1. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 凄い、訥々と史実を伝える中で「音楽の真髄」を貫いている・・。 後世にこういう事があった、という事実を伝えるという事においてこの映画は とても価値の高い物の一つですが、音楽好きにもたまらん内容ですね。 大震災を経験した方が、極限でふと聴いた音楽にどれだけ慰められたか というのを聞いた事があります。 荒廃したワルシャワにうっとりとするような物悲しいベートーベンの月光。 対比が強く印象に残る。 現代は音楽が溢れていて我々は麻痺している所もありますが、本来人間がその感情を 音楽にして表して他の人と共有する物です。 嬉しい時、悲しい時、辛い時、幸せな時、人は音楽を聴き奏で歌って踊りました。 ビッグブラザーなんかで一週間位音楽とか全くなしでいた人がポップソングを 久し振りに聞いたら皆全身で踊りだすんですよね。パワフルな世界共通言語。 口悪くも何度も助けてくれた署長さんも、ラジオで流れる主人公の生演奏を聞いて 元気を貰ったりした事のある音楽好きだったんだろう。 主人公のお父さんが死の列車に乗る前、肌身離さず持っていたバイオリンを 取り上げられるのに抵抗する姿が辛かった。 直後、主人公も家族と離れて声を出して泣くし。 ドイツ将校に言われて弾くショパン。 ずっと感情を押し殺していた(忘れていた)主人公が、最初はおぼつかなくも 段々と心を出してのめりこんでいく。不謹慎ですが、本物の場面に私もいたかった。 何年も触れなかったピアノ。何年も感情を忘れて必死だった主人公。 それらが一気に出てその演奏と融合し、聴く者にシンクロする・・! 役者さんはオスカーとったのも頷ける。「ユダヤ人か?」と聞かれて見開き見返す眼。 凄かったです。ボロボロの痩せた溝鼠みたいなのに眼が美しい。 将校が去った後ワンワン泣く主人公。一旦出た感情がどんどん溢れでる姿にこちらも 涙腺緩みました。 1人生き残ったシュピルマンさんは戦後すぐ手記を出した。 辛い体験を書き留めるのは、並大抵のエネルギーや決意ではない。多くの人は忘れられる はずもないのに、忘れようと生活に没頭する努力をする。それをせめるなんて もちろん出来ません。 手記を是非読もうと思いました。 生き残って書いてくれたから、我々がこうして映画になった彼の体験を知る事が出来る。 子供も学校の授業で観たと言っていましたが、こういう映画は本当に価値があると思う。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 10点(2010-01-14 21:48:05) |