1. 百日紅 ~Miss HOKUSAI~
《ネタバレ》 原作未読。こういう、一本を貫くストーリーが無い作品は、評価に困るところです。なるほど映像や環境音(特に橋を廻る生活音)など江戸情緒を感じさせる仕掛けは多く、亡き杉浦日向子女史の豊富な江戸知識に裏打ちされた当時の風俗や生粋の江戸弁によるやりとりは、見ていて心地いいと思います。が、それをアニメでやる意義は今一消化できず…話題作りのために俳優の声を使うくらいなら、いっそ初めから実写映画でも良かったのではと思ってしまいます。辛口になりますが、杏・松重豊・濱田岳の声優ぶりは、正直及第点には達してなかったかと。演技自体は悪くありませんが、それが絵に乗りきってないため北斎・お栄・善次郎ではなく杏・松重・濱田にしか聞こえない。せっかくアニメの人物が話していても、背後の3人の俳優の顔ばかりちらつきました。高良健吾ら他の役者は言うに及ばず。 筋ですが、盲目の妹の看病と死、という事件はあるものの、それは主題ではなく、北斎・娘・弟子の3人の日常を描く、まさに「日常系アニメ」で、史実の北斎と応為の生涯をたどる訳でもなく、家族の絆や人物の成長を描くでもなく、ストーリーはあって無いようなもの。それだけにラストの「その後の人生」の説明は蛇足と思いました(日常のまま何気なく終わってもいいのでは)。小気味いい江戸弁は全体的につつっと耳に入ってきましたが、「○○みたく」「勉強になるから」「来れたじゃねえか」など今っぽい言い回しも二三あり…江戸通の杉浦さんが間違えるとは思えないので、脚本か役者の勇み足なんでしょうか?若干引っかかりました。 [映画館(邦画)] 5点(2015-05-14 22:54:29) |
2. THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦
《ネタバレ》 かつてアニメ版パトレイバーに熱中していた者として。今回の長篇だけでなく、短篇12話もすべて劇場で見ましたが、やっぱり押井監督はパトレイバーそのものが好きじゃないんだろうなぁ、と感じます。往年のファンへのサービスのつもりか、過去作の台詞をそのまま持ってくるシーンも多く、かつてのパトの雰囲気を感じられなくもないですが、時代が進んでしまったこととアニメでなく実写化によるリアルな質感によって、かつて我々が夢中だったパトレイバーのノリが、むしろ気恥ずかしさを生起させてしまっているような感じで。それでも押井脚本でない回はまあまあ面白いものもあったのですが、第5/6話の怪獣騒ぎや、第12話からつながる今回の劇場版を見ると、「押井さん…まーだ、こんなことやりたいの?」という、いささか食傷気味の感想しか抱けません…。歴代作品の中でも「最もレイバーが登場しない」とも言われるMovie2(1993年)の正統な?続篇ともいうべき、今回の首都決戦。やってること自体はあまり変わらず、前作で荒川が後藤に延々と語った青臭い「平和論」を今回は高畑が後藤田に語り続けます。でも22年の間に世の中はおそらく押井監督の想像以上に進んでしまっていて(なんせその22年の間にEVAも踊る大捜査線も、2つの大震災さえもすっぽり入ってしまいます)、正直その語りは古臭いし鼻につく感じです。サービスで声だけ登場した南雲さんも、あまり必然性を感じられず…この作品なら後藤さんは無理に出さなかったのは正解ですね(正直今回のテーマなら、南雲と柘植よりも、世界線が異なるものの、後藤と甲斐冽輝の方を掘り下げて欲しかった感も)。長くなってしまいましたが、今回の犯人(灰原)の動機も結局うやむやだし、テロで大騒ぎした割に解決もなく終わるんでカタルシスも不足…つまらなくは無いけれど、非常に残念な作品と思いました。 [映画館(邦画)] 5点(2015-05-04 00:41:19) |
3. 西遊記 はじまりのはじまり
《ネタバレ》 ここでの評判が良かったので、見に行ったのですが…うーん、私はどうも楽しめませんでした。元々の小説の『西遊記』の方を以前から好きで関連論文なども読み漁っていた時期があったりして、思い入れがありすぎるせいかもしれません。少なくとも私には「西遊記」ものには見えませんでした…(例えると忠臣蔵に対する47Roninのような感覚でしょうか) 普段のチャウ・シンチーなら笑えそうなセリフやアクションも、ちょっとどぎつい演出や、ややグロめな表現で、あまり入り込めず…ストーリーも、あっち行ったりこっち行ったり。ヒロインはじめ、なまじ個性的な脇役をいろいろそろえたせいで、孫悟空たち本来の玄奘の仲間たちが、かえって邪魔な存在に感じました。新解釈でぶっ飛んだ作品を見たいという人には向いてるかもしれません。吹き替えは、斎藤工・貫地谷しほり、ともに経験済みなのもあり、無難な出来でした。 [映画館(吹替)] 4点(2015-01-25 00:52:48) |
4. 柘榴坂の仇討
《ネタバレ》 私は浅田次郎の作品と相性が悪いのか、少しも泣けないし、また制作陣の意気込みとは裏腹に「いい時代劇」の醍醐味もそれほど感じられず。元々短篇だった小説を引き延ばしたせいか、物語にあまり厚みを感じません。むしろ泣かせ所が「ここで泣け」とばかりに冗長で、同じ幕末・浅田次郎・中井貴一の『壬生義士伝』を思い出しました。主役の金吾夫婦はともかく、仇役の十兵衛の造形も中途半端。執拗に繰り返される隣家のお千代坊との挨拶ばかりで、何気ないシーンからは十兵衛の人間性は感じられず、結局最後に自分で全部語ってしまうのは映画の見せ方としてどうなんでしょう。武士の生き様を強調しながら種なし蜜柑を食べてたり、金吾が亡き主君を「掃部様」と略して呼ぶのも違和感(普通は「宗観院様」、百歩譲って「掃部頭様」でしょう)。全体的にもったいない感じの映画でした。5点と4点で迷いましたが、ここは敢えて厳しめに4点。 [映画館(邦画)] 4点(2014-09-24 07:45:02) |
5. 桜田門外ノ変
《ネタバレ》 うーん。この映画は何を伝えたかったんでしょうかね。テロリストを賛美している訳ではないのが救いですが、ドキュメンタリー風の桜田門外の変の再現の後は、ひたすら主人公関鉄之助の逃亡劇を延々と見せられるだけ。で、結局捕まっておしまい。正直、見終わった後に何も残らない映画でした。あまり水戸藩の人間ばかり出さずに、事件の全体像を説明できる薩摩や幕府の人間も出せばもう少し面白みも出たと思いますが。あと、史実に忠実たらんと努めている割には、人の呼び名とか所作の端々に当時の作法と違うものが細々あり、気になりました。 [映画館(邦画)] 4点(2010-12-21 22:27:53) |
6. 最後の忠臣蔵
《ネタバレ》 端的に言うと失敗作だと思います。2004年NHKドラマ版(ジェームス三木脚本)の出来が良すぎただけに、どうしても較べてしまいます。ドラマ版では上川隆也演ずる寺坂吉右衛門が主人公で瀬尾孫左衛門(香川照之)が親友だったのを、映画版では逆に孫左衛門を主人公にして、さらに可音がらみのエピソードだけに絞り込んだのは時間の都合上仕方ないと思いますが、そのせいで寺坂と瀬尾の友情の描き方が不十分です。また可音の桜庭ななみというキャスティングは悪くなく、役所広司演ずる孫左との淡い恋情などはよく描かれているとは思いますが、前後の状況説明が足りないため最後の切腹の説得力が減じている気がしてなりません。せっかく寺坂に佐藤浩市という実力者を配したのに実にもったいない。やはりドラマ版のように寺坂を主役にした方が物語が理解しやすい気がしました。ただドラマ版を知らずに映画を見た人にとっては、「こういうものかな」と素直に受け取れるかもしれません。 [映画館(邦画)] 4点(2010-12-21 22:11:58)(良:1票) |