1. タクシードライバー(1976)
《ネタバレ》 冒頭のタクシー会社での面接からわかるよう、トラヴィスという男は世間一般の感覚からいうとかなりズレている。ベッツィを誘った時もそうだったし、シークレットサービスとのやり取りなんてほとんどイカレている。ベトナム帰りで不眠症という設定もそうだが、ロバート・デ・ニーロがこのアウトロー的な役に大いにハマっておりアブナイ雰囲気充分である。このような性格の持ち主が、社会に受け入れられず孤独と疎外感にさいなまれるとなると、常人では理解し難い行動に出るのであろう。オレはこのままでは終らない、何かひとつ大仕事をやってやる…。この映画のように一躍ヒーローに躍り出るか、狂気じみた犯罪者になるかどうかは両刃の剣。つまり何かが引き金となり、ゴミのような連中を拳銃で片っ端から一掃することだってあり得る。普通の感覚の持ち主だと、そんなものは都会の産物なのでしょうがなく、警察や政治家にまかせればよい事だと納得する。ところで、何事も無かったかのようなエンディングシーンからすると、この出来事はあくまでもトラヴィスの願望であり妄想として見てもおもしろい。またスコセッシ監督の夜のニューヨークを演出する、映像と音楽による巧みな雰囲気作りも、この孤独な男のストーリーによく似合っていた。 [DVD(字幕)] 8点(2007-08-19 21:07:51) |
2. 第十七捕虜収容所
《ネタバレ》 邦題から察すると、スリリングな脱走もの、あるいは重厚な戦争ドラマを期待してしまう。が、しかし作風はと言うと全体的にコメディ色が強く、とくにコンビ二人の演技がしつこくやり過ぎ。辛辣な風刺を効かしているわけでもなければ、驚愕のラストが用意されているわけでもない。ともあれ本作は、何人もの兵隊が射殺されるという戦争映画。このような作調だと題材が題材だけにシラけてしまい、距離を置き冷めた目で観てしまうわけなんですよね。うーんそうかそうか、本作はもともとブロードウェイのヒット舞台劇を映画化したものなのか…。色分けした個々の登場人物、数々の小道具に趣向を凝らしたプロットなどなど。この辺り、やはりビリー・ワイルダー監督らしいとは思います。裏切り者、あるいはスパイは誰でしょう? まっ気楽に見れる群像劇というところでしょうか。 [ビデオ(字幕)] 6点(2007-05-18 21:29:53) |
3. 第三の男
《ネタバレ》 アントン・カラスのチター演奏が余りにも有名な監督キャロル・リードの傑作。多くの方がおっしゃる通りモノクロ映像の光と影が抜群の効果を収めており、ハリーが窓明かりに照らされるまでの一連のシークエンス、並木道の哀愁溢れるエンディングシーンなどなど数々の名場面が鮮烈な残像を残します。飛び交う言葉が英語だけではなく、ロシア語など複数の言語が第二次大戦直後、敗戦国オーストリアの不安定な雰囲気を醸し出している。帽子をかぶった子供がもうひとつのサスペンスの伏線になるとか、愛猫を第三の男の正体を明かす橋渡しにするなど子供や小動物の使い方が憎いほど上手い。さらに後半、ホリィが殺人の容疑者として追われる身になるという二重のサスペンスを並行させる辺り、なかなか捻りを効かせた味わい深いプロット。そして、もうひとつの見どころが三人三様の人間模様。すばしこく世渡り上手なハリー(オーソン・ウェルズ)。そんな彼と対照的な、どんくさいが正義心の強いホリィ(ジョセフ・コットン)。20年ぶりに再開するものの、お互い人生観も方向性も天と地ほど変わってしまっている。圧制支配下のもとで生み出されたルネッサンス文化とスイスの鳩時計を引き合いに出し、悪人特有の理屈を並べるハリー。そして、そんな二人にはさまれるアンナを演じたアリダ・ヴァリが本作では文句なしに素晴らしい。情感の込められた最高の演技は、この作品にしっとりとした厚みを加えていた。カメラワークに映像、音楽、脚本、雰囲気描写、俳優陣の演技…どれを取り上げても素晴らしく、映画の教科書(お手本)と言われるだけのことはあると思います。 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-04-15 15:41:17)(良:3票) |
4. たたり(1963)
みなさんの仰るようにカメラワーク、映像、音、俳優陣の演技だけで背筋がゾクゾクするほどコワがらせてくれる力量ある演出は、さすが名匠ロバート・ワイズ。幽霊を見せるか見せないかギリギリのところまで引っぱる、人間の内面から揺さぶる恐怖の醍醐味。この、ワイズ監督の格調高い雰囲気とゾクゾク感、そして演出の妙が充分に味わえる。この映画ではカメラワークと音(とくに効果音)の使い方が巧みなのはいうまでもありませんが、モノクロ映像ならではの、陰と闇の抜群の効果が存分にイマジネーションを働かせてくれた。このように、モノクロ映像が放つ魅力を再認識させてくれる、代表的な作品ではないだろうか。ところで本作は、視点を変えて見るならば孤独な女性の悲しい物語とも言えると思います。女性としての大切な時期を母親の看病にすべてを捧げたあげく、唯一の遺産である家屋を姉夫婦(たしか記憶では)に奪われてしまう。帰る家もなければたよれる人もいない。前途に希望を見出せず精神的に不安定になっているところ、引き寄せられるように巡り合えたのがこのヒルハウス。ただ怖がらせるだけではなく、悲しいドラマという側面をもたせ印象度を高める辺りは、やはりロバート・ワイズらしい。たしかに小品ですが、恐怖映画の傑作と言い切ってよいと思いますね、本作は。 9点(2004-09-14 15:39:27) |
5. 旅路の果て
フランスでは、こんな昔に俳優たちの養老院(今でいうと財団の老人ホームか)が設立されていたというところに、まず驚かされる。しかし、さすが文化の国フランスという感じもする。この映画は“老い”が主なテーマだけに、しかも【へちょちょ】さんや【キリコ】さんの仰るとうり人生の末路を真正面から受け取る作風なので、ペシミズムの色合いが強くみられ暗く重い。現実と非現実の区別が付かなくなり狂気の世界に入り込む者もいれば、哀れな末路を辿る者もいる。その一方、現実を現実のものとして受け入れる者もいれば、幸福に包まれた往生を予感させる老夫婦もいる。ラストのマルニーの弔辞、「私は嘘はつけない。彼は俳優としては取るに足らぬ男だった。しかし…」 きっとこの台詞、作り手である監督ジュリアン・デュヴィヴィエの、この作品に対する真摯な姿勢を観客に伝えたかったのでしょう。また、各登場人物が元俳優という設定もあり、立ち居振る舞いや会話のやり取りがこの作品をより一層味わい深いものにしている。人間ドラマの古典的名作であることには間違いありませんが、個人的には大人向けの寓話として受けとめたい。 9点(2004-09-06 17:01:10)(良:1票) |
6. タイムマシン(2002)
もしも過去を変えることが出来るのなら、あるいはあらかじめ未来が分かるのならというのは大好きなSF的テーマのひとつ。そこで、そんな夢をかなえてくれるのが、時空を自由に超えることが出来るタイムマシンという魔法の装置。監督は原作のH・G・ウェルズの曾孫に当たるらしく、本作が初メガホンという。平坦な演出と説明不足な展開はこれからの課題としたいが、オリジナル版に敬意を払った仕上がりには好感が持てる。映像とセット美術は申し分ない。期待に応えてのマネキン人形の衣装替えに、加速度的に変化するコクピットから望む眺望。そして何より、42年ぶりにリニューアルされたタイムマシンのゴージャス感溢れる魅力的なデザイン。基本的なコンセプトを継承しつつ、パーツひとつひとつが手作り感に満ち溢れており期待どうりの近未来型となっている。このニュータイムマシンを拝見出来ただけでも及第点を与えたくもなります。世間の評価は決して高くはありませんが、オリジナル版に敬意を表した作風とニュータイムマシンに、ちょっと甘いが8点を差し上げます。《ネタバレ》ところでラストなんですが、主人公アレクサンダーは婚約者を救うべく執念の産物ともいえるタイムマシンに見切りを付けます。変えられない過去に執着するよりも、今現在をそして未来に向けて生きることの方が大事なんだと、タイムトラベルを通じて悟ったわけなんですよね。このあたり、作り手の説明不足もあり観客に上手く伝わらなかったのがちょっと残念。 8点(2004-04-26 23:14:41)(良:2票) |
7. ターミネーター3
1作目はターミネーターの戦慄すべく恐怖を描いた衝撃的な作品だった。そして2作目は親子の絆を軸にして展開される、強烈なメッセージを放った異色ヒーローもの。さて本作は? 監督がジェームズ・キャメロンではないので、ハナから期待はしていなかったんだが…。展開にしても描写にしても前2作をスケールダウンしただけで、そこには何ら目新しいものはなく訴えるものも脆弱だ。作り手はこのシリーズ、ドラマやメッセージ性に裏打ちされたSFアクション映画であることが分かっていたのであろうか。各登場人物を魅力的に描き切れていないのも致命的だし、コメディ調の演出もやり過ぎでシラける。演出、脚本共々図抜けた力量のあるキャメロン監督の手による前2作と比較されること自体、酷というのは分からなくはない。(作り手はプレッシャーもあっただろう) しかし、独創性や作家性がさほど感じられないというのはどういうことなんだろう。世評の芳しくない、エイリアンシリーズの「3」と「4」でさえも、作風の合う合わないは別として作り手の独創性と世界観は醸し出されていた。ただ、自分を見失っている薬中の若者が、自分を理解してくれる女性と出会い、希望と目的を見い出し立ち直る物語り、という視点から見るとそんなに悪くはない。だけどまぁ、前2作と切り離し、ド派手なカーチェイスが売りの“パロディ版”「ターミネーター」として見るのが正解でしょう。 5点(2004-04-16 11:23:40)(良:1票) |
8. タイム・マシン/80万年後の世界へ
初見は随分前になる子供の頃なんですが、あの手作り感に満ちたタイム・マシンのデザインにはもうゾクゾクものでした。思い出しては色鉛筆でノートに丁寧に描いたものです。個人的には「海底二万哩」のノーチラス号と甲乙つけがたい程の、アナログ感溢れる魅力的なデザイン。コクピットから窓を通して見える時空が過ぎ去る様子や、マネキンの衣装が目まぐるしく変わるシーンが印象的で、作り手のセンスの良さを十分に感じさせてくれる。さらに切ない友情を絡めると共に、核の驚異という確かな文明批判をも見てとれる内容。特撮うんぬんより、SF的な着想とテーマ性は何ら古ぼけておらず、想像力を掻き立ててくれるSF映画の名作です。 9点(2004-03-08 17:26:14)(良:1票) |
9. 大怪獣ガメラ
東宝「ゴジラ」と人気を二分することになる、大映怪獣シリーズの記念すべき第1作。しかもちーちゃい頃、母親にお手てつながれ神戸の映画館まで生まれて初めて見に行ったのが、この映画。つまり、個人的にも記念すべき第1作なのであります。東宝「ゴジラ」に負けじと、監督の湯浅憲明を筆頭にスタッフの並々ならぬ意気込みを感じさせてくれる作品ではありますが …。哀しいかなモノクロということで、皆さん敬遠されがち。しかも「ゴジラ」の二番煎じは否めず、見劣りする特撮に強引な演出など突っ込みどころ満載。このあたり、ガメラファンの私としてはちょっとツラいところ。が、しかし荒唐無稽、奇抜なアイデアでは勝っていた!! 口から“カー”と火を吐くのはもちろんのこと、何と手足を引っ込めてジェット噴射よろしく空を飛ぶ!! そう、クルクルと高速回転しながら。さらにこのガメラ、基本的に都市を破壊する悪玉怪獣なんですが、子供にだけは何故かやさしい。ここなんですよ、ここ。この、子供にだけはやさしいが、我々ちびっ子のハートをガッチリと掴んだわけなんですよね。ということで、えーい10点!! 10点(2003-12-22 16:00:10) |
10. 旅の重さ
「♪ 私は今日まで生きてきました ♪ 私は今日まで生きてみました……」吉田拓郎のこの曲と共に思い出されるのが本作品。家を飛び出した16歳の少女が、旅の途上で様々な体験を経て大人の女に変わっていく姿を描いています。もう30年近く前に一回見ただけなんですが、夏の日射しが照り付ける中、瑞々しいシーンがフラッシュバックされる。白づくめの姿でヒッチハイクをする高橋洋子演じる主人公の姿、秋吉久美子演じる文学少女との語らい、自分を助けてくれた孤独な中年男の姿に父から男を感じとるシーン、そしてラストの主人公の笑顔 …等々。やはりこの映画、鮮烈な印象を放った名作ですよ。 8点(2003-11-25 16:25:11) |
11. 大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン
ガメラシリーズの中では、唯一人間ドラマを軸にストーリー展開されるという異色作。それもそのはずで、監督は田中重雄で湯浅憲明は特撮のみ担当。しかも、荘厳で哀感溢れる音楽は木下忠司とくるからには、余韻たっぷり大人向きの作品にならざるを得ないでしょう。さて本作は、主役であるはずのガメラの出番が少なく、中盤以降、悪玉バルゴンと人間側との攻防を中心に繰り広げられる。ガメラはといえば善玉、悪玉どちらとも言えず、次回作「ガメラ対ギャオス」で善玉の位置付けが明確になる。それにしてもバルゴンの人を喰うシーンは、子供心にむちゃくちゃ恐かった! ! 怪獣格闘シーンも血みどろの迫力だったし…。 7点(2003-11-10 11:27:11) |
12. 大巨獣ガッパ
60年代を席巻した単発怪獣映画のひとつ。しかも家族向けに作られた異色作で、見事なまでのB級! ! オープニング早々から演歌調の“ガッパの主題歌?”に強烈な先制パンチ。日活っぽい青春活劇風なノリで進む中、日本人丸出しの珍妙な島民の踊り、たった数日でビル並の大きさに成長する子ガッパ、ゆでダコをくわえながら町を破壊する夫婦ガッパ、親子対面で涙腺が緩む感動のラストシーン等、ガッパの造形はもちろんのこと印象度の高い怪作に仕上がっている。さらに日活初の怪獣映画という事もあり、スタッフ一同笑いをこらえながら、時には笑い転げながら作り上げた様子がヒシヒシと画面から分かるゾ。まぁ、このテの単発怪獣映画が個人的に好きなので、う~ん…6点。 6点(2003-11-03 13:39:12) |
13. ダイ・ハード3
シリーズ3作目ともなると、衝撃度も新鮮味も薄くなるのはしょうがない。しかしマクティアナン監督の作品にしては、ずいぶん足早で強引な展開、そして大雑把な演出が目立ち過ぎる。それと、頭の回転が速い黒人(S・L・ジャクソン)がマクレーンの相棒という設定は悪いとは言わないが、このシリーズ、ブルース・ウィリス演じるマクレーンの孤軍奮闘、大活躍を堪能すべく映画だったはず。巨費を投じた大味な、凸凹コンビのアクション映画に終ってしまっているのが残念でした。 5点(2003-09-21 22:34:13) |
14. ダイ・ハード
手に汗握るハードアクションの連続で、最後の最後まで画面にクギ付け! ! まさに、見応え満点な娯楽大作に仕上がっている。マクティアナン監督の勢いある演出はもちろんのこと、工夫を凝らした脚本が作品全体を盛り上げる。しかし何といっても、主人公マクレーンを演じるブルース・ウィリスの人間臭いキャラクターが魅力十分。孤軍奮闘、大活躍のおじさんは一夜にしてニュー・ヒーロー! ! その後彼は、見事スターダムにのし上がっていった。 8点(2003-09-07 15:21:25) |
15. ダークマン
いかにも人気アメコミの映画化という感じでした。ストーリー展開もノリもB級の域を出ないアクションものなんですが、意外にも巨費を投じてあるみたいで見応えは十分。壮絶な復讐劇は終り、どこへともなく去って行くダークマン。見事、哀愁を漂わせており、その後シリーズ化されたのがよくわかる。 7点(2003-09-07 15:21:08) |
16. 大魔神怒る
大魔神シリーズ第2作目。本作は八雲の湖畔が舞台となっており、ワンパターンにならぬよう、新鮮で見応えのあるシーンも数多く用意されています。とくに、「十戒」を彷佛させる湖水を割って大魔神が登場するシーンが圧巻で、出来れば大画面で見たいもの。さらに、武神像(変身前の大魔神)を爆破させるという凄い場面もあり、魔神の首がふっ飛んでいく様には強烈な印象が残っています。ラスト、悪領主の処刑からエンディングにかけては、伊福部昭の荘厳な音楽と共に前作以上の余韻を残してくれました。 8点(2003-08-29 16:52:29)(良:1票) |
17. タワーリング・インフェルノ
災害パニック映画の傑作 ! ! 巨費を投じた大スペクタクル映画の名に恥じぬ見事な出来映えは、「ポセイドン・アドベンチャー」に一歩も引けを取らない。冒頭から只ならぬ気配を感じさせる演出はゾクゾクもので、じわじわと大惨事へと向かう展開も申し分なし。そんな中、絶体絶命という状況下での、縦横に繰り広げられる人間ドラマもしっかりと描かれている。もちろん、今見ても色褪せない特撮は迫力十分。安全性を返り見ず、先端技術を競い合う事がいかに悲惨な結果を招くか…。決して絵空事とは思えない見事な大作でした。 8点(2003-08-09 17:31:59) |
18. 大空港
この映画、古典的な演出がどうにも馴染めず、とくに人間模様を描いている前半は、いい加減にして欲しいくらい退屈だったのを覚えています。ただ、爆弾犯が潜む機内のシーンだけはけっこう緊張感があり、どう展開するか目が離せない。それと当然ながら、タダ乗りお婆ちゃんと、哀愁漂う爆弾犯の夫婦がしっかりと場面をさらっていたのは言うまでもない。 7点(2003-07-12 20:47:35) |
19. タイタンの戦い(1981)
ハリーハウゼンが手掛けた映画では、実質上これが最後の本作品。CGが主流の昨今、手作り感溢れるモデル・アニメーションという技法は、古き良き“特撮”そのもので、ある種の新鮮味さえ感じさせる。 この映画でのお気に入りは、やはり髪の毛が蛇というメドゥーサの登場シーン。見る者を石に化すというので、勇者ペルセウスはどんな戦法で闘うのかワクワクドキドキしたものだ。子供の頃から、ファンタジックな世界を楽しませてくれたレイ・ハリーハウゼンに「ありがとう! ! 」の意を込めて …8点。 8点(2003-07-12 20:47:23)(良:1票) |
20. ダーティハリー
この当時、綺麗ごとで終らせないニューヒーローの登場には、驚きと共に大変な新鮮味を感じたものです。額の血管をひきつらせ「法の番人くそ喰らえ、オレが裁いてやる」と言わんばかりに、イーストウッド演じる刑事ハリーがマグナム44をぶっ放す様は迫力満点だった。この映画では、連続殺人犯が悪法のせいで釈放されてしまうわけですが、ハリーが法を超えた手段でケリをつけるというラストは痛快そのものだ。しかしなんだか、現在の法を超え独自の正義を行使するアメリカを見せつけられたような気がして、娯楽映画として割り切れないのも事実です。 8点(2003-06-14 20:38:34) |