1. 浮草
《ネタバレ》 大映印の小津映画。【青観】さんも書いておられますが、雁治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩と、大映映画のスタアたちにが画面を彩ってると、これは確かに市川崑か増村か、って錯覚してしまいますなあ。しかし、私にはこの大映スタアたちの饗宴がひたすら心地よかった。それに小津組レギュラーの杉村春子。この役者たちの抑えた演技がたまらない! 特に京マチ子の微妙な表情は、もう、絶品ですわ。雁治郎のアクの強い演技も、ここでは抑え気味。まあ、小津演出なんだから仕方ないのかもしれないけど、それがまたいい味出してる。宮川一夫も当然のごとくいい仕事。小津の低いアングルに従いながら、大映スタアたちの表情を逃すことはないんだなあ。 若い頃に見たときは、「原節子のない戦後小津映画なんて」って、ひねた見方をしてしまったもんでした。でもかろうじて笠智衆カメオ出演のご愛嬌もあるし、何より、大映印のスタアたちで小津映画の世界が味わえるってのは、私にとってはこの上ないお得感がある映画でした。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-10-04 23:55:46)(良:1票) |
2. 乳母車
《ネタバレ》 設定的にもキャスティング的にも(これに北原三枝が加われば)スタッフ的にも(原作&監督)、この後に来る大作『陽の当たる坂道』を予見しているのにびっくり。ていうか、ほとんどリメイクでな?と思わせるかぶり方だよ。キャラクターの魅力っていう意味では『陽の当たる』に負けますが、こちらもなかなか。この映画で宇野重吉の役どころは、あちらでは千田是也。ともに新劇の重鎮なのは、何かの偶然? どちらの映画でも変わらず魅力的なのは芦川いづみ。どちらの映画でも、不幸な役どころが不幸に見えない、稀有な魅力を存分発揮してます! [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-31 22:02:27)(良:1票) |
3. 歌行燈(1943)
芸と芸とのぶつかり合いの迫力。新派を支えた花柳章太郎と、同じく新派出身の山田五十鈴の素晴らしさ。花柳章太郎の端正な面持ちは、戦後同じ役を演じた市川雷蔵にも負けてない。彼は、同じ芸道もので溝口健二の『残菊物語』でもいい演技をしていた。戦後の衣笠貞之助版の方が20分くらい長くて、その分ドラマの展開もしっかり描き込まれているが、でもこの戦前の成瀬版も、負けず劣らず素晴らしい。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-03-18 23:26:21) |
4. 浮雲(1955)
《ネタバレ》 本当に、久しぶりに見なおしてみて成瀬の映画の持つ不思議な吸引力にただひたすら感心しています。暗くてじめじめしがちな話なのに、引き込まれてしまう。高峰秀子の微妙な表情の使い分けの妙。高峰と比べると割を食らってるのが岡田茉莉子だね。彼女は、まだ後の時代の表現力を獲得しておらず、それだけがちょっと残念。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-03-18 23:19:16) |
5. 浮かれ三度笠
《ネタバレ》 噂には聞いていたが、珍品。親の決めた政略結婚とその背景にある内乱を避けるために家を飛び出す姫君の騒動…なんて言うと割とシリアスな物語の印象だが、なんのことはない。全編ひたすらゆるゆると展開する。ゆるーい姫さまと(実はその結婚相手である)雷蔵扮する若君の珍道中。雷蔵が人形劇をしながら腹話術を披露する、なんていうコミカルな一面も見せる。大体せりふからして、「近頃はやりのファニーフェイス」「このピーナツみたいな顔したじじいはなんじゃ?」なんてフレーズが飛び出すのだから、ひたすら軽妙時代劇。「ありゃバックシャンだ。やめとけ」(42分くらい) 何それ?当時の流行語なのかな。全編こんな感じ。タイトルは違うけど濡れ髪シリーズに含まれるみたい。それにしても珍品。 川本三郎の本にこの映画の紹介があるみたい。今度読んで見ます。そしたら、レビュー変更するかも。 あ、そう、旅の映画ってことで、ジャンル、ロードムービーにして、アップしちゃいました。 さらに追記・バックシャン、ググって見たら、簡単に出てきました。今も使うのかな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-02-26 23:03:58) |