1. STAND BY ME ドラえもん2
《ネタバレ》 フル3DCGによるドラえもん映画第2作。前作はテレビアニメシリーズや原作の短編エピソードで構成されていたが、それに対し今回は「おばあちゃんの思い出」に前作でやった「のび太の結婚前夜」の後日談をオリジナルエピソードとして絡めて脚色した一本の長編ストーリーになっていて、よくここまで話を広げられたなと思うものの、その脚色がうまく溶け込んでいて違和感はなくよくまとまっている。とはいえ、(監督二人も言っているように。)やはり前作の予想外のヒットを受けて作られた続編ということで、かつ、「のび太の結婚前夜」の続きでもあるので、先週に見た前作と合わせて考えると無理を感じる部分もあるのがちょっと残念だし、何よりものび太のダメぶりを強調したことで、前作のしずかちゃんの父のセリフの感動が薄れてしまったように感じてしまったのはちょっと悲しかった。でも、そんな欠点があまり気にならなかったのは、タイムトラベルSF作品としての伏線の張り方やその回収の見事さによってその面白さがきちんと出ている(山崎貴監督はやっぱりSFの人と感じる部分でもある。)からだと思うし、話の発端となる「おばあちゃんの思い出」の部分がやはりこの映画でも秀逸で、ここだけでもじゅうぶん良いと思えるのに、ラストで過去からやってきたおばあちゃんがのび太の結婚式を見ているシーンは不覚にもグッとくるものがある。一本のストーリーになっていることで前作と違っていつもの長編ドラえもん映画に近い印象ではあるものの、いつものように悪役や異世界などの非日常が登場しない長編ドラえもん映画という点が異色に感じるのだが、こういう作品がシリーズで一つはあっても良いと思うし、山崎監督もそういう思いがあったのではと感じずにはいられない。見る前は酷評ばかり目にしてたのもあって不安な面が多かったが、いつもとは少し違う長編ドラえもん映画として素直に楽しめたし、前作よりドラえもんらしさもあって面白かった。でも、評点数は控えめに。 [DVD(邦画)] 6点(2023-02-18 17:52:21) |
2. STAND BY ME ドラえもん
《ネタバレ》 話題になっていた公開時はあまり興味がなかったのだが、同じ山崎貴監督が手掛けていた「ルパン三世 THE FAST」を見たこともあり、本作も見てみることに。見る前はやはりルパンの時と同様に「ドラえもん」をフルCGアニメでやる意味とかを考えてしまったものの、実際に見始めると悪くないし、そこまで違和感も感じなかった。ストーリーとしてもいつもの劇場版のように冒険譚ではなくテレビアニメシリーズのエピソードのリメイクになっているのが、今となっては異色に感じられるものの、安心して見ていられる。でも、最初のほうでのび太に簡単に道具を出しまくる(学校に遅刻しそうとかの理由でどこでもドアを出していたり)ドラえもんにちょっと違和感を感じて、この映画大丈夫なのかと思ってしまったし、ドラえもんがのび太のところにいる理由の一つである本作オリジナル設定である成し遂げプログラムもちょっと説明過剰な感じがした。(でもこれがあることで終盤の「のび太の結婚前夜」と「さようならドラえもん」という本来無関係なエピソードをうまくつないでいる。)後半は大山ドラ時代末期の同時上映作品である感動短編シリーズでも使われたエピソードが登場し、確かに知ってる話故か分かっていてもやっぱりいいなと思うのだけど、30分一本の独立した短編としてならともかく、一本の映画の中でまとめて見せられると少しあざとさも感じる。逆に「雪山のロマンス」のエピソードは全く覚えていなかったので、ここだけは新鮮に見る事ができた。でも、しずかちゃんが意識を失ってからはいつもの劇場版のような感じになってしまったように思えたのは本作に限ればちょっと残念に思えたし、強引さも感じてしまった。それに一本の映画としてドラえもんとのび太の出会いから始めたのであれば、別れでキレイに終わってほしかった気もして、そのあとに「帰ってきたドラえもん」のエピソードをやったのはけっこうな蛇足に感じた。しかし、思えば山崎監督はデビュー作「ジュブナイル」でもドラえもんネタを盛り込んでおり、一度はドラえもんを自分で監督してみたいという思いもあったのかもしれない。当初はこれ一本で終わる予定だったようでドラえもんでやりたいことを思いっきりやったからこその結果が本作なら本人は満足だったんじゃないかな。 [DVD(邦画)] 5点(2023-02-11 17:47:34) |
3. スチームボーイ STEAM BOY
《ネタバレ》 「AKIRA」を久しぶりに見たからついでにと今まで未見だった本作をようやく見てみた。公開当時はかなり宣伝に力が入ってたことを覚えている。大友克洋監督の構想9年というオリジナルアニメ作品であるが、まったく期待しないで見たせいか見る前に思っていたほどつまらなくもなかった。しかし、どこにでもあるような冒険活劇アニメの域を出ておらず、これのどこに9年もかけたのかは疑問で、(時期的に「メモリーズ」のすぐ後くらいから企画が始まってる?)普通に頼まれ仕事のプログラムピクチャーと言われれば信じてしまいそうないたって普通のアニメという印象しかない。それにストーリーが分かりやすいのはいいのだが、その代わり映像的なインパクトも薄く、そこにだいぶ物足りなさを感じた。(映像自体はクオリティ高く丁寧で美しいだけに残念。)酷評されている有名芸能人による吹き替えもとくに酷いといわれている中村賀津雄を含めてそんなに気にならなかったが、児玉清だけはしゃべるたびに本人の顔がちらついてしまった。でも、それ以前に主要な登場人物に誰も感情移入できるキャラがいなかったのが致命的で、これはキャラを魅力的に描けていないのが原因ではないか。最後のほうはやや酷評になってしまったかもしれないが、最初にも書いたように変な期待をしなければそれなりには見れる映画にはなっていると思う。 [DVD(邦画)] 5点(2020-08-07 21:10:50) |
4. ズートピア
《ネタバレ》 久しぶりに見るディズニーアニメ。偏見や差別に対してかなりストレートに、またそれを決して重苦しくなることなく、ディズニーらしく子供にも分かりやすく描いている。しかし、込められているメッセージは子供よりも大人の方が考えさせられるものになっていて、ただの子供向けアニメとは侮れない完成度の高さがあり、そんなところが素晴らしい。主人公のウサギの新人警官と詐欺師のキツネがコンビを組んで行方不明事件を追うという刑事ものには定番のバディものとしての面白さもあり、刑事と罪人のコンビというのは「48時間」を彷彿させるものがあるが、最初に主人公のジュディが署長から言い渡された捜査の期限が48時間であるあたりはやはり意識している部分もあるのだろう。もちろんこの二人(二匹)のやりとりだけでも見ていてじゅうぶんに楽しい。夢を持つことや諦めない心を持つことの大切さについても深く考えさせられる映画になっていて、見終わった後には元気と前向きな気持ちをもらえた気がしたし、まさしくいろんなメッセージのつまった傑作で、本当に見て良かったと思う。 [DVD(吹替)] 8点(2017-06-17 17:05:38)(良:1票) |
5. すべては君に逢えたから
《ネタバレ》 クリスマスの東京駅を舞台にしたラブストーリーで、同時に6つのエピソードが進行する群像劇。ハリウッドのラブロマンス映画のような作品を日本でも作ろうという意気込みは悪くない(少なくともハリウッドもどきのパニック邦画よりは好感が持てる。)し、それなりに雰囲気も出ているのだが、群像劇としてはなにか物足りなさを感じるし、ラストももう少しうまく出来なかったものかと思えて、これだったら群像劇ではなくオムニバスにしてしまったほうが良かったかもしれない。一応、各エピソードにタイトルがつけられていて最初は群像劇ではなくオムニバスにするつもりだったのかなとつい憶測してしまった。(もし最初から群像劇のつもりでこういう風にしたのならセンスを少し疑う。)各エピソードもなにか組み立てが下手くそに感じるのだが、それでも、時任三郎の主演パートは恋愛ではなく家族愛を描いていて、このエピソードにはさすがにくるものがあり良かった。倍賞千恵子の過去の大失恋エピソードも素敵な結末で良かったと思う。でも、このふたつはもっと長くしてちゃんとした一本の長編として見たかった気もする。とくに倍賞千恵子のエピソードはいかにも一本の長編映画として成り立つような設定だっただけに惜しい気がする。それに過去の大失恋がセリフで語られるのみなのも物足りなかった。それと最後にもう一言、ラスト付近で玉木宏と高梨臨が初デートで見る映画がリバイバルの「カサブランカ」というのはちょっと違和感がありすぎる。 [DVD(邦画)] 5点(2014-11-20 10:52:41) |
6. ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
《ネタバレ》 自ら演出の舞台や、脚本を担当している「古畑任三郎」でも法廷劇を扱ったことのある三谷幸喜監督が手がけた法廷映画であるが、ただの法廷劇ではなく、証人が戦国時代の落武者の幽霊であるというのはいかにも歴史マニアの三谷監督らしいところで、この設定だけで面白いし、よくこの奇想天外な設定を生かしきっていると思う。主演の深津絵里と西田敏行のやりとりなど三谷監督らしい笑いも多く安心して見ていられた。前作「ザ・マジックアワー」でもそうだったのだが、本作も犯行のあった時間に被告が泊まっていたホテルが「犬神家の一族」の那須ホテルを彷彿とさせていたり、フランク・キャプラ監督の映画に言及するシーンがあったりと三谷監督の映画好きぶりが垣間見えるのが楽しい。(幽霊である小日向文世が「スミス都へ行く」や「素晴らしき哉、人生」の上映時間を細かく記憶しているのには笑った。)ストーリーも思っていたより面白く、長いわりには退屈しなかったのだが、ただ、裁判のシーン以外のところで詰め込みすぎた感があり、少し不満も残る。その中でもやはりいちばん気になるのはラストで、エミ(深津絵里)に六兵衛(西田敏行)の姿が見えなくなるというだけで良かったのに、そこからさらに死んでいるエミの父(草彅剛)の幽霊を登場させたのは「感動させてやろう」という魂胆が見え見えでやり過ぎ感があり残念で、この父親との再会シーンを削ってしまったほうがもっとキレイに終われただろうと思うと惜しい。それでも主役ふたりが歌う主題歌はけっこう良かったし、本作は三谷監督の映画では「THE 有頂天ホテル」よりは好きなので少し甘めかもしれないが7点。でも、同じく7点をつけている「ザ・マジックアワー」のほうが本作よりも好きだな。最後にもう一言、「ザ・マジックアワー」の主人公である村田大樹(佐藤浩市)が登場してエミに自己紹介するシーンではつい「ザ・マジックアワー」での村田に高千穂マリ(深津絵里)が自己紹介するシーンを思い出してしまったことも書き加えておこう。 [DVD(邦画)] 7点(2013-08-06 22:46:41)(良:1票) |
7. 素晴らしき休日(2007)
《ネタバレ》 カンヌ国際映画祭の企画で世界的に知られた35人の映画監督たちが製作したオムニバスの中の一本。田舎の映画館に映画を見に来た男(モロ師岡)が相次ぐ上映中のトラブルに見舞われるという話で、途中でフィルムが切れたり、燃えはじめてしまうところはおもしろおかしく描写されてはいるが、実際に昔はこういうことがよくあったのだろうと思うし、田舎にポツンとあるような映画館ではひょっとしたら今でもまれにあるかも。僕自身は映画館での上映中のそういったトラブルに遭遇したことがないし、今後も遭遇する確率は低いだろう。でも一回ぐらいはこういうトラブルに遭遇してみたい気持ちもないではない、というのは冗談。(でもここ数年映画館にまったく行っていないなあ。)この作品自体は3分間しかないのであまり書くこともないのだが、上映されていた映画が個人的にたけしの映画の中ではいちばん好きな「キッズ・リターン」だったのが嬉しく、映写される断片的な映像を見ながら、また久しぶりに見たくなった。「キッズ・リターン」はたけしのバイク事故後、初の監督作品ということなので、たけし自身にとっても自作の中では思い入れの強い映画なのだろう。 [DVD(邦画)] 6点(2011-10-01 14:46:33)(良:1票) |
8. スウィングガールズ
《ネタバレ》 この映画の公開中の頃だったかに見た「ひみつの花園」がいい意味で余りにも突き抜けた勢いのある喜劇映画ですごく面白かったため、逆に今まで敬遠していた本作だが、ようやく見た。話としては「ウォーターボーイズ」と完全に同工異曲なので新味はあまりないが、それでも矢口史靖監督らしい勢いのある演出はやはり健在で、強引な展開やつっこみどころ満載なのもギャグ映画と割り切れば、何も考えずに見られる娯楽喜劇映画としてはかなり笑えるし充分に成功していると思う。(若大将シリーズなんかとノリとしては同じような気がする。)青春映画としては同じアルタミラピクチャーズ作品の「がんばっていきまっしょい」なんかと比べてしまうとドラマ的に物足りなさを感じるのも事実ではあるが、全体的にはなかなか面白かった。ラストの演奏シーンでは見ているこちらも思わず会場の観客たちと同じくノリノリで聞き入ってしまった。(演奏終了後エピローグを描かずすぐにエンドロール突入するというのも潔い。)今になって見てみると出演者に上野樹里(本作の後「のだめカンタービレ」でジャズからクラシックに行っちゃった?。)貫地谷しほり、本仮屋ユイカ(二人ともこの後NHKの朝ドラに主演してる。)など「ウォーターボーイズ」同様けっこう今を時めいている若手女優が出ていてその意味でも貴重か。チョイ役だけど竹中直人が通う音楽教室の先生を谷啓が演じているのがちょっと嬉しかったりもする。 [DVD(邦画)] 8点(2010-06-16 17:34:44)(良:1票) |
9. 醜聞(1950)
《ネタバレ》 黒澤明監督の初の松竹作品。プライバシー侵害を扱った法廷劇が中心だと思っていたら、ダメな弁護士が立ち直るまでの過程が中心でちょっと驚いたが、その弁護士の人間ドラマがなかなか面白かった。(その分、法廷シーンはちょっと物足りない。)黒澤監督の映画では欠かすことの出来ない俳優の一人である志村喬がこの役を演じているのだが、寡黙な役の印象の強い彼がやたら饒舌なキャラクターで最初出てきた時にはミスキャストだと思ったが、後半は志村喬が抜群に良かった。とくに、「蛍の光」を合唱するシーンは素晴らしい。これが、後の「生きる」につながっていくんだろうなあ。黒澤作品で久しぶりに見る三船も、後々演じることになる威厳のある存在ではなく、ギラギラしている役でもないがこういう演技も新鮮。小沢栄太郎のいやらしさも板についている。しかし、山口淑子はなんか仏頂面だし、桂木洋子に冠を被せているシーンではひいてしまった。二人ともあまり見たことがないだけに魅力を感じることが出来なかったのは残念。「素晴らしき日曜日」のレビューで中北千枝子が魅力的だったと書いたけど、やっぱり、川島雄三監督や成瀬巳喜男監督のほうが女優を魅力的に撮ることに関しては黒澤監督よりも優れていると思う。 [DVD(邦画)] 6点(2008-04-02 02:10:58)(良:1票) |
10. 素晴らしき日曜日
一組の若い貧しいカップルの日曜日のデートを描いた黒澤明監督には珍しいロマンス映画。1947年という戦後まだ2年しか経っていない頃の作品のため、焼け跡の町や闇屋、戦災孤児と思われる浮浪児など、終戦直後である製作当時の時代風景があたり前のようにリアルに描かれてるのが興味深いし、男くさい作風のイメージが強い黒澤監督が初期にこのような慎ましい作品を作っていたことも正直言って驚いた。(黒澤作品と知らずに見たら絶対に別の監督の作品と勘違いしてしまいそう。)主役のカップルを演じる二人も実によく、特にすぐに悲観的になり落ち込んでしまう彼(沼崎勲が好演。)を前向きに励ます辛い境遇にいながらも決して明るさを失わないヒロインを演じた中北千枝子が素晴らしく、決して美人とは言えない顔立ちにもかかわらず見ているうちにだんだんと可愛く魅力的に見えてくる。どちらかと言えば気性の激しい人物を演じる女優が印象に残る事の多い黒澤作品においてこんなに純粋なヒロインが印象に残るのもまた珍しいことである。有名なシーンである画面から観客に拍手を求めるシーンではつい小さな拍手をしてしまったが、機会があればこのシーンは一度映画館で見てみたい。 [DVD(邦画)] 7点(2008-03-26 20:21:32)(良:1票) |
11. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 最初は「赤線地帯」のような娼婦たちの生き様を描いた作品かと思っていたが、男女の腐れ縁を描いたラブストーリーだった。川島雄三監督らしいユーモラスなシーンもあり、同じく男女の腐れ縁を描いている「雪国」や「秋津温泉」ほど見ていて暗い気持ちにはなることはなかった。また、それでいて人間ドラマが非常に深く描かれた傑作に仕上がっており、川島監督がやっぱり並の監督ではなかったと実感できる。出演者の中では新珠三千代が今まで見た役柄のイメージとは少し違う印象の役(とはいえはじめはちょっと気づかなかった。)を好演していて新鮮で良かった。ダメ男を演じる三橋達也も素晴らしい。でもやっぱ出演者の中でいちばん印象に残るのは芦川いづみ。この間見た「愛と死の記録」では印象が違いすぎて違和感しかなかったのだが、本作ではこれでもかと言わんばかりに可愛さを振りまいていてとてもキュートだった。ほかにもチャンバラごっこに興じる子供たちなど、製作当時の時代風景も印象的だ。ラストシーンも余韻を残す終わり方でよい。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-04 18:12:49)(良:2票) |
12. ズンドコズンドコ 全員集合!!
ドリフの映画って初めて見た。筋立て自体はまあ可もなく不可もなくというところなんだけど、みんな若くていきいきとしててとても面白かった。世代的に荒井注が正式メンバーだった頃を知らないのだが、志村けんのいない違和感は全く感じることはなかった。この時代のドリフはいかりや長介が憎まれ役なのは前もって知ってたけど、本当に見ていて腹が立つほど憎たらしい役回りで後半いかりやにいじめられていた加藤茶と立場が逆転した時には思わず爽快感を感じた。女性のような髪型(そのせいで最初誰だか分かんなかったけど。)の宍戸錠も最高。 [ビデオ(邦画)] 6点(2006-11-28 03:10:07) |
13. 砂の器
《ネタバレ》 加藤剛と橋本忍の訃報を聞き、久しぶりに見たくなって20年くらい前にテレビで見て以来の再見。その時も強烈に残った映画だったので、ちょっと久しぶりに見るのが不安な面もあったのだが、なんといっても橋本忍と山田洋次監督による脚本が巧みで冒頭からすぐに引き込まれる。前半の事件を追う刑事たちを描いた部分ももちろん面白いのだが、やはりこの脚本のすごいところは犯人である和賀英良(加藤剛)の悲しい過去を克明に描くことで、単なる推理ものに終わらない深い深い人間ドラマとしても一流の映画になっていて、これが本作を名作たらしめるゆえんだろう。後半の刑事たちの捜査会議と和賀のコンサートを交互に描き、そこに和賀(=本浦秀夫)とその父である本浦千代吉(加藤嘉)の放浪の旅の回想シーンを入れてくる演出はまさしく映画的で、その放浪シーンもセリフを使わず、「宿命」の美しい旋律と四季をすべて織り交ぜた日本の美しい風景の中に描いていることで野村芳太郎監督をはじめとしたスタッフが映画の力を信じていることが分かるし、やはり見ている側としてもここに映画の素晴らしさというものを感じずにはいられない。野村監督はどうしてもこれをやりたくて松竹でダメなら他社へ行ってでもやるという意気込みだったというが、その熱意はじゅぶんに感じることができる。出演している俳優陣の演技ももちろん素晴らしいが、中でもやはり、和賀を演じる加藤剛は初めて加藤剛という俳優を見た作品が本作だったこともあり、加藤剛といえば真っ先にこの役が浮かぶのだが、それは久しぶりに見た今でも変わらないし、むしろほかの俳優が演じる和賀英良が想像できないほどにイメージが一体化してしまっている。企画の構想段階から既に決まっていたという千代吉役の加藤嘉(初めて本作を見た時、本当に加藤剛の父親と思ってしまった。)も素晴らしく、加藤剛の和賀もそうだが、彼の千代吉無くしては本作がこれほど胸を打つ映画にはならなかったかも知れない。今西刑事を演じる丹波哲郎も抑えた演技が印象深く、やはり名優だと感じることができる。(捜査会議のシーンはこの人ならではの説得力がある。)そして短い出番ながらも心優しい三木巡査をあたたかく演じる緒形拳。とにかく主要キャストのほぼ全員の代表作と言っていいほど、みんな素晴らしい演技を見せていてその点でも見ていて飽きない。そしてもう一人、映画館の主人を演じる渥美清も忘れることはできない。(渥美清と丹波哲郎のツーショットは貴重だ。)でも、今これほどの映画が果たして作ることができるかと言われればはっきり言って疑問。まさに本作は熱意ある優れた脚本と優れた演出、優れた名優たちの演技、これらが三拍子そろったからこそできる映画で、本作のような映画はもう二度と出来ないだろう。橋本忍さん、加藤剛さん(はじめ本作に関わった亡くなった方々)のご冥福を祈りながら、文句なしの10点を。本当に何度でも繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し見たくなるような映画である。(2018年8月17日更新) [DVD(邦画)] 10点(2006-07-17 17:46:51)(良:2票) |
14. スーパーマリオ/魔界帝国の女神
《ネタバレ》 「スーパーマリオ」のハリウッド実写映画版。去年イルミネーションのCGアニメ映画が記録的大ヒットしたことで久しぶりに見たくなって30年ぶりに見た。子供の頃に見た時はけっこう純粋に楽しんだ記憶があり、今見てもB級SF冒険ファンタジーとしてはそこそこ悪くないと思うものの、マリオとして見てしまうと、キャラ使っただけの別物感がすごい映画という感じで、駄作とまでは思わないまでも、かなり微妙に感じてしまうのも事実で、ネバネバのリアルなキノコが気色悪く、とくに王様が変身させられているキノコなどは「エイリアン」にこんなの出てきたよなと思うような代物で、なんか見ていてホラー映画のよう。ヒロインのデイジー(←なんでピーチ姫じゃないんだと初めて見た当時も思ったが、今回も同じ事を思った。)がそのキノコを父親だとマリオ&ルイージに紹介するのが見ていてすごく笑えてしまった。ヨッシーが「ジュラシック・パーク」に出るラプトルのようなリアルな恐竜なのもかわいさよりも怖さやキモさしか感じられない。全体的にグロさもあってファミリー向け映画として見てしまうとけっこう気まずいのではという感じもする。さっき、子供の頃は純粋に楽しんでいたと書いたが、やっぱり今になって見ていて本作を純粋に「マリオとして」楽しんでいた当時の自分が信じられなくなってきた。しかし、さっきも書いたように普通の娯楽映画としては悪くないし、今になって見ると世界観自体は自分的にはそこまで嫌いではないかも。でも、やっぱりCGアニメ版のヒットの影響でにわかに注目されてリバイバル上映までされてしまうような価値はハッキリないと断言できるし、他人にはおそらく絶対に薦めないであろう映画であることは確か。甥っ子二人がCGアニメ版を気に入っているのだが、やっぱり本作は見せないほうが良いなぁ。(2024年4月28日更新) [DVD(吹替)] 5点(2005-04-14 15:42:41) |
15. スネーク・アイズ(1998)
《ネタバレ》 見たのは20年ぶりくらい。サスペンス映画としては捻りもなくシンプルでまあ普通の印象だが、冒頭10分以上の長回しやホテルの部屋を俯瞰映像のワンカットで一つ一つ見せていく凝った映像がとにかく印象に残り、それがとてもデパルマ監督らしい。昔に見た時はあまり面白くない映画だと感じたが、それはストーリー面だけであって、映像的な面白さはじゅうぶんにある映画だと今回見て感じた。またストーリーがシンプルなのもこういう映像を撮りたいというのが先にあったならそのほうが潔く、逆に良かった。やはり映画の魅力はストーリーや脚本だけではないことをあらためて感じる。音楽を担当している先ごろ亡くなった坂本龍一の追悼も兼ねての鑑賞だったのだが、その音楽があまり印象に残らなかったのはちょっと残念。(2023年4月30日更新) [DVD(吹替)] 6点(2005-04-12 20:51:36) |
16. スーパーの女
《ネタバレ》 どこにでもあるようなスーパーマーケットを舞台に伊丹十三監督らしい着眼点でそのスーパーの問題点を描き出していて今見ても面白いし、昔(中学生くらいの頃)に見た時よりも今の方が身近に感じられる題材で興味深く見ることが出来た。それぞれがプライドの高い職人である精肉部や鮮魚部のチーフといった客からは分からない裏方スタッフの人間関係からリパックや産地偽装といったスーパーの裏事情まで細かに描かれていて本当に伊丹監督の鋭さといいうものを感じずにはいられないし、後年、実際に産地偽装などの食品偽装が問題化することを考えれば伊丹監督の先見の明も感じられる映画になっていて、いろいろ考えさせられる部分も多い。それらのテーマを肩の凝ることなく娯楽コメディとして見せる伊丹監督の手腕はいつもながら見事。ただ、ラストも痛快なのだが、今見ると少し勧善懲悪に寄り過ぎていて極端すぎる気がしないでもなかった。クライマックスの花子(宮本信子)が閉じ込められた冷凍車をデコトラが追うシーンは今見たら「トラック野郎」シリーズのクライマックスの激走シーン(あんなにハデではもちろんないが。)をつい思い浮かべてしまう。(2022年1月9日更新) [DVD(邦画)] 7点(2005-04-04 22:19:21) |
17. 助太刀屋助六
同じ真田広之出演の「たそがれ清兵衛」や「ラスト・サムライ」とは違い、軽いノリで楽しめる映画である。ところで岸部一徳は時代劇ではなぜいつもこういう役なんだろうか。 [ビデオ(邦画)] 8点(2005-04-01 23:44:07)(良:1票) |
18. 姿三四郎(1943)
黒澤明の監督デビュー作だが、全盛期の黒澤映画を見慣れていると大分物足りないのでちょっと他人には薦める気は起きない。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2005-03-11 01:17:06) |