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1.  午後8時の訪問者
そもそも医者になって人を助けようという人間だからなのか、現代日本人よりずっとずっと良心が強くて人道的なヒロインだと思った。  彼女と同じ立場に立った時、「ドアを開けなかったのは仕方がない」「殺したのは自分じゃないし」「運が悪かっただけさ」と、カケラも罪悪感を抱かない日本人の方が多いんじゃないか。 そこには移民への偏見が絶対にあると思うし、「他人のトラブルに関わりたくない」「責任をとりたくない」という事なかれ主義もあるだろう。「自分と自分の家族だけが無事ならそれでいい」という身も蓋もないエゴイズムも強いと思う。まぁそれは、登場する他のフランス人にも言える事なんだけど。  それに比べてこのヒロイン、自分のしたことの結果をしっかりと引き受け(必要以上に引き受け)、将来の選択まで変えてしまうのだから大したものだ。  しかし…頭がよく行動力もあるのはいいのだが、「そんなよくわからない人間を部屋へ入れるのか!」と、同じ女性として観ていて怖い場面が多々あった。 まあ自分の家ではなく診療所なんだから当然なのかもしれないんだが、それでも女性一人の部屋へ見ず知らずの人間を招き入れるというのは、かなり危険な行為なのではないか。…って、医者だから仕方がないのか…。せめて入口に警備員にいてほしい…。  序盤で若い男の研修医がプイっとムクれて診療所を出て行ってしまうのだが、フランス男は面子にこだわりすぎなのか、打たれ弱すぎなのか、なんかこじらせてて、面倒くさーって思ったら、別にちゃんと理由があったのですね。 まあその理由も、ヒロインが一生懸命謝って話しかけて何度もアプローチしてようやく話すのだが、そこまでしないと話もできないなんて、やっぱりフランス男は面倒くさーって思っちゃいました。  という感じで、観ていて色々と考えさせられる映画です。 地味です。でもだからこそリアル。  機会があったら、ぜひ観てもらいたいです。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-06-12 20:37:56)
2.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
「エイミー」という人間の存在価値は、彼女が産まれる前からすでに決まっていたワケで。そんな重いものを背負い、それを肯定し利用して社会の中で「選ばれた人間」として生きてきた彼女に、ちょっと上昇志向があるだけの平凡なイケメン男がかなうわけがない。  エイミーは、自分を愛する事を止め、無職のクズ男に堕落して自分を失望させ、自分の人生をメチャクチャにした夫を、許さない。自分の人生をかけて破滅させようとする。あまりにも激しい完璧主義者の愛情の裏返しに、観ているこっちはビックリだ。 そして一転。 夫がTVで自分あてに「愛している」と熱烈なメッセージを贈ったことで、理想通りの完璧な夫婦像を作ることが出来る、夫は逃げられずに必ず協力するはず、と形勢が変わったと見るや、殺人すらいとわずに夫の元へ帰る。 夫が自分を内心で憎み恐れていようが、そんな事は彼女に関係ない。エイミーにとって一番大切なのは社会的な形。世間から理想の夫婦として見られること。そのためには、夫だけでなく子どもすら利用する。だって自分もそうやって親に利用されてきたんだし。「結婚ってそういうものでしょ?」 ある意味サイコ? エイミーの平凡な容姿や知性、落ち着いた物腰がそうは見せないが、中身は多分サイコパスすれすれ。そんなエイミーを生み出したのは、彼女の親と世の中である、という所がなんとも言えない。 まああそこまで行かなくとも、エイミーと同じ価値観で生きている人間は多い。夫の剛腕弁護士もエイミーと同じタイプだからこそ、エイミーが帰ってきた現状をハッピーと片づけ、「彼女を怒らせるな」と忠告して去って行ったわけで。夫がこの弁護士のようなタイプだったら、エイミーともっと上手くやれただろう。実情がどうであろうと対外的に仲良し夫婦を装えた。しかしそういう男ではなかったからこそ、エイミーは彼と恋に堕ち、結婚までしてしまったのだ。夫にそこまでの能力がなかっただけかもしれないが。まあ、人の心はなかなかうまく行かない。  観ている側によけいな情報を与えず、ぐいぐい引き込んでいく脚本はスバラシイ。話の行方がどう展開していくのか、結末がどうなるのか、観終わるまでわからないなんて久々の映画。後味はあまりよくないですが、面白かった。…にも関わらずこの点数なのは、登場人物に魅力がないのと共感できないのと「一度見たらもういいや」と思ってしまうため。バッドエンドにしても、一面の真実みたいなものを感じさせてほしかったな。
[DVD(字幕)] 6点(2016-05-20 21:08:41)(良:2票)
3.  告発の行方
日本の映画…たしか田中裕子さん主演のレイプものでも、この映画と同じ問題を扱っていましたね。 なぜレイプ裁判では、被害者の女性の人となりや私生活が問題になるのか、という。男性に都合よく、女性にだけ厳しい性規範をかせ、何かあると「性的にユルい女だから仕方がない」と男性の責任を棚上げし、性被害をすべて女性のせいにする社会の風潮に対して異議申し立てをしている。  性的に奔放であろうと、AV女優であろうと、もっと言えば売春婦であろうと、当人が「NO」と言うのを聞かずに無理にセックスしたら、それは正真正銘レイプなのです。そんな当然のことがわからない人は、勝手に人間をランク付けし、ランク下の人間の人格を認めない、という歪んだものの見方をしているからなのだと思う。  これはいじめの問題にも通じている。 「いじめられるのは、いじめられる側に問題があるのだ」という主張をする人間は、「性被害に合うのは短いスカートをはいているからだ」と同じことを言うだろう。たとえ性格に問題がある人間でもいじめてはいけないし、露出が激しい服装をしていても痴漢してはいけないのだ。 それがわからない人間は、たぶん自分の責任を取りたくなくて、常に周囲や他人のせいにしてばかりいる思考回路の持ち主なんだと思う。  クライマックスのシーンは、あまりにも非道で、人間の(特に男の)愚かしさがリアルに描かれ、見ていてとても気分が悪いものだった。  しかしあそこまで描いたからこそ、問題提起の映画となったのだろう。この映画を観て、問題のシーンをどう感じるかで、人間としての質が問われると思う。
[地上波(吹替)] 6点(2016-03-23 22:57:52)
4.  コレクター(2012)
「デクスター」でおなじみのジェニファー・カーペンターが出ていたので、観てみた。が、こ、これは…(汗) 王道のサスペンスかと思ったら… どんでん返しのラストで観客を唸らせたろ~としたのが、すべて裏目に出た感じ。 はったつもりの伏線が意味をなしてないし、登場人物たちの関係性が不自然だし、第一犯行の動機や犯人に追従した人間の動機が説明不足で、意外な展開というよりはご都合主義な展開にしか感じられなかった。 そのままオチへ雪崩れていくのだが、不自然さと説明不足のせいで感情移入はまったくできず、ただただ「はぁ、そうスか」としか思えず。  たとえありきたりなストーリーでよくあるサスペンスになったとしても、ラストでどんでん返しをするべきではなかった。意外性を狙ったせいで、映画の質を落としたと思う。 制作側は「ソウ」のような映画を作ってみたい、と思うものなのかもしれないが、それにはクオリティの高い綿密な脚本と俳優陣が不可欠だ。この映画はどれもが中途半端。「実話が元ネタ」と宣言すれば観る側も興味を持ってくれる率が高いわけだが、そーゆう小手先だけじゃダメなんだよな…。才能があってなおかつ職人気質の監督でも連れてこない事には難しいのではないかな。俳優たちも皆上手に演じてはいるものの、心理的な奥行きがない。…まぁこれは脚本の問題かもしれないが。  それにしても、これは毎回思う事なのだが、「実話が元ネタ系映画」を作るのなら、実際の事件のショッキング部分だけを描写するのではなく、実話ではかなわなかった犯罪の全貌や犯人の心の闇や被害者の心の傷をこそ描くべきではないのか? ショッキングな部分を野次馬的に取り上げ大げさに描写することは、事件にかかわった人たちの心を傷つけるだけではないのか。 物語を作る側として、それはあまりにも金儲けに走り過ぎではないのか。  そういった自覚と反省を持って作ってもらいたいのだが…。それがかなわないのなら「実話をもとにした」などと一切書かない事だ。それが作品を作る人間としての矜持だと思う。 大いに反省していただきたい。…無理だと思うけど。
[DVD(字幕)] 4点(2015-12-09 22:19:46)(良:1票)
5.  GODZILLA ゴジラ(2014) 《ネタバレ》 
ああ、これは怪獣映画なんですね。そりゃそうだ、なんたって「ゴジラ」ですもんねぇ!!  …と鑑賞後ひどく納得したくらい、ストーリー性はなかった。  まず、父と息子の2代をゴジラの謎に絡めて描こうとして、失敗。次に、怪獣による世界壊滅危機の中で離散した息子一家を描いてはいるが、すべてが中途半端で薄っぺらく、だからなんだ?という感じ。 だいたい父親と亡き母親はゴジラの謎に絡んでるかもしれないが、息子は単なる軍人で爆弾処理係だ。ゴジラとまったく関係ない。 関係のある父親が死んじゃったら、あとは怪獣を倒すために息子が軍で働きだす、というシナリオがとってつけたようで、その不自然さを誤魔化すためにかかげた「家族愛」が、これまたわざとらし過ぎだろう。  こんなどーでもいいシナリオでゴチャゴチャやってるより、もっと早くゴジラを出してくれよ。 悪い怪獣を倒すためにいきなり途中で出現して、チャチャッと倒して、あっという間に海へ還ってしまったゴジラ。あまりの見せ場の少なさにガッカリです。  怪獣映画として観るなら、怪獣の見せ場が少なくて物足りなくて不満。 人間ドラマのあるパニックものとして観るなら、人間ドラマが下手すぎて陳腐すぎて不満。 かなり中途半端な作品だと思いました。  ただ、海へ還っていくシーンとか、役に立たない芹沢博士(日本人)だかに、一応原作へのリスペクトは感じました。  もっと派手に怪獣だらけでギャース!と責めたらよかったのに。アメリカ人の中に眠っていたコアな怪獣映画ファンが掘り起こせたかもしれないのに、と思いました。残念。  
[DVD(吹替)] 5点(2015-03-14 22:47:20)
6.  コンスタンティン
映像と雰囲気はいいんですが、ストーリーはイマイチ。展開の全てが想定内。意外性ナシ。 登場人物達のキャラクター設定はいいんですが、その設定をまったく生かしきれてない。 ヒロインは刑事である必要性、ゼロ。双子である必要もほとんどナシ。 キアヌの助手の少年の存在も、オマケすぎ。そもそも、あのキアヌのキャラで助手がいるのは不自然。 キアヌがヘビースモーカーという設定は、緩慢な自殺を選択しているという意味であろうから納得なのですが、肝心のキアヌが全然スモーカーに見えない。タバコの吸い方、ヘタ。この人、ホントは健康ヲタクなんじゃ‥(知らんけど)。 まぁ元からキアヌはキムタクみたいなもんで、何演じてもキアヌにしか見えないので、別の俳優を使った方がよかったんじゃないかなぁ。 なんちゅ~か、日本の少年漫画を読んでるみたいでした。 この映画、ターゲットがティーンならわかるんだけど、大人が見たら退屈するかも。
[DVD(吹替)] 5点(2011-10-30 00:33:25)(良:1票)
7.  ゴシカ 《ネタバレ》 
観ている間は退屈する事もなく、それなりに面白く観れました(ホラーではなくサスペンスとして観るなら、ですが。幽霊が怖くないのが致命的。) でも印象には残らないし、幽霊やストーリーの矛盾等について考えるほどの熱意も残らない。 及第点は取れているけど、突出したものはない、って感じかなぁ? あ、役者陣はやや突出していると言えるかも。 ハル・ベリーとペネロペ・クルス、よかったですよ。ひとりだけ不可ですが。ハルの旦那役、もっとそれなりの人に代えてくれ。まぁ見せ場はハルとのキスシーンと殺害シーンの回想(ちょこっと)だけですが。 むしろロバートに夫役をやらせればよかったのでは?あ、ダメ?汚れ役すぎる?(笑)  及第点が取れていて役者達が頑張っているだけに、もったいないな、という感じがします。 ホラーにするならもっと徹底的に不条理な幽霊設定にして主役も含めてボロボロにするべきだったし、サスペンスにするなら幽霊は邪魔っけ。いなくてもヨシ。 怖すぎるホラーは苦手だけど少しのスリルは感じたい、そして気軽に観れて後味の悪くない映画を観たい!という人にオススメします。
[インターネット(字幕)] 6点(2010-10-23 01:24:47)
8.  ゴッドファーザー 《ネタバレ》 
10年ぶりくらいに観た‥‥やはりイイものはイイ!です! 内容は珍しくない「マフィアの抗争もの」ですが、叙情的で美しく、かつ奥深く人間や家族というものが描かれていて、まさに「これが映画の王道!傑作だ!」と胸張っていえる作品ですね。 しかし、昔観ていてわからなかったゼスチャーの意味(下ネタ系)とかがわかっちゃった自分に、ああ年月は流れているのだなぁ‥としみじみ。アル・パチーノの若さにはうっとり。(それにしても、すごい目ヂカラ!) マーロン・ブランドの老けた演技は、まさに晩年のマーロン・ブランドそのもの(ってまだご存命ですね。失礼)、スバラシイ。 他にも下ネタだけじゃなく、昔は引っかからなかったのに気になる箇所がいろいろ。「マイケル、逃亡先でとっとと結婚してるじゃん。ダメじゃん。もし彼女が死ななかったら捨てたんかい!それとも愛人にしちゃったり?でも英語がわからないアポロニアが妻としてNYに来てた方が、夫が悪事を働いててもわからないだろうから、ケイよりも夫婦仲は安定して幸せで、嘘をつかなくてすむから罪悪感や葛藤もないし、その方がよかったかもね」など等、くだらな~い事を考えてしまいました。やはり月日は流れたのだなぁ‥‥。
10点(2004-03-21 03:13:08)
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