1. ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲
いいですねえ。コトバが分からないので観てられる(聞いてられる)のかもしれないが。アメリカ人には聞くに堪えないキツイ台詞連発だろう。英語圏では最初から観客として普通の大人は予定してないと思われ。で、お馬鹿な二人組の道中ってのは一種の定番でしょうが、これはジェイとボブの二人に妙に自尊心が有るんで観てて気持ち良い。単に馬鹿なんじゃなくて、主義主張が積極的に馬鹿といういさぎよさというか。うぅ、わからん。いつもながらクリス・ロックの複雑にアブナイ切れっぷりが見モノ。ああいうセリフを黒人に言わせるのは案外勇気がいるんじゃないかな。日本のいろんなサベツに置き換えて想像すると、ビミョーな勇気の在処がよく分かる。結局、ケビン・スミスがいろんな面でしっかり腹くくってる人なんだろう。なにはともあれシャノン・エリザベスが可愛い。 8点(2004-12-04 22:32:23) |
2. 12人の優しい日本人
《ネタバレ》 映画としては、元ネタがあるとはいえ、とっても出来がよい。面白かった。「フィーリングかなあ」の時間差2発には笑い転げた。ありがとう三谷幸喜。でも、良い子はこれが日本のオトナの現実の会議をえぐった風刺だ、なんて思ってはダメですよ。風刺じゃないんです、これは、まぎれもなく〈理想〉なんです。この陪審員協議みたいに意見のある人ばっかり集まった会議なんて……、うっそぉ! 私の半世紀を超える日本人生を振り返るとですね、この陪審員たちの協議は、まったく有り得ないほど理想的に充実した会議なのです。だって、全員とりあえず何か中身のある――有罪か無罪かどっちかの――意見を持ってて、それを表明するんだもんね。んなことあるかって。みんなくっきりキャラ立ってて魅力的じゃん。会議でキャラ出す勇気あるヤツなんて例外だよーん。それから、相手の意見に正面から反論してるでしょ。つまり、議論が立派にかみ合ってるってわけだ。それで、最後はみんなが納得する結論が出る、と。ありえない!ありえない!! あ り え な い!!! ま、取り乱してしまったが。ペーソス皆無で成功したセリフ喜劇。珍しいと思う。 8点(2004-08-09 23:46:02)(笑:1票) |
3. シュレック2
素直に面白かったんだな、これが。ストーリーは単純明快、キャラクターの造形も分かりやすく、CG技術は素晴らしいの一語に尽きる。凝りすぎないパロディも楽しいオマケ。たぶん、見る人が見れば、CGの技術水準はもの凄い高さなんだろうけれど、高度な技術もインフラに過ぎないと見極めている感じ。全体を貫くのは、自分自身であることがいちばん素晴らしい!という現代アメリカのポピュラー思想。これに文句をつける難解なインテリ思想はエンタテインメントにはお呼びでない。でもね、ストーリー上のかたき役だって自分自身ではあるわけなんだが、そいつらは素晴らしくないわけかね、と皮肉屋は言ったりするかも。そしてハリウッド・エンタテインメントは皮肉をまったく受け付けない!! というわけで、とってもアメリカンな傑作です。 8点(2004-08-03 12:01:18) |
4. シリアル・ママ
ハハハと笑って、その瞬間、嫌な気分になる珍しい映画。観たときの感触は、普通のブラックコメディ(「博士の異常な愛情」や「マーズアタック」みたいな)と違う。たぶん、普通の人(あなたやわたし)の悪意を、ことさら些細な理由でそのままぶちまけるから、ビミョーに嫌な感じがするのだと思う。これを観て、悪意の持ち主とその向かう対象の両方がごく普通の人、という映画は、意外に少ないかもしれないと気づいた。片方が異常者だったり(「ケープフィアー」)、普通の人同士なら状況に誘因があったり(「ファーゴ」)、どこかで観客自身と切り離せるようになっている。この映画は、そういう切り離しが効かない設定で人間の邪悪さを拡大して見せつけるから、笑っちゃうけど、変に嫌な感じが残る。ある意味、傑作。 8点(2004-06-27 10:50:36)(良:1票) |
5. シンシナティ・キッド
アン・マーグレットが出てる。ポーカー勝負はさほど面白くなかったけれど、アン・マーグレットの表情を見てると飽きなかった。男を根っから小馬鹿にしてるイケイケ超美人の年増、っていう雰囲気をあんなに上手に出せる女優、ほかに思いつかない。彼女だけで3点プラス。 6点(2004-06-26 02:49:36) |
6. 七人の侍
皆さんには関係の無いことですが、『七人の侍』とは幸運な出会い方をした。まだビデオが存在しない1970年代半ば、近所のマーケットの2階にあった汚い名画座で、土曜オールナイトの黒澤特集があった。「名物にうまいもん無し。クロサワってのもどうせ**みたいに評判倒れなんだろな。でも、暇だし観るか」と思って、観てビックリ。お も し ろ い じゃないの。古典的名画は、もう無理なのといつまでも面白いのとはっきり分かれる。これはいつまでも面白い方の代表格。 9点(2004-06-17 13:48:20) |
7. 地獄に堕ちた勇者ども
《ネタバレ》 けっこう単純に楽しめた。ヨーロッパ版大河ドラマ。 製鋼所を経営するエッシェンバッハという資本家一族が、ナチス権力との関わりの中で没落して行く経緯を描く。一族内の権力争い、血族と使用人の階級対立、母(イングリッド・チューリン)と息子(ヘルムート・バーガー)と母の愛人にして成り上がった使用人にして弱気な実力者(ダーグ・ボガード)の対立、といった、どこにでもある家族内の支配権争いが、親ナチスと反ナチスの色分け、突撃隊と親衛隊の権力の交替、といった当時の政治的な権力争いと結びついて、“濃く”描かれている。 ナチスという権力が、階級的上層部への民衆の野卑な力の浸透、という形で存在したらしいことがよく感じ取れる。その意味で、ナチスはヨーロッパの民主主義運動の鬼っ子というか。ま、或る意味、正嫡なのかも知れないが。 8点(2004-06-14 10:26:39) |