61. 地獄(1960)
《ネタバレ》 う~ん…とりあえず後半の「死後の地獄」はシンプルに、コッチが期待したグロ度・衝撃度というのに達していない描写のクオリティであまり観る価値が無かった、という感じ(時代が時代だけに過度に期待する方が馬鹿なのかも知れんケド)。 とすると問題は前半の「生前の地獄」の方ですかねえ。う~ん…コッチも私には、どー贔屓目に観てもブラック・コメディにしか見えませんでしたですよ。いくら何でも展開運びが雑というかテキトーとゆーか突拍子も無いとゆーか、リアリティの欠片も無いのですよね(そもそもあんなショボい交通事故で幸子が死んだ!あたりからだいぶ首を捻ってましたすよ)。こーまで真実味の無いものから恐怖や凄みを感じ取るというのはチョイ難しい、という気がします。結論的には、前半も後半も結局「地獄」というホドのモノは描けていない、というコトだと感じますですね。 [インターネット(邦画)] 4点(2021-07-29 00:59:59) |
62. 死霊のいけにえ(2000)
《ネタバレ》 定期的に記憶を整理しとかないと都度こんがらがる、とゆーのがあるのでして… ・『悪魔のはらわた』:ポール・モリセイ(アンディ・ウォーホル)のシュールで変なホラー。 ・『死霊のはらわた』:サム・ライミの出世作。散々シリーズ化・リメイクもされてる良作。 ・『悪魔のしたたり』:ジョエル・M・リードのクソオブクソオブクソ映画。史上最低映画の最有力候補の一つ。 ・『死霊のしたたり』:ユズナ&ゴードンの良作コメディホラー。こちらもシリーズ化。 ・『悪魔のえじき』 :公開時は『発情アニマル』というタイトルだったリベンジスリラーの佳作。最近リメイクされてる。 ・『死霊のえじき』 :ロメロ(旧)三部作の三作目、原題『デイ・オブ・ザ・デッド』のこと。 ・『悪魔のいけにえ』:トビー・フーパーの出世作にして史上最高のホラー映画の一角。死ぬ程シリーズ出続けてる。 ・『死霊のいけにえ』:??? ※調べると他にも『悪魔(死霊)のシスター』とか『悪魔(死霊)のささやき』だとか、こーいうのは結構色々ある。 ※余談だが『悪魔のシスター』はデパルマのそこそこな有名作であり、私はこれを観ようとして『地獄のシスター』という全くの別作品を観てしまったことがある(『死霊のシスター』は割と最近の完全なる別作品であり、『死霊館のシスター』のバッタもんなのは言うまでもない)。 ※これも余談だが、アンドレアス・シュナースの代表?作『ヴァイオレンス・シット』シリーズも邦題は『悪魔のえじき』を基本としている(『悪魔のえじき+~』みたいにサブタイトル付くけど)。まあ、どれもどーでもよい出来ではあるのですが… 戯言・冗談はさておきまして、本題は今作『死霊のいけにえ』である。これまた割と最近、同じタイトルの別作品が出て来てしまっていることもあり、上で挙げた作品の中では格段に印象が薄いのも事実であろう。ただ観てみると、ある意味今作を「無かった」ことにしてこのタイトルを別作品に付けちゃった理由もすぐに分かるとゆーか、そもそも何故に今作にこのタイトルが付いているのかもすぐに分かるとゆーか、今作は一言で言うと『死霊のはらわた』の何十番煎じかのひとつ、でしかない(それもごく最低レベルの、という)。 個人的見解としては、殆ど丸パクリなのだからせめて元ネタの精神(スピリット)、つまり「グロ描写はあくまで派手に、それ故のチープさ・粗さはカメラワーク・見せ方といったトコロのテクニックでカバーする」というコンセプトは継承しておいて欲しい(でなきゃ「意味」が無い)と思うのです。今作はソレが全く出来てないのですよね。監督さんよ、お前さんはいつもどーいう心構えで他のホラーを観てるのか、と。(根本的に)中身の無いホラーを表面的に観て満足する、なんざまるでプロでも何でもないですよ、と。色々と「キビシイなあ~」と思っちゃう一作でしたすね。 [DVD(字幕なし「原語」)] 2点(2021-07-18 02:13:03) |
63. シチリアーノ 裏切りの美学
《ネタバレ》 映画としては幾つか、ハッキリとした問題点があるのだが、根本的にはそれはこの題材・お話の前提知識が有るか無いかということに依拠するものだと思う。要は、イタリア人(或いはヨーロッパ人)ならもっと全然面白く観れる、という作品なのだろう。 その意味では、今作に関しては(日本人ならば)前提知識を入れた上で観るべき作品なのは確実だ、というトコロか。今作で特に説明が不足しているのは、主人公ドン・マシーノことトンマーゾ・ブシェッタと、そのボスであるピッポ・カロ、そしてコルレオーネ一家のボス、サルヴァトーレ・リイナとの関係性であろう(下手をすると後者2人は誰がソレなのかも分からないまま終わる可能性すらある)。或いは、そもそもファルコーネ判事がどういう人物なのかとか、終盤に出てくるアンドレオッティが何者なのかとかも殆ど説明はされないので、そこもあらかじめ調べておいた方がよいと思われる。 そこまでちゃんとした前提が入っていれば、リアリティを重視した裁判シーン・対話シーンの演技自体はそこそこ上質であるので、長尺だがそれなりに観てゆけなくもないレベルではあるかと思う。ただまあもう一点、あまり映画的に盛り上げることを重視したつくりでもない(とゆーのが問題の二つ目な)のであり、長いワリにチョイ平坦すぎるよーにも思われるのも間違いないトコロではあるのだケド。 とは言えこのお話は確実に、イタリアの近代史上でも最も重要な出来事の一つだと言ってよい事件である。事実、ファルコーネ判事やアンドレオッティをフィーチャーした別作品とゆーのが既に存在し、それなりの評価を得ていたりもするのだ。ここら辺、機会をつくってまとめて観る、とゆーのも、休日の過ごし方としては決して悪くなく、また有意義なコトだとも思う。 [DVD(字幕)] 6点(2021-07-18 01:56:34) |
64. 事故物件 恐い間取り
《ネタバレ》 CG全開で思いっ切り出てくるオバケ、なんてのからして私の好みからは完全に外れるが、特に前半は全く何にも怖くない、というワケでもない。そして、お話の進め方も面白みが皆無、というホド酷くはない。題材も、物珍しいと言えば物珍しいので、丸っきり内容に興味が持てない、というコトでもない。諸々、最低限のクオリティとゆーのは有ると言ってよいのではないだろうか。 ただ、あくまで最低限、というコトなのですよね。まずはやはり、あまり、とゆーか殆ど怖くない、とゆーのが痛恨なのですよ。個人的な見解として、やっぱお笑い芸人が出てくるホラーとゆーのは一定以上に怖くはならない、つーことかとも思いますし(お話自体にもなんかチョイチョイ笑かしにかかってる場面があったりで、怖がらせようとするには一貫性を欠くとゆーか)、そして、主役の亀梨クン自体がこの事故物件の心霊現象を全く怖がってない(そーいう素振りが微塵も無い)とゆーのも一因かとも(怖くて恐ろしくてしょーがないケド売れるために仕方なく…的な葛藤とゆーのもほぼ無かったりで)。あとは、根本的にオムニバスホラーであるが故にエピソードごとに状況がリセットされて、全体を通しての「怖さの盛り上がり」とゆーものもやや欠いていた、のではないかと思ったりも(それでもラストはだいぶん派手にオバケ出しまくったりしてましたが、あのね、こーいうのはまず「数」でナントカなるもんじゃねーのですよ、というコトだけは、私は例えソレを理由に死刑になったとしても最後まで主張し続けますですよ)。 もう一点、多少は物珍しいと言ってはみたものの、発生する事象にせよ事故物件の内容(間取り)にせよ驚くほどに在り来りですよね。「畳に血痕が残ってる」「風呂場の鏡が不自然に外されてる」なんて誰でも想像する内容じゃねーかと思いますし、あとは基本オバケの所為で体調が悪くなったりかんたり…程度でしょ。原作がそれなりに売れた本だとすると、もうちょっと奇抜なエピソードや風変わりな事故物件とゆーのは無いもんなのでしょーか?ホラーとしては大して怖くねえ、とゆーのなら、コッチの方面の面白さとゆーのがも少し有れば…という感じでもありますね。 ヒロインの奈緒ちゃんは可愛かったすね(若かりし日の池脇千鶴に少し似てる)。ただ、恐怖の表情が最初(だけ)は結構真に迫ってるなあ、と思ったのですが、それ以降はちょいオーバーリアクション気味でこれもイマイチに思いました。残念。 [ブルーレイ(邦画)] 4点(2021-07-12 00:29:20) |
65. 親密さ
《ネタバレ》 一年前、サンクス・シアターという所で映画が観れるとゆーことになったので、濱口竜介監督作品を片っ端から鑑賞していたのである。短編・長編問わず優れた作品も数多く観ることが出来たのだが、惜しむらくはどれもマトモにソフト化もされていない様な代物ばかりで、そーいった作品を本サイトで登録するのは少し気が引けるので、比較的鑑賞チャンスが今後も多いだろうと思われる今作についてのみここで言及させていただき、それら作品の魅力を少しでも伝えられれば、と思う。 ENBUゼミナールの卒業制作として製作された本作は、劇中舞台劇『親密さ』の実際の公演風景を収めた後半と、その舞台劇を演出家の男女2人(この2人は恋人同士でもある)を中心としたメンバーがつくり込んでゆく様子を収めた前半から構成されている。劇中劇のテーマも、その劇をつくってゆく過程で主なトピックスとなるのも、それは自分と他人との関係性をどのように考える・突き詰めてゆくか、或いはその際に最も重要となるであろう「言葉」の可能性と限界をどのように捉えるか、といった比較的シンプルなものである。劇中劇について言えば、その点に関する作者の価値観は主に詩、または手紙の朗読という形で表現される。その意味では(これは前半も含めても)全体として非常に文学的な雰囲気を纏った作品だと言えるし、それはある種、伝えたいものを伝える手段として「演劇」を選択した彼らが、言葉の可能性に対する問いかけを常に抱き続けつつ、それに決して絶望はしていない、ということを意味する様にも思われる。 世の中の諸々を陰陽二元論よろしく2つに分けるとある観点として、「理想の追求」と「現実の処理」というのがあるかと思っている。端的な表現で言えば、「狭く深く」と「広く浅く」という2つの方向性、ということにもなるのかと思うし、より実際的に言えば、深めることをどの時点で諦めるか、ということだとも思っている。それは人間関係も、或いは演劇というものの価値のつくり込みに関しても、ある部分で同じことだろうかと思っている。 若い時というのは、どちらかと言えば「現実」よりも「理想」の方が幾らか早く「見えて」きがちなこともあってか、より深める・極める方への衝動の方が強いのではないかとも感じている。年齢を重ねるに連れて、諦め・或いは妥協という手段に格段に流れがちになった自分を省みて、彼らの純粋でどこか不器用な様子から感じられるのは、私には一重に爽やかな郷愁であった。この映画からは、やはり「若さ」が強く感じられる。そしてそれは、彼らが自らの秘める若い「可能性」をこのとき確かに信じていたことの証でもある様に、私には思われたのだ。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-28 02:04:59) |
66. 四月の永い夢
《ネタバレ》 主人公に踏ん切りのつかない「過去」があるのだが、それが結局どういうことだったのかは詳細には明らかにならない(ある程度想像はつくものの)。その意味では通常の劇映画とはやや様相を異にする作品だが、とは言え本作はシンプルな「止まっていた時間が動き出す」映画である(一言で言えば再生、というか)。 人生とは失うこと、というのは、ある点では確かに正鵠を射た言葉であろう。私としてはむしろ、人生において失うコトと得るコトは表裏一体なのだ、と思っている。失うことを恐れてはいけない。例え失ったとしても、その分得たものを慈しみ、明日への糧にしてゆけばよいのだ、と。ある種、逆説的に前向きな言葉だとも思う。それも含めて、人生とは本質的に「変化」していくことだと思う。止まった時間が夢の如くに安らかであったとしても、人は必ず、いずれ時と共に変わってゆかなければならないのだ、と。 主演の朝倉あきという人は、非常に魅力的なキャラクター・個性を持っている女優だと率直に感じたが、本作ではそれを活かした実際の役づくりの中に、ほのかに、だがしっかりと、この役に求められる「厄介さ」を的確に表現しており、中々優れた仕事だったと思う。 ※どーでもいいことですが、部屋を間違えた場面、出てきたガラの悪いオッサンがその後何故か妙に頼りになったというシーンが、これも何故だか妙に印象に残っています。ああいう大人に、ワタシはなりたい。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-13 01:05:26) |
67. 勝負師(1958)
《ネタバレ》 ドストエフスキーの『賭博者』を原作・原案とする映画として、先に『大いなる罪びと』を観たトコロ、コレが予想以上に面白かったため、こちらはジェラール・フィリップ主演ということで観比べることにしたものです。今作の方が原作に忠実だということなのでしょうが、しかし賭博シーン以外の部分が率直にあまり面白くないというか、特に前半(=本題の賭博シーンに入るまで)は相当に退屈でしたね。 更に、賭博シーンに関してもハッキリ言って『大いなる罪びと』の方が盛上げ方・脚色の質という点で二回りは上ですね。特に、将軍の伯母に関するシーンの出来は雲泥です。『大いなる罪びと』の10年後の作品であることを考えれば、この進歩の無さは極めて残念だと言って全く過言ではないでしょう(カラーにしたから許してちょ!というコトなのであれば、そうは問屋が卸さねーよ、と)。 何より、肝心のジェラール・フィリップの出来もまるで冴えないです。まず見た目からして全く冴えてないというか、なんか老け込んでて干乾びてて瑞々しさが皆無、という感じで。同年の作品『モンパルナスの灯』ではあんなに美しかった彼が、これは一体どーしたことでしょうか(モノクロ・マジックというコトなのでしょうか)。とは言え、実際に彼は翌年にはガンで亡くなっています。本当に体調がすぐれなかった、それが故の本作の出来映え、というコトも、まま想像は出来るのですケドね。 [DVD(字幕)] 4点(2021-05-27 10:49:14) |
68. JUNK HEAD
《ネタバレ》 正直、コレは凄いですよ。アンビリーバボーですよ。「大したもんだなあ」というか(暢気)、しかし人間の可能性は無限だ、とも思いましたね。もちろん、その果てしない努力がこうして実を結ぶというコトを如何にして最初に「信じる」コトが出来るか、というコトだとも思うのですけど。やはり、人生を賭けるに値するのはひとつ、夢だけなのかも知れない、と思いました。 内容については敢えて触れませんが、諸々のクオリティは保証できるものです。一点だけ注意するとしたら、今作は三部作の一作目としてつくられているので単体の映画として完結しているものではない、ということだけ、鑑賞前に頭に入れておいた方が好いかと思います。 [映画館(邦画)] 8点(2021-04-14 22:51:31) |
69. ジョルジュ・バタイユ ママン
《ネタバレ》 理性を脱ぎ捨てた先に、神は現れる。全編を覆い尽くすグロテスクな性描写が意味するのは、人智に依っては理解し難き「神」、その如き母の愛を得るべく、息子に課せられた試練だ。あまりに不道徳で不条理なその終着を彼が本能的に拒むのは、至極当然な事である。しかし人間を辞さなければ、彼は母の愛をも得られないのだ。これは中々に気の毒な事ではないか。 本作に於ける「神」、これが務まるのは、如何にも「怪物」イザベル・ユペールくらいなもんであろう(その絶大な、かつ変態的な存在感を以てして)。エロくてゲスい見た目の割には、内容の方がそこそこ在る(流石バタイユ)。 [DVD(字幕)] 7点(2021-04-13 00:48:14) |
70. 死霊館のシスター
《ネタバレ》 金の掛かったホラーで色々とその他のクオリティは標準以上なのだが(ロケ地の城の雰囲気はヤヴァい)、肝心のシナリオと恐怖描写の方に全くと言ってよいホドに工夫が無い(特にホラー場面はひたすら陰から驚かすだけで、しかもヴァラクは思いっ切り出て来る場面ばっかなので、造形も含めてもはやホラーではなくモンスター映画の部類だと思う)。ホラー中級者以上にしたら非常に物足りない出来かと。 [映画館(字幕)] 5点(2021-04-11 11:47:00)(良:1票) |
71. 食人族2
《ネタバレ》 とにかく強く感じるのが「既視感」。大半がどっかで(主に前作『食人族』で)観たことのある描写・展開で構成されてゆくというか、むしろ何か自分で縛りでもかけているかの様な。これはもしかして大いなるオマージュなのだろうか(それとも最早ネタを考えるのすらメンドくさいということなのか)? 更に痛いのが、そのパクリ描写のいずれもが以前に観たものよりショボいクオリティに為り下がっているという点。一番はかの有名な「串刺し女」だろう。オリジナルの方のそれは確かに流石に有名になるだけの迫力やリアリティを備えていたのだが、今作ではそれがただ血塗れの女が棒に紐で吊るされている、というチャチなシーンに変わってしまっていたり(話の中で出てくるタイミングが同じだから何とか「コレはアレなんだ」と気づけたケドさ、多分単純に撮り方が分かんなかったんとちゃうかね)。問題の動物殺戮シーンも2000年代にもなってま~だ入ってるのだが、申し訳程度にちっこいワニを殺すだけになってるし(別にこれは喜ばしいコトかとも思うケドね)。 要するに、前作のネームバリュー以上の価値というものが皆無な極めて程度の低い続編です。逆にこの進歩の無さは(23年も経ってることを考えれば)奇跡に近い、とも言える(だからなんなんだ、としか言い様は無い)。 [DVD(字幕)] 2点(2021-03-16 23:46:34) |
72. ジェイコブス・ラダー(1990)
《ネタバレ》 個人的に、いわゆる「実は幻覚でした」系というのがとにかく苦手(『シックス・センス』とかも本質的にはかなり苦手)なのだけど、今作は「場面の中の一部分が幻覚」という訳ではなくて、最初と最後だけが現実であとは全部幻覚(というか夢)という点では中々に大胆な作品だと思う。全部夢なので(なんかサスペンス的な話?な感じも多分に醸しつつも)真ん中の部分では整合性を気にすることなく奇怪・不可解な描写をやりたい放題に入れることが出来ており、何がどーなってるのか分からないという心地の悪さと同時にホラー・スリラーとしての描写自体の見応えもそこそこ十分で、そのジャンルの作品としては単純に出来が相当に好い方だと思う。一点だけ指摘するとすれば、結局サスペンス的な話は「ブラフ」でしかない、その割にその部分の尺自体がちょっと長くて、全体としても部分的に少しだけタルいのが玉に瑕かとも思う(もっとハイテンポに訳の分からなさが突っ走ってゆくという構成の方が、単なるホラー・スリラーに徹するのであれば好かったカモ?とも思う)。 まあでも、これも今回再見して思いましたが、今作は単なるスリラーとしてつくられた映画ではない、と感じるのですよね。オチもそのものとしては単純で明快だけど、テーマ自体はもう少し深いというか、もっとヒトの人生・生と死に関わる何か含蓄のあるモノを描こうとしてる様に見える、というか。個人的に、この(ホラー的な話の流れからすればやや唐突な)ラストはそれでも非常に美しいと思いましたし、ティム・ロビンスの演技自体も(ホラー的な部分以外が特に)素晴らしかった、という側面に、そういった製作側の意図が表れている、という様にも思われます。 [DVD(字幕)] 7点(2021-03-07 04:00:02) |
73. ジョゼと虎と魚たち(2003)
《ネタバレ》 確かに、ともすればアレなオチだと思います。ただ、一生彼女を背負い続けることが出来るのか、という現実に直面したときに、誰しもが十分に強くなれるという訳ではないのも事実でしょう(少なくとも私自身は、同じ状況でその決断は出来ないと思います)。その意味では私はこのラスト、自分の無力さに涙する主人公にはその面からは大いに共感できましたし、それを許容したジョゼの優しさ・強さにも深く感じ入りました。人間というものの描き方として、私はここはかなり好きですね。そしてこの恋愛は、決してふたりにとって無意味なものであった訳ではないのです。その直後にジョゼの変化・成長を感じさせるシーンを持ってきてそれでジ・エンド、という流れも巧みであり、また適切だったと思います。そこは、アレなオチを演出・演技のテクニックで巧く乗り切った、という感じだといつ観ても思いますね。 色々と変わりダネな映画だと思いますが、この映画で一番変わっているのはやはりヒロインでしょうか。見た目や喋り方、性格も含めて、パッと見はどーにも魅力的には見えないのですが、じーっと観ていると次第に魅力が滲み出てくるというか、そこら辺の表現も奥ゆかしく、また巧みだったと思います。その大部分を担っていた池脇千鶴は、やはり凄い女優だと思いますね。 [DVD(邦画)] 8点(2021-01-03 13:50:06)(良:1票) |
74. ジョゼと虎と魚たち(2020/日本)
《ネタバレ》 実写版というのは色々とかなり「変わりダネ」な恋愛映画だったと思うが、このアニメ版は話としては全く異なる内容で、逆に色々と王道を征く映画である(つまりは少しばかり在り来り)。特に中盤、祖母との別れ~想定外の事故が発生する辺りの流れはかなり「見たことある」感が強いし(ババアが突然死んじゃうのは実写版でもそーだけど)、言ってしまえばオーラスなんかももはや見飽きた感すらある様な、というか。私実写版大好きなので、そこはもう少し空気感とかをそっちに寄せて欲しかったかな~とも思う。 ただ、今作では王道青春恋愛ものと並ぶもうひとつの王道、「夢を諦めない」という第二のテーマの方もシンプルながらとても好い出来だったのですよね。手作りの絵本のシーンが実に好かったですね~今年の映画では一番ボロ泣きしてしまいましたよ(この場面は「画」自体の質・芸術性というのもかなり手が込んでいてこれも好かった様に思います)。前述どおり、全体としてだいぶん「子供も観ることを意識した」という質感になってはいるものの、だからこその爽やかさは十二分につくり込めていると思いますし、誰にでも気軽にオススメできる作品になっているとも思います。ジョゼちゃんもシンプルにカワイイですし(実写版ではこれもクセのある魅力、という感じだったですケド)。 [映画館(邦画)] 7点(2020-12-31 02:02:16) |
75. 静かな雨
《ネタバレ》 『四月の永い夢』と少し似た様なテーマかも知れない。より正確に言うなれば『静かな「永い」雨(と月)』とでも言うか。 ただ主人公の生活は、孤独な研究生活にせよ一転してこよみと共に生きる「進まない時の中」にせよ、思いがけず平穏でありつつも(それは主人公あるいはこよみの障碍がある中でも、という意味で)しかしその裏に確実に絶望を宿すという点では、あくまで静かな(しかし決して止まぬ)雨、なのだろうと思う。大事なのは、そこに差し込む月の光、つまりほんのささやかであっても、それでもそこに確かな「希望」というものがあるということなのだろう。でもそれはあまりに頼りなく、か細い幸福。それを噛締める様な2人を描き出すラストは、グッドエンドと言えるのか、それともそうではないのか。観ている私も哀しいのか、それとも違うのか、不思議な感覚とでも言うか。 比較的「言葉」の力を活用して肝心なトコロを描く監督だと思っていたが(流石「詩人」と)、今作では「音楽で語る」方向に少しシフトしていた様にも思われる(それだけ音楽の出来が好かったということだとも)。これまた非常に繊細で、かつ万人受けする(みんながしっくり来る)様な作品でもないかと思われるが、あくまで個人的にはとても好き。 [インターネット(邦画)] 8点(2020-12-26 01:46:18) |
76. 真・鮫島事件
《ネタバレ》 元ネタが2ちゃんのヨタ話だとかいうのはどーでもいい。というか、お話の内容・運び方に関してもハッキリ言ってどーでもいい(というレベルの出来かと)。論評すべきは一重に、コロナ惨禍が生み出した時代の徒花、リモート・ホラーという形式についてだろう。今般のリモート状況をウリにしたホラーというのは短編・ドラマではチラホラ出て来てるようだが私は初見だった。ちょっと前に『アンフレンデッド』というソレっぽいのもあったが、アレはコンセプトが少しマニアック寄りで、観た感じの雰囲気もいくぶん本作とは異なっていた様に思う。 この設定、シンプルながら幾つかのホラーとして優秀な要素を内包している。まず、人と人の繋がりが「仮想」である部分。皆で集まっている様に見えていても、その繋がりはネット回線という頼りない代物の上に乗っかっており、そしてパソコンに向かう自分の背後には無防備な空間が広がっている。ホラーとしては展開のバリエーションを確保しつつも、いつでも襲える「やり易い」状況だろう。また、画面のセルフビューというのも、所謂ホラーにおける鏡の効用を常に使用できるという意味で中々効果が高いツールだと感じる。もう一つ、今作でも後半はそっちに移行してったのだが、これもホラーでの高い効果が期待できるPOVシーンに無理なく自然に移っていけるとゆーのが、ホラー的に仕込み易い部分ではないか。 これらの利点を活かしたこともあってか、今作は(よく見ると相当にチープで製作費の無さをひしひしと感じさせるというホドに)ショック描写自体は極めて安っぽいにも関わらず、非常に効果的というか、正直言ってかなり怖かった(一ヶ所私も声が出た)。その意味ではホラーとしては(諸々安っぽいのは確かながら)十分に合格点を付けられる作品だとは思っている。 逆にこのウィークポイントをどう克服するか、という側面としては、まずはみんな家にバラバラに居るというのをどーするか、ということだろう。これ故に今作の悪霊は日本全国津々浦々に出没して個々の家々の全体を封鎖するという大仕事をやってのける必要があった。ここまで来ると悪霊つーよりは「神」の領域である(そしてそーなっちゃったらそれはもうホラーじゃないでしょ、という)。もう一つ、今作はリモート場面に入ってからの工夫を欠き、なんと全編でワンシチュエーションという物珍しい状況に陥っていたが、流石にこれはホラーとしてメリハリとゆーものが無くて色々と苦しい(まあ、これは別に全編リモートにしなければよいだけの話で、今作はむしろ製作費が無いからそーしてる様にも見える、つーか)。 全体としては相当にポンコツ(話の方の出来がどーにも酷すぎて)だが、せっかくのコトだしもう少し発展させた(文句無しの)成功例を観てみたい、というのが正直な感想。そしてコロナ禍のひとつの明るい話題として皆さん一発観てみてはどーでしょうか?とも思う。 [映画館(邦画)] 5点(2020-12-17 19:10:48)(良:1票) |
77. 新解釈・三國志
《ネタバレ》 私はこの監督のコレは決して全然嫌いな方じゃないので、今作も所ドコロはそれなりに笑えましたですよ。恐らく、かなり楽しんで帰ることの出来た観客な方だと思います。しかし、率直に言って肝心なそのコメディ面の出来も決して上々とは言えません。むしろ随所に「本気でやってるのか?」というレベルで薄らサブいシーンが見て取れた、とでも言うか。 そうなってくると悪目立ってしまうのがやはり、結局何がしたかったのか分からない、というテーマ性の欠如でしょう。三国志の英雄がこんなパッパラパーな感じだったら!という(だけの)映画ですが、正直「で?」というコトですよ。登場人物がおちゃらけ倒しているだけで、描かれる物語は非常に平凡でアイデアの無い「普通の」三国志に留まっています。ソコに何らかの革新的な化学反応を思いついたが故の「新解釈」なのではないのでしょーか? モチロン、ムロツヨシかの如くノリの軽い諸葛亮、ナルシーな趙子龍、異様に沸点の低い周瑜、エロしか頭に無い曹操、バカにもホドがある董卓と呂布だとか、あと頭がイイのは実は諸葛亮じゃなくて黄夫人、というよーなキャラ自体が「新しい」と言いたいのかも知れませんよ。しかし、それは三国志の元々のキャラを多少「誇張」して描いているに過ぎませんし、それらをひっくるめた上で一番の勘所であろう「劉備を劉邦っぽく描く」というコトにせよ、例えば『蒼天航路』で既にやられていることとハッキリ言って大差はありません。コレのドコが「新解釈」なのですか。 正直、もう1点低くしたい度し難い欲求に駆られますが、前述どおり全く笑わなかった、というのは良心に反しますので、この点数で。ただもう一つだけ、実にいい加減にストーリーをどうでもよい部分で改変している(単に展開上の都合で)のが、これも個人的にはどーにも気になります。こーいうのには、愛・こだわりを感じられないのですのよね。 [映画館(邦画)] 4点(2020-12-12 21:12:24) |
78. 十二単衣を着た悪魔
《ネタバレ》 「十二単衣を着た悪魔」というのは、源氏物語の悪役・弘徽殿女御のこと。お話の要点は、源氏物語における彼女のアレコレを新解釈をもって描き出すことにあり、伊藤健太郎の演じる主人公というのは(彼の存在によって話の行く末が左右される訳でもなく)単なる傍観者に過ぎない。しかし中盤以降、唐突とも言える取って付けで彼と伊藤沙莉の話が割り込んでくる。これは、こちらの話を踏まえた上で主人公から弘徽殿女御にひとつの現代的な価値観をぶっつけて、そこから大オチとも言えるメッセージを引き出すと同時に、オーラスの(チンケな)オチにも繋げている、というシナリオ上の仕掛けである。正直、ここの一連の流れが個人的にはどーにも安っぽく感じられ、またしっくりも来なかった、というのがひとつ大きなマイナスポイントであるし、結局、弘徽殿女御の話だけでは2時間の映画にはちょっとボリューム不足だった、ということでもあると思われる(=やや内容薄め、という映画にも思える)。 とは言っても、まずタイトルにもある十二単衣をはじめとした衣装は中々凝っていて煌びやかで素晴らしかった。実質的な主人公である弘徽殿女御を演じる三吉彩花も、癖の無い華やかなルックスがキャラにもあっていたし、演技もまずまずキレがあってそこそこグッド。そして私が不勉強なだけだけど、弘徽殿女御の話自体は割とまあまあ面白くもあるし、彼女のキャラクターを現代的視点から解釈・再評価するというコンセプトにも十分に面白みがあると思った。結論、源氏物語ってどんな話だっけ?という感じで気楽に観る分には、時間潰しにはなる程度の作品かと思う(まあこの時期に映画館で観るホドのもんなのかと言われれば微妙かもだけど)。 [映画館(邦画)] 5点(2020-11-23 23:13:15) |
79. 地獄のモーテル
《ネタバレ》 かなりイカレたエゲツない話なのは確実なのですけど、正直あまり面白くないというか、率直にほぼ盛り上がらないのですよね。いちおうホラーに分類されている(そーせざるを得ない)作品なのですが、ホラーやスリラーと言うよりはどちらかというとブラック・コメディの方面に寄せてつくられている、という気がしています。その所為もあってか全体的にかなりローテンションで、恐怖も驚愕も無いし(結局)笑いもそれホド無いし、加えて狂気が炸裂するという部分もホントに最終盤に少しだけで、全体的に素材のエキセントリックさに比してビックリするほどに薄味な映画に思います。 よく咀嚼すると突っ込みドコロだらけなシナリオ・設定面もあまり良い仕事とは言えませんが、個人的に一番しっくり来ないのが主役の兄貴。前述どおり正直全く狂気というものが感じられないのですよね(妹の方はなんかイヤ~な気味悪さが大いに滲み出ているのですが)。この兄貴と拾った女子の恋バナを最初から最後まで観せられ続けるというのが、結論的には私の許容範囲を少し超えている、というか。なのでアイデアの優秀さからすればもう少し高評点としてもよい作品だと思っていますが、これくらいの評価とさせて頂きたいです。 [DVD(字幕)] 4点(2020-11-20 00:09:03) |
80. 地獄少女
《ネタバレ》 やっぱりというか、少女と言うより「地獄姉ちゃん」ではあるが、(原作未視聴でアニメに特に思い入れ等無いので)別に雰囲気はまあアリかなと思う(ティナちゃんは相変わらずド級に美しいので、常人には出せない「只者じゃない感」も大いに感じられる)。 ただ、まずホラー描写に関してはCGがかなり安っぽく、正直出来は良くない(地獄の描写などもイイ感じとは言い難い)。そもそもホラー的な描写はかなり少なく、ジャンルとしてはキャラクター映画としか言い様が無い感じ。シナリオの内容面で言うと、地獄姉ちゃんは問答無用で地獄送りするだけの役なので、その単調さをカバーすべく2つのシナリオをかなり無理繰りに繋げた構成となっているが、とにかく全編非常にネガティブな内容で(恨み・憎悪から狂い堕ちてゆく人間しか出て来ないという)、ホラー的なのを観に行った私は別に何とも思わんが、人によっては正直ナニコレってなったりしそーな感じ(原作がこーいう話ばっかなのかも知れんが)。 一点、花の女子高生なのにこれまた憎しみから狂って人を呪い殺さんとするちょっと珍しい役柄を、まだ若くかつティナちゃんに負けず劣らず激マブな森七菜が好演しており、非常に好印象。とは言え、その他は演技・演出全般ごく普通の出来。観終わってあまり印象に残らない程度の作品。 [映画館(邦画)] 5点(2020-11-15 03:36:18) |