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 > ザ・チャンバラ さん
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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  シャイン
偏屈な性格なのでなかなか定職に就けず、他に誇るべきことがないので過剰なまでに家族に執着して狭い世界の中で余計に偏屈度合いが加速していくという、無職オヤジの負のスパイラルが見事に描かれた前半部分は最高に楽しめたのですが、このオヤジが出てこなくなる中盤以降は、普通の良作になってしまったという印象です。 アカデミー賞をはじめとして世界中で多くの受賞歴があるだけあってジェフリー・ラッシュの演技は素晴らしいものの、実はラッシュが出ている中年期が一番面白くありません。父親との関係の清算、後に奥さんとなる占い師との出会い、トラウマを乗り越えてのカムバックなど、このパートは構成要素が盛りだくさんのはずなのに、そのすべてがあっさりと流されてしまうためにほとんど感動がなく、ジェフリー・ラッシュの名人芸を楽しむだけのパートになっています。
[インターネット(字幕)] 6点(2018-04-08 11:59:04)
2.  ジャスティス・リーグ(2017) 《ネタバレ》 
IMAX 3Dにて鑑賞。3D効果はまぁそれなりで損した気分にはなりませんでしたが、2Dで見ても情報量はほぼ変わらないと思います。 一定水準の作品を量産する体制を整えたマーベル勢とは対照的に、DC勢はいまだ彼らなりの成功方程式を生み出せておらず、本作についても敵の目的が不明確で恐怖の対象になりえていなかったり、リーグの作戦や勝敗ラインがわかりづらくて盛り上がりを逃していたりと、完璧な娯楽作にはなりえていませんでした。 ただし、それでも私が本作を支持できるのは、キャラクター劇として極めてよく出来ているためです。 ・パラノイア的に暴れまわったBVSを経て真にヒーローとしての自覚を持ったが、同時に生身の自分には限界があることを悟ってバトルでは裏方に徹しているバットマン。 ・能力も実戦経験もチーム随一で、必要な場面ではチームの支柱となるワンダーウーマン。 ・粗暴だがその奥にある気の良さが伝わってくるアクアマン。 ・同類に出会えた喜びを隠しきれないフラッシュ。 ・勝手にアップグレードされていく己の体への恐怖から引きこもりのひねくれ者になっていたが、訳ありメンバーと関わって自分の体の使い方を覚えていくことで徐々に精神が安定していくサイボーグ。 どいつもこいつも良いキャラをしているし、キャラクター間でちゃんと化学反応が起こっています。ジョス・ウェドンはザック・スナイダーが編集したバージョンから1時間も短縮して完成版を作ったようなのですが、この短い上映時間でよくこれだけキャラクターを描けたものだと感心しました。 さらに、スーパーマンが他のヒーロー達とはパワーも存在感も違う、桁外れのヒーローであるという描写になっていた点にも納得できました。そんなスーパーマンの参戦には、ドラゴンボールZのフリーザ編でようやく悟空が戦線復帰した時のような興奮がありました。これぞマンガ映画の醍醐味です。 また、ハンス・ジマーが降板し、その跡を継いだジャンキーXLも降板し、最終的にダニー・エルフマンが音楽を担当することとなったのですが、エルフマンの登板によって全体の曲調が明るくなり、特にバットマンのテーマはエルフマン自身が作曲した1989年版に戻されたので、『バットマン/ビギンズ』以来12年間続いたジマーのドンドコ節に辟易としていた私のような人間は、久しぶりにヒーローらしいテーマ曲を聞けてホッとしました。 その他、ロード・オブ・ザ・リング風の合戦からヒーローバトル、さらには多様なマシーンの登場と見せ場のバリエーションはやたら多いのですが、ヴィジュアルの巨人・ザック・スナイダーはこれらを闇鍋状態にせず、ひとつひとつの見せ場の独自性と全体の調和を見事に両立させています。こちらでも満足感がありました。 決して器用な出来ではないものの、これから始まる各キャラクターの単独主演作への期待を高めるには十分の作品だったと思います。さらには、一通りの単独主演作が終わった後にはジャスティス・リーグPART2が予定されていますが、成長したヒーローたちの再集結も今から楽しみです。
[映画館(字幕)] 8点(2017-11-25 03:18:43)(良:1票)
3.  七人の侍
さすがは日本映画界の最高峰だけあって、本当に凄い映画でした。本物にしか見えないオープンセットと俳優達の迫力、アクションのみならず男の友情・ラブストーリー・コメディに階級闘争までがパンパンに詰め込まれた異常なまでの情報量と、それらをひとつの物語にまとめてみせた脚本の素晴らしさ。映画のあらゆる要素が網羅された奇跡的な作品であり、傑作の中の傑作であることは間違いないと思います。 ただし、本作のようなマスターピースは後世にて徹底的に研究され、模倣され尽くしているために、鮮度はめちゃくちゃに落ちています。特にスピルバーグは『ジョーズ』や『プライベート・ライアン』など「チームを結成してミッションを遂行する」という本作のアップグレード版を多数制作していることから、それらの後発作品を見てしまうと、どうしても本作のインパクトは落ちてしまいます。 また、七人という人数が集団アクションにおいては適正な数字とは思えなかったことも、ちょっと気になりました。二つのグループの橋渡し役とコメディリリーフは通常一本化されるし、リーダーの女房役と参謀役も一本化されることが多いのですが、本作ではそれぞれを別のキャラクターにしていることから、菊千代と平八、五郎兵衛と七郎次のポジションが重複しているように感じました。 さらに、敵である野武士の描写がスッパリと切り捨てられており、思考も感情もなくただ飛び込んでくるだけの存在になってしまっている点も、てんこ盛りにされた他の構成要素と比較すると味気なく感じられました。村に一騎ずつ誘い込んで徐々に兵力を切り崩していくという主人公側の作戦に引っ掛かり続ける様などは、もうちょっと何とかならなかったのでしょうか。
[DVD(邦画)] 7点(2017-11-15 23:56:59)
4.  灼熱の魂 《ネタバレ》 
【注意!かなりネタバレしています】 ミステリーとしては面白かったのですが、紛争国を舞台に憎悪の連鎖を描こうとする社会派作品としてはピンときませんでした。 捕えられたナワルの拷問人としてやってきたのが生き別れになっていた彼女の息子でしたという点と、その拷問人がナワルと同じ町内に引っ越しており、かかとの入れ墨が見えるプールで再会しましたという点があまりに強引であり、どんな凄い偶然だよと冷めてしまったために、本作の内容を現実問題と繋げて考えられなくなったことが原因ではないかと思います。
[インターネット(字幕)] 6点(2017-10-14 01:39:49)
5.  少年は残酷な弓を射る 《ネタバレ》 
私は3人の子育てをしているのですが、子供は決して天使ではないし、必ずしも親の愛情に応えてくれるわけでもなく、親との折り合いの悪い子、どうやっても出来の悪い子もいます。我が家の場合は、手をかけて丁寧に育てているつもりの長子が気難しいひねくれ者になり、一方でほとんど放置状態にあって親として申し訳なさを感じている次子の方が素直な気質を持つなど、親の努力と子供の有り様がうまく整合しないことに子育ての難しさを感じています。世間的には「あなたの育児方法が悪い」と切って捨てられるのかもしれませんが、他の家庭を見ても、これが子育ての実態なのだと思います。 本作は育児に失敗した親の物語なのですが、完全に母親目線のみで作られていることが大きな特色となっています。結果的にケヴィンは凶悪事件を起こし、エヴァは社会的制裁を受けました。確かにエヴァはケヴィンの異常性から逃げ続けており、”We need to talk about Kevin.”と旦那に伝え、ようやく動き出そうとした段階では時すでに遅し、まさにその当日に事件を起こされてしまいます。妹の片目を潰された時、ハムスターを殺された時、もっと遡ると「死ね!死ね!」と幼児らしからぬ言葉遣いでゲームをしていた時など、息子の凶暴性を示すシグナルはいろんな場面で出ていたにも関わらず、彼女はそのタイミングを悉く逸していたのです。ただしこれとて外野の意見であり、精神的に追い込まれた状態で子育てをしていたエヴァには「日々何事も起こらぬように」と祈ることしかできず、問題対処までの余力はなかったこともまた事実でした。 家族とは厄介なもので、常に顔を合わせる共同体だからこそ波風が立たないことを祈り、時が解決してくれることに期待するという一面があります。子の犯罪に対して親の責任が問われる時、「なぜいつも一緒に居るのに放置したのか」などという意見もよく聞かれますが、いやいや、いつも一緒に居るからこそ口を出しづらいということもあるのですよ。子の問題の核心を突いてしまうと、ギリギリで保たれている家庭内の均衡が崩れ、状況がより悪化してしまうかもしれないという恐怖。これは問題のある子を持つ親に共通する心理ではないでしょうか。ここで母親目線という本作の建付けが活きてくるのですが、エヴァと同様に観客の目にもケヴィンは手の付けようのない悪魔として映る仕掛けとなっており、大上段からあるべき論で関係者を裁くという安易な方法をとらせません。私だって子供の欠点すべてに向き合っているわけではなく、「子供なんてこんなもの」「親が口を出し過ぎるべきではない」「いつか自分で気付いて直すはず」などと自分を言い聞かせて妥協をしている部分があります。凶悪殺人事件という極端な題材を扱いながらもこれを対岸の火事とさせず、世の親に共通する恐怖心を的確に突いていることが、本作のうまいところなのです。 そして、話のオチの付け方も見事なものでした。冒頭より、なぜエヴァは事件のあった地元を離れて自分だと気付かれない場所へと引っ越さないのだろうかという点が引っかかっていたのですが、最後の最後、自分自身はソファを寝床にしながらもケヴィンの帰る部屋をきれいに整えているエヴァの姿から、この親子には尋常ではない絆が存在し続けていたことが判明します。ケヴィンは母親への反発という感情、エヴァは息子への当惑という感情しか持ち合わせていなかったが、その根底には愛情ともやや違う強力な絆があったということを、取り返しのつかない大事件の後になって二人はようやく認識します。この熱いんだか冷たいんだか分からない親子関係のどうしようもなさが判明した時、私は物凄く胸が熱くなりました。「出来の悪い子ほどかわいい」という言葉がありますが、悪しき一面を持つ子供って、親のある要素を強烈な形で引き継いでいる場合が多く、親としては憎くて仕方ないんだけど憎みきることができなかったりします。本作はこれを容赦のない形で描いてるんですね。本編中には、この親子は似ているという点を示す描写がいくつかあります。ケヴィンの問題行動を受けたエヴァの感情は「なぜこんなことを」ではなく、「理解できなくはないが、なぜここまでやるの」だったのではないでしょうか。 個人的には、今まで見てきたすべてのドラマの中でも最高レベルの感動がありました。ただし、プロデューサーを務めたソダーバーグの影響か、過去と現在を行き来する編集が少々ウザかったので、一点減点とします。凝った編集もほどほどであれば効果的なのですが、全編これでは疲れてしまいます。
[インターネット(字幕)] 9点(2017-09-14 19:00:22)(良:1票)
6.  ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 《ネタバレ》 
クリストファー・マッカリー製作、エドワード・ズウィック監督、トム・クルーズ主演の中規模作品と来れば、一流料亭のまかない飯みたいなものを期待するわけです。ブロックバスター作品ほどの気合は入っていないが、めちゃくちゃ上手な人達が少ない制約条件下で肩肘張らずに作った、これはこれでいけるひとつの名物。しかしフタを空けてみると、これが全然面白くなくてビックリしました。 謎解きの過程にも陰謀の正体にも魅力がなく、2時間弱の上映時間がかなり長く感じられました。職業柄気になったのですが、大企業の経営を立て直すほどの売上高を違法取引で上げて、どうやって会計処理していたんだろうかと、その辺りがものすごく引っかかりました。特に政府からの受注で食べてる会社なんて、帳簿は綺麗じゃないといけないだろうし。 また、方や風来坊、方やキャリアウーマンで家庭というものを考えてもこなかったリーチャーとターナーが、急遽中学生の保護者にならざるをえなくなるというドラマにも面白味がなく、作品が志向している方向性がことごとく空振りに終わっています。 さらには、邦題も気に入らなかったです。第一作の邦題を原題準拠にせず敢えて『アウトロー』にしたのだから、第二作もアウトローの看板を引き継ぐのがスジだと思うのですが、ここに来て原題準拠にするというおかしな変更がなされているのは、本当にどうかと思いました。数年後の観客に混乱が生じるということすら考慮されていないのでしょうか。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-05 13:39:26)
7.  死霊館 エンフィールド事件
ホラー映画としては異例の長尺ですが、名高いエンフィールド事件の史実を丁寧に拾おうとしたり、厄介な能力に悩まされる次女とロレインの交流を描いたりと、映画としての完成度を高めることに多くの時間が使われており、なかなか奥行のある作品となっています。「『死霊館』でホラー映画は引退」と言っていたものの、その引退宣言を撤回してまで挑んだこの続編において、ジェームズ・ワンはフリードキンの『エクソシスト』やキューブリックの『シャイニング』をも射程に入れようとしていますが、確かにそれらの名作と並ぶほどの重厚さを持っています。 恐怖演出は、もうキレッキレ。怖い画の作り方はお手の物だし、音響などでビビらせるタイミングも絶妙です。飛び上がりそうになるほど怖い場面の連続であり、観客にもお化け屋敷を追体験させることに成功しています。ただし、悪魔云々の話になると途端に月並みになってしまうことが欠点であり、最後までお化け屋敷もので通した方がよかったと思います。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-01-16 00:05:05)(良:1票)
8.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 『アルティメイタム』で綺麗に終わった話をどうやって再開するのかという点が鑑賞前の不安だったのですが、案の定、完成した作品は語るべき物語を見失って迷走していました。ジェイソン・ボーンのアイデンティティを探る話はまだまだ続くのですが、シリーズ継続のために捻り出された後付けの設定があまりにご都合主義的なので醒めてしまいます。『24』もそうでしたが、エージェントもので実は父親も陰謀に関わっていたという話を出し始めると、いよいよお終いですね。 国家が作り出した殺し屋というものを見たことがある人はほとんどいないため果たしてそれがリアルなのかどうかは分からないが、少なくとも「殺し屋とは、きっとこんな感じなんだろう」と思わせるような説得力ある描写こそがボーン3部作の魅力でした。地下鉄を脱線させろとか、大爆発を起こせとか言ってくるスタジオと喧嘩しながら堅実な作風を守ったダグ・リーマンが本シリーズの基本路線を作り、ポール・グリーングラスがそのスタイルを継承発展させることでボーン3部作は本物志向のアクション映画の太祖となったのですが、一転して本作は『ボーン・アイデンティティ』が登場する前の単純な爆破アクションに先祖返りしています。観客を楽しませたいというサービス精神は理解できるものの、ド派手になりすぎた見せ場にはもはや生身の人間が闘っているという感覚が残っておらず、見せ場が派手になればなるほど手に汗握らなくなるというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入っています。クライマックスのカーチェイスなどは『ワイルド・スピード』の新作のような有様であり、本シリーズのファンが求める見せ場からはかけ離れています。そういえば、『ボーン・レガシー』続編の監督にジャスティン・リンが起用されたという話が一時期ありましたが、結果的にボツとなったその企画で考えられていたカーチェイスがそのまんま本作に流用されたのではないか。そんな邪推を生むほど、クライマックスのカーチェイスはシリーズ全体の雰囲気から浮いていました。 見せ場のインフレとともにジェイソン・ボーンはさらに超人化。パンチ一発で格闘家を気絶させるほどの格闘スキルに、プロのレーサーをも超える反射神経とドライビングテクニック、スリのような小手先の技に、電気配線に細工をする技術と、もはや何屋さんなのか分からないほどの多才ぶりを披露します。殺し屋みたいな潰しの利かない職業なんかにはつかず、何かひとつでも特技を極めていればその道で食えていたんじゃないかと思うほどの器用さであり、その多才ぶりゆえに殺し屋というそもそもの設定が没却してしまっています。これもやりすぎでした。 また、敵エージェントとの関係も変質しています。悪いのはラングレーのオフィスにいる上層部であり、現場のエージェントはただその指示に従っているのみ。命を狙われてもボーンは敵エージェントを恨んでいないし、殺し合いを演じつつも互いに敬意を払い合うエージェント同士の武士道のような関係性こそが本シリーズの熱さに繋がっていました。また、そうしたエージェント達の姿がエンディング曲”Extreme Ways”の歌詞と見事にシンクロしていたのですが、一方本作のエージェントは私怨剥き出しでボーンに襲いかかってくるため、戦いの意味合いがかなり変わっています。私としては、従前のエージェント達のプロフェッショナル道が好きだったため、この変更を良いとは思いませんでした。 国家によるSNSの監視や諜報機関OBによる機密情報漏洩などの時事ネタを出してきているものの、こちらもジェイソン・ボーンの物語とはうまく絡んでいなくて不発に終わっています。アクション映画としては及第点ではあるものの、待ち望まれた『ボーン・アルティメイタム』の続編としては期待外れな出来だったと言えます。
[映画館(字幕)] 5点(2016-10-08 03:16:24)(良:2票)
9.  13時間 ベンガジの秘密の兵士
イギリス版ブルーレイにて鑑賞。国際郵便料込でも2,000円ちょいで買えてしまい、あらためて日本のソフトは高いなぁと感じました。 『ペイン&ゲイン/史上最低の一攫千金』に続いて国内ではDVDスルーとなってしまったマイケル・ベイ作品ですが、全米公開された2016年1月には「事件当時に国務長官を務めていたヒラリー・クリントンを批判するためのプロパガンダではないか」と話題になった作品だし、公開後の作品評では『ザ・ロック』以来の高評価を受けており、大馬鹿大将マイケル・ベイが大人の鑑賞にも耐える映画を撮れることを証明した作品として仕上がっています。 2012年9月にリビアで起こった米領事館襲撃事件の取材を基に出版されたノンフィクション小説が本作の原作であり、映画は実際の事件経過を丁寧に描写していきます。登場人物が全員ヒゲ面で顔の判別が付きづらい、家族関係のエピソードがこの手の映画としては月並みで、監督が意図したほど感動的ではない等の問題はあるものの、実話ベースの映画に必要な重々しい雰囲気の醸成には成功しており、ドラマ部分の印象は悪くありません。不慣れなパートながら、ベイは何とか及第点に踏みとどまっています。 戦闘に入るとベイはいよいよ本領発揮。5,000万ドル程度の中規模予算ながらそこいらの大作をも凌駕するほどの迫力ある見せ場が連続するし、ホラーを好む監督だけあって時折突き抜けたスプラッタ描写を見せてくることも良いアクセントとなっています。銃を突き付けられた現地人が、直前の爆発でもげた腕を掲げて「撃つな、俺は味方だ」と言う鬼畜ギャグも織り込まれており、『アイランド』『トランスフォーマー』で一緒に仕事をしたスピルバーグの演出スタイルも作品には反映されています。また、戦闘の小休止中に領事館を訪れる者が敵の息がかかった者なのか、それとも味方の救援なのか事が起こるまで判別できないというサスペンスもきちんと機能しており、現場の混乱が見事に映像化されています。 全体の印象は『ブラックホーク・ダウン』に類似しているのですが(『ブラックホーク・ダウン』の編集チームが本作も担当している)、見せ場の瞬発力では時にリドリー・スコットの演出をも凌駕しており、さらには敵の民兵が未熟でRPGをうまく使いこなせないといった通好みの細かい描写も見事モノにしており、これはこれでイケる戦争映画となっています。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-07-04 11:49:00)
10.  ジュピター
当初よりフランチャイズ化を目論んで作られた作品であるため一本の娯楽作としては過剰なほど設定や伏線が多く、大して難しくないはずの物語がゴチャゴチャしすぎているために直感的な面白さを感じづらくなっています。また、宇宙規模の物語ながら、すぐにワープ移動してしまうために舞台の広さを実感できず、基本設定とは裏腹にこじんまりとした印象を受けました。肝心の物語にしても、スペースオペラの皮を被りながらも、その実態は金や相続の問題というギャップに面白みを感じるべきだったのでしょうが、そこも、それほど面白くありません。総じて、ディズニーが『ジョン・カーター』でやらかしたのと同じ失敗をしています。 ただし、ウォシャウスキー姉弟の作品だけあって美術やVFXの作り込みはハンパではないし、ギリギリで救援が駆けつける際のタイミングの取り方もよく、娯楽映画としては一定の水準に達しています。シリーズ化を見越していただけあって主要登場人物はほとんど死なず、鑑賞後の印象もスカっと爽やか。チャニング・テイタムとショーン・ビーンはカッコいいし、ゴチャゴチャした物語はこの際無視し、悪い奴からお姫様を救い出す冒険談と割り切って鑑賞すれば、それなりに見られる映画にはなっています。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-08-29 00:06:05)
11.  進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 《ネタバレ》 
言わずもがなの原作に加え、傑作の誉れ高いアニメまでを背景に抱え、この実写版はいかにして負け戦を戦い抜くのかという点に感心があったのですが、監督はかなり良い仕事をしています。エッジの立った世界観の醸成には成功しているし、残酷描写からも逃げていません。どうやって実写で表現するのか見当もつかなかった立体機動装置での戦闘シーンは期待以上によくできており、ビジュアル面では問題を感じませんでした。邦画の厳しい制約条件下でこれだけのものを作れたのであれば、成功と言えるでしょう。ビジュアル面ではの話ですが。 問題は、ドラマパートの出来が致命的に悪いこと。今どき青春ドラマでもやらないような臭いセリフの応酬戦には失笑の連続でした。これは役者や監督のせいではなく、マンガやアニメでは成立しても、実写でこれをやらせるとおかしいという判断ができなかった脚本家の手落ちです。脚本を務めたのは渡辺雄介氏と町山智浩氏。渡辺氏は『20世紀少年』『GANTZ』『ガッチャマン』といった粗悪品を連打している邦画界の要注意人物。一方の町山氏は映画秘宝のゴッドファーザーであり、彼の起用により、批判の急先鋒となるであろう映画秘宝を取り込み、渡辺氏に対して映画ファンが抱く懸念を中和しようとした製作陣の奇策は面白いと感じましたが、当の町山氏は映画評論家としては高名であっても脚本家としては素人同然であるため、作品のクォリティには貢献できていません。 作戦中にフラフラと個人行動をとったり、大声を出してはいけない場所で叫んだりして危険を呼び込むという、この手のパニック映画でやって欲しくない行動が多くてイライラさせられます。一応は自らの意思で志願して訓練まで受けた職業軍人でありながら、登場人物達には恐ろしく規律がなく、巨人が支配する危険地帯に足を踏み入れているという緊張感もありません。挙げ句の果てには、どうでもいい痴話喧嘩まで始める始末。エレンがミカサに惚れているのを知って「ミカサとヤってんだぜ」自慢するシキシマ、そんな二人の関係を知って落ち込むエレンに擦り寄り、「子持ちの女はお嫌い?」と言って胸を揉ませるヒアナと、もうメチャクチャなのです。安全の確保された基地でならともかく、最前線でいつ巨人から襲われてもおかしくないシチュエーションでこれをやってるのだから呆れます。 一応、完結編も見ますが、相当頑張らないと挽回は厳しいと思います。
[映画館(邦画)] 4点(2015-08-02 00:48:28)
12.  ジャッジ 裁かれる判事 《ネタバレ》 
当て書きだったこともあってダウニーJrはハンク役に完璧にハマっているのですが、少年の心を持つ不良中年、芯の通ったひねくれ者といういつものダウニーJrなので、特に目新しいものはありません。娯楽作で活躍する彼が、プロデューサーも兼ねて小規模予算のドラマ作品に出演したからには、俳優として何かしらのチャレンジがあるのだろうと期待したのですが、そういうものは見られなかったので少々ガッカリしました。他方、ジョセフ役のロバート・デュバルは御年83才にして体を張っており、こちらの演技には目を見張るものがありました。磯野波平を10倍濃縮したような頑固オヤジぶりと、年齢に勝てず弱っていく老人ぶりを同時に見せるという器用な演技を披露しており、演技の幅の少ないダウニーJrをうまくフォローしています。 父と子の対立と和解が作品の主たるテーマであり、ソリの合わない父親を田舎に残している私としては、他人事とは思えないお話だったのですが、これがビックリするほど心に刺さりませんでした。この手のシナリオのテンプレートに当てはめて作ったようなお話で、あまりに無個性なのです。長めの上映時間も有効には活用されておらず、似たり寄ったりの話を何度も繰り返すのみなので、途中で飽きてしまいました。とどめはエンドロールに流れる音楽で、ご丁寧に本作のテーマをすべて歌詞にして歌ってくれます。「大丈夫、もうわかったから」と言いたくなりました。 法廷劇としても中途半端。いかにも出来るげに登場したビリー・ボブが主人公達を苦しめる強敵となるのかと思いきや、こいつがほとんど活躍しません。ハンクを阻む最大の敵は、容疑者であるジョセフその人。ハンクは、ジョセフがしらばっくれることで故殺の疑いからは逃れられるような導線を作るのですが、肝心のジョセフがこの作戦に乗ってこないのです。これにはさすがにイライラさせられました。ハンクは勝つために何でもやる弁護士であることは当初から分かっていたのだから、そのやり方に従えないのであれば、そもそもハンクを雇わず、心根の優しい田舎弁護士にでも頼んでいれば良かったのです。一度はハンクに弁護を任せながら、その作戦にうだうだと文句をつけてくるジョセフがめんどくさくて仕方ありませんでした。そして、容疑者自身に勝とうという目的意識のない裁判では、さすがに手に汗握れません。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-07-12 01:23:22)
13.  地獄の黙示録
戦場に適応しまくった歴戦の勇者が、一方で戦争への適正を持たない新兵達を引き連れて理不尽なミッションを遂行する物語。どっかで見たことあるなぁと思ったら、スピルバーグの『プライベート・ライアン』とまったく同じ話でした。ジョン・ミリアスによるオリジナル脚本、及びコッポラの当初の構想では、見せ場が連続する『プライベート・ライアン』ばりの大戦争映画になるはずだった本作ですが、あらゆることがスケジュール通りに進まず、撮りたいものが撮れないという状況から、哲学性を前面に押し出したこの形に落ち着いたのだとか。。。 メイキングドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス』を見れば現場の混乱ぶりがよく分かるのですが、コッポラはこの状況でよくぞ最後までやりきったなと感心させられます。また、完成した映画にはそうした混乱がはっきりと反映されているのですが、それでも作品として一定の形に収められているという点に、コッポラの天才性が表れています。現場も映画も完全に破綻しているのです。ぶっ壊れて、どうやってもまとまらないところにまで追い込まれているのに、その破綻自体を映画の肥やしにしてしまっているという神業。スケジュール通りに撮られていれば出来の良い戦争映画止まりだったかもしれない本作に、芸術作品として数百年に及ぶであろう寿命を与えたものは、この破綻だったと思います。。。 ただ、これが面白いかと言われれば、それはまた別の話。凄い映画ではあるが、決して面白い映画ではありません。序盤のキルゴアパートをピークとし、その後どんどん盛り下がっていくという観客の生理に反した歪な構成。作品の要であるはずのカーツ登場以降の地獄のようなつまらなさ。役の存在意義がわからないのにやたら目立つデニス・ホッパーと、ウィラードの前任者という重要な役柄なのに完全に忘れ去られたスコット・グレン(当初の構想ではラスボス)。結局オチが付かず、なんとなくの雰囲気で逃げたラスト。見ていて眠くなりましたね。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2014-11-24 02:30:00)(良:1票)
14.  終戦のエンペラー 《ネタバレ》 
アメリカ映画でありながら、トップシーンに原爆投下を持って来た勇気。本編中で何度も空襲による日本側の被害に言及した勇気には感銘を受けました。さらには、中村雅俊演じる近衛文麿に、「確かに日本は侵略行為を行ったが、では、同じことをしたイギリスやアメリカが裁かれたことはあるのか?」とまで言わせ、東京裁判の正当性に対する疑義を投げかけたという点でも、本作の製作意義はあったと思います。終戦前夜に日本国陸軍によるクーデターがあったという話はさすがにエスカレートしすぎでしたが、それでも、全体としては非常に丁寧に作られた作品だと感じました。いよいよ天皇が登場する場面の、こちらの背筋まで伸びてしまいそうな荘厳さと緊張感の再現も見事なものであり、よくぞここまで日本人の感性に寄り添った映画を作れたものだと感心しました。それと同時に、『硫黄島からの手紙』同様、本来は日本人の手で作られるべき映画を外国人に作らせてしまったという点が、何とも歯がゆくもありました。まだまだ、日本には言論の自由がないのだなと。。。 以上、本作の骨格部分は素晴らしいと感じたのですが、それが映画としての面白さにつながっていないというのが残念なところ。主人公に与えられた時間はわずか10日間であり、しかも、天皇ヒロヒトを処刑せよという本国からのプレッシャーや、そうした本国の動きに同調した同僚による横槍も入ってくる。そうした一連のシチュエーションが準備されていたのだから、それらを活かした激しい攻防戦でもあれば盛り上がったと思うのですが、実際には、主人公が気の向くままに人と会い、見聞きした内容をレポーティングすると上司のマッカーサーが納得して万事解決という、何とも平板な展開にとどまっています。また、主人公と日本人女性とのロマンスや、通訳男性との友情という一連のサブプロットも有効には機能しておらず、尺のかさ増し程度にしかなっていません。焼け野原となった終戦直後の東京の再現は素晴らしいのですが、そんなビジュアルの一方で話にはスケール感が伴っておらず、NHKのスペシャルドラマでも見ているかのような印象を受けたという点もマイナス。プロジェクト自体の志の高さに対して、監督や脚本家の能力が追い付いていないという点が、映画を物足りないものにしています。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2014-03-03 00:01:47)
15.  ジャッキー・コーガン 《ネタバレ》 
私も、宣伝に騙されてブラピ主演のギャング映画だと思って見たクチです。劇中、大統領演説がやたら繰り返されることから「どうやらこれは政治経済を扱った映画のようだ」ということに気付き、そこから頭を切り替えて何とか大枠は把握したのですが、それでも細部までは理解できないまま映画が終わってしまいました。日本の配給会社が本作の売り出し方に困り果てたことは容易に想像がつくのですが、それにしても、もう少し誠実な売り方はできなかったのでしょうか。。。 賭場=サブプライムローン、賭場の主人=サブプライムローンを扱っていた金融機関、賭場の客=なけなしの金を巻き上げられた米国の一般市民、強盗=サブプライムローンの証券化というインチキ商売で米国国民の富を奪っていたウォール街の住民達、マフィアの幹部=事態の収拾にあたった米国政府、私が読み取れたのは以上の情報のみ。強盗の一人が犬を飼っていたことや、ジェームズ・ガンドルフィーニ演じる高給取りの殺し屋が口先だけで無能だったことなど、意味があるのかないのかよくわからない小ネタも多く、何とも釈然としない内容でした。。。 日本の配給会社の手落ちは置いとくとして、それでも本作は間口が狭すぎる映画だと思いました。サブプライム問題の原因と影響、さらには米国政府の対応についての細かな知識がなければ何を言っているのかが分からない内容であり、ほとんどの観客は置いてけぼりにされてしまうのです。史上最大の金融危機をマフィアの抗争に置き換えるという切り口は面白いものの、作り手の方向性が完全に間違っています。本来、この映画は「金融って何?サブプライムって何?」という人がサブプライム問題の概要を理解できるように例え話を用いるべきだったのに、いろいろと作り込み過ぎた結果、高度な知識がなければ映画の内容を理解できないという本末転倒な事態となってしまっているのです。。。 さらには、監督の力量不足も感じました。本作は会話劇で、動いている場面がほとんどないのですが、この会話がちっとも面白くないのです。タランティーノがいかに優れた監督であるかが、本作を見ればよくわかります。さらには見せ場も少なく、本作で見るべきものと言えば、強面レイ・リオッタのヘタレ演技と、凝りに凝ったレイ・リオッタの死にっぷりのみ。要は、レイ・リオッタ以外に見るべきものがないのです。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-10-16 02:52:13)
16.  ジャンゴ 繋がれざる者
『ジャッキー・ブラウン』までは緻密な構成力とオタクらしいおふざけのバランスが素晴らしかったものの、『キル・ビル』辺りからB級マニアを意識しすぎた映画作りが鼻につくようになり、『グラインドハウス』でとうとう自家中毒に陥ってしまったタランティーノですが、その後の2作(『イングロリアス・バスターズ』と本作)ではオタク趣味を控えめにし、純粋に面白い映画を作ろうという姿勢にシフトしたように感じます。どちらの映画も時代劇であり、得意の音楽談義や映画談義ができない舞台を設けることで自身に制約を課したようなのですが、それでいて、従前からの選曲センスで観客の意表を突いてくるという遊びは面白く、タラの個性が非常に良い形で出た娯楽作として仕上がっています。。。 本作で感じたのは、私たちが思っている以上に、タランティーノは引き出しの多い監督さんだということです。かつて、タランティーノと言えば捻れた構成が第一の特徴として挙げられていましたが、一方本作は驚く程シンプルです。ジャンゴという男の物語が一直線に進むのみであり、時間軸の解体等のテクニックで観客の目を誤魔化したりはしていません。また、演出についても笑いに逃げている部分が少なく、正統派のウエスタンをやってやろうという気概に溢れています。90年代にはオフビート専門でオンビートの映画を撮れない監督だと思われていたタランティーノが、ここまで真っ当な娯楽を追求したことは意外であり、本作はこれまでの彼の作風の正反対をいく企画だと言えるのですが、これをほぼ完璧に作ってきたことには驚かされました。ジャンゴのかっこよさ、生理的嫌悪感を抱かせる敵、そしてガンファイトの迫力、そのどれもが非常に高いレベルで仕上がっています。長い上映時間がまったく苦にならないほど展開はスピーディであり、さらには農場での食事の場面など、アクション以外の部分にも只ならぬ緊張感が漂っています。これだけやってくれれば大満足です。。。 さらに、黒人奴隷の物語でありながら、人種問題を過度に扱い過ぎていない点でも好感を持ちました。ジャンゴのパートナーは白人だし、敵方にも黒人のブレーンがいる。余計な政治的要素を排除したおかげで、純粋に楽しめる娯楽作となっています。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-09-30 01:03:54)(良:2票)
17.  ジャックと天空の巨人 《ネタバレ》 
”怖い、気持ち悪い、容赦がない”の3拍子揃った巨人たちのインパクトが災いしてか、日本ではまったく話題にならなかった本作ですが、これが壮絶な面白さでビックリこきました。おとぎ話をベースにした前半の冒険活劇では、ほのぼのとした古典の空気に現代的なスリルや笑いが加えられており、21世紀仕様の『ジャックと豆の木』が見事に仕上がっています。悪い婚約者に、かっこいい騎士に、怖い巨人にと定番の要素を寄せ集めつつも、見事なバランス感覚でまとめられた脚本が絶妙だったし、ひとつひとつの場面を丁寧に作り上げるブライアン・シンガーによる演出も、予定調和の世界を飽きのこないものにしています。古典の新解釈としては、ほぼ完璧ではないでしょうか。。。 以上の前半パートだけでも充分に満足のいく映画だったのですが、本作の真の見せ場は後半パートでやってきます。『進撃の巨人』を思わせる大チェイスを皮切りに人類vs巨人の大決戦が始まるのですが、延々と続く合戦のテンションの高さには圧倒されました。城の防御が細かく考えられていたり、アイテムを登場させるタイミングが絶妙だったりと、脚本・演出も絶好調。さらには、物語の世界と観客の世界を繋いでみせたエピローグにおける含みの持たせ方も面白く、頭から尻尾の先まで完璧にまとめられた満足度の高い娯楽作に仕上がっています。これは必見です。。。 最後に、何かと批判の多いタレント吹替ですが、本作の吹替はなかなかよくできていました。ウェンツ瑛二とガレッジセール・ゴリはさすがの芸達者ぶりで主役キャラを無難にこなしているし(特にゴリはプロの声優並みの巧さ)、平愛梨もお姫様らしい上品な雰囲気を出せています。常にこのレベルを維持できるのであれば、タレント吹替も歓迎できるんですけどね。なあ、『プロメテウス』。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2013-09-25 01:21:33)(良:2票)
18.  シービスケット
良い人が出てくる良い話なのですが、この手の映画の公式に当てはめて作られたかのような個性の薄い内容だったので、正直言って物足りなさを覚えました。ジェリー・ブラッカイマーのアクション映画を見ているかのような印象なんですよね。「主人公には暗い過去があります」「はい、ここで挫折します」「はい、ここで感動します」と、パターン化されたかのような紆余曲折。ゲイリー・ロスは『カラー・オブ・ハート』で注目された監督さんですが、素晴らしいアイデアと語り口を賞賛された『カラー・オブ・ハート』からは一転して、本作では保守的な作りに徹しています。。。 もうひとつ私が気になったのは、大衆とシービスケットとの間の距離感をうまく表現できていなかったという点です。シービスケットが活躍したのは大恐慌の時代。当初は駄馬とみなされていたシービスケットの思いがけない活躍に、多くのアメリカ国民が自分自身の物語を重ね合わせたことが、この馬を歴史に残る名馬にした大きな要因だったわけです。ならば、この馬がどうやって注目を集め、人気を獲得していったのかという経緯を丁寧に追いかけることがこの映画のキモだったと思うのですが、この点についてはかなりぞんざいに扱われています。映画の上では、たったひとつのレースの勝利によって大衆人気を獲得したかのような描写となっており、あまりに唐突な展開に感情が追いつかなくなってしまいました。冒頭、たっぷり30分かけて描かれる人間側のドラマなど切ってしまい、最初からシービスケットの話にした方が、物語としては一本筋が通ったのではないかと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2013-06-23 01:40:46)
19.  ジャッジ・ドレッド(2012)
大風呂敷広げすぎて失敗したスタローン版の反省からか、今回は舞台も物語も徹底的にシンプルにまとめています。無駄を削りすぎて『ザ・レイド』とまったく同じ話になってしまったのはご愛嬌ですが、アクション映画のアプローチとしてはこれが正解。スタローン版と比較すると格段に面白くなっています。『28日後…』のアレックス・ガーランドが脚本を書いたことでハリウッド大作とは一味も二味も違う雰囲気が出来上がったし、キャラ設定やセリフ回し等の基本的な部分もかなりしっかりとしています。本作のドレッドはとにかくカッコいいのです。圧倒的に不利な状況に置かれても、慌てず騒がず冷静に状況を見極めながら行動を決定し、クールに振る舞いながらも内面には激しい怒りを煮えたぎらせている。理想的なダークヒーローぶりではありませんか。相棒を人質にとられるに至り、「俺こそが法だ。敵方についた者は容赦なく処刑する」と数万人の住民に対してたった一人で宣戦布告をする場面なんて、かっこよすぎて死ぬかと思いましたよ。彼に対する大悪党「ママ」もよく作り込まれていて、ドレッドの敵として十分な存在感や威圧感を放っています。マンガ映画としては本当によく出来た映画だと思います。。。 一方で残念だったのは、本作を象徴するような印象的な見せ場を作れなかったという点です。アクション映画としてのアベレージは高いのですが、「これは!」という突出した見せ場がなかったので、やや物足りなさを感じてしまいました。ただし、これは本作のプロダクションを考えれば仕方のない部分でもあります。スタローン版の大失敗の影響からか、本企画についても映画会社は投資に慎重モードとなっており、本当にギリギリの予算しか与えられていなかったのです。これについては、現在企画中の続編できっちり答えを出していただきたいところです。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-06-11 00:37:58)(良:1票)
20.  10億分の1の男 《ネタバレ》 
長い歴史で映画のネタは出し尽くされた感はありますが、「強運を戦わせる男の物語」という本作の着想はかつてないものであり、そのアイデアは素晴らしいと感じました。後に『28週後…』の監督に抜擢されるフアン・カルロス・フレスナディージョによる演出も重厚感があり、フェデリコとサミュエルの愛憎関係が描かれる冒頭では、傑作の予感すらしました。。。 ただし、本作はその序盤が全てでした。本編に入ると、映画は完全にダメダメになってしまいます。肝心の運試しにまったく面白みがないし、おまけに雰囲気重視で説明を省略しすぎた結果、設定やドラマが観客にほとんど伝わらないという残念な状態となっているのです。具体的には、「相手の運を吸う」という設定が直感的にわかりづらかったし、それに伴い、主人公の彼女の立ち位置も不明確なものとなっています。女刑事も何のために存在しているのかよく分からず、サミュエルとフェデリコ、フェデリコとトマスのドラマに焦点を当て、よりシンプルな物語にすべきだったと思います。
[DVD(吹替)] 3点(2013-06-10 00:56:03)
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