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 
息子が母のためにつき続けた"優しい嘘"。 外から見れば、東西統一のドイツは希望と共栄の象徴のように見えるが、 東側の当事者からしたら社会システムが大幅に変わり、職を失い、落ちぶれた人もいた。 反体制寄りの息子が気付けば東ドイツに肩入れしている様は皮肉とも言える。  2020年代、氾濫し押し付けてくるSNSのプロパガンダにうんざりしつつも、 片や本作における当時ならではのアナログな手法で誤魔化す辺りは可笑しくも切ない。 歴史の真実も息子の嘘も知りつつも、母は"こうあって欲しかった歴史"を受け入れていく。  「見たいものしか見ない」という分断が現代社会の陰影を濃くさせていく。 ただ、一番必要なのは巨大な存在に身を委ねない個人の器の大きさそのものだろう。 母の死により家族ははじめて一つの時代の終わりを迎えられた。 東ドイツ時代の郷愁を胸に、山積みだらけの問題を抱えながらも彼らは新しい時代を生きていく。  タイムスリップしたかのように『マトリックス』のTシャツを友人が着ているサービス精神といい、 『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』を見てると楽しめる小ネタあり。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-11-13 23:54:43)
6.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 
全編POV撮影をブロックバスターに織り込んだ(恐らく)最初の作品。  一般人目線で描かれるため、何が起こっているのか分からない、 真相も一切明かされない、その混沌が恐怖を煽る。 あれほどのパニックでも頑丈なビデオカメラに、大怪我している割に結構歩ける恋人は気になるが…  怪物の正体は最後までハッキリ見せない方が却って良かった気がする。 上書きされる前の幸せだった時のビデオ映像が後味の悪さを際立たせる。 何気ない日常が明日には一瞬で破壊されるかもしれない。 怪獣はありえなくてもそんなリアリティがどこかあった。
[DVD(字幕)] 6点(2022-09-29 14:32:53)
7.  グラディエーター 《ネタバレ》 
捻りもない王道なまでの復讐劇でストーリーは弱め。 その代わり、長尺を飽きずに見せるリドリー・スコットの演出力と、 ラッセル・クロウとホアキン・フェニックスの熱演、豪華絢爛な美術で見事に押し切る。 暴君を倒した英雄の滅びの美学が光る。 それを堪能する作品かと。
[DVD(字幕)] 7点(2022-06-08 22:38:26)
8.  クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 《ネタバレ》 
ミステリーとしては意外と本格的で、爪のミスリードは上手い。 面子と建前で雁字搦めの学歴社会への風刺と、効率ばかりに追求した結果、逆にAIに支配されてしまうシニカルさを提示しながら、 欠点も無駄なことも挫折も人格を形作る重大な要素として、焼きそばパン争奪マラソンに収束していく綺麗な終わり方。 青春の対象年齢を自分自身で決めていないか。 初期作品を彷彿とさせながらも、変に過剰になりすぎず、どの世代にも楽しめるという意味では佳品だろう。 自分にはそこまで刺さらず、あまり記憶に残らない方だが。
[地上波(邦画)] 6点(2022-05-18 14:41:25)
9.  グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 《ネタバレ》 
過去の出来事に深く傷ついたことから、自分を曝け出すことが出来ず、人に当たってしまうあたりはあるあるすぎて、自分の人生を生きることがどれだけ難しいのかを印象付ける。マット・デイモンと衝突しながらも父親のような眼差しで見守るロビン・ウィリアムズに、主人公とバカやりながらも才能を無駄にせず飛び立って欲しいと願うベン・アフレックが良い。本で世界を知っても、実際に行動しなければ世界を知ったことにはならない。でなければチャンスは永遠に失われてしまう。彼が再起して社会的成功者にならないかもしれない。でも、初恋の女性との未来はきっと明るいはずだ。
[地上波(字幕)] 7点(2022-03-24 22:45:45)
10.  クール・ランニング 《ネタバレ》 
作品のテンポ優先で登場人物の描き込みは説明不足に陥らないよう必要最低限に留め、楽観的で明るくて王道な作劇は良くも悪くもディズニーらしい。新たな挑戦を嘲る者たちが最後に彼らの健闘を称えるありきたりな美談も、ストレートで誠実だからこそ受け入れられる部分がある。見ている間、マイナス要素をあまり気にさせないのはジャマイカ特有の底抜けの明るさがあったからか。実話という免罪符で大幅に脚色しているため実話の映画としてはイマイチだが娯楽映画としては合格。映画をあまり見ていない層にも薦められる。
[地上波(字幕)] 7点(2022-02-12 19:09:24)
11.  CLIMAX クライマックス
ギャスパー・ノエにしては肩透かし。内容がないのは当然としてももっと工夫した作りにして欲しい。過激というよりはただ撮っている感が強い。麻薬や集団心理の恐ろしさに新しい切り口もなく、序盤のダンスシーンのワンカットが良かっただけに残念感が強かった。
[インターネット(字幕)] 3点(2022-01-31 23:25:50)
12.  グーニーズ
安心と信頼のスピルバーグブランド。少年たちの小さな大冒険をB級たっぷりにユーモラスに綴り、80年代だからこそできた大らかさが子供心をくすぐるのかも。当然ながらツッコミどころ満載で冒険譚的に要らない人物(兄貴とガールフレンド2人)もいるが、脚本を担当したクリス・コロンバスは後の『ホーム・アローン』に繋がる片鱗を感じさせる。大雑把で幼稚さを感じさせる設定に目を瞑れば、気軽にエンディングまで楽しめた。
[地上波(吹替)] 5点(2021-06-13 01:01:08)(良:1票)
13.  KUBO/クボ 二本の弦の秘密 《ネタバレ》 
CG全盛の時代に敢えてストップモーション撮影した姿勢と労力に敬意を表する。同時に日本の伝統文化を徹底的に研究し、美意識と心情を余すことなく汲み取っている(時代考証に詰めの甘さがあるが、ファンタジーとして目を瞑ろう)。世界観の作り込みでは完成度が高いが、全体のストーリーが弱く、序盤で村が滅ぼされる割に村人全員が生きていたり、仲間のサルとクワガタの正体も途中で予想できたり、(上映時間的に仕方ないが)伝説の武具も簡単に見つかってしまったりと、枚挙に暇がない。"物語"に対する考察と家族に関する個々のエピソードがすこぶる良かっただけにそこが気になってしまった。
[地上波(字幕)] 6点(2020-08-14 12:16:58)
14.  牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(236分版) 《ネタバレ》 
傑作と呼ばれる本作では、視聴者に含蓄されたインテリジェンスと人生経験が求められる。4時間に及ぶ淡々とした物語の中、見分けのつかない大量の登場人物と複雑な相関図が提示され、一度見ただけでは分からない不親切な作り。蒋介石率いる国民党が台湾に逃げ込んだ不穏な情勢が多感な少年少女に大きな影を落とす。その閉塞感にもがき苦しみ、徒党で脆さを隠そうとする不良少年の一人が如何してに殺人を犯したのか。小明は小四にとって心の拠り所だったかもしれない。だが、小明にとって小四もハニ―も他の男たちも恋人以上の関係を望んでおらず、現実逃避で"淡く付き合いたいだけ"である。救いのベクトルが違いすぎる。人が人に優しくするのはどこかで見返りを求めているからで、小明はそれを見透かしていたからでないか。相手の考えを変えさせそうとする男特有の傲慢さと小四の純粋さ、悪い偶然が重なって深い失望を、悲劇を生んでしまった。一見牧歌的で懐かしい'60年代が歴史の動乱に呑みこまれるように果てしなく冷徹。掴みどころのない深い闇にのめり込む。良い作品とは分かりやすく楽しいのも事実だが、本作みたいに心の中にどこか引っ掛かる意味では忘れられない作品になりそうだ。
[DVD(字幕)] 7点(2019-10-28 20:20:09)
15.  クロニクル 《ネタバレ》 
YouTubeで投稿された動画が"本物"と言われても誰も信じないだろう。投稿されることを前提にした撮り方であるため、話の繋げ方が強引に感じられたが、特殊能力を持ったことによる承認欲求の暴走が、"いいね"を提供するSNSとマッチする。主人公の恵まれない境遇に初体験の失敗がさらに追い打ちをかけた形で、人と社会からの肯定と無敵の人の誕生は表裏一体だなと思わせる。スパイダーマンで「大いなる力は大いなる責任を伴う」という名言があるように、思わぬ力(権力でもいい)を手にしたとき、どこに"生き甲斐"を見出せるか一度立ち止まる必要がある。
[DVD(字幕)] 7点(2019-10-06 23:01:18)
16.  紅の豚
宮崎駿最後の娯楽作品と言っても過言ではない。誰に向けて作ったわけでもなく、ほぼ自己満足に近いが、ドックファイトの躍動感と中年男のロマンがほとばしり、観客を楽しませることを忘れていなかった。一見幼稚でバカみたいなんだけども、「カッコいいとはこういうことさ」に感嘆させる説得力が本作品にはあった。品が、風情があった。『もののけ姫』以降、テーマ優先になりすぎて宮崎駿の暴走を補うかのようにジブリのメディア宣伝が過剰になり、"観客も満足させる"ことに視界が入らなくなったように思える。
[地上波(邦画)] 8点(2019-06-29 19:41:06)
17.  クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん 《ネタバレ》 
オトナ帝国や戦国大合戦と並ぶ傑作かと言われると否。確かに前半は良かったと思う。ある日突然ロボットにされたひろしが、尻に敷かれた現代の弱い父親像を投影して哀愁を漂わせるも、ロボットの力を最大限に生かして、家族から信頼と居場所を得ていく過程が快い。途中、身体が破損し首だけ助かって、「これからどう元に戻るんだ?」と思ったら、実は本物が別に囚われていた設定に意外性があり、ロボットは父親としてのアイデンティティーに葛藤する。しかしながら、後半でその良さは一気にかき消された。犯行を起こした黒幕のバックグラウンドにおいて、ひたすら三枚目に描きすぎて、五木ひろしネタも誰得で寒いとしか言いようがなかった。ただただ打ちのめされて終わり。なので「父親とはどうあるべきか?」は描けても、「虐げられた父親の救済」は描き切れていない、その中途半端さが残念に思える。
[地上波(邦画)] 5点(2019-04-28 00:28:02)
18.  グリーンブック
「これが作品賞?」というのが正直な感想。  130分間退屈なく見れて、『最強のふたり』を彷彿とさせるユーモラスなフィールグッドムービーなので、 映画をあまり見ていない方にも薦められるくらい万人受けしやすい。 100を超えるレビューで平均点8点前後維持し続けているあたり、本作が証明している。 粗はあっても脚本がよくできていることは素直に認めたい。  ただ、やはり白人特有の上から目線の綺麗事、一時的な融和アピールにしか見えず、 作品にあまりのめり込めない自分がいた。 イタリア系だからと同じ白人から差別される用心棒と、 黒人コミュニティから外れたピアニストのはぐれ者同士の話なので事情はもっと複雑だろう。 とは言え、そこまで踏み込まず、ただの"良い話"で終わっている。 予定調和の中に新しい驚きがないのが大きく、物足りなさを感じた。  ヴィゴ・モ―テンセンもマハ―シャラ・アリも正反対なキャラクターでありながら素晴らしい快演で異論はないが、 全体の完成度の高さでは『ROMA/ローマ』に作品賞を与えるべきだったし、 13年前の『クラッシュ』同様、単に変革リスクから逃げたミステイクとしか言いようがない。
[映画館(字幕)] 6点(2019-04-23 00:25:11)(良:2票)
19.  グラン・トリノ
タイトルからしてアクションもののように思えるが、 イーストウッドの映画とは思えない低予算で地味な人種問題ものだ。 それもアフリカ系ではなく、アジア系というあたりが珍しい。 暴力には暴力で応えてきた彼の代表作『ダーティハリー』シリーズのセルフパロディ要素がちらつき、 そんな老い先の短い男が不寛容の世界において最期の答えを提示する。 対立と交流を織り交ぜたオーソドックスな筋書きながら、重厚さを出しつつサラッとした味わいに、 イーストウッドの貫録と余裕が感じられる。 欠点も少なくないが、それでも許容してしまうような温かさがある。
[映画館(字幕)] 7点(2018-12-01 01:32:36)
20.  グリーン・ゾーン 《ネタバレ》 
ポール・グリーングラスには二つの路線がある。ボーンシリーズに代表される臨場感あふれるアクション作品と、ジャーナリスト出身ならではの高い再現度を誇る実録作品だ。その両方を持ち合わせたのが『グリーン・ゾーン』で、マット・デイモンが主演なわけだから、セルフパロディの匂いが仄かに漂う。ただ、「イラクに大量破壊兵器はなかった」という今更な結論を映画にしても、ネタの鮮度としては致命的だろう。そして、双方の路線が上手く機能せず、その個性を相殺してしまう皮肉な事態で、張り詰められた空気がどうでもよくなるくらい中途半端な映画になってしまった。
[映画館(字幕)] 4点(2018-10-22 20:06:03)
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