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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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1.  西部戦線異状なし(2022) 《ネタバレ》 
1930年製作のハリウッド版は視聴済みであるものの、本作はリメイクではなく古典の反戦小説の再映画化であり、 現代の観点で脚色されたのもあるからか、似通ったシーンがほとんどないに等しい。 せいぜい冒頭の生徒たちの出兵を煽る教師と、中盤の妻子持ちの敵兵を直接殺してしまった狼狽ぐらいだろうか。  死んだ兵の服をはぎ取り、洗濯・お直しして新兵の服として提供するところからして、 ただの部品としか見ていない戦争の非情さを良く表している。 憔悴していく主人公の青年と並行する形で軍部上層部のやり取りで見られる豪華な食事もそう。 あと少しで停戦なはずがお偉いさんの大義のために無理矢理突入させられ、 理不尽な形で消費されていく主人公を含むその他大勢の兵士たちの死…  非常にオーソドックスながらハリウッド版とは違ったドライさが突き刺さる。 確かに今の時代だからこそ見るべき映画なのかもしれないが、現代ならではの新しい切り口が欲しかった。 もし本作みたいなことが日本で起こったら、我々にできることは国外脱出するか、 国会議事堂を包囲して大規模な反戦デモを敢行することくらいだろう。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-12-09 01:41:41)
2.  西部戦線異状なし(1930)
90年以上前の傷だらけのフィルム、あからさまなオーバーアクト、ベタすぎる演出と今なら際立って見えるかもしれない。 しかしながらスクリーンから発する、余りある戦争の悲惨さ虚しさは今もなお色褪せていない。 いつの時代も大義のもとに無知な若者が扇動され、単に犬死になって消費されるだけ。 何度も繰り返す歴史に無力感を覚えながらも、無力なりに抵抗していきたいと感じさせる一本。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-10-31 23:58:28)
3.  千と千尋の神隠し 《ネタバレ》 
19年もの間、歴代興行収入トップを守ってきた作品としてしか見なかった。 子供の時に見るのと、大人になって見るのとではかなり印象が変わる映画で、 突然"社会"に放り投げ出された千尋が通過儀礼を通して、はじめて"生きること"と向き合うようになる。  名前という個を奪われて、社会の歯車になる。 お金がないと何もできない、理不尽な現実と如何に折り合いをつけていくか。 だから大団円にはならない。  もっとも宮崎駿特有の隠喩やバックストーリーが張り巡らされていて、 水流=初潮、油屋=ソープランドとかなりアングラだったり、 千尋の母が冷淡なのは、ハク=千尋の兄が死んだからという考察もあるくらいだ。  侘しさを感じさせるエンドロールを前に、千尋はここで過ごした記憶は風化されるかもしれないが、 その体験を糧に人生と闘っていくのだろう。 生まれてしまった以上、配られたカードで勝負していくしかない。
[映画館(邦画)] 7点(2022-10-22 11:35:52)
4.  戦場にかける橋 《ネタバレ》 
日英の大佐による信念のぶつかり合いと面子、経歴詐称の米軍兵が大義に呑み込まれ真の戦士になっていく皮肉、戦争という熱狂から退くに退けなくなった人間の哀しさが上手く表現されている。終戦から12年経って作られた映画ながら、比較的日本側にも配慮した描き方は評価。結末は分かっていても橋を爆破するのかしないのかという緊張感で目が離せなかった。陽気なマーチがラストの無常さを際立たせる。
[地上波(吹替)] 7点(2022-01-08 11:08:34)
5.  ゼロ・グラビティ 《ネタバレ》 
リアルタイムの3D・IMAXにて鑑賞。その効果を実感できたかは怪しいが、回想シーンもないストイックな構成と長回しを主体にした骨太な演出で一気に見せる。舞台とは相反する原題が象徴するように、宇宙空間という無限に広がる密室の中で、娘を喪ったヒロインがアクシデントから如何にして現実の生に向き合っていくか、この題材では非常にうってつけだ。漆黒の世界で二人だけ、ゆったり漂流していく恐怖。絶望的な状況で男が自分の命と引き換えに彼女に与えた機会がラストの再誕へと導く。映画はここで終わるが、彼女の人生はこれからも辛いことが続くはず。それでも二本の脚で歩いていく力強さ。その年の体感型映画を象徴する作品と言えよう。
[3D(字幕)] 7点(2021-06-20 11:44:00)
6.  セールスマン 《ネタバレ》 
性暴力を描いた作品。だが、アスガー・ファルハディ監督だけあって、そういう描写は一切描かず、悲惨な状況に滅入る暇もなく、病院のシーンに切り替える。直接的な表現も用いらず、常に台詞が遠回し。確かに力量は高いと言えるが、正しくは"描きたくても描けない"のだ。一見、西洋化が進んでいるようで、イスラム教国家イランならではのしがらみが全編を支配する。恥の観念が強く、被害を公にされることを恐れる女性の立場の低さや貧困が表面では浮かばないように描いているし、劇中劇でも検閲が入る。常に息苦しく緩慢な展開が続く。終盤で犯人が見つかったときから物語は急変する。夫は加害者の老人の家庭を破壊するような方法で復讐をしようとするが、病気持ちの老人の容態が急変したタイミングで家族が駆けつけてくる。幸福な家庭を持つ老人と泣き叫ぶ家族により、完遂しようにもできない宙ぶらりん状態。皮肉にも復讐を望まぬ妻との関係に亀裂が広がっていく。何て後味が悪いのか。あのとき~していればの後悔が、劇中劇の『セールスマンの死』とリンクする。この作品も非情な資本主義に呑まれていく男の悲劇を描いていた。そのアメリカ的資本主義にイラン社会がついていけていない不安と苛立ちが付きまとう。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-05-19 00:36:41)
7.  切腹 《ネタバレ》 
不気味で緊迫感のある白黒映像と音楽に引き込まれ、全編にわたり武士たちの冷徹な眼差しが死線と向き合わせる。金をせびりにきた老いた浪人が切腹されることになり、そこから二転三転して、社会派ドラマにもギリシャ悲劇にも通じる普遍性のあるストーリーが展開される様は見事。貧困で飢えと病に苦しみ死んでいった娘とプライドを捨てた挙句武光で切腹された婿のために、武士道の虚飾を引き剥がす復讐劇に強烈なカタルシスを感じた。誇りある武士道なんて所詮嘘っぱちと言わんばかりに、あまりに残酷で壮絶で、そこまでしても変えられない無常感が最後まで貫く。何もかもぶち壊した果てに、何事もなく取り繕うだけで終わる理不尽さ。空洞になった社会における人情と倫理を問いかける重厚なまでの後味の悪さが残る。痛切な傑作。
[DVD(邦画)] 9点(2018-07-24 21:06:09)(良:1票)
8.  宣戦布告 《ネタバレ》 
ある共産主義国が侵入した時の政府の対応を描いたシュミレーション作品。時代の先見性があったのか、自衛隊が武力行使している点がタブー視されているかは分からないが、真っ当な発言をしている若手の発言権がなく、トップ陣がズブズブドロドロで身動きが取れないあたり、現在の日本の縮図を見ているよう。そういう意味で価値はあると思うが、純粋に映画としては凡作。軍事アクションと政治ドラマを何とか両立しようとして支離滅裂になり、クサいメロドラマを見せられるのはちょっと・・・
[DVD(邦画)] 4点(2018-03-23 22:42:07)
9.  1900年 《ネタバレ》 
ベルトリッチの代表作は『ラストエンペラー』よりこちらじゃないか。ファシズムの盛衰を5時間以上かけて、一気に描いた演出力には舌を巻く。政治色が強く見難いように見えて、メロドラマをふんだんに盛り込んで見易い。かと思えば、農村の営みと紙一重なエログロもふんだんに盛り込んで見難くて、どっちなんだか。DVD化に時間がかかったのは児童ポルノ要素が少なくないからで、土を掘って腰を振ったり、裸マントで"皮"を剥いたり、男児犯してジャイアントスイングで殺害とか今だったら撮影不可能だ。最初見たときは社会主義礼賛かと思ったが、極端な政治思想に支配されると、賢さを放棄した労働者層の不満が爆発して対極の思想に傾くのはどの国もどの時代も同じか。ドパルデュー、デ・ニーロ、ドミニク・サンダが物語の中心にも関わらず、ドナルド・サザーランドの怪演が衝撃的すぎて彼しか印象に残っていない。いずれにしても今日の大作より、真に大作していた。もう色んな意味で似た映画が撮られることはないだろう(モラル的な意味で)。
[ビデオ(字幕)] 7点(2017-07-03 19:35:49)
10.  潜水服は蝶の夢を見る 《ネタバレ》 
「ある日僕は自分を憐れむことをやめた」。この台詞に衝撃を受けた。閉じ込め症候群により、左まぶた以外が動かなくなった元ELLE編集長の、極限の絶望的な心境を考えると非常に勇気が要ることだ。似たような状況の映画で『海を飛ぶ夢』があるが、ほとんどの人だったらラモン・サンペドロと同じ選択をするだろう。成功者と自由人の違いなのかもしれない。他の実話ものとは違い、感動的な演出、過剰な演出は極力避け、危険と隣り合わせの美しい蝶が舞う日常のように淡々と綴っていく。なので、いつのまにか本が出版され、彼の死もテロップだけで済まされる。崩れ落ちる氷棚が逆再生される静かなエンドロール。瞬きだけで言葉を発した男の想像力が無常な世界に抗うかのよう。
[DVD(字幕)] 6点(2016-11-26 00:38:47)
11.  戦場でワルツを 《ネタバレ》 
ドキュメンタリーの【記録】をアニメーションの【記憶】として描くことで、現実とも虚構とも似つかない、白昼夢のような超現実的な世界が広がっている。原題にある、バシール・ジェマイエルに関する基礎知識がなければ、この映画の理解や共感は難しい。端的に言えば、「イスラエルのヒーローとして利用されたバシールが首相になった途端暗殺されて、報復として、キリスト教徒民兵を使ったパレスチナ難民の虐殺を青年だった監督が目撃していた」というたったこれだけの話で、物語や結末を求める人には肩透かしだが、ドキュメンタリー映画ではこれが限界だろう。実写映像は、イスラエル側の看過を直視したという意味でメッセージ性はあるにせよ、ちょっと安易。最後までアニメで通すべきだった。
[DVD(字幕)] 6点(2016-02-15 18:50:54)
12.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
アメリカンドリームは呪いみたいなものだ。夢が現実に変わった瞬間、現状維持のための不安と金に群がるハイエナ達に怯え続けなければならない。都合良く利用した養子に疚しさを感じ、弟と名乗る男に裏切られたのなら尚更。性的不能の主人公にとって、ひたすら石油(=血筋)を求めることでしか生き甲斐がない悲しさと虚しさを感じた。荒野ばかりの背景がほとんどで退屈なシーンは少なくないが、そのためにあるような軽快な結末は、誰も見たことのない映画を撮るP.T.アンダーソン監督の真骨頂。「ブラックコメディか!?」と言わんばかりに、牧師に落とし前を付けさせるべく、子供のような振る舞いで復讐を果たした彼の破滅がむしろ安堵と解放感に満ち溢れているのは気のせいか。ダニエル・デイ=ルイスの怪演は言わずもがなだが、名優のパワーに応えた監督の手腕は好き嫌いを別にしても凄い。今のアメリカは主人公と同じ結末を辿って再起を図ってもきっと同じことを繰り返すだろう。国家もまた、利害という感情で動く生き物なのだから。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-21 18:32:33)(良:1票)
13.  戦場のピアニスト 《ネタバレ》 
感動よりも重苦しさと疲労が上回る。人道のために何かを成し遂げたわけではなく、単にピアニストとしての芸があっただけで偶然助けられたに過ぎない。当事者であったポランスキーはそういう部分を熟知していたに違いない。極限状態の中で自分のことで手一杯で、狡猾でしたたかに生き延びること。ヒロイズムを排してこそ炙り出される人間の本性がそこにある。後ろめたさはあれど、何もしてあげることが出来ず、表情は硬く凍りついたまま。それ故に、甘美で情緒的なショパンの楽曲が生の歓喜として表現され、演奏を一層際立たせる。そのための疲労であるならば、追体験としては成功しているのではないか。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-24 00:24:34)
14.  世界にひとつのプレイブック
精神疾患を抱えた男女のロマコメというキワモノ的な題材の割に、案外普通の映画で褒める部分が何もない。いや、キワモノを普通に描けたからこそ絶賛されたのかな、という感じです。これが主演女優賞だなんて信じられない。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2015-06-20 01:09:19)
15.  ゼロ・ダーク・サーティ 《ネタバレ》 
『ハート・ロッカー』の姉妹作として位置付けられている気もしないでもない。 ドラマ性を排除し、ヒロインの成長物語するような愚かさも切り捨て、 妄執や狂気と言っても過言ではない焦燥感が伝わってくる。 主人公が女性であることとビンラディンが如何にして殺害されたかという点で本作の強みにはなっているが、 2時間半はちょっと長いし事実だけを提示して何かしらの主張がないのは前作同様不満である。  今でもビンラディンが死んだという実感が湧かない。 彼女が涙を流すラストに、一時的な安堵感と終わりのない負の連鎖が起こる虚脱感を覚えた。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2015-06-20 01:04:07)(良:1票)
16.  71フラグメンツ 《ネタバレ》 
◆初期作にあたる"感情の氷河化"三部作の最後の割にレビューが全くない。前二作に比べるとかなり地味なため致し方ないのかもしれない。◆冒頭で「銀行銃撃事件により3人が死亡し犯人は自殺する」というテロップが流れる。如何にしてこの事件が起こったのか興味を惹かれる。しかし、この群像劇は盛り上がりの欠いたドキュメンタリーのように、実在のニュース映像と並行的に進められる。ハネケのインタビューによると、ここでカットすべきシーンを必要以上に伸ばしているそうで、下世話なワイドショーを即物的に求める大衆の心理を逆手に取っている。◆事件が発生するも撃った青年の動機は衝動的なもので、被害者は一切映されない。不可解な事件は出涸らし同然になり、マイケル・ジャクソンの猥褻事件といった新しいニュースが陳列される。誰かが重大な事件に遭おうが、我々視聴者は他人事のように更なる消費を求める。◆無関係で無関心だからこそ、世界の悲惨な紛争地帯を眺めても当たり前すぎて何も感じられないし何も出来ない。それでこの映画は何を言いたかったのだろう? 視聴者に対する余計なお節介は後の『ファニーゲーム』に続く。
[DVD(字幕)] 5点(2015-05-19 00:28:46)
17.  セブンス・コンチネント 《ネタバレ》 
20年以上前の作品なのにも関わらず、全く色褪せない。 今でこそ実感する文明社会の病理を題材にしたハネケの先見性には驚かされる。 今と比べればまだ荒削りではあるが、既にスタイルが確立しており、実験的で挑発的だ。 何せ冒頭10分まで家族の顔を一切見せないのだから。 この地点で閉塞的でモノに支配されている家族の肖像が浮かび上がる。  繋ぎ目に挟み込まれる居心地の悪い黒い間、効果的に登場する数字(=規則性の暗喩か)、 モノや人付き合いのしがらみから解放されたい家族の渇望を表しているようだ。  そして家族は決行する。顔を映さないまま、家具やレコードや衣服を黙々と破壊していく。 紙幣を便器に捨てるシーンからしても我々が如何にモノに支配されているか分かるもの。 虚栄とモノに満ち溢れた世界を破壊する背信的なカタルシスがここにある。 水槽を破壊して娘が悲しんでいるところでハッとしていれば、まだやり直しができたはず。 もう後戻りは出来ない。  何も映らないテレビの砂嵐の先にあるのは、黄泉の世界なのか、"無"なのかは誰も分からない。 自殺するだけならまだしもモノを破壊する理由も誰も分からない。 文明社会は本当に人々を豊かにさせたのか? それでも虚無感を抱えながら、社会を維持し続けるために"奴隷"を演じ続けるしかないのだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-05-05 21:37:31)
18.  セブン 《ネタバレ》 
世界は不条理の塊だ。意識しなくても誰かと関わって傷つけ、知らずに自分に返ってくる。テレビに映る遠い世界の悲惨なニュースを、画面越しにワイドショー感覚で見ている人は少なくない。ただ、それが自分に及ぶことになってしまったら・・・。ジョン・ドゥは究極の選択を迫ってくる。誰だって人の子なのだからミルズの選択を責められない。そうやって不条理な世界が形作られている。サマセットは引用する。「ヘミングウェイはこう言う。『人生は素晴らしい、戦う価値がある』と。俺は後者に賛成だ」。こうでも言い聞かせないと、不条理な世界に気が狂ってしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 22:19:19)
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