1. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
《ネタバレ》 前作の多彩で柔軟な、そして革新的な映像表現はそれまでリアル志向の技術競争一辺倒だったCGアニメーション業界に大きな影響を与えたわ。前作のレビューに書いたように、これから世界中のアニメーション(アニメ含む)製作者は『スパイダーバース』を意識せざるをえない、そのあり様は「スパイダーバース前」と「スパイダーバース後」とに分かれると思ったわ。実際に『ラーヤと龍の王国』や『私ときどきレッサーパンダ』『バッドガイズ』『長ぐつをはいたネコと9つの命』など、明らかに影響を受けた「スパイダーバース後」が登場して。 そして今回、本家の続編は、と言うと先駆者として更なる高みに到達してる状態で凄かったわ。 映像表現は前作が甘く思えるほどに多彩に、芸術的に、奥深く。世界によってタッチが使い分けられ、それぞれが全く別のものとして映え、そしてそれらにキャラクターの心象を映す機能すら与えられて。アートが娯楽性を破たんさせることなく当たり前のように世界を構築している壮絶な作品ね。 アクションシーンでの視覚効果はもはや人間の認識能力を超越しちゃってるレベルだし(いやそれが正しいのかどうかはまたアレなハナシなんだけど・・・)。 ただ一方で140分という長尺のワリにあまり物語が転がらないって難点もあって。ピーターとグウェンのそれぞれ親子の物語である、ってのは判るのだけど会話シーンに時間を取り過ぎてテンポ悪くなってる感じがするし、これで完結にならず続きになりますよ、というのを予感させてからのいつ終わるの?ってとりとめのなさ、まとまってゆかないもどかしさもあって。終わってみれば映像の圧倒感に比べると物語には物足らなさが残ったわ。起承転結の起承だけ、みたいなモノだものね。 でも個人的にはグウェンの描写たっぷりなので嬉しかったわ。前作より更に魅力的に成長していて。一方でペニー・パーカーたったそれだけ?このままいくとすっごく残念なんですけど!って状態だったのだけどラストで溜飲を下げたカンジね。あくまで続編に期待!ってカンジではあるのだけど。 今回は映像表現の凄さだけで十分に満足しちゃった感があって、お話的には次回作をお楽しみに、みたいなところで。いろいろと魅力的なスパイダーマン、スパイダーウーマンも登場して、でも本当の活躍はまだまだって状態なので来年の続編公開をワクワクと楽しみに待つとするわ。 [映画館(字幕)] 9点(2023-06-18 13:51:25) |
2. すずめの戸締まり
《ネタバレ》 映画としてはそんなに面白かったり感動したり、ってホドではなかったかな。 これまでよりも簡潔に、潔く切ってる感じは良かったのね。延々と歌を流しまくるPV風映像も今回は無かったし。でも東京を出てからの展開はテンションを維持しきれない感じがあって一度下げたところから再び上げきれてはいないかな、と。 それにアレではすずめが惚れっぽ過ぎるわ。何しろ草太は登場から大して経たないうちにさっさと椅子になっちゃうんだし。 ミミズはどこかで見たようなビジュアルだし(水木しげる先生っぽかったり『もののけ姫』っぽかったり『アキラ』っぽかったり『呪術廻戦』っぽかったり色々ね)。 あとすずめのキャラクターデザインがそーんなに印象的ではないっていうか『君の名は。』と『天気の子』と『すずめの戸締り』のヒロインの顔、後々見分けられる自信が無いわ。なんていうか、ちょっとキャラクターデザインを違う方向に持って行けなかったかしら? 冒頭に繋がるクライマックスの部分にしても、あーそういうコトね、はいはい、って感じで意外性には欠けていたし、色々な要素を散りばめつつ、ちゃんと最後に全部回収しました、っていう感じでもなくて。ダイジン(あるいはすずめ?)が招き猫的な存在?みたいなのは愛媛と神戸でだけ機能してたハンパな感じだったし。 でも、あれこれ細かいところにひっかかりつつ、もっとずっと大きな核の部分でかなり考えさせられたのね。 東日本大震災や阪神淡路大震災、熊本地震などをモチーフにして災いに囚われた国としての日本を描いているの。最初は実際に起きた、沢山の犠牲者を出した災害をエンターテイメント化してるワケ?と思ったのだけれども、逆で、エンターテイメントのカタチを通してこの災害の国に生きるということを描いて、そして何かを伝えようとしているのね、って。その伝えようとしている何かはそれぞれの受け止め方だと思うし、アタシ的にはちょっと短絡的だったりもっと違う方向を描くべきだと思ったりもしたけれど(怒りの感情だって大切で重要だと思うし)、でもその姿勢はいいと思ったの。 繰り返される緊急地震速報の描写にあの時の感覚が甦ってきて、まだ終わってない、今もリアルに続いている人もいれば、ごくごく若い人にとっては遠い過去、あるいはまだ生まれてない頃のハナシだったりもするのだけれど、この国に暮らしている以上、そこに共有する意識があって、その中でとりあえず生きてゆきましょう、と。アタシなんかは「大丈夫・・・かしら?」とか思っちゃうんだけどね。 少なくとも『天間荘の三姉妹』よりはずっと真面目に震災に向き合ってる映画だったと思うわ。 まあ芹澤朋也っていうキャラのあり様に致命傷越えるダメージ喰らってそれ以外になーんにも見えなくなって断末魔のツイート上げてる一部の方々に対しては失敗だったのかもしれないけれど・・・ [映画館(邦画)] 6点(2022-11-12 15:11:59) |
3. スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
《ネタバレ》 初日に見たのだけど「これ絶対ネタバレしちゃいけないヤツ!」って。だけどネタバレ無しで感想なんて書けないので公開からひと月経過するまでレビュー書くの待ったわ。さすがにホントに見たかった人はもう見たでしょ? 以下激しくネタバレしてるのでご注意。 見終って「凄いモノ見た」って感じだったのね。 これまでのトムスパイダーマンってMCUの大きな流れの中の1つ、アベンジャーズに参加した大勢の中の一人って状態だったじゃない。スパイダーマン誕生エピソードすらすっ飛ばされて社長やサノスに振り回されまくりよ。 それが今回はそのポジションを維持しつつも過去のスパイダーマン映画を1本の映画の中に内包してひたすら救済に走るの。ヴィランズだけじゃなくてトビースパイダーマンもアンドリュースパイダーマンも、そして中途半端に終わってしまった感のある2つの映画シリーズの存在自体をも。 当然トムの顔が現れると思ったそこにアンドリューの顔が現れた瞬間、満員の場内からどよめきが、そして一拍置いて拍手が巻き起こって、その瞬間に立ち会えた事に感動したわ。 それぞれのスパイダーマンが抱えた辛さや痛みを共有し分かちあい、そして力を合わせて前進する、これまでの『スパイダーマン』の集大成にして大きなフィナーレになっているのね。 それは勿論ライミ版『スパイダーマン1~3』、マーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン1、2』、そして『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』を見ていてこそ成立するものだし、更に最低『ドクター・ストレンジ』と『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』程度は見てるべきだし、ならば『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』そして『スパイダーマン:スパイダーバース』も欠かせないし・・・ってマーベルモノにつきもののそれ単体じゃどうにもこうにも状態ではあるのね。 でもその歴史につきあってきた時間の流れの重さ、そこを経た上での感動、感慨は1本の映画だけでは到底語れない大きさね。 その上で、あんなに淋しい切ない結末でいいの?スパイダーマンの「大いなる力には大いなる責任が伴う」ってテーマ、孤独なヒーロー、スパイダーマンって結局こういうモノでしょ?っていうのを最後に持ってきてそれでトムスパイダーマン=ピーター自身は救われてるの?って思ったりもしたけれど、でもあれでやっとトムスパイダーマンは独立した存在になって彼だけの物語を歩み始めたとも言えるのね。当初からアベンジャーズに縛られ振り回されてきたスパイダーマンが総てのしがらみから切り離されて自分だけの空間から自分だけの人生をスタートさせる、ここがトムスパイダーマンの本当の始まりなのかもしれないわ。 [映画館(字幕)] 8点(2022-02-08 19:53:09) |
4. スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
《ネタバレ》 エピソード4をテアトル東京のシネラマの最前列で見てから41年半よ。そりゃ歳も取るわ・・・ さて、『スター・ウォーズ』っていうコンテンツ全体の太い太い軸から考えるとJJの新三部作って、なんていうかシッポっていうか枝葉っていうか竜頭蛇尾っていうか、結局ここまで見て蛇足感が否めないのよね。オマケで作りました的な。少なくとも初代三部作よりも更に凄いコトになりましたよ、っていう拡がりは感じられないわ。映像こそ凄くなってる(ハズだ)けど。 新三部作、なんかやたら些末事に追われてない? そしてその些末事が映画の本体の殆どを構成しちゃってる。まるでデキの悪いお使いRPGのイベントをこなしてるみたい。あー、また本筋から外れて回り道ぃ~?って何度思ったコトかしら。それも三部作の最初や真ん中でやるならともかく、完結編、しかもこれまでの全『スター・ウォーズ』までひっくるめての完結まで謳ってる作品でまーだやってるものだから、一体何してんのよ?って感じ。 もうどっかんと真正面からガチのぶつかりあいってのを見せて欲しいのだけど、あちこちでちまちまちまちましてるからもっと気持ち良くさせてよ!って思っちゃうのよね。 何度も何度もレイとカイロ・レンが戦うんだけど、しつこいわ。いちいち戦っちゃ離れるを繰り返す『Zガンダム』見てるみたいよ。 クライマックスだってカイロ・レン来るのは見え見えなんだけど、何よ、まだそんなとこウロウロしてんの?とか、援軍バーン!って来るのだって見え見えなんだけど、被害出し過ぎ引っ張り過ぎ、とか、どうも気持ち良さをハズしちゃってくれちゃうのよね。もしかしてJJって王道を描くの、下手? っていうか、前作にあったフォースやジェダイは血じゃなくて普通の人にも可能性はあるのよ、ってのはドコ行っちゃったのかしら? 全作品リアルタイムな世代なワケだけど、なんか特に感慨は無かったわね。どうせまた色々やるんでしょ?ってね。 [映画館(字幕)] 5点(2019-12-20 20:59:35)(良:3票) |
5. スノー・ロワイヤル
《ネタバレ》 今回もまたリーアム兄さん怒りの鉄拳炸裂・・・って映画とは、ちょっと違ってたわ。 オフビートというかダウナーというか、『ファーゴ』と『ジョン・ウィック』を足したような世界で(ちょっと『スリービルボード』的でもあるかしら?)、いっぱい人が死んでゆく、だけど笑いを散りばめた、ブラックな映画ね。 派手なアクションを速いテンポで繋いでゆくような映画ではなくて、ロングショットで淡々と描くようなシーンが多くて。 どこに行くにもファー付き作業着なリーアム兄さん、ヘンな個性が集まった不真面目なマフィアの人びと、ちっとも役に立ってなさそうな警察。まとまりが全くない群像劇みたいな映画で、リーアム兄さんの映画って括りだと、ちょっと物足りないかな。前半こそリーアム兄さんが復讐に燃えてガシガシ進んでゆくんだけど、中盤以降は物語があっちこっち迷走を始めて、混乱劇状態になっていって。 それでも、幾度となく反復される街に向って疾走する映像とか、死者を告げる字幕とか、セオリー通りには進まない物語とか、映画の作りに対する興味はいっぱい湧いてくるので、退屈することは無くて。めちゃくちゃ面白い!ってワケでもないケド。 アタシ的には、まだ子供なのに、なんだか達観したカンジのマフィアのボスの息子がスキ。 タランティーノ的なカンジをウリにしてるけど、タランティーノ作品よりは色々と大人しめね。 [映画館(字幕)] 6点(2019-06-09 21:02:00)(良:1票) |
6. スパイダーマン:スパイダーバース
《ネタバレ》 あまりに幸せな贅沢さに溢れた映画ね。 『スパイダーマン』という作品のアイデンティティ、作品が存在することの意義を過去作に遡って求めながら、その未来までも模索してみせる、そういう『スパイダーマン』のあり方としての映画、という面だけでも十分に見る価値はあるのね。 その上で「アメコミの映像化」についての映画でもあって。ただ物語とデザインを抽出して、あとは既成の映像理論に乗っけたものに「アメコミ」としてのアイデンティティは保たれるのか? アメコミの感覚を映像へ置換する独自の表現方法があるのではないか? そんな試行と挑戦が見えるわ。 かつて『クリープショー』や『ハルク』、『シン・シティ』など「アメコミらしさ」を求めた映像作品はあったけれど、表面的なスタイルだけではなくて、その空気や精神をも表現するには、やっぱり現在の映像コントロール技術が必要だったのかもかもしれないわね。 でも、更にそれだけじゃないの。現在の主流になっているフルCGアニメーション映画の世界そのままではなくて、あえてテクノロジーの引き算をしている面もあって。キャラクターが妙にパタパタ動いてる、今やCGアニメーションには常識なモーションブラーが付いていない状態なのね。それはこれがあくまで絵を動かしているアニメーションの世界だという事。なめらかな動きこそが大切? 横並びなテクノロジーの進化合戦の中の一作品である必要はない、あくまでアニメーションの次元の存在であると。 そして、大きく「マンガ」とひとくくりにされる世界の、そのマンガについての映画でもあって。CGアニメーションである以前にアメコミでアニメーションで、その上にカートゥーンと日本のマンガとアニメまでもリスペクトし、摂り込み、ひとつの世界の中で共存していて。 興味の無い人の目から見れば同じフィールドのものでも、それぞれが好きな人の目には全く別のフィールドのもの。それが高次で融合している作品、それはとても幸せな姿だと思うわ。 ここにアニメーション作品の1つの基準を作ってしまった感じ。これから世界中の映像クリエイターはこの作品の存在を意識せざるをえないわ。 っていうか、見る側は難しいコトごちゃごちゃ考える必要なんてないわね。単純にどんどんと加速してゆく映像と音のドライブ感を楽しんで。 [映画館(字幕)] 9点(2019-03-03 22:21:44) |
7. スモールフット
《ネタバレ》 コレ、ポスターの画像を見てもほとんどの人が「ソソるモノが無い」と思うわね。なんとなくジミめな海外アニメーション、アチラ産の、日本人には向いてなさそーな雰囲気。 実際、歌と笑いが散りばめられた、ファミリー向けのアメリカンなCGアニメーション映画。当たり前にありがちに思えるフォーマットの作品なのね。 コミカルなイエティはともかく、人間側のキャラクターはとてもじゃないけれど魅力的なデザインには思えず、「えー?コイツが人間側の主人公?ヤダー」みたいな印象。 だけど実はこれが大傑作! 後でDVDとかで見て「ぐわー!劇場で見れば良かった!」とか言っちゃうタイプの映画。個人的に今年のムーブメント的作品な『カメラを止めるな!』『若おかみは小学生!』以上に強くお薦めしたいわ。 以下はネタバレなので、ご注意。できれば読まないで見る事お薦め。 映画はイエティの集落を舞台に、イエティ社会を通して世界を象徴してゆくのね。タイトルの「スモールフット」っていうのはイエティ達から見た人間のこと。人間はイエティ達にとってのUMA、空想上の生物的な。 イエティ社会を支配するのは古くからの伝統的な教え。その教えに従ってさえいれば、みな幸せに暮らしてゆける、そんな社会の中で教えを盲信する側だった主人公が出会ってしまう、存在するハズのない「スモールフット」。一方、教えに疑問を抱き「スモールフット」の存在を探求する若者たち。 この映画には具体的な倒すべき悪役は存在しないの。真実を知りながら、あえてそれを隠し、民衆を無知な状態で支配する長老は、だけど良かれと思って情報をコントロールしてる。実際、事態が動いた時に主人公の父は「知らない方が幸せだった」と漏らすし、真実は民衆にとって危険をもたらす事に繋がるし。 そこに描かれるのは国家、政治の国民に対する姿勢、マスメディアのあり方、情報化社会での情報の扱い方。歌って踊ってドタバタ(ワーナー伝統のカートゥーン臭漂う)なアニメーションの中に織り込まれた、その重さ、難題。 そしてその難題に対して、この映画なりの結論をキッチリ描いてみせるのね。最後まで描ききりました、というラストシーンを見せてくれるわけ。 子供は純粋に楽しめ、そしてそこから何かを感じとり、大人はそこに流れる重いテーマから、あるべきこと、すべきことを考える、そういう深いアニメーション作品。 『ヒックとドラゴン』をかなりイメージさせて、あと『モンスター・ホテル』とか『LEGO ムービー』とか『メアリーと秘密の王国』とか(『モアナと伝説の海』は似ているようで意外と遠いかも)あたりを思わせて、そういう点では正統なアメリカンなアニメーション映画の系譜なのだけれども、そこら辺にアンテナが動く人ならば思い切り楽しめるだろうし、そうでない人もとりあえず見て!と言いたいわ。 何しろ上映してるハコ自体が少ないのだけれど、その少ないハコの中がガラガラで、クオリティ高くて素晴らしい映画なのにあまりにもったいなくて。 [映画館(吹替)] 9点(2018-10-18 22:31:56)(良:1票) |
8. スカイスクレイパー
《ネタバレ》 『タワーリング・インフェルノ』を期待していったら音痴な『ダイ・ハード』だったわ・・・ ドウェインがさ、もう「家族を助けなくちゃ!」って動機だけで頑張る映画、なのだけれど、だから悪人達のコトなんて興味無し、みたいな状態なのね。当然アクション不発。悪いヤツをやっつける、って点ではフラストレーション溜まり気味。その場その場での刹那的な、唐突で行き当たりばったりな展開が続いてゆくので、全体の状況が動いてゆく感じがあんまり見えてこないわけ。 そもそも悪人達の目的もなんじゃそりゃ、って状態で。 目的のモノがああいうカタチで存在してるのを知ってたのは内通者のせいとして(社長ペラペラ喋った?)、コピーあるとか思わなかった? クラウド上に置いてあるとかさ。つーかそもそも社長はコピー取らなかったの? なんで公表しなかった? 殺されるから? あんだけハイテクワールドなのに、データのあり方は随分と物理的で前時代的ねぇ。 せめて、スペクタクルな映像をもっと見せてくれれば良かったのだけど。あの高層ビルが単なる背景で、画として主役になってないのよね。せっかく凝ったデザインしてるのに。この映画で最も重要なのはあのビルなのだから、もっと色々な角度から色々な状況を見せてゆくべきだったと思うわ。 ドウェインが無茶してありえないような活躍をするところを見せたい、それだけで作られてるような映画、ならばもっと悪い連中ばんばんやっつける映画にしちゃえばいいのにねぇ。 それにしてもまーた中華味ハリウッド大作ね。レジェンダリーが作る以上はそこって避けられないのかしらねぇ。ゴジラまで中華風味にされちゃたまったもんないんだけど。 [映画館(字幕)] 5点(2018-09-30 20:25:37) |
9. 3D彼女 リアルガール
《ネタバレ》 これはね、マンガやアニメだからこそ成立するネタ。実写でやっちゃったら「何様?」ってコトになっちゃう。 この映画ではアニメ=オタク=コミュ障=ひきこもり予備軍みたいな描き方(実際セリフにもしてる)で、ヒロインがそれを差別しない事で一見肯定的に見えなくもないけれど、実際にはそこからの脱却、卒業こそが唯一の成長ってハナシ。 ここではアニメは自己否定を引き起こす内的要因のメタファーみたいなモノ。ひたすらリアルに対するネガティブ発言を繰り返すアニメキャラ「えぞみち」に反映されていて。 アニメにはリアルを物理的に変化させる力は無い、それはその通りだけれど、実写映画もまた単なる二次元で、アニメと同一のフィールド上に存在するものなワケ。役を演じる人々はリアルに存在していても、そこに映るのは光と影と音の集合体、実体の無い幻、アニメと一緒。ついでに3D映画は2つの平面を映写してるだけの、ただの目の錯覚。アニメ同様、リアルを物理的に変化させる力は無いわ。 だからこの物語をマンガやアニメで描く分には自虐的、内省的に成立するけれども、実写でやると上から目線の、何らかの優位性を主張している状態になっちゃうワケよね。なんて思い上がりっぷりよ? もっとも、リアルにはありえないような人物像や演技、後半の陳腐な展開は「映画」の限界っぷりを自虐的に描いてるのかもしれないわね。まあ、こんな程度のモンに「映画」を象徴されちゃたまったモンじゃないけど。 英勉って人、『トリガール!』でもオタクをネタにして嗤いつつその後のフォローをしなかったけれど、結局そういう人なんでしょうね。そっち方面でばっかり商売してるクセにね。 でもカメラと照明は丁寧。いい仕事。人工の光の効果的な使い方や、自然光でしっかり作られたコントラスト、レンズを使い分けた凝った画作り。もったいない。 中条あやみも美しく映えていて。でももったいない。 まー、見ていてストレスいっぱいの、色々もったいない映画だったわ。 [映画館(邦画)] 4点(2018-09-16 17:24:03)(良:1票) |
10. スター・ウォーズ/最後のジェダイ
《ネタバレ》 どんどんネタバレしちゃうから注意だ。 「凄くお金がかかった二次創作」感は今回も拭えず、でも『スター・ウォーズ』のファンを存分に楽しませるだけの要素に溢れているのも確かで。 前作の(そしてルーカスの作ったEP1~3の)流れからして、今回の作品が『帝国の逆襲』をなぞってゆくのであろう事は容易に予想できたわけで、やっぱりそう来たか、って思わせつつ、わざと外してきたり意外な方向に持っていったりして、一筋縄ではいかずに翻弄させてくるあたり、楽しめました。 でもそれはもちろん全シリーズを見ていてこその楽しみ。この一作だけで見れば、なんだか外してゆくばかりのストーリーにイライラさせられるのも事実で。『帝国の逆襲』でミレニアムファルコンがハイパースペースに入れないスカを何度か繰り返す、アレのスケールの大きい版を何度もやられちゃうっていう。後になって考えてみれば、あの展開は本当に必要だったのか?って疑問に思える点が幾つも。そしてその分、尺も長く、そしてその分、ダレて。いや、『スター・ウォーズ』好きならばダレもしないでしょうけれど。 後半のかなり多重状態の展開は、あっちのキャラは一体何してんの?、久々に出てきて一体何やってたの?状態を生み出し、群像劇を上手く捌ききれてない感じがしました。 そう、今回は群像劇としての側面が強くなっていて、初登場キャラにもそれなりのウェイトを与えているので、特定キャラの活躍って面は薄くなってます。そこが面白味にもなっていれば、物足りなさにも繋がっている、諸刃の剣。アジア人大活躍だな、みたいな。しかし東洋人はどうしても地域的なモノを意識してしまって。 そういう点で今回最大の問題点はカジノシーン。あんな既存のカジノイメージをまんま持ってきちゃったら、それこそ『宇宙からのメッセージ』の宇宙アロハ、宇宙ちゃぶ台の世界ですがな。シャンパンの栓ポーン!とかダメでしょ。 それでも前作に比べても『スター・ウォーズ』な映像はいっぱい見せてくれた感じがしましたし(今回は宇宙を舞台にした画が多くて)、今の映像技術で新しい『スター・ウォーズ』の映像を見せてくれるのは嬉しい事で。それにジョン・ウィリアムズは大変にツボを押さえるメロディを鳴らしてくれていました。そこでそのメロディを鳴らされたら、そりゃ泣くわ、みたいなシーンがいっぱい。 1作目からリアルタイムで追ってきてる身には、今なおこれだけの映像を見せてくれる、40年に渡ってこれだけの娯楽を提供し続けてるって点で偉大なシリーズである事を心から実感させてくれるのでした。 ・・・・・あと、たとえ敵を作ったとしても私ゃディズニーの味方だよ。 【追記】最速でレビュー書いたモンで、世の流れを見ると自分のレビューとは反応がかなり違うみたいねぇ。『スター・ウォーズ』ファンからは不評、むしろ新規ファンが楽しんでる、と。 レイとカイロ・レンの関係を「レイロ」って言って二次的に楽しんでる層を見ると、以前『ズートピア』で「ニクジュディ」層が生まれた状況とよく似ていて、それってとてもディズニー的、個人的には好ましい『スター・ウォーズ』になっていってるのかな?って思います。ある層にとっては悪夢のようですが(ナンバリングから外せ!って言ってる層とかね)。 もう1点上げてもいいかも、と思うけど、それはある層にとっては嫌がらせのようにも映るでしょうしねぇ。 [映画館(字幕)] 7点(2017-12-14 23:08:35)(良:4票) |
11. スプリット
《ネタバレ》 ネタバレの有無については有にしてますが、配給会社の意向としてはネタバレ厳禁って事で、大事な部分についてのネタバレはしません。と言っても、この映画をネタバレ無しで語るのはなかなか難しいワケで・・・ まず、宣伝にある「誘拐された女子高生3人VS誘拐した男23人格」、ここが実は、あまり面白くありません。 監禁モノとしては『羊たちの沈黙』や『アリス・クリードの失踪』『10 クローバーフィールド・レーン』などの映画が思い浮かびますが、それらに比べるとサスペンスはユルユルな状態で、よくもまあこれだけ緊迫感の無い監禁モノが撮れるなぁ、ってヘンな感心しちゃうレベル。それは、どういう場所に監禁されているのかが一応隠し事になっているがゆえに監禁場所の構造や位置関係を明確にできないっていう理由もあるからなのですが、それ以前のところで、脱走を試みる部分や犯人との駆け引きが、バラバラ散りばめてあるばかりで単発の上げ下げ状態で、ちっとも映画全体の大きな流れになっていっていない、っていう。 また、犯人の人格がいっぱいあるがゆえに、犯罪者としての恐さが全く定まらない、弱い人間、優しい人間な部分がサスペンスとしての足を引っ張っちゃってます。 その23人格部分、マカヴォイの演じ分けは上手いとは思いますが、内面で23人がどう世界を作っていて、その関係がどのように動いてゆくのか、その深いところまでを想像させてくれるレベルではないんですよね。そこって結構重要なハズなのですが、シャマラン監督はそこにはあまり興味がないようで。 シャマラン監督作品らしさというのは一応しっかりと刻まれています。監禁や多重人格はシャマラン監督が一貫して描いてきた「見えない事の恐怖」に直結していますからね。でも、よくある素材である事によって他の作品との差別化がシャマラン監督お得意の「衝撃のラスト」程度でしか誇示できていないのが残念な感じで。 そして、一応の衝撃の展開の後の衝撃のラストなんですが、それは世界を矮小化させる、むしろガッカリさせるモノだったような気がして。そっち方面でなく、監禁された3人の女子高生の方に、もっと映画の気持ちを向けてあげて欲しかったなぁ。 [試写会(字幕)] 5点(2017-05-03 19:34:40) |
12. 素晴らしきかな、人生(2016)
《ネタバレ》 ウィル・スミスの抜け殻演技は、なんかやる気無さそうにも見えちゃって、主役なのに薄~い感じに思えてしまうのが残念。でも、エドワード・ノートン、ケイト・ウィンスレット、マイケル・ペーニャ、ヘレン・ミレン、キーラ・ナイトレイって主役クラスな人々がそれぞれにいい味を見せているので、その多彩さを楽しめます。 さて、物語は予告編から予想したものとは違って、最初から種明かしをした上で進行してゆきます。娘を亡くして生きる気力を無くしてしまった男の前に、周囲が(彼を思って、と言うより会社の存続のために)舞台役者を使って「死」と「愛」と「時」を登場させる、って(『クリスマス・キャロル』が元ネタなのは明らかですね)。あのリアクション薄いウィル・スミス相手にそれで面白い物語が進行するのかいなぁ?って感じではありましたが。 これが、実はウィル・スミスだけの話ではなくて、その仕掛けた側の人達それぞれの話でもある、って広がりが見えてくると共に映画に奥行きが出て、興味深く見る事ができました。そして、「もしかしたら」という更なる予想が生じて、こうあって欲しいと思った結末、その通りのラストを迎える事で心が満たされて。 決して幸せな映画ではありません。それぞれがそれぞれのハッピーエンドを迎えてめでたしめでたしになる、そういうほんわかしたノリにはならないのは、娘を亡くした男って起点からしても明らかで。停滞していたそれぞれの苦悩、葛藤が「死」と「愛」と「時」の登場によって動いてゆく、そのさまが感動を呼びます。1つにはまとまらない、それぞれ散り散りな進行ゆえに大きな感動のうねりって訳にはいかないのが難点ではありますが。 でも、『素晴らしき哉、人生』は「人生は素晴らしい」って映画ですが、この作品は「人生ってたいへん」って映画なわけで、決して「素晴らしきかな、人生」って話ではないと思います。邦題を付けた人はこの映画のどこを見て素晴らしい人生を感じ取ったのかなぁ? [映画館(字幕)] 7点(2017-03-01 21:59:51) |
13. スター・トレック/BEYOND
《ネタバレ》 『スター・トレック』の魅力はキャラクターにあると思っているので、完全なキャラものと化した今回はかなり楽しく見られました。不時着によってクルーを分断する事によって幾つものコンビを作り、それぞれの道中を通してキャラの魅力を見せる、っていう作りはファンサービスになっていると思います。映画の展開はかなり慌ただしいですが。 ツッコミどころはいっぱいあって、あれだけの戦力(エンタープライズ号を短時間のうちに破壊してしまうような)があれば、別に細菌兵器に頼らなくてもアレだけでヨークタウン制圧できちゃうんじゃね?とか、あんなデカい戦艦を視覚だけで隠しておけないだろ(敵側もその存在を知ってるハズですし)とか、異星人女性キャラ3人のデザインが似過ぎとか、微弱な放射線でも素肌に密着してちゃマズいだろとか・・・ でもノリの良さっていうのか、押しの強さというのか、エンタープライズのクルー達の獅子奮迅っぷりで見せ場を連ねてぐいぐいと映画を推進してゆくパワーが心地良いです。 それからエンタープライズや宇宙ステーションを舐めるようにぐりぐり動くカメラワークを3Dで見るのも気持ち良くて。これまで150本くらい3D映画見てきて、すっかり3D慣れしちゃって効果が薄く感じられるようになってましたが、この映画の立体感は久しぶりに3D見た!って感じがして。エンタープライズをフェティッシュなくらいに撫でまわすが如く撮る、っていうのはロバート・ワイズの映画版第一作目を思い出したりもして。ただ、上下左右がグルグルする系3Dなので、3D酔いしやすい人にはヤバいレベル、つーかエンドロールは3D慣れしてても酔います。 ご贔屓マイケル・ジアッキノの音楽は作品によって好不調の波がハッキリしてる感じですが今回は好調な方でしたし。 でもアントンはやっぱり悲しかったですね。ラストの「亡きクルーに」の次のカットに映るアントン。『ターミネーター4』の舞台挨拶の時に場内グルリと回ってハイタッチしてくれたアントン。もっともっとあの笑顔をスクリーンに刻んで欲しかったです。 [映画館(字幕)] 8点(2016-11-06 21:03:48) |
14. スーサイド・スクワッド
《ネタバレ》 ビジュアルデザインだけは最高で、あとはメタクタ。まあ、最初からハーレイ・クインとカタナしか期待してなかったですし、その点ではそこそこ満たされたんでいいんですけど。 本当にビジュアル「デザインだけ」で、ビジュアルの見せ方自体はダメですし(そこら辺『マトリックス』とかザック・スナイダーの監督作くらいやってくれれば良かったんですけどねぇ)、映像やエピソードがちゃんと繋がってないのは、多分撮る要素が多過ぎて取捨選択しきれなかったんだろうねぇ、って。 物語的にはワルが集まったはいいけどヤケにウェットな連中で、尖がったのがおらずに皆丸い仲良しチーム、みたいなのが「あらら」って感じでしたし、敵がこの世の者ではないので力と力の戦いみたいな面白さがありません。各人その能力を存分に発揮できているとは言えず、それどころか何のために出てきたのか、何してたのか、あまりよく判らないようなメンバーもいる状態で。バットマンとジョーカーの中途半端なポジションも、映画に華を与えるどころか足を引っ張ってるように思えますし。 もっとイケイケ(死語)でいいのにねぇ。せっかくの素材がもったいないです。 でも正直『バットマンVSスーパーマン』もワンダーウーマンくらいしか見るところなかったし、考えてみれば『アベンジャーズ』だってブラック・ウィドウくらいしか見てないんだし、まあ私にとってアメコミ系の映画なんて、そんなモンなんでしょう。 [映画館(字幕)] 5点(2016-11-02 23:01:36)(笑:1票) |
15. SCOOP!
《ネタバレ》 『モテキ』『バクマン。』に続いて、またまた編集部が拠点となる群像劇って事で、この監督の引き出しはソレだけなのかいな? 前半は快調です。ベテランのフリーカメラマンに無理矢理押し付けられた新人記者。まるでかみ合わない二人が夜の東京を舞台に繰り広げるドタバタ劇はスピーディで笑いもあって。 ところが中盤以降、徐々にテンポダウンしてきて、何やら小さなところでまとまりそうな感じもして、その程度の映画なのかなぁ、と思っていると更に続いて、この映画は一体いつになったら終わるの?というとりとめのなさを見せ始め。 そして唐突な展開によって映画のカラーそのものが変わるのがクライマックス。ここはサスペンスという事になるのでしょうが、どうにも緊張感に欠ける、ダラダラした画が連なっていて、登場人物それぞれの行動にまるで共感も納得もできず、その上で立てまくっていたフラグを当たり前に回収するという。カルいモノを撮るのは得意だけれど、シリアスな展開になるとボロが出る、みたいな感じですかねぇ。 更にその事が起きて以降がまた長くて、体感3時間、みたいな映画になっちゃってました。 大体、バディものとしてベテランがルーキーに夢を託し、その成長を描くのはいいとして、ロバート・キャパの精神を写真週刊誌のカメラマンに重ねるセンス、その写真を記事にするあたりのセンスを理解しろというのはかなり無理なハナシで。キャパの「崩れ落ちる兵士」の真贋騒動や、写真週刊誌のあり様(最初に最悪な仕事だと言わせつつ、最後には見ているこちらを置いてけぼりにする美化っぷり)を皮肉った上でそうしているのかいな?と考えたりもするのですが、じゃあ福山雅治の役はただの道化だったのか?って事になっちゃいますしねぇ。ドラマ上、福山雅治がそうなる事の必然性が薄い気がしました。 ラストの編集部一同の酔いっぷりも自己満足、自己完結っぷりがハンパなく、ずいぶんとスクリーンとこちらの距離が離れた映画だねぇ、って感じでした。妙に悟っちゃったような二階堂ふみや吉田羊はともかく、あの娘さんの物語上のフォローはしておいて欲しかったなぁ。 [試写会(邦画)] 5点(2016-09-26 20:15:45) |
16. スポットライト 世紀のスクープ
《ネタバレ》 1本でも多くの映画を真剣に真面目に見る、よりは好きになった映画をいっぱい愛する方がいいと最近思うのですね。そんな事を書くのはツイッターでこの映画を「教会ってモノにピンと来ないから楽しめなかった」って感想に対して「積極的に映画を理解しようとしないのは勿体ない」って批判する意見を見かけたので。 この映画、キリスト教圏の国に向けて作られてます。教会とかキリスト教の信仰の実態とかをキリスト教圏以外の人間に判りやすく解説するとかいう事は一切していません。描かれるのは教会で行われた複数の神父による複数の児童虐待事件に対する記者達の取材、その奮闘ぶりで、その外側は全く描かない、何が起きたのかを映像で説明したりしません。全ては事後の取材の姿のみで構成される映画。なので事件の当事者すら取材対象としてほんの少し登場するだけ。 そこからこの事件の恐ろしさを実感し、記者達の挑戦の困難さを理解できるのは実際にキリスト教圏に暮らし、日常の中に教会が存在している人だと思うんですよね。万物に神が宿る八百万の神の国、お寺や神社に年に何度かお世話になる程度の国、神様も仏様もごっちゃであちこちのお祭りにでかけたり参拝したりする国の人間がピンと来ないのは当たり前で。そこで何もアカデミー作品賞の映画だからって必死に理解する必要なんてあるのかいな?みたいな。それよりは好きな映画を愛した方がよっぽど映画と人にとって幸せなんじゃないかな? さて、正直眠い映画でした。ピンと来ないってトコだけじゃなくて、テクニック面に面白さを感じられなくて。このテの社会派映画の持つパワーっていうのがこの映画は希薄なんじゃないかって。ワリと「劇映画」のセオリー通りの画で構成されていて、記者が取材で街を歩くシーンが重ねられる部分での振り付けっぽさ(背景のエキストラの動きまで含めて)とか、ああ、作られた画だねぇ、って。 編集部の縦の構図なんかは面白いのですが、ならばもっと徹底されてたりする方がいいのに、みたいな。 『大統領の陰謀』や『ザ・ペーパー』のようなパワーある作りではなくて、良い言い方をすれば実直な作りなのですが、悪い言い方をすれば平凡。 アカデミー賞はタブーに挑戦した映画としての評価なのかな、って感じですが、まあ、そこら辺を無理矢理理解しようとする時間があるのなら自分の好きな映画を探す作業に移った方が有意義かと。 [映画館(字幕)] 6点(2016-05-04 22:01:09)(良:1票) |
17. ズートピア
《ネタバレ》 「みなさん、ディズニーはここまで来ましたよ」って感じ。 ジュディがとっても可愛くて。もふもふで、表情豊かで、鼻をヒクヒクさせるところなんか本当に愛らしく。CGでここまで生命を与えられるんだねぇ、ってその技術力に感服。もうジュディ眺めてるだけで満足な映画。 ・・・なのですが、ちゃんと映画としてしっかり作られています。物語は新人警官と詐欺師のバディもの。お互いに騙し騙されながら連続失踪事件の謎に迫ってゆく、その意外なまでにちゃんとした(子供向けになんとなくお茶を濁しました的な安直さのない)面白さ。幾つもの伏線がきっちりと回収されてゆく脚本が気持ち良いです。 そして、その根底に流れるシリアスなテーマ。差別が生まれる背景が描かれ、差別意識を植え付ける事で危機感を煽り世論をコントロールする危うさが描かれ、それを乗り越えてゆく道までもが示されて。これは社会派ディズニーアニメーションなのです。 だけど、難解な部分は何も無くて。そこに描かれるのは小さな子供でも存分に楽しめる、夢とワクワクに溢れた世界。『シュガー・ラッシュ』や『ベイマックス』同様、スクリーンの端から端まで意匠が凝らされ、その色彩、情報量に目が回ります。登場する動物達の個性、動物達の暮らす世界の独創性、映画の中に入り込んで魅了されるひとときが過ごせます。 一方で、もちろん映画やディズニーの過去作品にうるさい人達向けのネタも多数仕込んであって。 全ての世代を楽しませる映画。矛盾だらけになりそうなこの難題を圧倒的な数の創造力によってクリアしてみせる、今のディズニーにはそれだけのパワーが溢れているという事を実感させてくれます。 作品に流れる膨大なクリエイターの血、その力には頭が下がる思いです。 [映画館(吹替)] 10点(2016-04-24 23:24:55)(良:4票) |
18. スター・ウォーズ/フォースの覚醒
《ネタバレ》 エピソード4をテアトル東京のシネラマ最前列で見たくらいのリアルタイム世代ながら元からそんなにハマってないシリーズでして。 4、5、6のエピソードの引用によって展開はどんどん先読みできるし、お馴染みのセリフや小ネタを散りばめて、まるでファンが作った二次創作みたい。ファンを喜ばせるのはいいとして、そこから先は?って考えると、ちょっと心許ないかなぁ、と。 なんか微妙に違和感を抱くのですよね。1、2、3がCGに溺れてしまったようなシリーズだった事を思ってでしょうか、ロケセット中心になってあまりCGに頼り過ぎない作りになっています。それが結果として「遠い昔、遙か彼方の銀河系で」ではなくて「最近、どっか地球上のロケセットで」な世界に感じてしまって。 旧シリーズもロケセットを多く使っていましたが、マットペインティングを多用する事で異世界感を醸していた訳です。今回は冒頭のスターデストロイヤーの残骸が横たわる風景こそ、その世界観を強く打ち出していますが、以降は奇を衒うような風景は描かれず、ごくごく自然な世界として描かれ、星ごとの特徴も地球の常識の範囲内。 更に物語は人間中心で明らかな東洋人顔も参入、一方で雑多な異星人たちは背景に留める程度の扱いになってしまって、それが従来シリーズとは違う感じがして。『宇宙からのメッセージ』にアロハシャツが出てきちゃう違和感、アレに近いかな。 これまでのシリーズでルーカスは民族、兵器、風景、生活など雑多な世界を描いてきました。ゴチャゴチャとしてあらゆるデザインで溢れていて。それこそが『スター・ウォーズ』の宇宙だと考えると、今回は世界がやたら狭い感じがします。宇宙空間の描写も少なく(宇宙に出たところですぐハイパードライブに突入しちゃいますし)、「地球のどっか」感が拭えないんですよね。もっとハッタリをカマしてくれてもいいのよ?みたいな。 それでもやっぱりお馴染みのオープニングには心躍りますし、レイとBB-8が魅力的で(レイはもう少し陽気でもいいんじゃないかと思いますが)、なので以降のシリーズにも少しは期待が持てるかな。 ちなみに今回はTOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン7の最前列で見ました。 [映画館(字幕)] 6点(2015-12-26 13:54:43)(良:3票) |
19. ストレイヤーズ・クロニクル
《ネタバレ》 面白くなりそうな要素はあるのに、脚本と演出が延々と外してゆくような感じ、明後日の方向を向いたまま最後まで突っ走ってるような感じでもどかしいったらありゃしないっす。 大雑把に言っちゃえば安っぽい、スケールの無い『X-MEN』なわけで、それでも面白くする事は可能だと思うんですが、とにかくまず脚本が雑で。 各キャラクターが何を考えているのか、何を動機としてその行動に出るのか、どう心情の変化が生まれてゆくのか、そこら辺がもうまるで計算されてないんですよね。ただだらーっと並べてあるだけ。エピソードが唐突で繋がっていない状態で羅列されるばかり。だから誰にも感情移入できず、悲劇なのですが全く心に迫ってきません。何しろ殆どのキャラクターは「クライマックスまでずっとただの馬鹿に見えるけれど唐突に実は悲しい存在として散ってゆく」って状態で。散々馬鹿だったのに最期だけドラマティック気取られても、みたいな。 クライマックスに向ってゆくに従ってどんどんテンポダウンして、間延びしてダラダラモタモタした状態を見せられるのは苦痛です。 大体、岡田将生が洗脳されちゃった仲間に首絞められて「うぎぎぎ」ってのを3回も繰り返す必要がこの話のどこにあるんでしょう? そして、物語がそんな状態なので演技が大根状態に思えてしまいます。この映画のキャラ達は画面に映っていないところでは棒立ち状態になっているとしか思えないんですよね。他キャラが動いている間、一体何をしていたのかまるで見えてこず、計算したようなタイミングで画面内に割って入ってくるような状況が連発され、それはまるで学芸会的タイミングの世界。エピソードに流れが無くてブツ切れになっている事も手伝って、こんなにも役者を揃えているのに全員大根演技に見えてしまうんです。 演出は中途半端にスタイリッシュ気取ってますが(画面に時間経過を表す文字を出すなら最初の方でほんの数回でなく全編通すべきですし、分割画面もちょっとだけ使ってみました、みたいなハンパさではそこだけ浮きます)、それよりも各キャラを明快に、だけど奥深く描く事に腐心して貰いたかったところです。 碇ゲンドウの出来損ないみたいな伊原剛志の存在も含めて独りよがりの設定を納得させる努力も無く、なんだか随分と自己陶酔型の映画を見せられちゃったなぁ、って印象。最後まで見るのがシンドかったです。あまりのツラさに「あー、やっと終わった、もうとにかくさっさと帰ろう」と気が急いてシネコンに傘忘れてきちゃいましたよ。 [映画館(邦画)] 3点(2015-07-01 23:20:13) |
20. ストロボ・エッジ
《ネタバレ》 移動の映画。 歩く、走る、そしてよくコケる。仁菜子は常に移動しています。それを受け止めたり一緒に歩いたり走ったりする蓮と拓海。頻出する電車も含めて、その移動は揺れ動きながら進んでゆく登場人物の姿を象徴しています。 海辺の蓮と麻由香は「道」の無い行きどまり、その先の別れを暗示して。 そんな移動と静止、そしてマルチ画面、クレーンを使った長回しや画面全体が白く飛ぶレベルのオーバーな露出等、技巧に走りまくった画作りをしている映画なのですが、あまり上手くいっていません。 同じ原作者の『アオハライド』同様、青臭くて恥ずかしい物語。それぞれがそれぞれの事を思う事ですれ違ってゆく物語、それは『アオハライド』と一緒なのですが、でも『アオハライド』と違って、それを映画へと昇華しきれていない感じなんですよね。テクニックで飾り立てれば誤魔化せる、みたいな印象。そうでなくて、そのキャラクターの「心」をちゃんと画で表さないとダメなんじゃないかなぁ、と。 そういう意味では麻由香役の佐藤ありさ以外みんなミスキャスト気味な気がしてしまって。福士蒼汰くんは相変わらず薄べったい演技をしてる感じですし、有村架純嬢は表情に乏しく、山田、黒島の両氏はビジュアル的にあまりこの作品に相応しい感じがせず、まあ、こういうのって結局は最初に俳優ありき、プロダクションの力ありきで企画されてゆくモノなので、そういう仕方ない、残念な感じになってゆくのだなぁ、と。 役者さん達がもっとバーン!と魅力を放っていたならば、多少のアラなんか(多少ではない気もしますが)なんとかなっちゃってたと思うのですが。 少女マンガ原作の映画は一定数の需要があるがゆえにこうしてコンスタントに作られてゆくのでしょうけれど、その精神は小手先のテクニックで表現できるものではないと思います。原作をきちんと咀嚼できているかどうか、そのあたりが鍵になるんじゃないかなぁ。 [映画館(邦画)] 5点(2015-03-15 23:12:41)(良:1票) |