21. 50歳の恋愛白書
《ネタバレ》 またこの配給会社。タイトルが内容とまるっきり一致していません。本当、ダメダメ。さて、映画の中身は「あー、これは判るわぁ」と。人生の半ばをとうに過ぎ、枯れた環境で老いた夫と過ごす日々に自らもそのまま朽ちて終わってゆくような感覚、立場は大きく違えどワリと似たような状況にいた自分には痛いくらいに伝わってきました。主人公を精神的に束縛する自分の母親の人生、夫の前妻の呪縛、見失った未来。結局のところ、状況の変化が彼女を解放に導く訳で、彼女自身の積極的な行動によって抜け出す訳ではないのですが、まだ、終わりじゃない、っていう解放の物語に、少し前向きな気分にさせて貰いました。ただ、ウィノナ・ライダー、モニカ・ベルッチ、ジュリアン・ムーアが揃ってしょーもない役柄だったのが難点と言うかお笑いどころと言うか・・・。 [映画館(字幕)] 7点(2010-02-16 17:03:07)(良:1票) |
22. (500)日のサマー
《ネタバレ》 一人の男が一人の女に出会い、別れ、そして・・・。時系列を崩し、様々な映像表現を散らしてコラージュされた、シンプルな恋愛の心象の世界。1つの表現スタイルに囚われず、あえて散らかす事で多様化され、厚みを得た世界がとても刺激的です。主人公の心理に必ずしも同調はできなかった、いや、むしろイヤな奴に見えてしまう事が多かったので、見ていてやや不快な時間があったのが残念ではあるのですが、自分の経験との差異を思い起こす切欠になった点は良かったのかもしれませんね。『卒業』や『スター・ウォーズ』など、直接映像を引用している映画もあれば、表現面で引用されているかな?って映画も色々と思い起こされて、映画ファン的にも楽しみどころがいっぱい。キレイに決まったオチまで含めて、なかなかに面白い映画を見た、って感じでした。前述の通り、キャラを愛せない点でイマイチ褒めきれないのですが。主人公が若き日の貧相なラッセル・クロウって感じ。そして、私はあんまりラッセル・クロウが好きでないんですよね・・・ [映画館(字幕)] 7点(2010-01-12 21:10:32)(良:1票) |
23. GOEMON
《ネタバレ》 「こんなモン、金払って見られるかい!」とシネコンのポイントでタダで見たんですけど、意外なくらいに面白かったです。見る前は、どうせ安いCG合成で誤魔化したインチキ時代劇でしょ?って思ってたのですが、CGはそこそこ頑張ってましたし、インチキもここまで突き抜けるといっそ痛快です。アニメやマンガ的な事をやりたいんだろうなぁ、っていう感じがモロに出ていて、今時そのベタベタさはないだろうと思う部分もありはしますが(色調を単純に赤と青で分けるとか、「おかあちゃん、おかゆができたよ」ノリとか)ガシガシと動きまくる映像は大変気持ちいいです。もう少し引きの画が欲しかったですが、カメラ2~3メートル引いたら、製作費2~3倍になるのがCG映画ですからねぇ(足元のマッチムーブで手間数倍)。残念なのはね、船のところがクライマックスっぽくて、だけど、ええ~?そこからまだ続くのぉ?って。長いよ。しかもその続き、城突入のスペクタクルはいいんですけど、その他は無邪気な作家性の発露みたいになっちゃってて。そこでバランスを欠き、娯楽作から一般性の薄いオタク臭い異形の映画になっちゃった。ちょっと『Z』から『逆襲のシャア』あたりのガンダムノリ入ってないか?みたいな(佐助の存在がガンダムワールド的俗物ってヤツで)。同族としては嫌いじゃないですけどね。でも、もっと簡潔で痛快な映画でも主張はできたんじゃないかな、と。惜しいな。そうそう、ついでに。監督、ヒロスエのアゴ肉をアオリで撮るの禁止。ここは余計な合成の手間がかかってでも俯瞰気味に撮ってあげましょうよ。 [映画館(邦画)] 7点(2009-05-09 17:39:01) |
24. 子猫をお願い
《ネタバレ》 仲の良かった5人の女の子が、高校を出てそれぞれの生活を送るうちに、それぞれの現実にぶち当たり、立場や価値観の違いから繋がりを保つのが困難になってゆく・・・それはこの国でも全く違和感のない、等身大の物語でした。メイン3人(双子はまあ、マイペースに生きてますな)の違った苦悩、上昇志向のためには割り切って切り捨てなければいけないものがいっぱいあって、代わりに物で満たされる事で日々を生きるヘジュ、今の暮らしに決して満足はしていないけれど、それなりの生活の中に生きていて、どこかに向かって踏み出す事はできないでいるテヒ、そして夢見る事も難しいほどに現実が重くのしかかっているジヨン。誰もがこの3人の誰かしらに共鳴する部分を持っているのではないでしょうか。それぞれがなんとか人との繋がりを保とうとするアイテムとしてケータイが重要な存在となっていて、他者、家の外と繋がっている事をモノで実感して、自己の存在証明というか存在の確認ができている状態は、日本も韓国も一緒なんだなぁ、と思いました。まあ、この映画のお嬢様方はマナーあまりよろしくないですけど。平気で仕事中やバスの中でケータイで話してますからねぇ。物語はどん底まで落ちたジヨンを、前へ踏み出す決心をしたテヒが救う、という形で終わりますが、それはほんの少し状況が少し動いただけで、ハッピーエンドでめでたしめでたしという訳ではありません。ヘジュは結局それまでの日常を生きてゆくのでしょうし、ジヨンとテヒの二人の未来は何も見えてません。でも、彼女達の未来に期待したくなります。物語のバランスがいま一つ悪い気はしましたが(前半はヘジュにウェイトが置かれていたのに、中盤以降ジヨンとテヒの扱いが大きくなってヘジュはやや尻すぼみな感じ)、自然な存在感のあるキャストによって、若さの中に存在する不安感、不安定さがダイレクトに伝わってくる映画でした。 [DVD(字幕)] 7点(2006-09-08 20:13:15) |
25. 恋は五・七・五!
《ネタバレ》 物語的には「がんばれ!ベアーズ」「シコふんじゃった」「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「ロボコン」等でおなじみの例のアレなので、俳句を題材にしているという点では意外でも、物語としての意外性はまるでありません。みんなが段々と成長してゆく過程は欠落しちゃってますし、「バーバー吉野」のセンスを見ると、この監督のらしさではないような、無理してギャグに持ち込もうとしている部分が痛々しく感じられたりもします。そういうのは矢口監督に任せておけば?みたいな感じ。このテの映画お馴染みな類型的キャラクターも、あーあ、って。でも、それでも楽しく見られてしまうのは、役者がいいから。なんかみんないいカンジなんですよね。高校生に見えなかったり(もっと上だったり下だったり)グループとしてのまとまりはちっとも感じられなかったりしますが、そのぐちゃぐちゃさ加減が楽しく魅力的。若いっていいな、みたいな感じじゃなくて、バカでいいな、みたいな状態ではあるんですけど。学校併合の話だとか他の部の事とか、伏線放り投げっ放しはマズいでしょ、って気はしますが、私はどうしてもこのテの物語は嫌いになれなくて、楽しんでしまうので、点数も甘くなってしまいます。 [DVD(邦画)] 7点(2006-08-13 01:10:10) |
26. ゴールド
どんどんどんどん地下深くに潜っていって、外の光がぐんぐん小さな点になってゆく、その閉塞感が非常に上手く表現されている映画でした。ドラマ部分に大自然の雄大な開放感溢れる映像(そして流れるパニック映画御用達シンガー、モーリン・マクガヴァンの主題歌)を配しているだけに、なおさら対比されて地下金鉱の息苦しさが浮き出てきます。もっとも、ダイナミックな見せ場はクライマックスくらいで、そこに至る陰謀物語には面白味がなかったりするので、映画に集中し続けるにはちょっとツラい感じでした。ロジャー・ムーアは意外にも70年代パニック映画に見られる英雄像(超人ではなく、傷付きながらもなんとか危機を乗り切る生身の人間らしさ)をきっちり体現してましたけどね。ボンド臭さ爆発!という訳ではなくって。 [映画館(字幕)] 7点(2004-04-11 19:49:12) |
27. ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
モスラを出して、その設定が過去のモノを踏襲している時点で容易に展開が読めてしまい(ご丁寧に双子モスラちゃんですしねぇ)、物語の骨子になんの意外性もないのは残念でした。だけど、大島ミチル女史のサウンドは相変わらず重厚にして耳に心地よい旋律を奏でてくれますし、釈ちゃんからの主役交代も納得できない事もなく、メカゴジラは相変わらずカッコよく、予算のせいかCGが少なくなった分、かえって軽い画がなくなって好印象。前作と併せて一本の作品、という印象がしないでもないですけれど、近年ゴジラの中では頭をヒネる事も眉をしかめる事も殆どない、安定した作りの映画でした。悲しい事ですが、マトモなゴジラ映画って珍しいですからねぇ・・・。 [試写会(邦画)] 7点(2004-01-03 22:23:55) |
28. 殺しのドレス
《ネタバレ》 デ・パルマのフェティズムが程よく映像センスに変換されて、見応えのある映画になっています。もちろん、ぎりぎりの線上、このバランスがちょっとでも崩れると、「あーあー、やっちゃったよ」状態に突入するのが、この人のパターンではありますが。『サイコ』の露骨な引用、強引なストーリー展開、『キャリー』の繰り返しのラストシーン等、まあ、この映画も冷静に見ればやっちゃった感がなきにしもあらずですが、このウットリするようなカメラワーク、構図、カット割りは、やっぱりデ・パルマならではの世界。カメラに命を吹き込む事にかけては、天才と言わざるを得ません。 [映画館(字幕)] 7点(2003-12-03 23:46:34) |
29. 殺したいほど愛されて
《ネタバレ》 「完璧な殺人計画のはずだった。しかし、運命は彼に厳しい試練を与えるのだった・・・」とゆー映画ですが、かなりおバカです。ダドリー・ムーアが小さな体で嫉妬に駆られた男をどたばたがたがたと演じてみせます。そりゃ、この映画のナスターシャ・キンスキーみたいな美しい奥さんじゃ、気が気じゃないでしょうねぇ。判る判る。だけど、彼の記憶力、ってのはどーなっちゃってんでしょうねぇ。あそこまで計画と食い違っちゃってるとねぇ・・・。映画後半のダドリーの暴走具合には大笑いでした。音楽家でありながら、個性的な役者として笑わせてくれたダドリー、この世を去るのは少し早過ぎでした。 [映画館(字幕)] 7点(2003-12-03 23:27:33) |
30. コーリャ 愛のプラハ
子供をダシに使ったベタベタ感動系映画かと思ったら、子供とおじちゃんの関係を通して近年の東欧・中欧に訪れた大きなうねりが描かれてゆく、意外にも硬派な映画でした。バブルと不景気くらいのうねりくらいしか体験してない近年の日本とは違って、劇的変化を遂げていった世界で生まれるドラマは、ちょっと切なくて、そして温かくて。人は対立する民族や国を恨んだり憎んだりしますが、でも、子供に罪はないのですからね。争いなんかする前に、まず子供の目を見ろ、という事ですね。 [映画館(字幕)] 7点(2003-12-03 23:02:05) |
31. ゴジラ×メカゴジラ
《ネタバレ》 やたらに面白く感じてしまった理由を考えてみました。メカゴジラがカッコよかったから。釈由美子が主役だったから。大島ミチル女史の音楽がやっぱり燃えまくりだったから。戦闘シーンがハデだったから。「エヴァ」みたいだったから。上映時間が短くてダレ場がなかったから。宅麻伸の笑いが寒かったから・・・あ、アレだ。「ゴジラが脇役だったから」。単なる障害物として登場した挙句、メカゴジラにさんざんボコられて「今日はこのヘンでカンベンしといたるわ!」と去ってゆく姿に芸人魂を見た私なのでした。 [試写会(字幕)] 7点(2003-12-03 16:55:15)(笑:1票) |
32. ゴジラ×コング 新たなる帝国
《ネタバレ》 「地球が大変なんだよ、手伝ってくれよ」 「うっせーぞ!○すぞ!この野郎!!」 「いい加減にしな!」 「姐さんっ・・・うう、仕方ねえ」 という怪獣さんたちの会話がフキダシ無しでもしっかと見えてくる楽しい映画ね。前作から続いての昭和ゴジラ東宝チャンピオンまつり感。怪獣と通じる少女ってのは平成ゴジラ、平成ガメラの世界だけど。 ただ今回はお猿さん部分のウエイトが大き過ぎてねぇ。地下世界で画面に出てくるのがお猿さんたちばっかりで比較対象になるモノがない状態でではサイズ感が消失して怪獣映画じゃなくなっちゃうのよ。ただの『お猿の惑星』だわよ。異世界が主舞台でキャラのサイズの意味が無くなってるって点で『アントマン&ワスプ:クアントマニア』思い出しちゃったわね。 一作目から比べると随分スリムになってガシガシ走っちゃうゴジラは助っ人レベルなポジションなのが残念ね。なんだか猫っぽくなってるし(きっと誰かがローマのコロッセオって猫ベッドみたいじゃね?って思ったのね)。 余計な人間ドラマが極小なのは良かったけれど、お猿じゃなくてもっと怪獣見せてよね。元々『キンゴジ』の昔からコングさんを怪獣って呼ぶのは微妙だし。その点、シーモちゃんは魅力的だったけど。鎖に繋がれた氷のクイーン、そう、彼女ったら『アナ雪』のエルサだわね。ヒロインはシーモちゃんだったわ。シーモちゃん主演の続編希望。 [映画館(字幕)] 6点(2024-05-30 14:09:39) |
33. GHOSTBOOK おばけずかん
《ネタバレ》 ラストのガッキーの涙、アレって2006年に製作されたタイムリープもの、2013年に製作されたラブファンタジー、2本の邦画と全く同じシチュエーションなのよね(各作品のネタバレになるのでタイトル伏せるわ)。三番煎じ。そういうとこだぞ山崎貴監督。安易にアレ好きコレ好きって反映させ過ぎなのよ。いっつも他人の借り物ってカンジが強いわ。この人、オリジナリティで勝負!ってあんまり無いわよね。 とは言え『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』で一切信用できなくなった山崎貴監督作品だけど褒められるモノは褒めるわ。勿論お金払わず貯まったポイントで見たけど。 『学校の怪談』を期待しちゃうとかなり違うかしらね。感覚としては『地獄堂霊界通信』に『くちびるに歌を』と『妖怪大戦争』(2005年版)混ぜたようなカンジかしらねぇ。『地獄堂霊界通信』、見た人ほとんどいないと思うケド。 映画は雑な作り。映画の中に存在してるハズの作品世界のルール、法則、それをちゃんと説明できてなくて、わざわざ神木くんがゴーストブックについて説明し損なう描写を入れてるのだけど、そういう問題でなく冒頭から延々と動機も目的も世界の成り立ち、カタチも語られないために前半はひたすらに空回りした混乱劇が続く状態で。 子供たちのキャラは良いけれどセリフは聴き取りづらいし演技のタイミングがぎこちないのよね。異世界に気付くのやたら遅いかと思うと馴染むのやたら早いわ。 登場するゴーストもなんだか一貫性、統一感に欠けてて古典的なモノやらオリジナルなモノやらモンスター系やらバラバラ。毎度のCGっぷりもまあ相変わらず。 ただ、それでも子供向け実写邦画として良い在り様を示していると思うの。夢と冒険、わくわくハラハラ、そしてほのかな恋。そういうのはアニメに任せておけばいいってモンじゃないでしょ? アニメは超人、天才の物語ばかりだし(それはマンガの実写化にも及んじゃってるけど)。等身大の子供の物語って必要だし、これはそこをちゃんと押さえてると思うわ。個性的な普通の子供たちが織り成す子供の世界、そこに大人のガッキーが良いアクセントになって絡んで。ガッキーはホントに魅力的ね。コミカルっていうかそこまでやっちゃう?みたいな状態だったりするケド。 なんだかんだと楽しい映画になってるので夏休みのお子様たちと親御さんにお薦めね。 [映画館(邦画)] 6点(2022-07-24 19:00:42)(良:1票) |
34. ゴーストバスターズ/アフターライフ
《ネタバレ》 『ゴーストバスターズ』は全部リアルタイムで見てきてるのだけれど、好きなのは黒歴史扱いされてそうな2016年版だけなのよね。1作目は笑えないコメディとちょぼちょぼなスペクタクルって印象しかないわ。 でも今回の映画はとってもワクワクしたし感動したのね。1作目のことを大切にして、1作目への愛に溢れていて。1作目から37年を経た時の重さがリアルに伝わってきて、自分が生きた年月と重なって実感を伴って感慨深くて。 1作目のあのクルマ、あのガジェットの数々、懐かしい日々、還らない人・・・。音楽もエルマー・バーンスタインが創造した世界にきっちりとオマージュを捧げていて。深い深いノスタルジーと感傷の世界へと誘われていったわ。 でもちょっと待った。この映画自体、なんか新しいコトしてる? 出てくるモノは1作目で創造されたモノばっかり。登場人物たちは1作目のガジェットを使うだけだし、敵は1作目のゴーザ、門の神、鍵の神、緑の大食いのアイツとマシュマロマン。1作目のネタばかりで構成されちゃってるのよね。 オリジナルなのはドラマ部分くらいなのだけれど、それも1作目のキャラクターから発展させたものだし、1作目のオマージュばかりに忙しくてこの映画独自の魅力はなんだかとても頼りないモノになっちゃってるのね。せっかく主人公の女の子は魅力的なのに、彼女と彼女をめぐる人々のドラマはスカスカ、お母さんもお兄ちゃんも先生も仲間もあまりちゃんと活躍できてはいなくて、クライマックスの肝心なところはやっぱり大々的ノスタルジー!って状態。 これ、1作目が存在しなければ一切何も成立しない映画なの。せめて次世代へのバトンタッチをきっちりちゃんとしておくべきなのだけどラストシーンもあんなでしょ? 懐かしさに感動した、感傷的になった、でもそれだけでいいのかしら? 映画もアンタも共にトシ取ったし、みんなで一緒に棺桶にGO!みたいな感覚になっちゃったわよ。 [映画館(字幕)] 6点(2022-03-17 15:05:52) |
35. 心が叫びたがってるんだ。(2017)
《ネタバレ》 実写化に伴ってアニメの記号的表現こそ抑えられましたが、でも基本は全く同じ。ベタ移植って感じで、もう少し違いがあっていいんじゃないかと思いました。 映画を見ながら忘れていた物語をどんどんと思い出して先追いしてゆく、そこには新しい作品を見ているって感覚が極端に欠如していて。実写になったがゆえの魅力って、秩父の風景以外あまり感じられませんでした。役者さんがアニメのキャラに負けてるとは思いませんが、キャラをトレースしているように思えてしまって、もっと独自の個性が出せたんじゃない?と。撮り方やライティングのせいか、マイナス方向の個性がたまに出てしまってる事はありましたが。 また、忠実であるがゆえにアニメ版の欠点をそのまま引きずってる箇所もあって。クライマックスのミュージカルと坂上&成瀬のドラマとがあまり上手くシンクロしていないとか、その時の坂上&成瀬がラブホで停滞し過ぎていてタイミング的にどう考えても舞台に間に合わないだろ、とか。坂上&仁藤の気持ちってアニメ版でもあんなに唐突だったっけ?とか。 あと、アニメの記号的表現は抑えられた代わりに、青春映画の記号的表現があるっていう。チャイム鳴ってるのにのんびり登校してくる生徒達。青春映画のチャイムって学校の記号的表現に過ぎないんですよね。 それから成瀬がスカートをぎゅって掴む表現は『近キョリ恋愛』のヒロインと一緒。監督の引き出しの中身が見え始めたかな? で、今回もアニメ版同様、それでもテーマ的な良さがあって、だから決して悪くはないんです。言葉によって傷つき(実は傷付けたのではなくて)閉ざされたヒロインの解放の物語は間違っちゃいないんです。それがもう少し洗練されていれば・・・二度目の映像化なのですから、その機会はあったと思うのですけどねぇ。 [映画館(邦画)] 6点(2017-07-23 19:18:54)(良:1票) |
36. 恋妻家宮本
《ネタバレ》 役者がとても良くて、登場人物ひとりひとりに気持ちを乗せる事ができて。特にドンが良かったなぁ。ドンの抱えた哀しみが響いて。 でも残念ながら、映画としてはあまり褒められない状態で。映像と脚本と音楽とが、全部説明口調というか解説風というか。面白味を狙っているつもりが全部説明になっちゃってる映像なんかは、あー、やっちゃったねぇ、ってモノがたっぷり。 完全な一人称映像で始まりながら、次のカットでその存在が消滅しちゃうという冒頭からして間違っちゃってるのですが(いや、あのファーストカットこそは映画の「入口」で観客を迎えてるって言いたいんでしょうけれど)、問題はたとえば映像とモノローグと文字と音楽とが全て同じ事を語るという、そのハイパーおせっかい表現法。本来、無言の演技だけで構成して表現できるであろう事柄に気持ちを表すモノローグを入れ、更にそのモノローグを具体的に表す文字を画面上に登場させ、音楽も気持ちを語るという。そこまでしなければ理解してくれない誰かを対象に映画を作らなければならないと思うのは、強迫観念みたいなものなのでしょうかねぇ。 状況によって変化するライティングとか特定のセリフにかかるエコーとか、お節介、やり過ぎ感がハンパないです。 対象として想定される観客のレベルを下げる事によって作品のレベルまで下がっちゃうと思うのですが。 阿部寛と天海祐希のコンビは眺めているだけで十分絵になっちゃうわけで、そんなに色々と盛ってあげなくちゃいけない存在ではありませんよね。「語らなきゃ想いは伝わらない」ってお話ではあるのだけど、それは映画そのものの物理的現象とイコールって訳ではない筈です。 でも、天海祐希が停電した駅の待合室でお弁当を食べるシーンを見て、かつて邦画に食事シーンが多い事に苦言を呈していた人がいた事を思い出しましたが、食事シーンこそは邦画の大きな魅力の一つなんじゃないかな、と思いました。このところ『エミアビのはじまりとはじまり』『この世界の片隅に』『サバイバルファミリー』そしてこれと、邦画の印象的な食事シーンに出会う事が多いな、って。 [映画館(邦画)] 6点(2017-02-19 21:57:46) |
37. 高慢と偏見とゾンビ
《ネタバレ》 私はよく「もしも小津作品にゾンビが出たら」とか夢想したりするんですが、コレはそういうノリを本当に形にしちゃった小説を更に映画にしちゃったような作品で。 ジェーン・オースティン作品と言えば19世紀の貴族階級の人々が惚れたハレたする、キラキラした恋愛模様を描いたオトメな世界、そこにゾンビを置いたらどんな面白さになっちゃうんだろう、って感じですが、どうもハンパに妥協しちゃった映画という感じで、もうひと捻り足らない状態のように思いました。 ジェーン・オースティンの映画化作品としては『いつか晴れた日に』『Emma』『プライドと偏見』がありますが、それらにあったオトメな色合い、イギリスの陽光、緑、田園風景、空、人々の優美さ、そういう成分が足らないんですよね。代わりにB級映画の安いノリがジワジワと侵蝕しちゃっているような風味で、それはガッカリだなぁ、と。一方でゾンビものとしてはごくごく控えめな描写で。あの美しい風景の中に恐ろしくおぞましいゾンビが置かれたとしたら、そのコントラストはどれだけ異様でステキな事でしょう、と期待したんですけどねぇ。 ヒロイン姉妹が中国で修業した武術の達人であるという設定も、あまり面白い画にできていない感じ。そこはジェーン・オースティン風味とハッキリ区切った武侠映画ノリで見せて欲しかったのですが、作っている人々にあーんまりそういう部分での拘りが無いらしく、ジェーン・オースティン、ゾンビ、中国武術、ついでに日本の剣術がコントラストを描く事なく雑多に置かれている状態でした。ジェーン・オースティン好きでホラー好きでアクション好きな人材なんていうのを求めるっていうのは贅沢なハナシなんでしょうかねぇ。 役者は良かったと思います。リリー・ジェームズとサム・ライリーの整った顔立ちはジェーン・オースティンワールドに相応しく、でも、だからこそそれを活かしきれていない脚本や演出が残念でした。 それでもジェーン・オースティン世界がどういうモノなのかを知っていればこそ楽しめるノリは随所にありはしましたが。パロディ映画としての域から出ておらず、そのもう一段上を目指す視点が欠けていたんじゃないか、そんな気がしてなりませんでした。 [映画館(字幕)] 6点(2016-09-30 20:24:26) |
38. 心が叫びたがってるんだ。(2015)
《ネタバレ》 毎度の記号化されたアニメの言語で描かれていて、それが残念です。 心情や状況は過剰なまでにセリフで解説され、安直に複数のキャラの心の声が響き、説明のための映像が羅列され、アニメーションはただ物語の補助のために機能し(タマゴなんていないって事はセリフではなく映像でそこまでを描ききってくれないかな)、音響は必要な音だけしか鳴らず。特に音響監督は何やってたんでしょうねぇ。極端に環境音が欠如していて、ただセリフだけが聞こえる不気味な静寂が多くを占めていて。予算と時間がないとか、そういう話? 記号化されたアニメの言語って書きましたけど、これ、今のアニメがマンガを起点にしてそれをトレースする形で映像作りをした結果としてのアニメ言語なんですよね。マンガの表現がそのままアニメの表現になっていて、オリジナル作品でありながらマンガ的表現に支配されている、それが問題点。キャラの心の声は普通の映画ではあまり使いませんよね? それを複数のキャラに当たり前のように使ってしまうのはその表現法がマンガを起点としているがゆえ。 さて、でも物語は意外と楽しめました。いや、楽しめたというと語弊があるかな。意外とクるものがあった、みたいな? 心を病むという状態、そこから解放される事、その闇や痛みに向き合う話で。 その、健全な精神の持ち主には本来理解できない、ウザい存在に対していかに理解を示すか、いかに共存するかを描き、また、病んだ人間がいかに他者と生きる道を探れるかを描き、更に病んだ人間を通して自分の中の闇を見つめ、他人の闇を認める事を描き。 現実の世界はこんな都合のいいお膳立てをしてくれる訳ではありませんが(異様に理解力のある人々が解放のための環境を構築してゆくそれは、まるでトーストを咥えた美少女が曲がり角でぶつかってくるが如き話ではあるのです)、これを単なる絵空事として片付けられてしまうとツラいものがあるわけで。 クライマックスのミュージカルの内容とドラマの進行とをシンクロさせる構造など、なんとなく巧くいけそうな部分もあって、でもそれも凡庸なアニメ言語によって微妙なものになってゆくのが、安易に全否定はできないものがあるだけに惜しいなぁ、と思うのでした。 [映画館(邦画)] 6点(2015-09-29 23:05:17)(良:1票) |
39. ゴースト・エージェント/R.I.P.D.
《ネタバレ》 「その2つの作品が混じったような映画」という前イメージから期待する(あるいはあまり期待しない)作品、そのままなので、納得して劇場を後にするという。 物語的にも登場人物の魅力も、予告編から予想される以上のモノはあまり見せてもらえない感じです。 っていうかライアン・レイノルズはパッとしないかな。もう少しハジケちゃってていいと思うのですが、ジェフ・ブリッジスとケヴィン・ベーコンの前では霞んでも仕方ないってところですかねぇ。 そのベテランとてジェフはまだコメディ演技を見せていて面白いのですが(帽子や女性の足首、そしてコヨーテに対するこだわりっぷりが笑わせてくれます)、ケヴィンは最近のお馴染み悪役ケヴィンまんまですし。 キャラ的に面白かったのは有無を言わさぬ姿勢でこの映画の最上位に君臨する上司役メアリー=ルイーズ・パーカーですか。あらゆる点でそこそこなこの映画の中にあってビジュアルといい演技といい、その個性が際立っておりました。 それから映画自体はコメディなのですが、愛妻を残して逝ってしまったというところが物語の重さを生む原因になっていて、それが最終的に完全に救済されるところまでいっていないのがちょっとひっかかりました。 ゴーストはモトは人間なのでそーんなにバリエーションがあるわけではなく、敵役としては今一つ魅力に欠けました。バトルシーンそのものは面白いのですが。 良かったのはクライマックスのVFXですね。襲い掛かる渦巻、どんどんと崩れてゆくビル群、その間を縫って爆走する車。結構ハデなスペクタクル映像。 何か物足らない、もう少し色々と見せて欲しいところでサックリ終わるファーストフードみたいな映画、多くを望まず、ただその時間だけそこそこ楽しめればそれでいい、心にそんな余裕がある人向けっていう映画でした。3D料金まで含めてフルプライス2000円以上を払うだけの価値があるか?っていうと、それはさすがに・・・なのですが。 [映画館(字幕)] 6点(2013-11-05 22:27:42)(良:1票) |
40. コクリコ坂から
《ネタバレ》 キャラの視点が気になってしまうんですよね。この映画、みんな大抵、瞳孔がセンターに存在していて顔ごと体ごと動かす事が視点移動になる状態。そして、その視点が見るべきところから微妙に、あるいは大きくズレてたりして。アニメにしろ映画にしろ、その目がどこを見ているのか、というのはとても大事なワケで、『ゲド戦記』に比べるとかなり改善してはいるものの、まだ気になりました。それはこのアニメのやや平面的な空間認識に起因しているようでもあって。人物が重なりあうシーンでは平べったい二人がぺったりとくっついているような感じを受けてしまう箇所があって、平面で見つめ合う二人の表情を一度に見せるためには不自然な視線も仕方ないというマンガ的表現法が根底にありはしないかな?って。的確に空間認識をしてそれをどう映像化できるかが課題ですかねぇ。映画は舞台となった時代に実写で撮られていたらさぞかし魅力的だったんじゃないかなぁ、って感じがしてしまいまして。アニメで魅力を出すには、もっともっと描き込んでゆかないとキャラが薄く感じられてしまうなぁ、と。また記号化されたジブリアニメの法則で描かれてますしね。毎度の安心な、しかし平板なタッチ、ジブリの良心と言うよりも、ジブリの限界が透けて見えてきてるんでしょうか? 見てからしばし時間が経って、印象に残っているのは最早絵描きのメガネのおねえさんだけ。他は表情もあまり思い出せません。まあ、それでも、今回はイラついたりせず退屈もせずに見られたので、まあまあ、良かったんじゃないでしょうか。昭和30年代の終わり頃の神奈川の雰囲気、ステキに表現されてましたしね。 [映画館(邦画)] 6点(2011-07-17 14:15:33)(良:1票) |