3. E.T.
《ネタバレ》 じつに38年ぶりの鑑賞です。これが、ほぼ最初の洋画体験だったし、個人的に特別な映画でもあります。当時は、E.T.のお人形や、ヘンリー・トーマスのポスターを部屋に飾るほど好きになりました。 そんな38年前の自分には申し訳ないのだけれど…、あらためて見直してみたら、E.T.も、ヘンリー・トーマスも、思っていたほどには可愛くないし、むしろドリュー・バリモアのほうが可愛いです。映像的な魅力にも乏しく、総じていえば、ほとんど映画的に誉めるべきところが見当たりませんでした。 …にもかかわらず、この映画のどこかに何ともいえない「名作感」が漂っているのも事実です。わたしが思うに、これはジョン・ウィリアムズの音楽の力技なのだと思います。とにかく最初から最後まで、ひたすら音楽が鳴り続けています。場面によってはウルサイくらいです。映像に音楽を付けたというより、まるで音楽に映像を付けたような感じ。つまるところ、これは「スピルバーグの映画」じゃなくて「ウィリアムズのオペラ」なんじゃないかしら? もし、これがオペラだとすれば、もはや理屈も設定も、辻褄もリアリティもなく、ひたすら音楽に合わせて大味な物語が展開すればいいのですよね。実際のところ、E.T.は何だか知らないけど生き返ってしまうし、お別れの場面では、何だか知らないけど家族と友人だけが顔をそろえている。何だか知らないけど、NASAの科学者たちはご都合主義的に退場している。 いちいち細かいことにこだわらず、とにかく音楽に合わせてE.T.が生き返り、音楽に合わせて空を飛び、音楽に合わせて最後のお別れをして、そして宇宙船が夜空に消えるところで音楽が終わる。そういう問答無用の力技で成り立っている作品だと思います。それが名作たらしめる理由かもしれません。 当時は、皺くちゃの爬虫類のようなE.T.の造形が、異様なリアリティを感じさせていましたが、逆にそれがなければ、ほとんど「ドラえもん」のような話です。いじめられっ子の主人公の家に、超能力を用いる知的な存在が入り込んで、純粋無垢な子供たちと交流する物語なのです。『バックトゥザフューチャー』もそうでしたが、スピルバーグのSFファンタジーは、ほとんど藤子不二雄です。 82年の米アカデミー賞では、ジョン・ウィリアムズの音楽と、カルロ・ランバルディの造形などが評価されただけで、作品賞や監督賞は与えられなかったのですが、きわめて真っ当な判断だったと思います。 [地上波(吹替)] 6点(2020-10-03 10:55:47)(良:1票) |