21. S.W.A.T.
「特別狙撃隊S.W.A.T.」のリメイク企画は80年代から存在していましたが(一時はアーノルド・シュワルツェネッガー主演で話が進んでいた)、本作はそんな長い期間を経てようやく映画化まで漕ぎ着けたという期待の一作。映画会社はこれをシリーズ化する気満々だったようで、やたらめったら見せ場を詰め込む通常のアクション大作とは明らかに異なる造りとなっています。前半部分ではチーム結成までの経緯が丁寧に描かれ、訓練の場面では見た目の派手さよりもリアルに見えることが優先されています。俳優たちの銃さばきも様になっており、アクション大作としては珍しく地に足のついた内容となっているのです。「傑作ではないが、程よくまとめられた佳作かな」なんて思いながら見ていたのですが、映画は後半で一気に崩壊します。麻薬王による「俺を逃がせば1億ドル」発言をきっかけにL.A.全体が戦場と化すという展開があまりに突飛すぎて、映画についていけなくなるのです。こんな荒唐無稽な話は『ダイ・ハード』や『バッド・ボーイズ』でやればいいのであって、リアリティへの目配せをしてきた本作でやるべきではありませんでした。また、中盤までほぼ姿を消していたジェレミー・レナーが、クライマックスになって突如ラスボス化するという構成も不自然。彼をラスボスの位置に据えるのであれば、コリン・ファレルや警察組織との相克をより明確に描いておく必要がありました。 [映画館(字幕)] 4点(2012-09-29 23:49:26) |
22. スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃
《ネタバレ》 EPⅠがあまりにガッカリな出来だったので、ジャンゴ・フェットやクローントルーパーが登場していよいよスターウォーズらしくなり、派手な戦闘シーンも山盛りである本作には、初見時にかなり満足した記憶があります。しかし、あらためて見るとやっぱりダメな映画ですね。みなさんご指摘の通り、アナキンとパドメの恋愛関係がまったくダメ。初見時には戦闘シーンを見るために中盤のドラマはガマンしてやり過ごすものと割り切っていたのですが、サーガを通して見るとアナキンをダースベイダーに変える重要な要素が二人の関係であり、この部分の描写が未熟なのでは話になりません。ルーカスは女性層からの支持の薄いシリーズのテコ入れのため、イケメン俳優を使った恋愛要素を大幅に拡大したと思われるのですが、これが完全にマイナスでした。本来、二人は耐える恋愛をせねばならないのです。アナキンは耐えて耐えてひたすら自分の気持ちを押し殺していたが、ラストで死を覚悟した瞬間にパドメに自分の思いを伝える。しかし突然の援軍到着で思いがけず命拾いし、以後はパドメへの思いを切り離して生きることができなくなってしまう。恐らく最初はこんな展開にするつもりだったのでしょうが、中盤にイチャイチャ場面を入れたために、チンピラみたいな軽いお兄ちゃんと、男選びのヘタクソなお嬢様のどうしようもない恋愛にまで落ちてしまいました。アナキン関係でいえば、怒りに任せてタスケンレイダーを皆殺しにする場面もダメでした。タスケンは、理由はよくわからないのですがアナキンの母親を誘拐し、理由はよくわからないのですがもう少しで死ぬというギリギリの状態で母を生かしていて、そして母はちょうどアナキンが助けに現れたタイミングで死にます。これに怒ったアナキンがタスケンを皆殺しにし、自身の凶暴性を認識することとなるのですが、この場面ではアナキンの手が血で染まる様子を観客に見せねばならないでしょう。観客に不快感を抱かせないようこの描写をボヤかしたということは、サーガのターニングポイントをボヤかしてしまったということ。ルーカスは物語を観客に伝える意思があるのかと疑ってしまいます。。。本作でただひとつ評価できるのはクライマックスで、クローン軍団が戦艦に積み込まれ、銀河に向けて飛び立たんとする場面は、「共和国はついに一線を越えてしまった」という重々しさが見事に表現された名場面でした。 [映画館(吹替)] 4点(2010-09-02 00:18:51)(良:1票) |
23. スパイダーマン3
好きな女子と両想いになって、プライベートもヒーロー業も順調なピーターが調子に乗ってる前半からイラっときます。ブラックスパイダーマンになって「調子に乗ってる」が「完全な勘違い」に進化すると、恥ずかしくて見ていられません。そんなピーターに復讐しようとするハリーの手口は、婚約者との三角関係を装ってピーターを精神的に追い込むという、遠回りかつチャチな計画。これが父親の仇に対する復讐計画なんだろうかと驚きました。ハリーが都合良く記憶喪失になり、そして都合良く記憶喪失が治るという安直さにも唖然とします。これは大映ドラマかと。狙っておかしくしている部分もあるのでしょうが、意図してないのに妙なことになっている部分も多くあります。これはスタジオの戦略ミスでしょう。女性客を開拓するためにメロドラマを入れさせたものの、ライミがそれに対応できなかったという。本シリーズはドラマ部分の充実が特徴でしたが、それは「オタクの童貞君が誠実に頑張る物語」においてライミの才能とマグワイアのパブリックイメージが巧く噛み合ったからこその成果でした。大人のメロドラマなど撮ったことのないライミと(中年学者を主人公にした「ダークマン」すら童貞臭が漂っていました)、オタクっぽい風貌のマグワイアでは、こんな話など成立するはずがないのです。ハリーが都合良く記憶喪失になる展開については、しかめっ面ばかりだったジェームズ・フランコの輝く笑顔を見せたくて無理矢理挿入したとしか思えません(うちの嫁は「ハリーがかわいかった」と言ってたので、こちらは成功したとも言えますが)。。。また、新キャラが多すぎる点についてもスタジオの戦略ミスです。ヴェノムは人気キャラなのに登場場面が少なすぎてもったいないし、ピーターと因縁の関係にあるサンドマンの人物描写も不足しているため、「罪を犯す側にも事情がある。許すことも大事である」という本作のテーマが立っていません。サム・ライミは別のキャラを登場させたかったものの、スタジオに押し切られてこの布陣になったとか。シリーズ最終作なので大盤振る舞いしたかったんでしょうね。。。なお、本作があまりにヒットしたので3部作構想から6部作構想に変更されたようで、今後は「マリッジブルー編」とか「子煩悩編」とかも作られるのでしょうが、このシリーズはピーターの青春時代が終わった「2」のラストで終了していると思います [映画館(字幕)] 4点(2010-01-03 18:14:40)(良:1票) |
24. スルース(2007)
《ネタバレ》 【注意!激しくネタバレします】 オリジナルは未見です。同じ女性を愛した男同士の諍いから話は始まり、その後は若さと美貌、地位と名声という自分にはない物を持つ相手に対して「俺は負けてないぞ」という意地の張り合いとなり、最終的にはお互いの魅力に飲まれて同性愛的な方向へと流れ込んでいくという物語。以上のお話にはそれなりに筋が通っているし、役者の演技も素晴らしいのですが、なぜこんなに面白くないのかと思うほど面白くなくて困ってしまいました。。。 舞台劇だった原作を映画に持ち込んだものの、映画ならではの工夫が足りていなかったことが、その原因ではないかと思います。序盤こそ、監視カメラの映像等を交えながら映画的な視点を作ろうとする工夫があったのですが、中盤以降は役者の演技をただ映し出しているのみ。さらには、演出も演技も終始同じテンションで推移するため緩急というものがなく、前半はそれなりに緊張感を持って見ることができたのですが、後半はダレてしまいました。せっかくマイケル・ケインを出しているんだから、たまにユーモアを交えながら英国らしいペースを作っていっても良かったと思うのですが、アメリカ資本が入ったことの弊害かタイトな密室劇を目指しすぎて失敗したようです。 [DVD(吹替)] 3点(2014-07-17 01:48:28) |
25. スターリングラード(2001)
要するに「プライベート・ライアン」のジャクソン二等兵がやりたかったんでしょ。冒頭のスターリングラード攻防戦の圧倒的なテンション、密度には血がたぎりました。しかしそれ以後の失速ぶりが尋常ではありません。ソ連VSナチスのスナイパー合戦という最高の題材をとってるんだから、ケレン味爆発のバトルアクションか、もしくは「山猫は眠らない」のように超クールな仁義バトルに徹するか、どちらかにすればよかったんですよ。なのにどうでもいいドラマを入れようとするもんだから、結局何がやりたいのかわからなくなってます。スナイパーの描き方もあんまりで、エド・ハリスに先回りされて絶体絶命のジュード・ロー。焦った顔がアップになったかと思うと、次のシーンではスナイパー仲間のいる隠れ家に戻ってるんですよ。「フォーンブース」のコリン・ファレルが見たら泣くでしょうね。これはヨーロッパのインテリ監督に大作を撮らせた制作陣のミスです。レニー・ハーリンにでも撮らせてれば、ひょっとしたらギラーミンの「レマゲン鉄橋」クラスの映画にしたかもしれません。 2点(2004-06-16 15:55:27)(良:1票) |