1. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 原作も1953年版も知っていたので,過剰な期待感は初めからなく,封切り直前のテレビ予告シーンだけがある種唯一の拠り所だった。それにしたって「ふ~ん,ま,おもろそうやんか…」位の程度。で,いざ観てみたら結構恐い。ホラーテイスト満開ではないか!パニック映画とくると,主人公(もしくは主人公達)が土壇場で逆転一発をかましてめでたしめでたし,となるが,本作ではそうはならないと知っていた。なぜなら,ああいう肩すかしを食らわすような結末が用意されているゆえに,侵略者に一気呵成の反攻をブチかまして溜飲を下げるというのは最初からありえないからだ。それにスピルバーグの性格からすると,オリジナルに敬意を表してラストに手は加えないだろう。となれば……あとはなす術もなく,悲鳴を上げて右往左往する人類を,映画の中でいかに虫けらのように扱うかである。「インディペンデンスデイ」のようにやってしまってはいけない。一片の希望も与えず,一筋の光明も遮断して,闇の中を這いずり回りながら人々はうめき声を上げる,そんな作品でなければならない。そういう方向性しか,この「宇宙戦争」には与えられないはずである。そしてスピルバーグはもう少しでそれに成功するところだった。墜落した航空機の残骸,一台の車を巡って争う男達等々。フェリー乗り場で,人々の背後の丘にぬっと現れたトライポッドを見たときの,彼らの絶望の叫び……それに全ての光景がトム・クルーズ扮する父親の視点で描かれ,恐怖の手触りを我々も実感できる。そうや,それでええんや,スティーブン!と思ったのもつかのま,名作に輝くはずだった宇宙戦争2005年版は,私の中で静かに幕引きされてしまった。そう,本当にもう少しのところだった。トムがトライポッドに手榴弾でケンカを売ってしまうまでは……どうあがいても蟻は象には勝てない,という無常感で統一すればよかったのに,彼は象を倒してしまった。あ~あ台無し,といった感じである。それさえなければ10点でした。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-18 17:03:46)(良:4票) |