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1.  ヴァレリアン 千の惑星の救世主 《ネタバレ》 
素直に面白い映画。映像は綺麗で主役2人は美しい。話はシンプルでそれなりに泣かせる。エイリアンの造形や異文化のアイデアもなかなか新鮮だと思った。とはいえあざといし評価基準が西洋中心な臭みはあるんだけど、けっこう頑張ってる。  悪役の唱える自己正当化、ヒロインの完璧さ、主人公の成長物語(?)、一応ちゃんとしてる。複雑なようで明快なストーリー、伏線の回収的なこともやっている。しかしこの映画は興行的に失敗してるんだよね。フランス映画史上最高の制作費で大成功を目論んだのも無理はない。そして失敗した理由も明白だ。  デイン・デハーン演じる主人公は序盤で仲間を見捨てる。単に必死で逃げただけだが、作戦の犠牲者に対してその後何の反応もなくチャラい展開を平然と続ける。ここに引っかかる人は多いはずだ。「ゲスで有能でチャラく見えるが実は本質はわかってる奴」のキャラのはずが、こいつ単に駄目な奴じゃね?に見えてしまう。  序盤の異次元旅行も新鮮だし色々と魅力はある。が、主人公の役名をタイトルにして肝心のその主人公のキャラクターに疑問を抱かせる展開を序盤で見せてしまうのはどう考えても悪手だ。思うに、リュック・ベッソンはいつも何かが欠けている。その欠損が目立たない時は成功するし前面に出れば失敗する。彼にはその理由がわからないだろうね。なぜなら「自分にないものの存在」なんて知覚できないから。  ひとつ擁護したいのは汚し表現。洗ってない髪はベタベタするし顔も服も汚れるし傷はすぐには治らない。これSWやMCUがいつも忘れるところ。これだけで一つ点を上げとく。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-12-12 22:56:42)
2.  ウルフ・オブ・ウォールストリート 《ネタバレ》 
マーゴット・ロビーがとにかく美しくて見とれてしまう。本人はもうこういう役はやりたくないそうだが、彼女の完璧な外見は成功者の「トロフィー」としてぴったりなんだよね。ディカプリオと釣り合うどころかだいぶ超えている。  全編通じてバディ映画の雰囲気があって仲間意識が強調される。司法取引に応じても仲間を売らずに切り抜けようとするし、天敵であるFBI捜査官もどこか捕まえたくなさそうだ。こいつらのやってる「悪いこと」の描写は経済犯罪よりもセックスとドラッグに集中する。その無茶苦茶さが痛快なのでついベルフォートに肩入れしたくなる。  だがちょっと待って下さいよ?この話はジョーダン・ベルフォートという男の自伝が元になっている。仲間達は極端にダサくダメな奴に描かれていて、なのに美しい友情がある。肝心の詐欺は抽象的にしか描かれずスイス銀行マンの方が悪く見える(あいつのセックスシーン、いるか?)。被害者である顧客は一切画面に出て来ず電話の声だけ。  この映画の3時間は退屈ではないが疲れる。この長さは多分2時間くらいだと観客が冷静になってベルフォートの嘘に気付いてしまうからだろう。3時間のまくし立てに観ている側も呑み込まれていく。ディカプリオが突然観客に話しかけるメタ演技は最初の方にだけ出て来るが、あれは作り手の「これはあくまでこいつの言い分ですよ」という言い訳なのだ。  この映画は大変評判が良いが、詐欺師の言い分そのまんまで観客を騙しに来る映画でもある。相手に考えさせるな、電話(台詞)を切らすな、札束(裸)を喰らわせろ。ベルフォートの詐欺の手口をそのまま映画で観客に向けて実演している。気をつけよう。
[インターネット(字幕)] 6点(2018-01-03 06:19:22)(良:1票)
3.  宇宙人ポール 《ネタバレ》 
僕には散りばめられているネタはごく一部しか理解できていないのだが、それでも面白かった。こういう映画にありがちな汚いネタやエグいシーンは一切なし。警官が爆死するところでドキっとするくらい。これも状況的に爆発に巻き込まれる描写になっている。基本的に観客を追い詰めないで「良いシーン」で映画を作っていく姿勢は好きだ。  悲しいシーンでも役者は涙を出さないし感動シーンも茶々を入れて笑いで終わらせる。ラストは少し長いなと思ったらポールが自分でその点を突っ込む。これはイギリスのエンターテインメントの特徴なのかわからないが、バカにも分かるような作りにしない代わりに分かる人ならちゃんと気付けるように作ってある。観客を騙しに行かない。こういうところが後味の良さを生み出していると思う。  ポールのキャラと造形には感心した。あの目は爬虫類のような「瞬膜」があるんだよね。生物としてのリアリティをマニアックに追求している。スーパーボールみたいにペンポコ跳ね回る最近のCGアクションに辟易しているのでポールのあの自然な動きは新鮮だった。
[インターネット(字幕)] 8点(2017-12-31 23:40:40)(良:1票)
4.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
さっすがスピルバーグの映画でとても良くできてるんですよ。冒頭からのリアリティあるファミリードラマ、20世紀末風のちょっと古めかした絵作り、日常が一瞬にして崩れ去るシーン展開、続くやはりリアルなパニック描写、この子役うまいなぁ可愛いなあと思ったらダコタ・ファニング。しかし何かが足りない。入っていけない。  中盤の触手マシーンに狙われるホラー展開は上手いが、あんなに長い時間やる意味ないでしょ。反抗的な息子も助けてくれる謎のおっさんもいいキャラだが意味ないでしょ。間接表現ながらゲロゲロスプラッタも意味ある?ないでしょ。要はいろんな要素がとても良くできていて、それが意味ないから観ていて徒労感に襲われる。  要はこの話はSFなのだよ。こんな事が本当に起こるかもしれない。その元凶役の火星人にあの造形はないだろ。あれは人間に嫌がらせするためだけにやってくる架空の悪役だ。人間とは全く思考も思想も感情も異なった異世界の存在、ではなくて人間の被害妄想から生まれた単なるアンチ人類だ。  まったく不朽の名作を原作にしてスピルバーグが撮ってトム・クルーズとダコタ・ファニングが熱演しておまけにジョン・ウィリアムズが音楽付けてどうしてこうなるんだ。スピルバーグは911がどうのこうのと言ってるようだが、現実に引きずられて何を撮っているのか分からなくなったんじゃないのか。よくできた部分が多いだけに余計気が抜けず駄世界に巻き込まれる感がある。正直ロリダコタを見るだけの目的でもあまりおすすめできない。パニック演技が上手すぎて観ていて辛い。
[DVD(字幕)] 3点(2017-08-15 23:49:29)
5.  ヴィヴィアン・マイヤーを探して
ある青年が骨董市で出品された大量の写真のネガを落札した。現像してみると素晴らしい写真の数々だったので、審美眼に自信があったその青年は写真を美術館に持ち込むが門前払いを食らってしまう。そこでブログにアップすると一躍大評判に。映画はその写真を撮った謎の女性、ヴィヴィアン・マイヤーについて調査するドキュメンタリー映画です。  写真の素晴らしさとその撮影者ヴィヴィアンの謎に満ちた生涯もさることながら、写真を「発掘」したこの青年、ジョン・マルーフという男もまた実にユニークだ。ヴィヴィアンの写真を広く知らしめ、ついにはこの映画まで作ってしまった。マルーフは話が上手く映像映えのする男で、基本関係者インタビューばかりのこの映画では案内役としてもっと画面に登場しても良かったと思う。特にヴィヴィアンの人物像に迫る中盤以降は同じ画面ヅラばかりでちょっとダレてくる。  とはいえこれはドキュメンタリーとして秀逸だ。世間に埋もれたまま生涯を終えたアーティストを美しい映像と事実の積み重ねで紹介する。ミステリアスなヴィヴィアンの魅力もさることながら、それを掘り起こしたマルーフのセンスと行動力に脱帽する。
[DVD(字幕)] 8点(2016-10-30 22:12:38)
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