1. ソウ3
《ネタバレ》 シリーズものとしての方向性は外さず、毎回、微妙に違うテイストに仕上げてくるのは評価。 今作は今までにあったラストの「どんでん返し」は無く、あくまで一応の「完結編」としての説明責任を果たす総決算的なシナリオになっている。そのため「ラストを盛り上げる新事実や意外な人物の登場」といった事は無く、ストーリー展開的にはいつも通りで、単に「残酷な殺され方選手権」にしかなっていない。 また、今までのシリーズのように「被害者の選出」に関しては、相変わらず「自分の人生や立場に感謝していない人間」というご立派な名目だけで、基本的にはジグソウが他人の生き死にを自由に出来るという自己満足が先にある。 身内であるアマンダにもルールを遵守させたり、その観念の元に行動させるというジグソウの主義主張には一貫性があるが、はっきり言って共感はしにくい。美学と言うには、あまりにも自己中心的な動機だし、一番身勝手で命冥加なやつに、偉そうに説教されたくねーよと思ってしまう(そう思わせるのが狙いかも知れないけど)。 殺されるシーンも手術のシーンもグロいだけでつまらない(唯一、腐乱豚で溺死させるというアイデアはインパクトあった)。 ラストも「ソウ」らしい、絶望感だけが残る終わり方だが、ジグソウの生死を曖昧なまま終わらせるというのが、さらに続編を作る余地を残しているようであざとい。 [DVD(字幕)] 5点(2007-06-06 17:18:36)(良:1票) |
2. ソウ2
《ネタバレ》 個人的には前作の「オチから発想した」ような脚本構成が好きになれなかったけど、今作は割りと素直に楽しめた。確かにインパクトという点では前作に負けているが、その分、良い意味で肩の力が抜けてこなれた感じ。 謎解き部分はシンプルながら、最初から犯人が捕まっているので、どういうストーリー展開になるか不安だったが、ビデオ映像である事を利用して人を翻弄するという構成が、「ソウ」特有の厭らしさと上手く絡んでいる。 確かに「セブン」や「CUBE」を模倣している部分は多いが、単純なパクりではなく、それなりに「ソウ」の世界観として昇華させている点は評価したい。 ただ、残念ながら相変わらず突っ込みどころも多い。映画である以上、こんな事を言っても仕方ないけど、ちょっと閉じ込められた人間のやる事が頭悪すぎ。焼却炉に入る時くらい、扉が閉まらない様に注意しとけって。すでに銃で撃ち殺された人間を見てるんだから、そこらじゅうにトラップが仕掛けてある事くらい分かるだろ。あれじゃ罠にかかるイノシシレベルだぞw。めちゃくちゃ怪しげなガラスケースに何の躊躇も無く手を入れる女もアホすぎ。 「常識的な注意」や「人間の心理の裏」をかくような、考え尽くされたトラップを仕掛けて、こうした突っ込みを回避して欲しいところ。その辺に手抜き感が目立つ。 また、「内部に裏切り者がいる」という密室劇特有の要素も弱く、閉じ込められている人間にしてみれば、単にトラップに翻弄されるという物理的な恐怖ばかりが先行しているのが難点。贅沢かも知れないが、見ている観客をも疑心暗鬼にして心理的に翻弄するようなミステリー的な謎解きに特化してくれていれば傑作になったはず。所詮はサスペンス止まりの作品。惜しい。 [DVD(字幕)] 7点(2006-10-16 16:51:35)(良:3票) |
3. SAW.ZERO
《ネタバレ》 好き嫌いがはっきり出そうな独特な個性を持った作品。 一応、ジャンル的にはホラーではあるけど、感覚としては「ホラー5:恋愛ドラマ2:ミステリー1:ファンタジー1:SF 0.5:コメディ0.5」くらいの配分で、それ故「怖い」と言うよりは、何とも「奇妙」で中途半端な世界観になっている。 映像や音楽には芸術作品のような品の良さを感じるが、その一方でB級ホラーのグロさとブラックユーモアのような毒を併せ持ち、さらに赤裸々な恋愛ドラマも披露する。この「独特」としか言いようの無いセンスは、「デリカテッセン」や「ジェヴォーダンの獣」、「アメリ」のようなフランス映画に通じるものがある(最初、フランス語だからフランス映画かと思ったら、何故かカナダ映画だった。なんでやねんw)。 結局、「永遠の命」とか「クローン」といったよくあるネタに、心霊やら黒魔術といった不可知的現象を付け加えたオチで、本来はその陳腐さが目立ったはずだが、この独特な演出センスのおかげで、安っぽいギミックが相乗効果として作品の個性化をより促進しているw ただ、必ずしも「個性的」=「面白い」、という訳ではなく、やはりこの個性の強さ故に、好き嫌いがはっきり分かれる作品なのは確か。 [DVD(吹替)] 4点(2006-07-25 17:09:57)(良:1票) |
4. ソウ
《ネタバレ》 残念ながら期待ハズレ。 この種のサスペンスホラーは、いわゆる本格ミステリーと違い、凝った殺害計画(作中で提示される謎)と動機に有機的な関係性がない場合が多く、オチで拍子抜けさせられる事がよくあるけど、今作もまさにその類型。 犯人は単に「命のありがたみを知らしめる」という一方的な動機のみがメインで、それさえ達成できれば、犠牲者の選出や殺害手段に対するこだわりはあまり無いみたいだし、その自己満足なだけの身勝手な動機を偉そうに語られても、たいして畏怖も共感も得られない。 また、密室内に二人しかいない事とお互いの自由が束縛されている事、そして基本的に「外部」に犯人がいる事が観客にも登場人物にも早い段階から認知されているので、本来、密室サスペンスとしてあるべき、「いったい、この中の誰が犯人なんだ?」というように、お互いを疑心暗鬼に陥らせたり、争わせるような「心理的葛藤」が芽生える事もない。 また、他の人の指摘にもあるように、あの毒を盛られた男がきちんと動かなければ、計画は破綻する可能性が高いし、序盤のバスタブの鍵も流れない可能性があった。不測の事態に対する次善策があったようには思えないし、いまいち計画が杜撰で美しくない。 それにあんなとこで何時間もピクりともせず息を止めて見ているというのも無理がある。作中で死体に関する話題にほとんど触れられない事も不自然で、返って「何かあるんじゃないの?」と注目してしまった。いかにも「オチから発想しました」という印象が強い。 結局、楽しめたのは序盤だけ。それも「状況が分からない」という点で、登場人物と観客の視点が同一なので、これからの展開にもドキドキできるけど、状況が分かるに従って、 その立場も乖離してくる。 単なるドッキリ番組じゃないんだから、もう少し動機と謎解きに繋がりを持たせて欲しい。とにかく、こういう作品は「出来るだけ突っ込まれないように脚本を練る」のが基本。脚本のアラは、この手の作品世界のウソ臭さをとかく目立たせる。せめて見ている間だけは夢中にさせて欲しい。 [DVD(字幕)] 6点(2005-05-14 21:58:52) |
5. ソードフィッシュ
《ネタバレ》 評価できるのは最初のオープニングだけ。観客の意識を一気に作品に引き込むだけのインパクトがある。ただ、その後のリアリティに欠ける展開とグダグダなテンポに、見ていて徐々にテンションが下がって行く。 だいたいガブリエルのやりたい事がいまいち分からない。対テロ組織運営のため、資金調達をしたかったってコト?でも、あんな迷惑で目立つ事やってたら、テロ組織以前に、お前らの組織が潰されるぞw。計画の段階であっさりFBIに見つかってるしさあ。そんな程度の組織が世界のテロ組織と対等に戦えるのか?なんかやってる事が非現実的でチグハグなんだよなあ。 ラストも「レベルの低いサスペンス」といった感じで、あんなオチでは驚かされる以前に設定のアラや幼稚さが目立つだけ。その他、なんであの女はわざわざ麻薬捜査官だというウソをつく必要があるのかとか、なんでバスをヘリで吊るのかとか、無駄に分かりにくい部分が多い(わざと目立っておいて、その後、死んだと思わせ、地下に潜るため?)。 冒頭で監督の代弁者としてトラボルタが語っていた、「最近の映画はリアリティが無い」というセリフを、そっくりこの映画が体現しているところが笑えます。もの凄い遠まわしな皮肉とか? 何より監督は、この作品から、テロをテロでやり返すという力の論理に対する「警鐘」を促すつもりではなく、単純に「テロはテロでやり返せ!」と本気で思っているように思えてならない。 [ビデオ(吹替)] 1点(2004-09-08 13:08:59) |
6. ソルジャー(1998)
アクションもストーリーも実にありがちで中途半端。展開の何もかもが予想の範囲で、見ていて退屈。基本的に発想が二十年は古い。セットなどもディテールに対するがんばりは見えるが、それ以上に安っぽさが目につく。あと、私はあまり俳優に対するこだわりはないし、詳しくもないが、はっきり言って、この作品の主役にはまったく魅力を感じなかった。色彩に乏しい地味な世界観に加え、地味な展開に地味な顔立ちの主人公がミスキャスト。あまり潤沢に金がかけられない割に、変にメジャー映画路線を目指したため、返って安っぽさだけが目立ってしまったような印象。もう少し、とんがった部分が欲しい。 3点(2004-05-24 07:32:33) |
7. ソフィーの世界
《ネタバレ》 <原作未読。映画版のみの評価> この映画版が原作の深さや良さを伝え切れていないとしても、想像以上の薄っぺらい内容には閉口した。とにかく売りであるはずの「哲学的考察」とやらがあまりにも表層的で浅過ぎる。と言うか、それ以前に「考察」なんて所まで行ってない。「人は何のために生きているのか?」とか、「宇宙の始まりや終わりは?」とか、「存在とは何か?」とか、小学生でも一度は疑問に思ったことのある「当たり前」の、しかし「答えの出ない疑問」をさらっと流すことは「哲学的考察」とは言うまい。歴史上の人物との出会いも、ただ会って少し言葉を交わした程度。ただのタイムトラベル観光旅行みたいで、冒険映画として見てもまとまりが無く、ダラダラとしていて退屈。作品内世界や登場人物が虚構であるということをバラす、自己言及的な多層構造もありがち。こんなものを見ているヒマがあるなら、宇宙論や生物進化論、量子力学、相対性理論などの本を読んだほうが、よほど神に迫ることが出来る。 PS.今や「ビッグバン理論」では説明できない観測事実が多くなったため、ビックバン論者は事実を理論に無理矢理押し付けるような本末転倒なマネに終始しているらしい。 2点(2004-04-13 14:12:54)(良:1票) |
8. ゾンビ2001/リボーン・トゥ・キル
ゾンビって書いてあれば見るとでも思ってるんですかね、いや、見ちゃいましたけどね、私。なんかもう、コメントする気も失せるヘボさ。何のためにこんな映画を作っているのか監督始め、スタッフ全員に聞きたいです。 0点(2004-01-17 19:30:45) |
9. ゾンビ伝説
《ネタバレ》 確かに、いわゆる「ロメロ系ゾンビ」ものとは、まったく違う内容ですが、これは邦題の付け方に問題がある訳で、この作品自体は割と丁寧に作られていて、ホラーとしての恐さもそこそこ。 今にして見れば、「ゾンビパウダー」もかなり有名になってしまったため、インパクトよりも陳腐さの方が目につきますが、十年ほど前に見たときは、かなり恐かった覚えがあります。特に学者先生が目覚めた時に、隣に首を切られた死体が転がっていた場面は、直接的な恐怖感と、「自分を陥れるための罠にはめられた」という二重の恐怖感がうまく出ていて恐かった~。 ラスト付近は、すっかり超能力ものみたいなノリになってしまったのが残念。 [ビデオ(字幕)] 6点(2003-12-09 15:12:10) |
10. ゾンビ/ダリオ・アルジェント監修版
《ネタバレ》 ある日、突如として崩壊する日常。死すら相対化された世界の何と滑稽で痛快な事か。 今作をゾンビに襲われるだけの単純な「パニックホラー映画」として見ていはいけない。「ゾンビが弱い」とか、「遅すぎて怖くない」という見方は、映画「ゾンビ」の本質からかけ離れている。 今作は「日常」と「消費」の象徴である巨大ショッピングセンターを舞台に繰り広げられる「人間ドラマ」こそが本質なのだ。 まだ生き残っている人間がいるかも知れないのに、センターを勝手に自分達だけの楽園にして、閉じこもってしまう主人公達。そこは刹那的な快楽と諦観が入り乱れる閉じた楽園でしかない。そして、その最後の楽園を壊す者も同じ自己中心的な「人間」という皮肉。それは「人間の敵は人間でしかない」という、残酷で滑稽な事実の提示である。そしてその悲喜劇を見つめる観客には、もはや人間の欲望や摂理から解き放たれた生ける屍こそが相応しい。 ゾンビは単なるモンスターではなく、「日常と非日常」、「生と死」を繋ぐ境界の存在であり、その摂理を相対化された姿を直視する事で、生きている者が自らの生と死について考える「きっかけ」として存在しているのだ。 従ってリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」における肉食獣の如きゾンビ描写は、作品の本質をまったく理解していない悪例なのだ。ゾンビは人間を襲うために存在している訳ではないからだ。 夜明けの空に飛び立っていくラストシーンは、あらゆる作品の中で最も悲壮的でありながら爽快ですらある。その先に滅びしかない事が分かっていながら、それでも人は人として生きて行かなければならない。それは「滅び」や「終わり」があるからこそ得られる命の価値や意味を教えてくれる。 [ビデオ(字幕)] 10点(2003-09-02 10:32:07) |