1. シリアナ
《ネタバレ》 表向きのタテマエだけでは到底済まない石油利権。それをめぐる、表と裏あざなえる虚々実々の国際情勢をドキュメントタッチで浮き彫りにしようとした、という制作意図はわかる。だが、私も肝心の筋がほとんどわからなかった。わかったのは、本作は、「24」と「ボーンアイデンティティ」と「スタートレック」と「オーシャンズ11」を混ぜこぜにしたような映画なのだなということだった(笑)。 [DVD(字幕)] 4点(2009-06-16 23:05:49) |
2. 女王陛下の007
《ネタバレ》 レーゼンビーボンドというキャストと地味なイメージのため、これまで何となく後回しにしてきた本作だが、実際に見てみたら結構よかった。とくに、みなさんがおっしゃるように、007シリーズとは思えない泣かせるラストには強烈なインパクトを受けた(「カジノロワイヤル」(06)に影響を与えているか?)。あの、ものの数分のシーンの存在によって、この映画全体に対する印象と評価がガラッと変わった気がする。ジェームズ・ボンドにフツーの平穏なる幸福は許されないことを、観客もボンド本人も思い知らされる。 レーゼンビーのボンドは、決して悪くはないとは思うけれど、どなたかが指摘されているように、何かが欠けている。キャラが立ちそうで立っていないところだろうか。もう少し「クセ」があればよかったかもしれない。見終わって、恐る恐るこのレビューを覗いてみたら意外な高評価だったので、なぜか嬉しくなってしまった(笑)。 とにかく、本作の最大の特徴はラストのシークエンスに尽きるだろう。Qの言葉を借りれば「思ったより無責任ではなかったボンド」という人間らしい一面に触れ、そして、癒しようもない傷を負ったボンドの過去を知ったことで、いままでとちょっと違った見え方がするかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2008-06-05 11:29:37)(良:1票) |
3. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 当サイトで常に最高の評価を得ている話題作。いっぺん見ておかないと、と前から思っていたのがようやく実現、いい映画だった。長時間にもかかわらずダレることもなく、ドンデン返しもあり、楽しめた。ティム・ロビンスは主人公のイメージにピッタリだし、モーガン・フリーマンの味わいある存在感も映画全体のクオリティをアップさせていたと思う。 でも、こういうことをいうと水を差すようで恐縮ながら、私には10点つけられる、あるいは10点をつける必要がある作品とは感じられなかった。何より、冤罪で投獄された男の“落とし前”が脱獄というかたちで処理された点に最大の違和感が残った。無実だからといって脱獄でOKなのか? ナンだか、肝心なところが誤魔化されたような印象なのである。そこをオミットしての自由や夢の実現といわれても、引っかかりが残ってすっきりと快哉を叫ぶことができない。 また、それが気になるためか、結局、本作を通じて何がいいたいのかもよくわからない。主人公の人間性に触れよというのか、あるいは、ただエンタテインメントとして楽しめばよいのか。巷間、テーマは「希望」だというが、その希望の達成のされ方が脱獄しての大金持ちという描かれ方では、どうにもすんなりと呑み込めない消化不良感にさいなまれる。たとえ、どれだけ時間がかかっても、何らかのめぐり合わせによって、ついには冤罪が晴れ、アメリカ大統領の名で彼の無実がつまびらかにされる――といったものだったら、まさに「希望」がテーマだといえただろうが。 ということで、Aクラスであることには異論はないけれど、Aクラスのワン・オブ・ゼムにとどまるというのが私の評価。超Aクラスとは思えなかった。あ~、みなさんから叩かれそう! 7点(2004-06-20 00:36:28)(良:4票) |
4. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 10点の目安は「傑作中の傑作。ここ何年間で最高の作品」となっている。それからすれば私には文句なしに10点満点! ここ何年間どころか、映画史上に残る名作だと思う。 最初は11人が有罪で、無罪は1人だったのが、ひとりずつ“転向”していくプロセスはスリリングですらある。しかも、その状況変化にまったく無理が感じられない。驚嘆すべきシナリオである。 主人公のヘンリー・フォンダの描き方もうまい。彼は必ずしも正義の人ではない。建築家という職業柄か、細かいことが気になるタチゆえ、わずかでも疑問が残るとそれが看過できないというだけといえば、それだけなのだ。途中、洗面所で顔を洗うシーンが出てくるが、顔を洗ったあと、爪に入ったゴミまでほじくり出している。またラストシーンでは、陪審員室をあとにするとき最後の最後まで忘れ物などがないか確認している。神経質な人間なのである。 登場人物もそれぞれ、「こういうヤツ、いるよな」という個性がきちっと設定され、演技ともども見事というほかない(説得力ある12の個性をかたちづくるのは、なかなか難しい仕事だと思う)。どこをつついてもアラがない。 それにしても、と思うのは、アメリカとはこれだけの映画がつくれる国であったはずなのに、現在の国情はいったいどうしたのだ、ということ。また、いま日本でも裁判員制度が導入されようとしているが、実際の裁判にのぞむ前にこの映画を見ることを義務づけてはどうかとも思った。 10点(2004-05-05 19:01:58) |
5. シカゴ(2002)
《ネタバレ》 評判のよい映画だったので楽しみに見ましたが、私には9点とか10点をつけられるものではありませんでした。 シナリオもよくできているし、演出もユニーク。俳優陣も頑張っている。でも、正直なところ、終始、覚めた自分がいて、映画のなかにのめり込むことができませんでした。 おそらくそれは、ミュージカルとしての味つけの違和感(私にとっては)からくるものだったかと。 歌い踊るシーンは、すべて劇場設定になっていましたが、ああいう演出では映画で見る必然性を感じなかった。むしろ、「シアターで生を見てみたい」という気にさせられるばかりだったのです。そのため、ミュージカルシーンが始まると、いつしか「またか」といった気になってしまう自分に驚いたり。もっと自然にミュージカルシーンを見られる演出のほうがよかったと思います。そうであれば、のめり込むことができたような気がします。 素材はすばらしいものがそろっていただけに、ちょっと残念な一作でした。 6点(2004-05-03 14:03:39) |
6. 地獄の黙示録 特別完全版
《ネタバレ》 超有名な作品であり、『ゴッドファーザー』の監督ということで期待値が高かったが、世評にいうほどの映画なのか、という疑問が残った。 作品全体を貫くメインテーマが、まず見えてこない。「人間の狂気」や「表面の美談と裏側の真実」、あるいはもちろん「反戦」などの主張を映画のそこここに見出すことはできるが、それらはしょせんサブテーマ。メインテーマとなるべきものは、やはり主人公が川をさかのぼった果てにたどりついたカーツ大佐と彼の王国に込められていなければならないはずだが、肝心のその部分の性格や意味がよくわからない。 カーツ大佐は、マーチン・シーンが一種の憧憬を抱きながら探した人物であるはずなのに、まったく魅力が感じられない。これは致命的。彼の王国も、死体がぶらさがっていたりするばかりで、そこまでに暗喩されていたカーツ大佐の理想・思想とは隔たりが感じられた。 で、終局の描かれ方も、脚本家自体がラストをもてあまして、ごまかした印象さえ私にはあった。あえてメインテーマらしきものを考えると、「神の真実」とでもいうことになるのだろうかと思ったが、つくり手の消化不良で着地失敗した一作という感想が残った。ナパーム弾のシーンは迫力があった。 5点(2003-12-02 00:04:46)(良:1票) |