1. スワロウテイル
映画とは不思議なメディアだと思う。明らかに映画とはフィクションであるはずなのに、そのフィクションを「リアリティがない」と叩かれる。あまりに話が込み入ると「そんなことありえないよな」ということになるし、単純だと「ありふれてる」ということになる。そんな中で、岩井俊二という人は、奇妙な形で綱渡りを続けていると思う。「リリィ・シュシュ」にしても、「アンドゥー」にしても、この映画にしても、明らかなフィクションとしてストーリーはある。序盤はあくまでありふれたシーンの積み重ねであるが、その中に「何かあるぞ。」というタネがたくさん蒔かれている。そのタネはある時一気に発芽して、物語をドラスティックに変えてゆく。様々なストーリーが絡み合いつつ成長し、ある時は予想もつかない方向に枝を伸ばしながら、上へ上へと観客を持ち上げてゆく。そして、非常に唐突な形で成長は止まり、枯れてしまう。このフィクションへ観客を引き込み、没頭させる能力において岩井俊二は非常に優れていると思う。 7点(2004-07-25 00:01:54) |
2. スタン・ザ・フラッシャー
久しぶりに、点数を付けるのに躊躇した作品です。映画のストーリーを考えると、あまり魅力を感じるものではないです。主役は冴えないオヤジ(もちろんそれが狙いだとわかっていても)。唯一、僕が心惹かれるような美しい少女・ナターシャは、ゲンズブールが最後に起用したとしても、それまでの彼のロリータへの仕事からすれば上手く調教できたかは疑問が残ります。それに、ナターシャがスタンに対して淡い恋心(?)を抱くところも、自己満足の世界を脱しているとは思えません。それでも高得点をつけてしまうのは、蒼いフィルターをかけた映像と、美しい音楽の包み込む世界を創り上げたゲンズブールの力量でしょうか。妙な例えを挙げるとすれば、オコゼかアンコウを食べた気分です。友人役のリシャール・ボーランジェ、そして囚人役のシェル・ロバンがいい役を演じていました。僕は、この映画を友人に薦める事はないだろうと思うのですが、薦められるような友人が出来ればいいなと思いました。 8点(2004-01-19 00:44:16) |
3. STACY/ステーシー
《ネタバレ》 このサイトに訪れる映画好きの方々の中には、キネマ旬報を読んでる方々も多いと思います。その中に、珍しいとは思いますが大槻ケンチ゛の「オーケンのなんかヘンなの観ちゃった」を読むのが楽しみという方も含まれていることでしょう。そんな方には是非、この映画を観て欲しいものです。読んでおられない方にちょっと説明を。この大槻ケンチ゛の「オーケンの~」は、大槻ケンチ゛が観た、ちょっと変な映画(ほとんどB級ホラー)を彼のイラストとともに面白おかしく紹介するコラムです。僕はB級ホラーはほとんど観た事ありませんが、このコーナーは大好き!そんな僕がビデオ屋の棚で埋もれていたこの「STACY」を手に取ったのは、自然なことだと言えるでしょう。手に取るには取ったのですが、B級ホラーに縁のない僕です。とりあえず置いてこの「みんなの~」でチェックしてみました。登録ナシ。そこで自分で登録申請してみました。登録されて待っていたところ・・・やっぱり書込みナシ。誰も観てないんだなぁ。そこでようやく重い腰を上げて、恐る恐る借りて観てみたというわけです。いやー僕の感想も、「なんかヘンなの観ちゃったよ。」俳優の演技はちょっと笑っちゃうし、少女達はみんな制服(しかもセーラー)でぐちゃぐちゃ人食っちゃうし、ホラー苦手の僕にはとっても気持悪いんですが、ラストはちょっと上手くまとまってて爽快感すらあるんですよね。ヘンなの。最後の詠子を殺すシーン、音だけで映像を映さなかったところは、たぶんホラー映画としては失格なんだろうけど、僕には嬉しかった。加藤夏希(他にはTOKYO 10+1というB級映画で観た。)のゾンビはあんまり観たくなかったけど、白目むいてて頑張ってたなー。それでも全体としてニアデスハピネス(←観ていない人にはわかりずらいだろうけど。)で気持悪かったという、なんだかヘンな感想です。原作者オーケンやエコエコアザラクの佐伯日菜子も登場(しかもコスプレ)。彼の培ってきたB級映画への情熱が遺憾なく発揮されたこの作品は、是非オススメということでいいと思います。 6点(2004-01-18 23:07:00) |
4. Stereo Future SF episode 2002
「ストーリーなんていらない!映像美だけが良いのだ!」という映画で、自分の好みに合った。といっても、この映画には入れすぎってくらいにメッセージがあって、それは過飽和に達していて逆にマイナスになっているんだけど、やっぱりこの映画にはストーリーがない。それは評価に入れるべきだけど、僕は入れていない。映画にはいろんなスタイルがあっていいし、そのうちの1つとして成り立っていると思うからこそ、意外なくらいに多くの俳優が参加して、それで盛り上がる監督さんなんだろう。中野監督は、自分の気に入った俳優をとことん使う。どうして?と思うシーンに端役で登場させたりする。それを探すのも、気付けば楽しみの1つになっていて、それもアリかなと思い始めるものだ。黒沢清監督だとか、この中野監督だとか、どっちも単純なストーリーはめちゃくちゃで、コンセプトやメッセージのみの映画になっているような気がする。しかし、そのスタイルを批判ばっかりするのもどうかと思う。受け入れてみようじゃないか。竹中直人にひいてしまってマイナス3。これは生理的に。 7点(2003-11-04 02:40:48) |