1. セルピコ
《ネタバレ》 「実話に基づいて」というのが驚き。文字通り命を懸けて周りの99%が敵の状況で戦い抜くのは、精神的にも肉体的にも本作で描かれた以上の厳しさだったと思います。 ■作品について 正直最初のほうは退屈でした。というのも、特に汚職に真っ向勝負を挑むわけでもなく、普通のヤンチャ警官の域を超えていないからです。正義感は最初から最後まで変わりませんが、チャラい感じが前面に出て、このまま最後までいったら微妙・・・という感じでした。 しかし後半、いよいよ後が無くなり周囲全員が敵になるあたりから、グイグイ引き込まれる。それまでのチャラさはどこへやら、ある1点、つまり汚職に身ないし命を賭けて挑む姿は、こちらまで真剣入り込んでしまいました。 ■テーマについて 難しい問題です。汚職そのものの問題と組織体質の問題。賄賂を受け取るという汚職は当然に悪いことなのですが、それを自分以外の全員が行っているとなると、NOと言うにはそれ相応の覚悟が必要になります。特に銃社会では、それこそ命の問題になってくる。疎んじられたって最悪職を失うだけでしょ、というのとは次元が違うと思います。だからといって自分も仲間に加われば、道連れの共犯。ここで面白いのは、皆悪事をバラされることにはビビっているということで、つまり「賄賂を受け取るのは悪いことだ」という認識はあるんですね。だったら最初から最悪なパターンの未来も覚悟しとけよと言いたいところです。 組織体質の問題については、本作で描かれたニューヨーク市警察だけでなく、日本含めどこの組織にでもある理不尽でしょう。大小問わず、どんな組織にも存在すると思います。ただその腐りの割合が本作ほど大きくないだけで。組織の構成割合は、2割が優秀な人、6割がどっちつかずで状況によって流される人、2割が優秀でない人、というのを聞いたことがあります。6割の人が「優秀でない」側に流された上に、残りの2割でさえも怪しいというのが本作かと思います。 結局共通するのが、皆「自分が一番」という発想に基づくということですね。上層部の保身なんかはわかりやすい例で、悪いとわかっているのに汚職警官の仲間になっちゃう人たちは、「そうしないと自分がヤバい」「周り全員が仲間なんだから、外部にバレるリスクを気にするよりも仲間になるほうが差し引きお得」と考えるからでしょう。いつどこにだって存在する「自分が一番」と「他人のために」の相反は、未来永劫、人間が人間である以上、尽きることないテーマなのかと思います。そういう意味で、「社会」ってすごい。(ささやかな皮肉) [DVD(字幕)] 7点(2015-10-19 03:41:55) |
2. 征服されざる西部
主人公が全く好きになれない系西部劇。主人公にとっての敵を倒し美女とくっつくという定番の流れでこれほどまでに胸糞悪さを感じたのは初めて。 戦争に負け戦地から帰還したら町は様変わり。あれだけの思いをしたのにいざ帰ってきたら自分は置いてきぼりで居場所がないように感じる。待っていたのは借金を抱えた牧場生活。そんな生活は嫌だ!と野心に燃え家を飛び出す主人公・・・。いや気持ちはわかる、わかるんだけど、その方法論が大間違いでは意味がない。結局のところ冒頭の父親の「金で土地は肥えない。金儲けは偽りの成功だ」という台詞に集約されてますね。 作品全体として終始モヤッとした感じが拭えませんが、そこが味となっていて中々に面白い。主人公の成功と勧善懲悪を軸に据えた西部劇作品たちの中であえて負の側面に焦点を当てた作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2015-01-01 03:48:38) |
3. 西部の二国旗
《ネタバレ》 北軍に捕虜にされた南軍兵が北軍に加わりインディアンと戦うことを条件に恩赦を受け、収容所を出、北のヘンリー少佐管轄の駐屯地に入る、という騎兵隊もの西部劇です。 主人公は南軍兵であり、駐屯地内部で北軍vs南軍のいがみ合いが起こるんだろうなぁということは容易に想像できるわけですが、その実、真の敵は北軍でも南軍でもなくインディアン(反逆者)だ!立場は違えど、我々は同じアメリカ人だ!という描かれ方がなされています。そう考えるとオイオイって感じですが、中~後半までの人間ドラマやそれぞれの登場人物の熱さは割と嫌いではない。結論がああだったのはもはや伝統芸と言うべきか。 本作を見ていてふと思ったのが、「インディアン」を「エイリアン」に置き換えるとまんま現代にも通用する映画になる気がするという点。将来エイリアンとの交流ができて「人権」ないし「生物権」だか何だかができた際には今の価値観にも物言いがつくんでしょうか。そんなことをしみじみと考えつつ、単純な初見の感想で7点を献上致します。 [DVD(字幕)] 7点(2014-12-21 07:12:33) |
4. 戦場からの脱出
《ネタバレ》 実話ものは元を知らないとどこまでが真実なのかがわからず、「不自然だけど実際そうだったのなら仕方ない」となってしまうことがよくある。結局のところ自分の勉強不足なわけですが・・・。本作でリアルだと思ったのは収容所からの脱出の際のジーンらと別れるところ。ジーンらが加勢しなかった理由もフィシットが靴を持って行ったという弁解も支離滅裂。てっきり殺し合いにでもなるのかと思いきや何事もなく別れてそれっきり。理由も掘り下げられずジーンらのその後もわからない。全てフィクションの「映画」なら放り投げっぱなしで完全なるマイナスですが、実話だと言われると一転してリアルに思える。ディーターの視点からすると、確かにそれらを知る術はないですからね。事実をそのままに伝えるだけ。 その他演出的なマイナス面は①出撃前に見たビデオどおりに救出されてほしかった②リトル・ヒトラーがそこまで残虐ではなかった③ヘリに救い上げられて以降は蛇足な気もした、といったところ。逆に虫ご飯を余裕で食うところをはじめ、サバイバル過程などの役者の演技は凄かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2014-10-20 17:14:33) |
5. 旋風の中に馬を進めろ
《ネタバレ》 「銃撃」のモンテ・ヘルマン監督作品ですが、こちらの方が幾分わかりやすかったように思う。いわれのない罪を着せられ逃げざるを得ず、その過程で親友が殺され、人を殺し、馬を盗み、本当の罪を犯してしまう・・・。首吊なんて自分には無縁のものと思いきや、明日は我が身。一寸先は闇。的な。辛くも窮地を逃れたとしても、その先には「犯罪者」の汚名がついて回る・・・。映画としては中々に面白かったけど、もし自分がそうなったら・・・と考えるとやはりやりきれないものがあります。一応「この先は想像に任せる」という終わり方をしてくれたので、少しは救いがあったようななかったような。 本作は最初から最後までじっくりじっくり丁寧に丁寧に展開が運ばれ、かといって息苦しいような重苦しさはないので、自然と見入らされました。とりあえずアクションシーン入れとけ!な作品よりこちらの方がよっぽど好みです。 [DVD(字幕)] 7点(2014-06-27 02:58:22) |
6. 西部の男
《ネタバレ》 判事としてやってることは酷過ぎるのにリリーには首ったけ、そんなロイ・ビーンのキャラが良すぎますね~。いやほんとやってることは酷過ぎる(2回目)のに嫌いになれないのはなぜだろう。最後とかもなんとかリリーに会わせてあげて!と応援したくなるレベル。ポスターを撃ったから死刑にしたとかリリーの髪をゲットするために牛を引かせるとかほんっとやってることは酷過ぎる(3回目)のに・・・。リリー一筋なのがこのじいちゃんだからってのはあるのかな。イケメンガンマンが一人の女のために・・・ってのだったらここまで応援したくはなってないような気がしますね笑 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-29 23:24:18) |
7. 西部開拓史(1962)
《ネタバレ》 映画タイトル的に史実に忠実に作った歴史系映画なのかな?と思いつつ観ましたが、全然違った。やっぱり西部劇といったら人間ドラマ。さらに「きっと西部開拓という夢を持った熱い奴らが困難に負けず夢を成し遂げるっていう内容っしょ」とか思ってたら、これまた違った。この作品の主人公たちはあくまで自分の人生を自分の思いのままに生きているだけで、結果的に西部開拓に繋がった、という描き方。賛否両論ありそうですが、私は単にゴリ押しを見せられ「我々は正しかった!」とされるよりもこちらの方が好みでした。 テーマとしては第1章開拓、2章金鉱、3章戦争、4章鉄道、5章保安官もの西部劇と、西部劇といったらこれ!という要素のオンパレードで、上映時間が長い割に全く飽きませんでした。各章は完全に独立したものではなく、家族のメンバーを通して繋がっているのが面白い。シーン的に好きだったのは1章の河下りと5章の列車シーン。5章でようやく幾度となく観たお馴染み西部劇になり、「大」がつくのかはわからないが、列車強盗がテーマなのにはじ~んときました。 ただやはり「アメリカ万歳!」という感は否めない。まあインディアン問題を掘り下げたり反省的な描写を入れ込むと上映時間が余裕の4時間突破とかになりそうなんで仕方ないんですかね・・・ [DVD(字幕)] 9点(2014-02-03 20:23:40) |
8. ゼロ・グラビティ
《ネタバレ》 普通の3Dで鑑賞。なるほど確かに、これは3Dで観るべきというのが理解できました。というのも、この作品自体が3Dで観られることを前提で作られている感じです。序盤のネジがカメラ手前に飛んで手を伸ばしてキャッチするカットとか「あ~はいはいちゃんと3Dで観てますよw」と監督さんに言いたくなりました。露骨な構図ですね笑。また、宇宙空間すなわち無重力という設定が3Dを活かしまくっている。普通なら不自然になる人物の上下左右前後斜めをぐるりと回るような自由なカメラワークで撮っても不自然にならないのは、無重力という設定があってこそ。登場人物視点の映像も多数あり、観客もあたかも宇宙空間にいるような感覚を覚えます。アトラクションっぽいというのは主に前半で、某リゾートの椅子に座って観るあのSFアトラクションにかなり近いです。主人公視点でぶつかりそうになったデブリをスレスレで避けるとか、自由が利かない中で目標物につかまれるか、とか。 ストーリーとしては単純明快で宇宙空間で作業中に事故発生。なんとか生き延び地球まで帰らねば、というお話。テーマとしては「生命の尊さ」でしょうか?しかし、映像を観るためだけにでも映画館に足を運んで損はない作品と思います。 映像以外で印象に残ったのが、何といっても宇宙空間の怖さ。無限に広がる無重力空間の怖さ。目の前にいて会話も届く距離なのに、その人を助ける術が何もない。ただゆっくり遠くへ行ってしまうのを見ていることしかできない。その人を助けようと飛び出せば、もう二度と戻ってくることができない。・・・怖すぎます。 また、無音の怖さと地球の美しさの対比が印象的。酸素も切れかけ、ちょっとしたことで死ぬ状況。音もない。空気もない。体の自由も利かない。その背後には大きく美しい母なる地球。何というか、ゾッとするような感覚を覚えます。また、普段当たり前の音楽や人との会話がこれほどまでに安心感を与えてくれるものとは思ってもみませんでした。 鑑賞後1日経ちますが、未だ余韻さめやらぬ、という感じ。公開終了する前にもう1回観に行こうかな。もちろん3Dで。 [映画館(字幕)] 8点(2014-01-18 19:23:42) |