1. コンタクト
面白い。「地球外生命体からの通信の探知」、構造改革を目指す先進的感覚のワガ国では絶対に研究費は下りないテーマ。母を喪った少女エリーの理数的才能を注意深く薫陶した父の突然の死と醸成された宇宙への確固とした志(いつか懐かしい彼らに会えるのではないか、という初期の幼い希望から生じた)、約束された気鋭の女流科学者としての未来を擲って挑み、挫折し、研究費の獲得に駆けずり回る苦しみと嘲笑、ひとたび成功の端緒を掴むや、急に前面に出たがる上司や政府関係者らの厚顔に耐えつつ(これはなかなか出来ない!)、メッセージの解読に取り組むひたむきさ。癌に冒されたハッデンもまた彼女とその才能を通じた人類の未来に駈けたのだ。マシンメッセージの解読、マシンの破壊と再建、その挙げ句招いた生命体すらワームホールは彼ら自身が見出した時「既にそこにあった」というミステリアスな開示、証拠無き帰還への批判に抗するものは、ただ科学者としての良心のみ。宗教と科学との対立も含めて、この宇宙の何処かに仲間がいる...「私達は決して孤独ではない」と意識するエリーの最後の静かな笑顔。現実には亡きセーガンの意志を継いで妻がプロデュースしているし、冒頭のエリーの眼に回帰するシークエンスも魅せた。エリーの人生を借りる形を採りながら、それはあくまでも仮の形であって、ともすれば己の事のみに日々汲々とする範囲に留まる私達の眼差しを久しぶりに遠ざけて、大きなテーマと真っ正面から取り組んだ作品だと思う。確かに日本文化の捉え方はお粗末だが、日本ならああいう精密装置がちゃんと造れるというイメージを持ってはいる様だよネ。 8点(2001-07-29 20:26:18)(良:1票) |