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1.  ザ・クレイジーズ(1972) 《ネタバレ》 
“THE CRAZIES”『狂気の集団』。高校生の頃、ゾンビのビデオを借りたら、『ナイトオブ~』と『マーティン』とコレの予告編が入ってました。まぁ~ま、3本とも、なんて面白そうなんでしょう!中でもこの『ザ・クレイジーズ』の期待値は相当高かったです。 細菌兵器が町でバラまかれて、ガスマスクをした全身防護服の軍隊によって隔離される。住民は反発して暴れだし、軍隊は容赦なく銃を向ける…あぁ、きっとそんな話だな。怖い怖い!「ザ!…クレイジィ~~ズ!!」ドキュメンタリータッチの映像と予告のナレーションが凄く合っていて、恐怖倍増です。だけど当時、こんなマニアックな映画は近所のビデオ屋に置いてなくて、ず~っと観られませんでした。  観たいと思ってから10年ちょっと。2000年代に入りDVDが売っているのを発見。遂に観ることができました。思えば自分で買った映画DVDの第一号だったかもしれません。ワクワクドキドキ。…感想から言いますと、期待の方が上回っちゃったかなぁ~? この映画を観るまでに、カサンドラクロスとかアウトブレイクを観てしまっていて、恐らくこの映画に求めたモノは、もうある程度満たされてしまっていたんですね。作中のディテールに光るものは多数ありましたが、全体的にのんびりした展開で、緊張感があまり感じられず… メインは主人公たちの逃避行なんですが、軍は彼らを執拗に追うでもなく、パトロールしてる軍隊と場当たり的に戦闘して逃げて。を繰り返してる印象。町の中心から、隣町とかに行けばゴールなんだろうけど、どこまで進んだかも掴めない感じ。最後のブロック積んで隠すところも、何でそこ?って思うし、時々隙間から手を出すとことか、特にハラハラしないし…  ドキュメンタリータッチな映像はゾンビに通ずるものがひしひしと感じられます。感染者はいろんな行動をとります。狂暴になって非感染者に襲い掛かったり、焼身自殺をしたり。だけでなく幼児退行したり、草原にホウキ掛けしたりと様々。 妻殺しや神父の自殺、父と娘の近親相姦シーンを入れるところは問題児ロメロ監督らしいです。 ガスマスクの兵隊も釣り竿盗んだり好き放題。末端の兵士は状況を知らないのに、逃げる住人撃ち殺したり、重症の感染者を生きたまま焼いたりと手加減なし。マスクしててもじわじわと感染してたのかもしれないけど。 主人公と恋人(妊娠中)が無事逃げられるか?がメインなんだろうけど、時間とともにストーリーを忘れてしまってます。ちょっと微笑ましかったワッツ博士と助手の年配女性の恋模様や、大佐の全裸着替えとかは覚えてるのにね。 数少ないロメロ監督作品の一つで、cult的人気がある作品です。悪い映画じゃないけど、予告編の出来が本編を上回って良すぎでした。
[DVD(字幕)] 5点(2024-12-21 23:14:27)
2.  サルバドル/遥かなる日々 《ネタバレ》 
“Salvador”スペイン語で『救う者』。男性名詞のElが頭に付いて国名『エルサルバドル』になる。プラトーンの大ヒットを受けて、オリバー・ストーン監督の一つ前の作品ですが、日本で劇場公開されました。私もプラトーンに衝撃を受けた影響で本作も劇場で観ようと思いましたが、上映期間が短かったため、レンタルビデオになりました。劇場で観ていたら、恐ろしすぎてトラウマになっていたかもしれません。ビデオでも充分怖かったです。今日まで再視聴しようって気にならなかったくらいですから、充分トラウマ級です。 戦争だと、敵と遭遇すると殺される危険性が理解できますが、内戦って、いつ、どこで、誰に殺されるかわからない。市民を殺しているのも右派の政府軍。こんな怖い国が、アメリカと地つづきで、騙された友人を乗せたボロ車で、ふらっと行ける距離にある。恐ろしいですね。ボイルたちがエルサルバドルに入国して以降、ずっとテンション張りっぱなしで観てました。  セジュラ(許可証)がないからと殺される青年も、処刑場の死体の山(新しいのから古いのまで)も衝撃でした。あまりに辛すぎて参ってしまいますが、友人ドクが清涼剤として機能していました。尻に注射打たれるシーンとか、いけ好かない女性リポーターの飲み物にLSD混ぜたりと、観てる私を救ってくれてます。 ボイルのアロハシャツにも注目です。南国とはいえ内戦で荒れた国に、能天気にも柄違いのアロハを6着ほど持ってきたみたいです。スマートでチャラい役のジェームズ・ウッズにアロハがとっても似合ってます。 また現地の恋人マリアも、ボランティアのキャシーも共にキュートです。エルピディア・カリロはプレデターでもヒロインやってましたし、シンシア・ギブは当時の映画雑誌(特にロードショー)の表紙に何回か出ていて、ダイアン・レインやリー・トンプソンと並び、新時代のアイドル的存在でした。それだけに、彼女たちに待ち受ける運命があまりに酷い。  キャシーを含む修道女のレイプはかなりショックです。当時ゴールデン洋画劇場で(このシーンも)放送されたので、記憶に焼き付いた人は多いかと思います。劇中キャシーの献身的な姿を観ているため、殺されると解って十字を切る姿、その後土の中から掘り起こされる無惨な姿が本当に痛ましい。この事件は実際に起きた事件で、最高齢のシスターは68歳だったそうです。 国境で殺されそうになるボイルが、間一髪助かった後、自分を殺そうとした連中と笑顔でビールを飲む。狂気です。この国の全てが病んでるって思えます。その病んでるちっぽけな小国の政府軍を、レーガン新政権が強力に支持していた事実。まだネットのない時代、まだ世界が広大だった時代。映画から学ぶことって沢山ありました。
[ビデオ(字幕)] 7点(2024-12-08 22:33:33)
3.  さかなのこ 《ネタバレ》 
さかなクン(男)を、のん(女)が演じる。…なんで?どんな理由があるの?って、ここに食い付いた人も多かったと思う。 始まってすぐに『男か女かは、どっちでもいい』って、一番期待ハズレの解答が来ました。ウソでも良いから何か理由を用意してほしかったかなぁ。でも私のことだから、物語を散々引っ張った挙げ句、最後の方で『実はどっちでもいい』って結論になったら、それはそれで、残念な気持ちになったかもなぁ。  この映画、好きな部分と嫌いな部分がハッキリ分かれてます。初っ端からガッカリした反動で、幼少期は作品のノリに付いていけませんでした。ミー坊の過去に、さかなクンそのものが出てくる意味が解らず。このギョギョおじさんって、さかなクンのモトになる人が実際に居たんだろうか? ミー坊が捕まえた巨大な“タコさん”。お母さんの許可で飼うはずだったのを、お父さんがビッタンビッタンと殺す(絞める)…イヤちょっと、子供も観る映画っぽいのにさぁ、なにこのブラック・ユーモア。 再登場のギョギョおじさん。今度はお父さんが遊びに行っちゃダメというのを、お母さんが行っていいと許可する…イヤちょっと、子供も観る映画っぽいのにさぁ、なにこの犯罪誘発臭。実話だとしても、どうしてこう、観てて消化不良起こしそうな、児童性犯罪を連想させるエピソードを入れたのか?映画オリジナルか?原作の自叙伝を読めば納得できるのか?映画は映画で完結してほしいものです。 モモコが好きとハッキリいうミー坊を、男の子たちが「エロス!!エロス!!」とからかうとか、冒頭『どっちでもいい』と書いてた割には、性に関するエピソードを入れてくる。  青年期に入り、いよいよのん登場。ヤンキーの抗争に巻き込まれるのも、ほのぼのというか、漫画チックというか…どうにも方向性が私の好みではない。でも、この映画を小さい頃に、児童集会とかで友達と観てたら、きっと楽しめたかもしれない。 内心“子供向けな映画”と切り捨てながら観続けて、カブトガニの散歩あたりから、不思議と面白く感じてきたのだ。のんが本物の活きたアジを捌くところから、序盤のノリで終始フザけてるだけの映画じゃないように観えてきたんです。 …いや相変わらずフザケちゃいる。服切らないでアミ買ってこいよ。歯医者の要求に応えたい→大きな鯛を捕まえる→でも水槽にはマニアックな地味な魚…何この雑なエピソード?相変わらず構成は決して上手とは言えない。  調べたらミー坊の子供時代も女の子でした。ミー坊の性別は徹底して女性でしたが、上京してようやく、さかなクンをのん(女)が演じた効果が発揮されます。 ヒヨが彼女とのディナーにミー坊を呼ぶ。一見、両手に花のヒヨだけど、ミー坊は男の子。ミー坊と彼女で三角関係とか、無いのだ。頭が軽く混乱する。 ミー坊のアパートにモモコと連れ子が押し掛けてくる。川の字で寝る3人。一見、女友達のお泊りだけど、ミー坊は男の子。連れ子が居るとはいえ、内心ドキドキ展開なハズだけど、映像からはそんな事、思い浮かばないのだ。ますます混乱する。 さかなクンをのんが演じることで、男女間のエピソードが脳内で反転し『なぁんだ、さかなクンもただの男じゃん』ってならず、男女間の友情という妙なバランスをしっかり保ち、さかなクンの存在を際立たせることに成功している。 金銭面で無理してるミー坊と、モモコが出ていく場面は、お互いの性別を超えた思いやりと悲しさを見事に表現していました。後半はもう、素直に良い映画だと思います。序盤のイマイチさを、後半見事に盛り返した印象です。  映画を観て、さかなクンについて、思ったことがある。ミー坊は魚のことを「◯◯さん」と呼ぶよね。「タコさん」とか「アジさん」とか。これって、さかなクンは大好きな魚を“異性(女性)”として考えてるから、“さん付け”なんじゃないだろうか? だから男性の自分は「さかな“クン”」なんじゃないかな?更に、恋愛の対象じゃない友だちを呼ぶ時は、男も女も「ヒヨ」とか「モモ」とあだ名や呼び捨て。 なんかこう考えると、冒頭の『男か女かは、どっちでもいい』って言葉に、意味があるような気がしました。いや『どっちでも』良くはないと思うけど、この映画に関しては、さかなクンをのんが演じて良かったと感じています。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2024-12-03 22:40:18)
4.  サンキュー・スモーキング 《ネタバレ》 
“Thank You for Smoking”『喫煙してくれてありがとう』。 この映画のおかげで(せいで?)“ディベート”に興味を抱き、自分の中で賛成意見と反対意見を考えて競わせる…なんて脳内遊びをしてましたね。困ったことに人の話を聞いている時にも、相手の主張と逆の視点で考えてしまい、それをつい口に出して、相手を不快にさせてしまったことも…。私のレビューで、酷評書いてるのに点数は高かったり…なんてのがあったら、脳内ディベートの弊害ですね。  ケーブルテレビでやっていたのをたまたま観ました。軽快なテンポでとても面白かったです。なのでDVDを買って改めて観たんだけど、なんかイマイチ。原因は字幕でした。思えば当時ケーブルで観たのは吹替版でした。字幕ではニックのマシンガントークが、端折られた字幕に殺されてるのもあるんだけど、字幕だと私が一番好きなEGO社の一連のシーンが、あまり面白くなかったんです。ここではニックは聞き役で、社長のジェフと助手のジャックの軽快なトークが面白く、吹替版でこそ面白さが伝わります。ってか、字幕が酷すぎだと思います。文字で内容は伝わるけど端折りすぎててニュアンスが伝わらない。これじゃ映画の内容も薄っぺらく感じます。 かなり日本びいきのジェフ社長と、EGO社でデカデカと流される、シャチがアシカを襲う映像。俳優にタバコを吸わせて、観る人にカッコいいと思わせるように、シャチの残虐性を見せつけて、反捕鯨をひっくり返す印象操作の一環なんでしょうかね?  でもこの映画の主題は喫煙の善悪ではなく、語り手の腕次第で人の印象がどう変わるかです。遊園地でジョーイと『バニラとチョコ』のディベートをします。「お前を説得したいんじゃない、ターゲットは彼ら(大衆)」。物事の善悪を何が決めるのか、とてもわかり易かったと思います。上院議員のように、強い意志を持って何かを決める意見は“個人の選択の自由”と言う反対意見…というか寛容な逃げ道には勝てない、大衆は選ばない。でもこの映画で大事なのは、“個人の選択の自由”って結論に至るまでの、話の組み立ての過程で、そこが字幕版では欠如していたように思います。…ディベートを扱った映画なのに。  私は選べるなら字幕を選ぶ派ですが、この映画をたまたま吹替版で観たから、素直に面白いと思いました。でも字幕で観ていたら、そこまで良い印象は無かったかもです。また最初に観た方(吹替)で良い印象を持てば、後から観た方(字幕)がイマイチでも、その作品自体の評価は変わらないものです。他の映画でも同じことが言えるでしょう。観るなら字幕か吹替か。最初に観た方の印象って大事だってことを、この映画から学びました。 ちなみに、この映画を観たときには、私は禁煙に成功していました。なので劇中に出てきたニコチンパッチの恐ろしさは重々承知しています。…説明書に書いてましたが、パッチしたまま寝ると本当に悪夢を観られますよ。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2024-11-24 11:38:18)
5.  さすらいのカウボーイ 《ネタバレ》 
“The Hired Hand”『使用人』…いや解るよ?解るけど、それタイトルにする? 太陽光を受けてキラキラした水面と、水浴びしたり釣りしたり、遊んでるわけじゃないんだろうけど、少なくともきちんと定職についてない3人組。そこに流れるヒッピー・ムーブメントを感じさせる気怠い音楽。 普通にイメージする西部劇とは何か違う。初っ端、溺死した少女が川を流れてくるのなんて、この映画のその後の、どこに繋がるんだろう???  「3人で西海岸行こうぜ!」「カリフォルニアだぁ!ハッハッハ!」「…やだ」「…え?」「お家帰る」「えっ!?」7年も放浪して、時間の無駄だったと思い立って、今さらながら捨ててきた女房のもとに帰るハリー。それに付き合うアーチ、彼とはもう女房より長い付き合い。 夫は死んだものとされている女房ハンナの家で『使用人』として働く2人。「ハンナは『使用人』とも寝るんだぜ?良かったな!ハハハ!」街で誹謗中傷を聞き激怒する2人。ピュアな男たちと現実的な女。あの当時の女だって、いくら西部開拓時代とはいえ、一方的に出て行った夫をいつまでも待っているほど優しい世界じゃない。  「俺やっぱ海見てくるわ」アーチが選んだ男のロマン。「彼を助けたら戻ります」「最初から計画してたんだろ?あんた絶対戻らないわ」ハンナはハリーが心の奥底で、アーチを追い駆けたい気持ちを察していたんだろうな。 最後、アーチの腕の中で、ハリーはやっと、追い求めていた自由を手に入れる…そういう解釈でいいのかな? 男2人の友情。その2人の終着点の違い。オートバイでフロリダを目指したイージーライダーと、馬でカリフォルニアを目指した本作って、敢えて対になるように創ったのかも。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-10-22 23:09:27)
6.  侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 
公開されてから結構な日数が経っていますが、思った以上の人の入りでした。客層は若い方はまばらで、私より二回りほどご年配の方が多くお見受けされましたね。 春からBSで再放送されていた朝ドラ『オードリー('00)』を観ていたので、たまたまチャンバラ映画末期の京都撮影所の内情に、多少の理解がありました。時代劇は映画からテレビへ、そしてテレビからも消えてゆく。'11年に水戸黄門の放送が終わり、人知れず地上波から時代劇が消えていたようです。 『幕府滅亡から140年』滅亡が1867年だとして、舞台は現代ではなく2007年くらいのようです。優子がスマホでなく携帯を持っていたのと、『子供の頃友達がセーラームーン('92~)を…』と言っていたので、大体その頃かな?って思って観ていました。あとから沙倉ゆうのさんの実年齢を知って驚きました。せいぜい30歳前後かと…  さて、幕末の京都から同じ京都太秦の時代劇撮影所へ。侍の格好した人が歩いていても珍しくない場所に来ちゃったから、周りからはちょっと風変わりな役者だと思われる高坂。戸惑いながらも徐々に時代を受け入れて、切られ役として第二の人生を歩みだす… 自分だけこんな平和な時代に来て、真っ白な握り飯を食べることに涙する高坂に、私も何故か涙が出ました。ベテラン俳優風見の登場に『そう来たか』と思い、幕末と真剣にまた涙が出ました。最後の闘いはとても迫力があり、息を殺して観ていました。幕末の会津藩士の思いと、終わりゆく時代劇への思い。それぞれの立場で一生懸命に役目を全うしようとする人たち。私には泣ける一方な映画でしたね。  最初は“タイムスリップあるある”で笑いを誘うところですが、会場は思いのほかウケてましたね。『え!え?今のコテコテのネタ、そんなに面白い?』って戸惑ってしまいました。鑑賞中は確かに『ここって実は、後々の伏線で、それを知ってる人が笑ってるのか?』って勘ぐってしまいました。 この映画はもともと、ある程度ご年配向けに創られた映画なのかもしれません。そう、寅さん→釣りバカシリーズ辺りまでは、映画館に足を運んでいた世代の方々。そんな方々が、久しぶりに映画館に足を運びたくなるような映画だったのかもしれません。そこを見据えてユーモラスな効果音とか「すべる、落ちる」の寅さん定番ネタを入れたんでしょうね。最近のスタイルで、家で独りでDVD観てると、面白くても笑わないんですよね、ニヤリとはするけど。振り返ると、ご年配の方々は“面白いシーンは声出して笑う”という、当時のままの楽しみ方をされているんだなぁ。と思うに至りました。   もっと素直な気持ちで楽しむ映画でした。この時代に来たばかりの高坂には、コンクリの建物やワゴン車が目に入っているだろうに、そこはスルーしてます。確かにいちいち全部に反応していたら、一向に話が進まなくなるし。でも病院から一晩、独りでさまようのをしっかり観せないのは、その間彼が何を知って、何を知らないのかが解らなくなり、映画を観てる私との間にちょっぴり溝が… 上の方で2007年と、wikiにも出ていた時代設定をわざわざ得意げに書いたのは、鑑賞中、そこにもうひと捻り理由があるんだろう。と思ってしまったからです。更に先の時代があったり、逆にモトに…だったり。あと映画の途中もう一人の存在に触れたことで、そこも気になっていて、どこかに絡む前フリだと思っていました。そう、私は勝手に、この映画には驚くような仕掛けがあるんだ。と思ってしまっていたわけです。ネット記事の「某映画の再来…」という見出しが、私のハードルを少し違う方向に上げてしまったようです。失敗。 あとですね、今回始めて去年出来たTOHOシネマズで観たんですが、セリフと画が微妙にズレてて、ちょっと気が散りました。このズレ、どこで観てもそうなのかな。(※これは評価に含めてません)
[映画館(邦画)] 6点(2024-10-20 23:57:09)
7.  3-4X10月 《ネタバレ》 
このレビュー書くまでタイトル読めなかったす。“3-4X”が野球のスコアだそうで、雅樹が代打ヒットを打った試合のスコアがコレ(※劇中のボードには3-4とは書いてない)みたい。10月は、当初10月公開予定が9月に前倒しになった。とのことらしいが…? 北野監督作品の第2作。日常の中の暴力。どんどん壊れていく歯車。東京の日常と、沖縄の非日常の描写が美しく、いかにも北野監督らしい持ち味が充分に発揮されていて、やっぱり才能のある人なんだなと感じさせてくれました。  本作の目玉は、俳優としては素人同然のたけし軍団をメインキャストに据えていることだと思います。更に掘り下げると、たけしもこの当時、映画監督業や、世界まる見えや平成教育委員会のような教養番組の司会業兼お笑いにシフトしていた時代、たけし軍団の人数を活かした、ドタバタした笑いに限界を感じていたんでしょうか。本作はたけし軍団の“解散記念作品”として制作されたそうです。 そもそも軍団は最初の弟子8人(+結成後の2人を入れた10人)が、元祖たけし軍団と呼ばれているようです。この人数なのは、たけしが『野球チームを作りたかったから』というのもあったようで、映画のイーグルスはたけし軍団を表していたんでしょう。レギュラー9人に、代打の雅樹を入れると、ちょうど10人。監督役のガダルカナル・タカがたけしの役で、ぴったりたけしと元祖軍団になってます。 沖縄に行く前の最後の試合は、代打含めた全員野球で、結局は3-4で、惜しいけど負けてしまいます。この“惜しいけど負けた”というのが、軍団の最終評価、解散の理由としたんでしょうね。  じゃあ、タイトルの10月ってなんでしょう?映画の公開が後送りになるのは解るけど、前倒しになるなんて、あるんでしょうか?私は、最初から9月公開は決まっていて、10月=解散した軍団のその後を表していたんだと思っています。 最後、殿…じゃなかったタカの敵を打とうと軍団がヤクザ事務所を襲います。返り討ちにあっても、タンクローリーで特攻します。この辺ちょっと、フライデー襲撃と被りますね。でもそれは夢オチということになってます。何もなく野球を続ける軍団たちで終わります。この夢オチというのも、最後の特攻バッドエンドが、前作“その男…”の最後、全滅バッドエンドと被ってしまったのと、結局軍団は解散しなかったことに繋がるんだと思いました。 解散記念映画を創って、10月からは軍団を離れて、各自華やかに自分の才能を開花させろよ?みたいに〆ようとしたけど、軍団はまだまだピンとしては実力不足。10月に入った後も、今まで通りの殿と軍団の関係が続いていく。…なんか、「前倒しになって9月公開になった」って理由は、格好つけようとして格好がつかなかった、たけしの照れ臭さがあるんじゃないかなって思ってしまいました。
[地上波(邦画)] 7点(2024-09-15 16:17:15)
8.  13デイズ 《ネタバレ》 
“Thirteen Days”邦題まま。ギャリソン検事の記憶もまだ新しいウチに、今度はオドネル補佐官を演じるケビン・コスナー。ケネディの時代を掘り下げる、史実に基づいたドキュメンタリー映画です。 思えばこの作品が公開された時代、CGが日進月歩の進化を遂げて、色んな局面で映像に説得力を増す調味料として活かされていたと思います。ほんの一昔前だと、米ソ(そしてケネディと軍部)の駆け引きが中心の、画的にとっても地味な映画になったと思いますし、映画の冒頭、モノクロシーンを入れたりするのも『新規撮影部分に実際の記録映像を混ぜて使いますよ~』って思わせる前フリに感じました。  ところが、RF-8クルセイダーなんてマニアックな機体が、短時間だけどスピード感満点のCGで入ることで、動きの少ない事件なのに、活き活きとした映画になっていました。ここなんて別に、モノクロの前フリにならって、当時のクルセイダーの飛行映像を繋ぎ合わせても良かったのに、そうしない拘りっぷり。 振り返ると、当時の記録映像使ってるなぁってシーンが、驚くほど少ない映画だったんじゃないでしょうか?トータル5分も無いかも?ほぼ新規撮影&CGで再現。これって、ずっと昔からあった歴史ドキュメンタリー映画というジャンルの、新しい表現方法じゃないでしょうか?同じケビン・コスナーの主演のJFKから、僅か9年で、これだけ映像表現に広がりが出たんだなって感じました。カメラワークが過剰になる前のCGって、良いアクセントですよね。  夜のソ連大使館の煙突からモクモクと上がる黒煙。この歳になると、直接的な死の描写だけでなく、こういう演出に強い恐怖を感じます。これから起きることを想像する恐怖。自分の世界が壊される恐怖。 映画ならではの演出として、ソ連との戦争回避の光が見えた途端、軍部の挑発行為がブチ壊す。こんなタイミングの良さはきっと、映画ならではの演出部分…だとしても、映画的味付けの妙ですね。とても観ごたえがありました。
[映画館(字幕)] 8点(2024-06-04 22:28:49)
9.  ザ・ファーム/法律事務所 《ネタバレ》 
“The Firm”『事務所』だけど『堅固な』って意味もあるようで、ランバート法律事務所の、内に入ったら抜け出すことの出来ない呪縛も表しているのかも? 人気絶頂のトム・クルーズが、アイドル映画から社会派映画まで何でもこなしていた時代の、どっちかって言うと社会派の方の映画。優秀なミッチが高収入の法律事務所に入社して、社内の陰謀に巻き込まれていくサスペンス。事務所を辞めようとしても殺される。仕事を続けたらFBIに捕まる。こんな四面楚歌をミッチはどう乗り切るのか?  静かな前半と比べて、後半ビルの窓からトラックに飛び降りるわ、倉庫の天井のパイプに掴まってキックかましたりと、ミッションインポッシブル並みにアクロバティックなアクションも楽しめます。アビーの時間稼ぎが良かったです。対するエイヴァリーの悟りきった最後も良い。  ただ最後マフィアは手付かずにしたことと、FBIがあまりにミッチの掌の上で転がされすぎてて…ミッチってこんな有能な男なのに、海岸の美人局にあっさりハメられる辺り、ストーリーのバランスはイマイチなのかも? 合法的に解決するのは良いんだけど、もう一つどこかスカッとさせてほしかったかなぁ。マフィアがあのまま大人しく手を引いてくれるとは思えなくて…
[ビデオ(字幕)] 5点(2023-08-05 18:00:38)
10.  サイコ2 《ネタバレ》 
この当時の名作の続編というと、直球過ぎて期待通りだけどマンネリであったり、変化球過ぎて前作の良さが全く活かせてなかったりだったように思います。なぜなら前作が、一つの作品として完成されているため、その路線上に面白い続編の入り込む余地が無かったんでしょう。 またネームバリューでそこそこお客が入る安心感からか、1つの作品として創り込みが足りなかったり、前作にあった新鮮さや新たな驚きが無いものが多く、それこそエイリアン2が誕生するまで、続編の名作と呼べるものは、数えるほどしか無かったと思います。本作はそんな数少ない続編の名作の一つだと思います。  あの巨匠ヒッチコックの、1・2を争う代表作の続編、しかも公開から22年も経っているとなると、正直安易には手を付けにくい作品だったと思います。それなのにタイトルを撚ること無く“Psycho II”にしているのは、なかなか強気な判断だったと思います。前作から引き続きアンソニー・パーキンス本人が出ているのはもちろんとして、ヴェラ・マイルズ(当時あまり劇場映画に出ていない)までも引っ張り出してくるあたり、続編映画のお手本と言えます。 前作の、あの超有名なシャワーシーンから始まります。ベイツの屋敷がモノクロからカラーへ。前作からの引用はここまで。大金の話や母親の登場シーンは出しません。本作を観てからでも充分に前作を楽しめます。 屋敷同様、歳を重ねたノーマン。社会復帰を目指すノーマンと、それを許さない、かつて姉を殺されたライラ。真っ当に生きようとするけど、過去を忘れさせまいと現れる母の影に怯え、苦悩するノーマン。映画を観る人はバイト先の同僚メアリーの視点で観るから、ノーマンの葛藤が伝わる。そして起こる新たな殺人。メアリーの秘密…2回目観ると、ノーマンがサンドウィッチを切るシーンのメアリーの表情が凄く良い。シャワーシーンの時の彼女の表情も素晴らしいけど、狂っていくノーマンが電話で命令を受けた時の、屋敷に押しつぶされそうなメアリーを映すカメラの秀逸さは必見。  私は前作より先に本作を観ました。メグ・テイリーの“となりのお姉さん感”が良かったです。黒髪で東洋系の顔つきで、中学時代の私の友だちにそっくり。そしてあの音楽。ジェリー・ゴールドスミスの悲しげな曲が素晴らしいですね。全体を流れる幽霊ものっぽさ。銃を極力使わない脚本。アメリカ映画というより、日本的な作品に思えました。 ライラもノーマンもメアリーも、とにかくみんな可哀想。あんな怖い体験をしたから無理もないけど、22年前から時が止まっているライラ。あれだけ忌み嫌っていた精神病院に22年も入れられ、再出発しようにも過去に引きずり戻されていくノーマン。裏目に出てしまったメアリーの判断。  事件が解決してからのまさかの展開は、正直蛇足感も感じましたが、それをブチ破るスコップの一撃。え?紅茶を飲ませたのに。 今まではノーマンの中の母・ノーマが殺人を犯していました。だけど本作ではノーマンもノーマも誰も殺していません。そしてノーマンが自分の意志で殺人を犯すのって、母に対してだけなんです。
[地上波(吹替)] 9点(2023-07-24 23:57:46)
11.  サイコ(1960) 《ネタバレ》 
“Psycho”『精神病質者』。'60年の日本で“サイコ”って言葉がどれだけ通じたか知らないけれど、原題をそのまま使うとは思い切った決断だったと思います。憶測だけど、この映画の影響で“サイコ”という言葉が日本で浸透したんじゃないでしょうか? 私が小さい頃、テレビで放送される映画はカラー作品ばかりで、これだけ有名な作品でも放送されることはなく、高校に入ってから、レンタルで観たんだと思います。でも観る前からテレビの『ホラー映画特集』とかで、この映画のハイライトシーンは観ていました。  サイコのハイライトといえば『女の悲鳴』シーンと『母親登場』シーン。 DVD特典の当時の予告編から『シャワー中に女性が悲鳴を上げる』シーンがあることは、当時の観客も知っていたと思います。 だけど有名な『母親登場』は、御存知の通りこの映画の最高機密となっていて、きっとリアルタイムで観た人は、意外な犯人に驚いたことでしょう。物言えぬ母親の画。女装したノーマン。最後の精神科医の説明が、一般人の疑問の隙間を埋めてくれます。そしてリアルな母親の死体のショックからクールダウンする時間を与えてくれます。素晴らしい。  映画を観る前から結末を知っている私が、この映画で驚いたのは、序盤からノーマンではなくマリオンが主役で、彼女の突発的な犯罪を、映画のおよそ半分を使って、しっかり追いかけたことです。こんな映画だったなんて知りませんでした。 だけどクライム・サスペンスだとしたら、マリオンの犯罪はあまりに愚図愚図です。具合が悪いと会社を早退したのに路上で会った社長に笑顔。仮眠のつもりが寝過ごして警官に起こされる。逃走の車を買い替えるところをその警官に見られ、試乗もしないで700$もの大金をキャッシュで出す。宿帳に偽名で書いたのに、うっかり実名を伝えてしまう。成功の見込み無しの犯罪。  私にとって予想外だったクライム・サスペンスは、有名な『女の悲鳴』を境に主役が入れ替わり、殺人映画に。そして当時の人にとって予想外だったであろう、サイコ・スリラーに様変わりします。 つまりこの映画の本当に凄いところは、『母親登場』の最後ではなく、その最後に至るまでの過程の方にあるのでしょう。愚図愚図なマリオンの犯行と、4万$の行方にヒヤヒヤし、今度は異常な母親の犯行を隠すノーマンの気持ちになって、マリオンの死がバレないかとハラハラします。だからこその、そして最後は…。になるんですね。 沼から引き上げられる車のトランクには、序盤のキーアイテムの4万$と、後半のキーアイテムのマリオンの死体が一緒に入っています。そのトランクのアップで終わるのもまた、一本の映画としてのパッケージングの上手さ爆発です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2023-07-04 22:21:03)
12.  座頭市血煙り街道 《ネタバレ》 
シリーズ17作目。しかし5年で17作って、当時の日本映画のハイペースさに驚くばかり。 座頭市観るのは2作目だけど、劇中突然歌い出したのには驚いた。シリーズを重ねるうちにそういう映画になってたのか? 歌は花のさだめ(2番)。歌うは中尾ミエでございます。本作公開が12月、レコードが年明け1月に出ていたようで、何かコラボだったんでしょうかね? 歌には驚きましたが、市のキャラクターは安定して魅力的。前観たのでは「メクラ」「ドメクラ」とイイように言われていたけど、ゲスト俳優からは「目の不自由な人」「おメクラさん」と、ちょっぴり配慮が見られた。  本作は小さな子供とのふたり旅。これがまた結構な悪ガキなもんだから、市相手に悪戯を仕掛けるんだけど、石ころの頃にはお互いに悪戯合戦になっていって可愛らしい。母・おみねの似顔絵を市が庄吉に見せるシーン。良太は悪戯のつもりで市を描いたんだろうけど、使われ方が上手くホロリと来る。  権造一味との殺陣の華麗さは見事。シリーズも回を重ねると、目新しさを出すのも大変だろうなぁ。 実力伯仲の赤塚との真剣勝負。市が庄吉を守るために刀を投げてしまう。他人の親子を救うために無防備で立ちふさがる市が格好いいし、対する赤塚が自身の負けを認めるのも格好いい。
[インターネット(邦画)] 6点(2023-05-31 23:30:32)
13.  座頭市喧嘩旅 《ネタバレ》 
初・座頭市。いや面白いわ。勝新太郎といえば丸々っとした中年男の印象しかなかったけど、思ってたのとぜんぜん違う。最初の賭場から格好良い。「暗闇ならこっちのもんだ、見当付けて斬ってきな!」台詞もバシッと決まってて、痺れるわぁ~。 続き物で、前作と繋がりがあるのか、各話単体の話なのか解らないけど、この話だけでも市がどういう人物か充分に理解できる単純設計。普段の穏やかな口調と、啖呵を切る迫力の落差が凄い。  居合斬りの格好良さだけが売りではなく、籠屋の親分とのお美津を取り返すやり取り。堂山の彦蔵との値段吊り上げのやり取りから、市の一筋縄ではいかなさが滲み出ていてまた面白い。 そしてお久がなんか良いなぁ。悪者側の女だけど、つくづく男運が悪いというか要領が悪いというか。憎めない人物像が好感。  驚くほど出てくる『メクラ』って言葉。私の子供の頃は、まだあった言葉だなぁ。反対の言葉は『メアキ』って言うのか。「やぁ~い、メクラだメクラだぁ~」って追いかける子供、それ見て笑う大人。…こりゃ今の世の中じゃ地上波でも衛生でも放送できないか、こんなに面白いのに。『胡麻の蠅』とか普段聞かない言葉も出てきて、勉強になるなぁ。 本作は五作目。座頭市は作品数も多いけど、他の作品もこれくらい良く出来た娯楽映画なのかな。観てみたくなった。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-03-04 12:48:38)
14.  最強のふたり 《ネタバレ》 
“Intouchables”『触れ合わない人たち』かもしれない。“Untouchable”のフランス語です。 翼くんと岬くんなんかを連想しそうな邦題は、『2人の間の不可侵な友情』を表しているんだと思います。ただもしかしたら、『接点が無く会う筈のない2人が出会った結果、こんな事になるんだよ』って意味のタイトルかもしれません。 疾走する高級車とパトカーのチェイス。命の危機って感じの深刻なOPから、もうすっかり騙されてしまった。  全身麻痺の大金持ち相手に、どう付き合うかを考えたら、やっぱり私も辞めていく側の介護士みたくなるだろうな。フィリップはもともと障害を持っている人じゃないから、その部分に対する必要以上な気遣いとか、もう沢山って感じだったんだろう。かといって何かが出来る身体でもないので、不満を持ちつつその生き方を受け入れていた。障害者になってから、自分の行動を自分で決められないイラつきを介護士にぶつけていたところ、ドリスが現れて、立場お構いなしにメチャクチャいじられて、ズケズケと物を言われる。 健常者の頃は当たり前だった他人との距離が、ドリスの登場で取り戻せたんだろう。足に熱湯掛けたり、マリファナ薦めたり、オペラで爆笑したり、髭剃る時ヒットラーにしたり、笑っちゃいけないことに笑ってしまう。  エレノアに障害を隠した写真を送ったフィリップに感じる人間臭さ。あれだけの大金持ちならフラれる可能性こそ少なく思うけど。『彼女は車いすの自分を見て同情するんじゃないか?』という不安が湧いたんだろう、もともと障害を持っている人じゃないフィリップらしい不安。この恋の行方がハッピーな方に進んだのも良かった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-01-10 23:20:49)
15.  ザ・フライ 《ネタバレ》 
チーズバーガー! - The Fly - “蝿” 当時の体液ネバネバ・ドロドロのホラーSFの代表作。私の同年代は殆ど知ってるんじゃないかなぁ?ブランドル蝿って名前。ギョロッとした目がインパクトあって、でも『台詞のある脇役』って印象のジェフ・ゴールドブラムが、いよいよ主人公として登場だ。最終形態のブランドル蝿より、生ブランドルの方がインパクトが強いと言っても過言ではない。 そしてこれまた大きな目と大きな口が印象的なジーナ・デイビスがヒロインときた。しかも初対面の怪しい科学者の家でストッキング脱いで渡す変わり者。そりゃ変な虫(スタティス)にストーカーされるわ。  95分の短さで、とてもわかり易く、無駄のないサクサク展開。メインの人物はたった3人。物語も大半が研究室。生きたヒヒが裏返る気持ち悪さと謎。謎の解明にステーキ肉を入れてみる発想。彼らと一緒に謎解きをするようでワクワクする。ホント暇つぶしに観るのに丁度良い長さだから、深夜たまたま放送してたりすると、ついつい最後まで観ちゃうんだよなぁ。 乗り物酔いするブランドルがテレポッドを開発するってのは洒落が効いてるし、最初にチラッと出てきたプロトタイプ・テレポッドも、最後3人合体の場で活躍するし、ストーカーのスタティスまでヒーローみたいに活躍してしまう。  蠅男も完成形より過程状態が怖い。早口で捲し立ててコーヒーに砂糖ガバガバ入れるトコとか、見た目普通なのに怖い。爪が剥がれて白い体液がプチュって吹き出るの怖い。でも一番怖いのはベロニカが巨大な蛆虫を生むシーン。そのクネクネする尾が糸引いてるのが怖い。クローネンバーグ監督のセンスが光る。 チーズバーガー!
[ビデオ(字幕)] 8点(2022-10-21 22:06:04)(良:1票)
16.  さすらいかもめ 釧路の女 《ネタバレ》 
単純にタイトルに惹かれて登録申請してしまいました、すみません。 期待以上に'73年当時の釧路の風景を堪能できます。幣舞橋にはまだ乙女の四季像は置かれていなくって、当然フィッシャーマンズ・ワーフMOOも無い。そして何より人がいる。今は廃墟と言われている釧路市内を、ワラワラ人が歩いているのが凄い。後半チラッと阿寒湖温泉の商店街が映るのも嬉しい。 映画の性質上、恐らくゲリラ撮影だと思うし、観光名所をじっくり観せてくれるわけじゃないんだけど、ホンのちょっぴり当時のナマの生活感が感じられて、今としては貴重なフィルムになっていると思う。 由美が掛ける赤電話の先に、釧路しんくみの旧ビルと現存する電電公社の鉄塔。位置的に佐藤紙店辺りかなぁ?・・・なんて、釧路に思い入れのある方なら、多少観る価値があるかもしれません。そうでない方には・・・  内容はねぇ、何だこりゃ?って話。大作は許嫁の由美が居ながら純子を抱くくせに、由美が大作の夢の為に造船所の社長と寝ると大激怒。それも半分社長に騙されて抱かれたのに、由美が幸薄すぎてあんまりだ。でも愛想の悪い彼女にパブ勤めは不向き。上客の社長を放っぽって大作の来店にキャッキャしてる素人丸出し感。そりゃ社長もあんな仕返しするわな。 結局、大作も純子も由美も、最初より条件悪化して振り出しに戻る。そんな、北国東方最果ての街らしい、ジメッとした寂しい終わり方でした。  日活ロマンポルノってことで、お色気がメイン。当時はモザイクでなくボカシ(そういや映画の場合モザイクって使わないっけ??)。そのボカシの入り方が大きくて雑なのが面白い。今の基準だと“そこボカシ無くても何も観えなくない?”ってシーンでも入っているボカシ芸に関心。場面に合わせてボカシの色も変えてくる丁寧さ。枯れ草も徐々に見え始める大草原で絡み合う大作と純子。そこに色鮮やかなグリーンのボカシ。カメラが引くとボカシも薄れて消えていく。なんか“私はいま、ロマンポルノを観てるんだなぁ”って気持ちになる。それでいて蘭子(二條朱美)の豪快な脇毛。当時はそれで良かったのか??
[インターネット(邦画)] 4点(2022-08-20 10:54:22)
17.  里見八犬伝(1983) 《ネタバレ》 
子供の頃CMを観て、「日本映画なのに凄いSF超大作が出来るんだな」って感心したっけ。英語の歌だったし。 初見はテレビだったけど、内容イマイチ覚えていないんだな。最後の決戦で宇宙刑事ギャバンの人があまりにアッサリ殺されて「えぇ!?八犬士弱っ!」って思ったっけ。そのシーン以外すっかり忘れて再鑑賞。記憶だけでレビュー書けば7点くらい付けてたかも?あの歌懐かしいし。  今観ると敵のアジトのセットも、当時のギャバンや戦隊モノの、ちょっと豪華(広い)なくらいかな。チープだけど、ああ観えて結構お金掛かってるし、当時のハリウッド娯楽作にも似たようなレベルのセットはあった。 問題は音。音楽と音響。場違いな軽い音楽と、アニメなんかでよく聞く「キュピーン!」とか「ズバァ!」とかって、有り物のワンパターンな効果音。あの音のせいでチープ感が増してると思ったね。ハリウッド作品は同じようなチープな特撮でも、音で迫力を出すこともある。  この映画のワクワク・ポイントが、静姫のもとに次々と八犬士たちが集まってくるところ。毛野と信乃&浜路の犬塚兄妹の背景は素晴らしかったけど、全体的にダラダラし過ぎ。洞窟にいた2人とか適当過ぎて扱いも雑。どうして1人子供なのかとか、説明があっても良さそうなものなのに。まだギャバンの人の方がキャラが立ってたわ。 第2のワクワク・ポイントが最終決戦。八犬士のカッコいい戦いっぷりに注目したいところ。少年ジャンプ黄金パターンで1人また1人と命を落としていく犬士たちだけど、ホント毛野と犬塚兄妹、あと道節くらいしか印象に残らない最後。136分の長時間なんだから、もっときちんと見せ場を創れたと思うんだけどな。岩を支えるのに犬士2人も使う贅沢仕様。う~ん…  テーマソングを丸々一曲使ったキスシーン…ってか、よく観たらラブシーンだったのね。顔のアップばかり延々流れる不思議な時間を堪能できる。 エンディングは爽やか。みんなの声が聞こえるジャンプっぽさも心地良い。走る馬の上で真田広之(JAC)と手を結ぶ薬師丸ひろ子(18歳のアイドル)凄い。あの状態であんな素敵な笑顔が出せるなんて、さすが一時代を築いた人だわ。
[地上波(邦画)] 5点(2022-07-27 00:32:18)
18.  サスペリアPART2 《ネタバレ》 
-PROFONDO ROSSO- “深い赤=深紅”でしょうか? ホラーなんだけどサスペンス色が強く、同じ監督、同じゴブリン音楽だし、ヒット作サスペリアを名乗りたくなる気持ちは解る。サスペリアと無関係と知らずに観ていたら、オープニングの雰囲気から徐々に『・・・なんか違う』感が充満して、映画に没頭出来なくなるかもしれない。  サスペンスとしてはいまいち引き込まれなかったけど、鏡のトリックは秀逸で、最初見た時たしかに『いまなんか違和感感じた、もっかい観せて』って思った。巻き戻しはしなかったけど、その時感じた違和感に答えがあったのは、あの一瞬で私の記憶にトリックを上手く残せてたわけで、やっぱ上手い撮り方なんだろうな。 当時のイタリアの夜の街並みを、人の目線で観せてくれるから、その場に居るような雰囲気と空気感が感じられてとても良い。 異常に怖いに怖い歩く人形。あれ足がブラブラしてるから、部屋の端から端へ細いロープとかを張って、そこを頭のゼンマイで進むんだろうか? 喉に針刺された緑のトカゲが可哀想。謎の犬の喧嘩は、偶然撮れたから使った?  ヒロイン・ジャンナがかなり可愛いく、キャラが立っている。愛車がポンコツのチンクエチェント。グローブボックスに酒の小瓶。腕相撲でインチキ。自分から家に誘っておいて逆ギレ。2人で車の屋根から降りるの、滑稽でとても良い。顔つきからは想像できないけど、'75年の映画でこんなアニメのキャラみたいなヒロインを出していたのに驚いた。 PART2ってタイトルがどうしても引っかかるけど、先入観無く観たら、サスペリアと甲乙付け難い作品かも?
[インターネット(字幕)] 5点(2022-05-24 20:58:18)
19.  サボテン・ブラザース 《ネタバレ》 
-¡Three Amigos!-“親友3人衆”とかですかね? 最初の ¡ は逆感嘆符といって、強調を表しているそうです。 いやぁ、アミーゴって兄弟じゃなかったんですねぇ…サボテン・ブラザーズってタイトル、馬鹿っぽくて好きです。あの黒くてキラキラした衣装がすぐ連想できて。しかしここでは凄い人気作品なんだ、驚いた。  他の方も書いていますが、プラトーンの同時上映でした。毛色が全然違う組み合わせ。当時「プラトーンって凄い戦争映画演るよ!」って、友達3人誘って行きました。当時は入れ替え制じゃなかったから、サボ→プラ→サボ2周目とみんなで観て、友達は「パルコ見てくるね」とリタイヤ。私だけプラ2周目観て合流。 プラトーンが結構ショッキングだったのか、みんなサボテンの話ばかり。私は『ふふん、ホンモノの映画の良さの分からないガキ共め』…とは言わないけれど、1人だけ砂糖もミルクも入れないブラックコーヒーを我慢して飲んでる気分。あぁ可愛くないガキだったわ。  この映画で一番のお気に入りは歌う木…何あれ? とにかく陽気に体を揺すりながら歌い続ける木が可愛かった。透明の剣士の死ぬところも好き。手首を落とすと舞う砂埃に笑いが止まらなかったわ。 最後は弱い村人が知恵を出し合って、みんなでサボテン・ブラザーズの衣装着て悪党と戦うのに大満足。みんなでやっつけた~!って感じで好き。 印象的な決めポーズにヘンテコなテーマソング「「「ウィアザ スリーィ ァア~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ミィゴッス!!」」」真似するよね。  今回久しぶりに見た。当時よく解らなかった飛行機のジョーク。「あれは遊覧飛行だよ。玉(車輪のこと?)が2つ、ゆ~らんゆ~らんって…」とかって訳だったと思う。今の字幕「あれはメールプレーン(郵便飛行機)だよ。玉が2つぶら下がってたろ、だからメイル(雄)プレーンって…」そういう意味だったのかぁ~。 この映画で一番大好きな歌う木と透明な剣士。全然何の前フリもなく、何の脈略もなく出てきてたのね。アレ無くても良かったんじゃん。 とにかくハッピーな気持ちで観終えられる映画。 私も当時プラ2周目行かないで、サボテンで劇場を出てたなら、こんな映画レビュー書くような人間になってなかったかも?
[映画館(字幕)] 6点(2022-05-23 22:34:56)
20.  サスペリア(1977) 《ネタバレ》 
-Suspiria- 造語らしい。ラテン語の-SOSPIRI-“溜息・嘆き”から来てるとか。発音から日本語カタカナ表記はススピリアに近いと思うけど、サスペンスっぽいつづりのサスペリアに落ち着いたんじゃないだろうか?偶然の産物かも。 「決してひとりでは見ないでください」覚えてる覚えてる、もうCMが怖くって。タイトルといいCMといい、日本の配給会社が頭を捻って良い具合に相乗効果が生まれてたんだろう。  バックグラウンドミュージックのワクに収まらない音量のゴブリンのロック調の不気味な音楽は、一度聞いたら忘れられないインパクト。 そして映像の美しさ。赤、青、そして緑のスポットライト。光の三原色をあり得ないポイントで当ててくるセンス。 不気味というか趣味の悪い洋館。赤い壁と赤い内装。美しいかも?だけど住みたくないわ落ち着かないわ。 ジェシカ・ハーパー顔小っさ。目大っきい。バレエ教室の名門校というのも閉鎖空間っぽくて良い雰囲気。バレエ教室だけに若い女ばかりが襲われる…と言っても犠牲者は3人とダニエルか。 古いもの(洋館、オカルト、バレエ)に、新しもの(ロック、ライト、ホラー、若い女)をミキシング。特に音と色の思い切りの良さ、振り切れ具合が、この映画を当時のホラー映画の中でも飛び抜けた存在に押し上げていると思う。イタリアンホラーの代表作と思っていたけど、何故か舞台は西ドイツ・ベルリン。  ネットで当時のパンフレットを見たけど、映画から切り取った場面写真の美しいこと。漂う名画臭…でも内容は意味不明でチープだよ。 魔女が自分の正体に近づいた者たちを殺していくって内容っぽい。でも追い出したダニエルを殺す必要性はあったんだろうか?スージーに眠くなるワイン(睡眠薬?)飲ませる意味も不明。 発端は単なる好奇心。別に何もされてないけど怪しいからついつい詮索してしまう。謎の正体にたどり着いたら返り討ちにあってしまう。そもそもパットが殺されるまで特に殺人も起きてないなら、パットとサラが余計な詮索をしたために大人しく潜伏していた魔女組織を殺人に駆り立ててしまった訳で… 舞台が西ドイツということもあって、現代の魔女狩りとも言えたナチの残党狩りを連想させる。ってそんな難しいことを考えても意味がないから、映像の美しさとゴブリン音楽の調和を楽しむのが、この映画の正しい楽しみ方。 最後のスージーの微笑みも謎だけど、安堵?苦笑い?魔女に取り憑かれた?
[地上波(邦画)] 5点(2022-05-04 11:11:07)(良:1票)
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