1. 新・座頭市物語
初期の座頭市シリーズは市の過去を掘り起こすようなエピソードが物語の中心だった。これもそのひとつ。シリーズの最初の二作の色を引きずりつつ、でも一方で後の娯楽路線の可能性とも両立させている。その分新鮮味はないけど、安心して見られますね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-06-18 22:54:13) |
2. 新・座頭市物語 折れた杖
《ネタバレ》 勝新太郎がアヴァンギャルドの気質を持った映像作家であることは聞いたことがあったし、実際勝プロで「燃えつきた地図」を勅使河原宏を使って撮らせたりしてるし。しかし、ここまですごい映像をとる人だとは、予想外だった。これに比べたら、89年のリメイク版なんて、足元にも及ばないぶっとんだ映像だ。 まず構図にびっくり。下から上から、至るところにカメラを据える。そしてアップをとにかく多用する。アップが逆に見ているほうの想像力をかき立てる。そしてひたすら殺伐とした世紀末的世界。(まるで「北斗の拳」だね。)痴呆の少女がチンピラどもにいたずらされたりなど、衝撃的なシーンも。 これはすごい。本当にすごい。自分で築き上げてきたシリーズを自らのプロデュースで自らの演出で壊してしまう、勝新太郎。頭が下がります。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-06-18 22:49:10) |
3. 十二夜(1996)
シェイクスピア映画は数あれど、喜劇で成功している作品というのは、本当に少ない。この映画が、ほとんど唯一の成功作ではないだろうか。ヒロインの男装が引き起こす騒動が、単なる趣向だけでなく、ヒロインやその周りの人々の内面を掘り下げる技法になっている。風景の美しさ、人物たちの愛すべき滑稽さ、そのすべてがいとおしい。何度見ても幸福な気分になれる。 [DVD(字幕)] 9点(2007-06-17 15:09:37) |
4. 沙羅双樹
《ネタバレ》 普通に感動した。祭の場面まで笑うことのなかった少年。激しい雨の中の祝祭空間。再生のための豪雨。このあとから少年が、心からの笑顔を見せる。 このレビューの、この映画に対する批判的なレビューにうなずきつつ、しかし、私は、素直にこの感動にこの点数を捧げたい。 俳優の演技についていけない人もいるのもわかるが、これも私はひたすら心地よかった。生瀬さん、もともとが舞台の人だけあって、この手の即興的な撮影でも、ホント、いい味出してます。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-02 22:12:40) |
5. 静かな生活
《ネタバレ》 今のところ、この映画の最高得点になってしまいそうですが、正直な感想です。そんなに悪くはなかったのです。ただ、正直言えば、この映画だけだと障害者の生活を美化してしまう部分があるかなとも危惧を抱きました。そのあたりが、この映画でも(同列には並ばないけど)『レインマン』とかでも、感じてしまう。障害のある人に天才的な能力を発揮する人はいるのは事実。でも、全ての人がそうじゃない。だから、そのあたり、誤解を生んでしまうのではないかと思ったのです。でも、一方で、障害の有無を問わず、天才的な人は、いる。これはそういう、一人の天才とその家族をめぐる物語として、私にはとても面白かったのです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-05-20 23:34:15)(良:1票) |
6. 次郎長三国志 第九部 荒神山
《ネタバレ》 第九部まで来たら、レビュワーが一人になってしまった…さびしい… それはさておき、それはナイだろうっていう映画だね、これは。いや、つまらないからってことじゃなくて。シリーズ物を第九作まで作っておいて、それで未完に終わるって、いったい…考えられないよ。 他の複数の映画検索サイトでは、脚本は橋本忍になっていて、出演に岡田茉莉子もクレジットされているのだけれど、実際本編のクレジットでは脚本はマキノ自身で、岡田も登場していない。どうも、それは、制作が途中で断念された完結編のことのようだ。 それにしても不可解なのは、他のサイトでは、その作られることなく終わった完結編のストーリーがこと細かに書かれている点。いや、原作があるわけだからそれは不思議でもなんでもないのだけれど、どうもこの第九部と第十部が混同されている節もある。何でそんな現象が起きたのだろう。 で、映画本編の話ですが、石松死後の次郎長一家の面々の、ひたすら耐える姿を描いていて、それがちょっと痛々しいです。その忍耐が報われることなく終わってしまったのは、やっぱり何とも惜しいなあ。 【気づかないうちにお仲間が上に増えていて嬉しい! 点数は違えど基本的にこの作品に対するスタンスが皆さん私と同じで、なお嬉しいです。ぐるぐるさん。フォローありがとうございました。青観さん、第八部まで、実はずいぶん先導してもらいました。感謝。2007.9.追記】 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-05-01 00:23:27) |
7. 次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊
《ネタバレ》 いきなりネタバレ的にはじめますが、石松が死ぬのは、わかってるんです。有名な話ですから。でも、わかっていても、やっぱり石松、死なないでくれって思ってしまう。森繁バンザイ。私が見た限りでは、この石松の演技が一番好きだな。欲を言うと、最後に三五郎とまた絡んでほしかった。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-19 11:51:22)(良:1票) |
8. 次郎長三国志 第七部 初祝い清水港
《ネタバレ》 そんなに悪くないとは思いますよ。下のお二方ほど違和感は感じませんでしたよ。喜代三は、確かにちょっとうざかったけど(笑)。でも、あれが長門裕之だった、ってのは、ちょっとおどろき。大石蔵之助をぱくった展開も○。 コメディータッチが少し戻ってきたのも、好印象。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-04-17 23:40:55) |
9. 次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家
《ネタバレ》 これは、ある意味、次郎長シリーズの最大の問題作だなあ。いや、もちろん、いい意味で。これまで、シリアスな筋とコメディータッチが同居している展開で、それが作品のリズムになっていたのだけど、この作品、ほとんど笑えないものなあ。兇状持ちとなった次郎長一家、病に倒れるお蝶姐さん、好きな酒も断ち、いつか清水に帰ることを夢見てひたすら耐える子分たち。暗い、暗すぎる! でも、いい! しかも、泣ける! [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-17 23:38:10) |
10. 次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路
本当は盛り上がる展開なんだけど、自分的にはイマイチ。次の第六部のインパクトに負けてしまったのかも。いや、もちろん、それなりに面白いよ。それに問題作(?)の第六部のためには、これは欠かせないと思うし。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-04-17 23:34:22) |
11. 次郎長富士
そんなに悪くない、と思うんだ。エピソード的になってしまっていて、全体的な統一がなくて、散漫な印象ってのはぬぐえないのだけど、でもそれなりに押さえるところは押さえている気がする。勝新の森の石松も、それなりにはまっている気がする。 とりあえずレビューページがアップされていないので暫定的にここに書くけど、続編の方は石松に主に焦点が当たっていて、全体にコメディータッチで、ずっとまとまりがある。続編の方が面白いんだ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-04-11 23:24:21) |
12. 次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港
下の方々の気持ちもわかる。連続ドラマでもシリーズモノでもつなぎに徹している回というのはあるもんだ。でも…それにしちゃあ、おもしろいじゃあないの。タイトル通り、集まってきたねえ。 加東大介はどんな映画に出てきても加東大介だなあ、と実感。好きだなあ、この人。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-11 23:20:01) |
13. 次郎長三国志 第三部 次郎長と石松
下の方のレビューでも話題になっている浪曲は、やっぱり張子の虎三を演じている名人二代目広沢虎造の声なんだろうか。浪曲の世界を知らないので、何とも言えないのだけど…待ってましたの石松の大活躍。森繁、最高。すばらしい。石松と三五郎、そしてお仲姐さんの珍道中。この軽さ。この明るさ。すばらしい! [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-04-11 23:16:10) |
14. 次郎長三国志 第二部 次郎長初旅
全体的にコメディータッチ。ミュージカルっぽいところすらある。踊る次郎長一家。こう書くとインド映画みたい。でも最高。やっと石松登場だい! こいつは次が楽しみだ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-11 23:08:44) |
15. 次郎長三国志 第一部 次郎長売出す
念願の九部作にいよいよ挑戦! いや、これはいいや。等身大のヤクザ映画。そういうヤクザ映画ってあるもんだねえ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-11 22:49:46) |
16. 新・兵隊やくざ 火線
《ネタバレ》 『兵隊やくざ』シリーズは、大映のシリーズものの中でも私の一番のお気に入り。特に第一作の増村保造演出は、それはそれは何度見てもほれぼれする出来栄えだった。確か大映で8本作られて、第一作には及ばないながらも、また、出来不出来は多少はあるけれども、全体的にはまずまずの統一を保っている、シリーズとしても優等生だったと思う。大映が倒産した後、東宝でさらに最終作が作られていたことを知ったのはずっと後からのこと。しかも、それが第一作の増村保造によるものだというじゃないか。これは見たい! でも、もちろん版権が違うからDVDのセットには入らないし、ビデオが流通している形跡もない。どうにか見られないものかなあ、とずっと思っていた。そして、やっと見ることができた。日本映画専門チャンネルが、何と、『兵隊やくざ』シリーズ全作品一挙放送などという、酔狂な企画をやってくれたのだ。狂気乱舞! やった、やっと見られる! この興奮! しかし! まず巻頭。タイトルに東宝と出た。ああ、あたりまえだけど、違和感を感じるなあ。やっぱり大映印で始まらないとなあ。この違和感がそのまま本編の展開を予見していた。とにかく全体的に違和感だらけ。こんなの『兵隊やくざ』じゃないよお。冒頭。シリーズ全体を通して、常に冷静だ田村高広の有田上等兵が、いきなり信じられないくらい冷静さを欠き、敵に囲まれて自暴自棄になってしまう。ええ? こんな有田上等兵なんて! 全体のイニシアチブがなぜか勝新の大宮の方に移っている。何で? 逆でしょう? 音楽が、なんだかプロコル・ハルムみたい。というか、完全パクリ? 女は一度抱いた男には素直に従う、って理屈が通ってしまうのがわけわからん。あれだけ巧みに女心を描き出した増村の書いたせりふとは、とても思えないよ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2007-03-18 23:11:17) |
17. 白子屋駒子
衣笠貞之助の脚本がややありきたりな展開なのだけれども、三隅研次の相変わらずの映像美がすべてを補っている。最初のカットからもう目がくぎ付け。特に俯瞰の構図の美しさ。泣き乱れた山本富士子も、とにかく美しい。セットに衣装、細かな所まで手を抜かない大映京都スタジオの職人気質が十分に堪能できます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-03-18 23:07:43) |
18. しびれくらげ
『でんきくらげ』とみごとに同工異曲。テレビ東京の放映順にだまされてたけど、こっちが先なんだね。渥美まりに関しては、ファッショモデルという設定だけあって、こちらの方が洗練されている感じ。話は、要は、駄目な男には気をつけなさいっていう教訓なんだけど、それにしても のお父さんは、あんまりにも同情できないキャラだね。あまりに馬鹿すぎて、笑えるけど、でも、この手の駄目父さん、案外実在するんだよね。終わり方の後味は、どろどろしていた話の割に悪くない。 [地上波(邦画)] 6点(2007-03-09 23:12:08) |
19. 新選組(2000)
黒鉄ヒロシの漫画を切り取ってそのまま画面上でスライドさせるというタイプのアニメ(というか人形劇?)。これがなかなか面白かった。黒鉄の画力もさることながら、これを「演出」してしまう市川箟の力業。興味半分、怖いもの見たさ半分で見始めたけど(だからほとんど期待していなかった)見終えて、うなってしまった。こんな風に俳優を動かして、こんなタイミングで切り替えて、こんな構図で見せれば迫力が生まれるんだと、市川監督がわざわざ演出の手の内を明かしてくれている感じ。生身の俳優でなく紙人形だからそれが余計によく伝わる。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-02-06 09:43:47) |
20. 女経
《ネタバレ》 それぞれの話が、それぞれ、「え、これで終わりなの?」と思わせといてもうひとひねりあって、それなりに面白かった。でも、それぞれの監督が、このテーマで一本長編撮ったらそっちのほうがもっと面白いものになるなと思えてしまうのも事実。それにせっかくなら三人の女優たちにひとつの物語の中で競演してもらいたいっていう気持ちにもなってしまう。 映画でオムニバスっていうのは難しいと、いつも思う。お得感はあるけど、お買い得商品が必ずしも満足にはつながらないのだなと。 でも、最後の話の京マチ子は、最後の最後に、どの映画でも見たことないような(少なくとも私が見た限りだけど)すがすがしい表情を浮かべていて、これを見られただけでも満足感はある。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-01-16 22:58:08) |