1. 残穢 -住んではいけない部屋-
《ネタバレ》 原作は未読。あくまでも本作についての感想ということで。 怖さは控えめ。ミステリー的展開が中心になっていることに加え、幽霊や幽霊らしきものの映像がチープ過ぎることや過度な音響効果を使用していないことがその要因かと。(個人的にホラー慣れしてしまっているということもありますが) 序盤の女子大生の自室での異音発生場面。洋画・邦画問わず、何故にホラー作品は画面が暗いのか?というのは無粋な疑問と理解してはいるものの、それでも「不思議ならまずは電気点けなさい!怖いなら尚更!」と言わずにはいられない演出。その時点で「やっぱそうなのね」と興覚めしかけ、「私」の妙な深入り加減にも憤懣やるかたなく、「つまんね」とリタイアしそうでした。が、怪異の原因を探って行き「穢れ」の連鎖が明らかになっていく過程で「なんだか新鮮!」と物語世界に惹かれていきました。 総じて言えば、全体的な流れや美術には満足しつつ、細かな演出や特殊効果には満足したりがっかりしたりといった不安定感ありのホラー。序盤は今ひとつ興味が湧かず、ところが中盤からの展開には大いに惹かれ、終盤は蛇足感(特にエンドロール)に落胆という感じです。 終わり良ければ全て良し、という締め括りにして欲しかった。つまりは終盤に盛らないで欲しかった。不安を伴う疑似的ハッピーエンドにして欲しかったところです。残念。 あ、それからサブタイトル。「住んではいけない部屋」って原作には付いていないような?確かに「住んではいけない」のかも知れませんけれど、土地そのものに穢れがあるものの特定の部屋にだけ怪異は現れているということは、部屋ではなく住人にこそ原因があるように思えてならず、だとすればミスリード的で的外れなサブタイトルに思えてしまいます。折角「残穢」というジャストフィットなタイトルなのに。それがマイナス要素で5点献上に留めます。 [インターネット(邦画)] 5点(2024-10-30 11:17:31) |
2. ザ・レイク
《ネタバレ》 冒頭から謎の怪獣が出現するスピーディな展開は好感が持てました。奪われた卵を追い求めて暴れまわる怪獣というのは当然の如く既視感十分ですし、演出的にも特に目新しさは感じませんが、出演者たちの行動や言動に若干の違和感を感じつつも、ハリウッド映画や日本の怪獣映画とは一味違う味付けと思えばそれも本作の魅力なのかも知れません。 怪物のデザインは「AVP エイリアンVS.プレデター」「クローバーフィールド / HAKAISHA」「アバター」等々のクリーチャー・デザインを手掛けたハリウッドのデザイナーということですが、なるほど本邦の怪獣デザインとは異なるテイストですね。タイの風景の中に現れたハリウッドテイストの怪物、新鮮でした。 タイ発怪獣映画ということでモノ珍しさで鑑賞した作品ですが、シンプルに怪獣映画として楽しめたこともあり6点献上します。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-09-29 12:03:35) |
3. さよならの朝に約束の花をかざろう
《ネタバレ》 美しい映像、解りやすい物語の流れ、設定や世界観自体は決して目新しいものとは思えませんが、超長寿の民と普通の人間の間に生まれた愛の変遷という切り口で語られるラブストーリーには惹かれるものがありました。 ただ、願わくばもう少し「愛」そのものを掘り下げて欲しかった。観客に委ねる部分があっても良いとは思うのだけれど、マキアとエリアルの間に生まれた感情について、もう少しだけ饒舌に語って欲しかったと思えてしまいました。説明口調ではない深い感情表現と言いますか。何かしら消化不良感が残ってしまった感じです。 マキアを筆頭に各キャラクターが必要以上に子どもじみているというのも原因かもしれません。イオルフの民は外見の成長は止まっても心の成長は止まらないのでは?結構な年月を経ているにも関わらず心は子どものままのような。少なくとも感情移入は難しかったです。 そして終盤。置き去りにされたメドメルと乳母の運命が悲し過ぎます。レイリアはあのままで良かったのですか?それまでの流れからしても、決してそうは思えません。 更にエンディング。レナトに乗ったマキアとレイリアが空の彼方に消えて行く。そこまでで良かったように思えてなりません。蛇足とは言いませんが、余韻を打ち消してしまいかねない後日談でした。生き残ったイオルフの民と一頭のレナトがイオルフの里で平穏を取り戻している光景をバックにエンドロールが流れるだけで良かったような気がします。 美しく感動的な一本だけに、あと一歩の物足りなさを感じてしまった作品でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-08-25 21:24:49) |
4. 三茶のポルターガイスト
《ネタバレ》 テレビやビデオ、ネット動画等々、幾度となく目にしてきた風景です。つまりは個人的には結構好きなジャンルだったりする訳ですが。 今回は、このスタジオだけを対象とした特番という感じですね。なので、さんざん見せられてきたものを改めて見せられているという既視感的印象はかなり強いです。絶対に作り物ではないという動画の数々にしても、なんか見たことあるかもと思えてしまう。あまりに有名な対象を取り上げてしまったが故の弊害と言えるかも知れません。 とは言え、それらの動画を作り物だと言い放つ根拠もないので、その手の現象には個人的には一家言あるところですが長くなるので省略します。と言うより、少しぐらいは分析・解説的なカットも入れて欲しかったところです。 これから続編も公開されるようですが、次作は本作の焼き直しにならないことを願います。評価不能的作品ですが期待を若干裏切られた感があり4点献上とします。 [インターネット(邦画)] 4点(2024-06-01 14:49:52) |
5. サラリーマン・バトル・ロワイアル
《ネタバレ》 何やら既視感のあるシチュエーション。箱様の建物でもなく、地下室でもなく、離れ小島でもなく…鉄壁の要塞化したオフィスビルが舞台のサバイバル。 出勤したらいつになく厳重なセキュリティチェック。そこで気付けよ!と思う間もなく一気に軟禁状態に。お約束のように響き渡る天の声。否、この場合悪魔の囁きか。既視感あります。 悪い冗談かと思いきや早速見せしめの如き犠牲者が。しかも狙撃ならぬ自爆死。埋め込まれたチップは超小型爆弾なのね。これまた既視感。 正直なところ誰が誰だか区別が付きにくい状況で死亡フラグが連立して行く。そしてお約束どおりに裏切り者が登場。 などなど、全編通じて(エンディングも含む)既視感のオンパレードです。が、だからこその面白さもある訳でして、スピーディな展開、誰が死んでも不思議ではない状況(実際、流石に「え?死んじゃうの?」的な人物も)、決して退屈することなどなく一気に楽しめました。 とは言え、(実際の予定は知りませんが)シリーズ化に向けて意欲満々的なエンディングはどうかなと。本作限りで完結!という意気込みを感じたかったというのが正直な感想です。 ちなみに、邦題はストレートですね。必ずしも「バトル・ロワイアル」しているとも思えませんが。少々内容が分かりにくい原題の方が、謎めいていて良いような気がします。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-05-04 16:39:13) |
6. 最終絶叫計画5
《ネタバレ》 ひさびさに鑑賞しました、「絶叫計画」シリーズ。 下品です。相変わらず下品。下品の極み。でも笑ってしまう。最後まで観てしまう。笑ってしまった段階で作り手の術中にはまってしまっているのですね、多分。 各シーンがどの作品のパロディなのかぐらいを考え、他は何も考えずに暇つぶしするには最適の作品。テーマとかは無いに等しいし考える必要もないでしょう。 そうは言いつつも、この手のおおよそ邦画ではあり得ないタイプのお下劣な作品は実のところ大好物。ですが、子ども(とりわけ赤ちゃん)乱暴扱い表現はやっちゃいかんという自分なりのポリシーみたいなものはあるので、その分減点して5点分笑わせていただきました。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-04-26 13:52:09) |
7. search #サーチ2
前作を観た時、確かに面白いけれど柳の下に二匹目は居ないだろうなと思ってしまった私。撤回します。甘かった。これは前作を凌ぐと言っても決して過言ではない面白さ。と言うか前作以上にスリリングで意外性に富んだ素晴らしい脚本ですね。数々の伏線も漏らさずキッチリ回収。脱帽ものでした。 前作を観た時、喋ってる分の字幕とPCのディスプレイに表示されている英語の訳文が横書き縦書き乱れ飛び、目が疲れて大変だったので今回は吹替え版で観てみたのですが、私のような英語不得手な方には吹替え版をお勧めします。それでも理解力が衰えつつあるお年頃の私、リプレイしないと追い付けない場面もあったりして。なので、個人的には毎回入れ替えの昨今の映画館では鑑賞不適な作品とも言えそうです。 次作があるかどうかの情報を知らないのですが、前作と今作ではスタッフが巧みにローテーションしてこの出来栄え。是非是非再度の チャレンジを望むところです。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-04-06 19:24:51) |
8. ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
《ネタバレ》 遅れ馳せながら鑑賞。前作と比べて少なめのレビューながら、良い点もそうじゃない点も概ね皆さんに語り尽くされた感がありますね。私は肯定派、支持派です。思いっきり楽しませていただきました。 いきなりでまさかの精鋭部隊?捨て駒作戦、キッチリ始末したと思ったら実は味方だったというブラックジョーク、サメやらネズミやらイタチやら動物たちの大活躍(サメはハイブリッドだしイタチは活躍の予感だけですがw)、レトロでサイケなラスボスの大暴れ、前作同様ハーレイ・クインの魅力爆発等々、やや長尺にも関わらず中だるみ皆無でラストまで惹き付けられっぱなしの上にエンドロールにはオマケが2個。良い意味でおなか一杯になりました。まさに「ゴチソウ」でした。 強いて言わせていただければ、トリ馬鹿のワタクシ的には冒頭の小鳥ちゃん受難(後で仇討ちしてもらえるけど)と少し後の鳥カゴ放火シーンがNGですが、人の命を思いっ切り軽視している本作では全く聞いてもらえない意見ですね。 次回作やスピンオフに期待せずにはいられない快作に9点献上します。 [インターネット(字幕)] 9点(2024-04-05 11:32:06)(良:3票) |
9. The Son/息子
《ネタバレ》 両親の離婚が一つの引き金になっているのかも知れませんが、現状に失望し将来に何一つ希望を持てなくなってしまった17歳の息子。自らの経験もあって旧態依然とした親子関係、父親のあるべき姿、息子のあるべき姿に捉われ続けることしか出来ない父親。只管に息子を溺愛することこそが母の愛と信じる母親…。 キャラクター設定はとことんベタです。ですから、その登場人物たちが織りなす親子のそして夫婦の愛憎劇もベタです。大いに既視感があり、特に斬新なドラマとは言い難い作品です。 なので、俳優陣の熱演が楽しめる良作(いろいろ言いつつも2時間超集中して鑑賞していました)とは思いつつも、殆ど感情移入出来ずに(反論する意味で逆に感情移入していたのかも知れませんが)終わってしまいました。ラスト近くの出来事も、その後父親の見る幻影も想定内、と言うかある意味予定調和的に受け止めてしまい、物語の落としどころ的にそれで良いのか?という疑問が残りました。ラストシーンも然りです。 前妻から主人公を奪い取った?今の妻の視点がもう少し欲しかったかなと思います。登場人物中(したたかささえ感じるぐらいに)最も冷静に3人の関係を観察していた人物。ラストシーンではすっかり傷付いているであろう前妻は姿を見せず、今の妻だけがクローズアップされます。その彼女の姿が、仕草が、言葉が意味するものは、果たしてこの物語を締めくくれるものなのでしょうか?ただただ疑問でした。 監督の前作が素晴らしかっただけに残念でした。「家族三部作」の残る一作の映画化に期待したいと思います。 ちなみに、私もドラム式洗濯機が一度ならず登場したことに若干の恐ろしさを感じていました。ホラーじゃないんだから大丈夫、と思いつつも杞憂で良かった。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-03-25 13:24:18) |
10. 残灰に
《ネタバレ》 冒頭からしばらくは、イスラム社会における女子教育の厳しさとそこで学ぶ生徒たちの葛藤がテーマであるかの如き展開ですが、火災による犠牲者発生後は、その雰囲気を維持しつつ思わぬサスペンスへと変化していきます。 物語の展開は本邦の推理ドラマの如き様相で、一人ひとりの家庭環境と生徒同士の複雑な関係性、更には厳格で生徒たちの模範である筈の大人たちが見せる弱さと脆さ。そして、悲劇の裏に隠された涙ぐましくも意外な真実。この湿度はまさに本邦のサスペンスドラマの味わいでした。 サウジアラビアの作品は記憶にある限りでは初めての鑑賞かと思いますが、今まで観たイスラム圏の作品とは趣を異とするエンタメ性豊かな佳作との出会いに7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-02-08 00:31:32) |
11. search サーチ
《ネタバレ》 正直なところ、冒頭のPC画面のみによる語り出しには抵抗を感じました。日頃からスマホよりPC中心にネットライフに勤しんでいる自分ではありますが、他人が操作するPC画面では字幕を見る余裕もなく展開してしまい追い付くのがやっと。もし映画館で観ていたら酔ってしまったかも。そういう意味では、熟練の映画ファンの方であっても、PCはイマイチ馴染めないという場合にはオープニングで「NO!」かも知れませんね。 ただし、本作独自のその手法に慣れてしまえば寧ろそのスピード感が心地良く、いつの間にやら作品世界に没入していました。一種のPOVとでも言いましょうか、アイディア一発勝負のこの演出方法は、二番煎じ三番煎じとなると上手く行かないような気がしますが、こと本作においては大成功と言って良いかと思います。 もっとも、PCやスマホの技術が今も尚日進月歩の現代においては、近い将来には極めて懐古的な作風になってしまうことも確かでしょう。旬のうちに楽しむのが正解かと思われます。 そして肝心のストーリーですが、個人的にはヴィックの行動に十分意外性を感じて驚けましたし、マーゴットの安否についてのサプライズ的展開もさり気なく挿し込まれていて良かったと思います。ミステリー、サスペンスとして見応えを感じました。スケープゴート的に登場する娘の叔父やネットフレンドへの疑惑も上手く盛り込まれていたと思います。尺の短さ故に深味という意味では物足りなさがないこともありませんが、逆に展開が早くて大いに惹き込まれました。 まさに、観た後素直に「面白かった!」と言えた佳作に8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-01-21 11:03:28) |
12. サイレント・トーキョー
《ネタバレ》 普通にサスペンスとして観る限りは、スピード感のある展開と若干短めの尺ということによって、緊張感を維持しつつ楽しめることが出来る作品だと思います。ただ、その反面と言いましょうかテーマはかなりボヤけ気味で、登場人物の心理描写もそれほど精緻には描かれておらず、一人ひとりの心理的な背景は想像するしかない感じです。つまりは、本来かなり重厚なヒューマンドラマであるにも関わらず、あまりに感情移入困難な出来栄えです。 加えて、と言うかテーマのこと以上に感じさせられたのは、荒唐無稽とでも言いましょうか警察を始めとする各機関及び構成員の無茶苦茶な動き。あまりにも現実離れしており、最早SF状態。単独行動が多過ぎるし、拳銃を容疑者に突き付けてみたり重要参考人をさっさと釈放してみたり。ある訳ねーだろ!的な場面や台詞が多過ぎる感じがして止みません。肝心の犯行の背景等々、もう少し優先して描き込んで欲しかったところです。 結果、観終わってみれば後味が悪いと言うか何と言うか、キチンと着地することなくボーっと終わってしまった感じです。解決とは程遠いような。断片的に観て行けばお気に入りのカットは多々あるものの、それらを組み合わせたことによる作品としての+αを受け取ることは出来ませんでした。渋谷駅前のセットや爆破シーンに代表されるような秀逸なビジュアルばかりが印象に残る、かなり残念な(勿体ない)作品でした。 [インターネット(邦画)] 5点(2024-01-06 23:43:16)(良:1票) |
13. ザ・キラー
《ネタバレ》 冒頭に延々と続く病的とさえ思えるような殺し屋の哲学についての独白。完璧を求め過去の仕事も100%成功して来たと自負する孤高の殺し屋。ビジュアル的にもスタイリッシュでストイック。相当カッコいい。さながら「ゴルゴ13」の実写版かと期待させられます。がしかし、超腕利きのスナイパーとは思えないような凡ミス。難し過ぎるシチュエーションとタイミングで引き金を絞ってしまう。結果、高級コールガール?は哀れ犠牲に。そしてお仕事失敗。 そもそもターゲットの方も相当無防備。通りの向かいのビルの上層階の窓がずっとカーテンも何もない状態になってて、もしかしたら時折り人影だって見えてたかもしれない。せめてVIPの到着前にチェックするでしょ普通。更に、これからお楽しみだってのにカーテン開けっぱなし。撃たれて慌てて閉めてるし。入り口のガードマンその他手下たちは向かいのビルに駆け付けないし。そのくせ警察の対応は矢鱈早かったりして。 グラフィック・ノベルが原作だとしてもちょっと現実感が薄すぎると言うか肝心の部分の緊張感に欠けると言うか、だからこそ「コメディ」を感じさせられたかのような意見まで出てしまっているのですね。まぁ「殺し屋とはこうあるべき」というテーマではないのでしょうから少々詰めが甘くても良いのかも知れませんが、と言うか詰めが甘くなければ本作のその後のストーリーには繋がらない訳ですからこれで良いのでしょうけれど、何だかスッキリしない展開でした。 復讐劇も不安定感ありですね。情け容赦なく殺さなくてもいいんじゃね?みたいな対象を撃ち抜いたかと思えば、少なからず感情移入して願いを叶えて?しまったり、何よりラスボスをスルーしたのは何故でしょう?彼の言葉をまるまる信じた?これ以上の報復は無いと?隠れ家で彼女と幸せに平穏な生活を送れるとでも? 冷徹のようでいて失い切れていない人間性が時折り顔を出す情緒不安定な殺し屋が、愛に生きる道を選ぶまでの物語なのでしょうか?それとも、もっと深く人間の心を掘り下げることで人の生き様を描いた作品なのでしょうか?エンタメとして楽しむことは出来るものの、何か心に残るものがあるかと言えば微妙な作品でした。ビッグネームによる作品でなかったのなら評価はどうなっていたのでしょう?迷った挙句の6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-12-05 16:58:38)(良:1票) |
14. 彷徨い
《ネタバレ》 裕福で社会的な地位もあって幸せそのものというヒロインの現況であるはずなのに、全編通じて重い空気感に満たされていてヒロインの不安感ばかりが前面に押し出されている感じ。どことなく観ていて気持ちが落ち着かない作品です。 冒頭のシーンから考えて、謎の黒人青年は彼女の過去を知る者であるというのは容易に想像がつきますし、妹とともにヒロインの生活圏内に入り込んで来ようとしているのも明らか。名前をタイトルにして章立てしている構成からも、解り易いストーリー。復讐譚であろうことは早々に察しがつきます。 ヒロインが夫の元から逃げ出すまで、黒人系の女性ということで周囲から差別的な接し方をされて来たようですが、生活エリアを変え名前を変え、裕福な夫と結ばれて申し分のない社会的地位までも手に入れながらも、自らの黒人的髪質を嫌いウィッグで縮れ毛を隠しながら何かに怯えて生きる姿には今ひとつ感情移入出来ません。そんな様子で18年間も生きて来て今の生活に辿り着けたのだろうか?みたいな。作品テーマのひとつは人種問題なのでしょうけれど、その部分で押して来そうでいて押して来ない感じ。 そして後半。ヒロインの実子兄妹が家宅侵入し「ファニーゲーム」さながらに傍若無人に振舞う展開になると、作品テーマは更にぐらついて来ます。あれ?メインテーマは人種問題じゃなくて日常に潜む狂気?良く解らなくなって来ます。 更にはヒロイン、今再び家族を捨てて逃亡。18年前とは形を変えているとは言え、ここでも彼女は逃げ出す訳です。否、逃亡ではないのかも知れません。警察に駆け込んだのかも。でも、だったら隣家に駆け込んだ方が早いかも。チャンスなんかいっぱいあった訳だから。何だか釈然としないエンディングです。少なくとも家族愛がテーマではないようです。 結局、全編通じて非現実感が先行し過ぎていることが、今ひとつ作品世界に入り込めない理由かも知れません。DV夫から逃げ切り、偽名で裕福な男性と再婚(離婚出来たの?内縁だったの?)、私立高校の副校長に就任、満ち足りたセレブ生活。無理でしょう、その生き方。破綻材料だらけです。だから、感情移入も出来なければワクワクドキドキも出来ない。常に不完全燃焼が維持されてる感じ。 ヒロインは冒頭から精神的にかなり不安定な様子で、それは裕福な生活になってからも変わらないようです。いっそのことセレブ生活は全て幻想だったみたいな夢オチ的物語の方が納得できたかもしれません。 何とも後味が悪く、と言うか後味が感じられず、さりとて面白くない訳でもなく(我ながら矛盾してますが)、迷った挙句4点献上します。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-11-30 14:26:51) |
15. ザ・ウェーブ (2019)
《ネタバレ》 大切な会議の前夜だからと同僚の誘いを確かな決意をもって固辞していたものの、妻とのすれ違いなんぞという日頃から繰り返している些細なことに開き直って結局は誘いに応じて夜の街に繰り出してしまった主人公。 そして、入るべきではなかった怪しげな店に入り、入るべきではなかったアブなそうな部屋に入り、会話すべきではなかった強面の人物と話し、貰うべきではなかったヤバそうなクスリに手を出し…まさに悪循環。絵に描いたような転落。 なんだかこうやって振り返ると、小心者のサラリーマンの悲哀を描いた悲喜劇みたく思えるのですが、実は結構ハイなトリップムービーとでも言いましょうか、謎の薬物で激しい幻覚の世界に飛び込んだかと思えば、まるで人生やり直しみたいなタイプリープしちゃったりと、一体どこからどこまでが現実なの?それとも全てがクスリによる幻なの?といった激しめのストーリー。 散々ドタバタした挙句、結局最後には良い人になりたくて死を望む?そして本当に(恐らくは良い結果を遺して)死んでしまって、死後の世界では自分を導いてくれた最愛のひと?に添い遂げることが出来ましたとさ。みたいな作品でした。テーマは何だったのでしょう?人は他人への思いやりをもって生きるべき、と言った人生訓と言うか道徳観念?なんか違うなぁ…。 決して面白くない作品ではないのですが、良く解らないと言うか、今ひとつ印象に残らない作品。限りなく4点に近い5点献上します。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-11-27 15:21:01) |
16. ザ・スイッチ
《ネタバレ》 これ、普通に面白いですね。残忍に殺しまくってるのに可笑しい。コメディって分かってるから冒頭のカップル惨殺シーンも引かずに見れちゃう。可哀そうだとか、痛そうだとか全く感じないです。 それは全体通して言えますね。「コメディ」という免罪符の下に、スプラッターと言うかスラッシャーと言うか自由に盛り込めていて、結構残酷でもマジなホラーと違って目を背けないで済んでしまう。ホラー系コメディ作品の他にはない魅力、楽しみ方とでも言いましょうか、ゾンビだろうがサメだろうが、コメディのエッセンスをふりかけるとグロければグロいほど残酷シーンが爆笑シーンに転じてしまう。そんなことが言えそうに思えます。 この監督さんの他作でも感じましたが、随所に光るウィットやお笑いセンスは特筆ものだと思います。個人的にはこの手のホラーが大好物ということもあって甘めの8点献上です。 ちなみに、原題も邦題も結構ストレート系ですが、原題の方がひと捻りあって作り手のセンスを感じます。原題直訳の方が良かったのでは?何と訳すか迷うところですが。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-10-25 15:17:45) |
17. ザ・デッド インディア
《ネタバレ》 (前作は未見です) 今や、やや古風とさえ思えてしまうオーソドックスなゾンビ作品。それは批判的な印象ではなく、あくまでも好印象です。 ノロノロと歩くゾンビ。初見で何が起きたか把握できない状況にでもない限り、急いで走ればかわせるし逃げ切れる。特殊メイクや効果はリアリティを追求した高度なものというより、生者と死者(感染者?)を明確に区別できる程度。それでも十分グロさは伝わる。グロはあってもサービスカット的なエロは皆無。実に好感が持てます。 そして、出稼ぎ的な米国人ニコラスが現地の女性イシャニと恋に落ち彼女は妊娠。彼女の父親は二人の関係を決して許さない。けれども、過去に類似の状況で躓き傷付いた経験のある彼は、米国に独り逃げ去ることが出来るにも関わらず、命の危険を冒してまで彼女を救いに走る。いいですね~、国籍や人種を超えた人間ドラマが真面目に盛り込まれている。恩人的な位置付けの少年ジャベド(この子役の自然な演技は好きです)との交流も良いです。彼の大切にしていた縫いぐるみエピソードもキッチリ回収してくれていますね。そこでお約束的に母子の感動の再会がないところも良いです。 そしてラストシーン(激しくネタバレですが)、ゾンビから逃れたニコラス、イシャニ、ジャベドの3人が、軍の攻撃によって地下に閉じ込められてしまう。バッドエンドなのか、それともかつてジャベドが教えてくれた伝説の如く、3人は(魂の世界でかも知れませんが)そこを抜けだし幸福になれるのか?単純に悲劇的な終わり方をすることなく纏めたあたりも好感が持てました。 B級ホラーと言えばそうなのかも知れませんが、昨今数多製作されるゾンビ作品の中では良心的な佳作と思われ7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-10-23 10:05:35) |
18. サークル(2015)
《ネタバレ》 所謂「不条理系シチュエーションスリラー」のようでいて、人間の内面に光をあてながらその本質について問うような社会派サスペンスでもあります。 何が何やら解らないうちに、ランダムに集められた50人もの老若男女が順番に殺されていく。殺されるにあたっては参加者相互が投票して対象を決めるようなシステムらしい。もしかしたら最後の一人は脱出出来るのかも知れないが、それは約束されたものでも何でもない。何故なら、主催者?は全く姿も声も現わさないから。 設定としては興味深いものがあります。物語が進んでいく過程では、利己的な主張をし続け他人の命を軽んずる者もいれば、集められた者たちが助け合うことで窮地を脱しようとする者もいる。それぞれの主張の背景には、社会的な問題が見え隠れする。 サークル上の人々には何らそこにいる必然性も蓋然性もなく、かといって偶然性のみによるものかと言えば明らかに第三者の意図が感じられる。そんな理不尽な状況にあって、分け隔てなく死が迫る中、人は何を考えどのように行動するのか?ただそれだけが繰り返される会話劇。漠然としたテーマを示しつつ決して結論には至らない。消化不良と言えば消化不良ですが、本来は舞台劇かと思わせるような淡々かつ延々と繰り返される会話からは、そこはかとない緊迫感や恐怖が感じられます。 ラスト、唯一の生存者が外界に戻された時に見たものは、同じく解放されたであろう人々と上空に浮かぶ強大なUFO。エイリアンに拉致されて何らかの心理実験?選抜試験?に強制参加させられていたということをほのめかしているのでしょうが、正直言ってこれは要らないカットではないかと思いました。ここまで観客に考えさせておいて、最後の最後に説明的(それもある意味陳腐な)になる必要があったでしょうか? ポジティブに捉えれば先鋭的で意欲的な作品。楽しめましたし意気込みも感じられますが、ラストのカットに失望したので6点献上に留めます。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-16 11:02:59) |
19. さがす
《ネタバレ》 「岬の兄妹」は未見なので先入観ゼロでの片山慎三監督作品鑑賞でした。 父子の愛情と連続殺人の異常心理を巧みに組み合わせ、ミステリ―風味のサスペンスに仕上げた本作、見事です。 智の行動や言動は終始リアルで、佐藤二朗氏の不安定に揺れ動きつつも次第に確信的に行動するようになっていく演技は、恰もドキュメンタリーの如く感じさせられてしまう様な真に迫る名演ですね。 娘役の伊東蒼さんもまたしかり。父の姿を追う行動や言動は些か芝居じみた部分も感じられなくはないのですが、それは脚本や演出の問題であって、演じ切っている彼女自身は見事としか言いようがないところです。特にラストの卓球シーンは、一人の薄幸の中学生が地に足の着いた一人の人間に成長していく姿を感じさせてくれます。 山内役の清水尋也さんも存在感が強烈です。序盤のシーンで作業員のひとりが彼の眼から受ける危険なイメージについて話していますが、まさにその通りに感情の消え失せたガラス玉のような眼をした演技に、思わず本作のモチーフであろう座間市の事件の犯人を想起してしまいました。 脇を固める俳優さん一人ひとりの演技も含め、鬼気迫る優れた演技が本作のテーマを観る者に叩きつけて来るような緊迫した2時間でした。 ただ、父子の愛に関しては十分に語ってくれているものの、モチーフとなっているであろう事件と同様、主犯者の(非)人間性については特に深く掘り下げられることはなく、メインテーマではないのかも知れませんが、この狂気とは一体何であったのかをもう少し語って欲しかった、というのが正直なところです。 そのあたりに不完全燃焼感が残り、1点減点させていただきました。 [インターネット(邦画)] 9点(2023-08-27 22:30:41)(良:1票) |
20. サメストーカー リターンズ(TVM)
《ネタバレ》 「サメストーカー」シリーズ第3弾。三作目にして漸くサメ映画的にサメが登場します。(量的に過ぎないかも知れませんが) とは言うものの、やはりサメは主役でも何でもなく、ストーカー男のペットに昇格といった感じです。ただ、最近ではサメが出ないサメ映画まで登場しているぐらいですから、これだけ登場頻度が上がれば十分サメ映画と言って良いのかも知れません。 さて、三作目ともなるとストーカー男の手口はマンネリ化して進歩しない、にも関わらず捕まらない、というのもどうかなとは思いますが、実際ここまで病んでいれば、と言うか元カノの幻影にとり憑かれていれば、同じパターンから抜け切れないということかも知れません。それに、考えてみれば前二作も含めてヒロインとの出会いは彼が用意周到に仕組んだものとは言えず、寧ろ偶然の産物、偶発的な事故ですし。 しかも、本作ではヒロインのコートニーが全ての始まりになっています。彼女が立入禁止の島に行きたがらなければ。彼女がデビッドを受け入れなければ。親友のキャットのことを信じていれば。等々。ヒロインは受け身的な被害者ではなく、自ら危機を背負いこんでいる訳です。 そして、一気に狂暴かつ極悪化するストーカー。決して死なないストーカー。罪を加速度的に重ねていくストーカー。でも、何かにつけて脇甘すぎ。流石にそろそろ捕まるかサメに食われるかしないと、惰性でシリーズが続いていきそうです。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-07-24 00:13:08) |