1. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 徐々に、しかも確実に視力が失われていく恐怖は想像を絶するものがあるだろう。 一人息子もまた、同じ運命をたどるとなれば、もう現実から逃げ出したくなってしまうのは良く分かる。 セルマは、そんな人生に対する不安や、息子ジーンに対する責任、果ては自分の気持ちまでも、貯めたお金とともにドロップの缶に封じ込めてしまったのだろう。 そしてその缶にしがみつくことで自分を納得させながら、自分だけの夢想の世界に入ってしまったのかもしれない。 彼女は「ミュージカルの最後の歌は聴きたくない」と言うが、これは「物事を締めくくらずに逃げる」という彼女の精神構造を表していて、実際作中でも、「ビルのついた嘘」から、「キャッシーの友情」から、「ジーンに対して親として生き抜く責任」すら放棄して逃げている。 どこかで逃げずに立ち止まっていれば、何かが変わっていたかもしれないのに・・・。 まだ終わりじゃないと言う結末も逃避的。 それが結果、そこで全て終わりなのだ。 セルマという女性の愚直な純粋さと現実とのずれが、取り戻すことの出来ない大きな歪みとなって重く心に突き刺さった。 繊細な彼女の精神世界には多くの感情を喚起され、揺さぶられた。 辛く苦しい作品だが、傑作だと思う。 [DVD(字幕)] 9点(2006-06-17 03:05:54)(良:1票) |
2. タイムリミット
面白すぎ。 脚本が圧倒的にいい。 マット(デンゼル)の身から出た錆とはいえ、前半で蒔いた種が蔓になって縦横無尽に絡み付いてくるのをギリギリで振りほどくスリルはたまらないものがあった。 人の不幸は蜜の味と言うが、この場合ネタがみっともない下世話な話なので、主人公が必死になればなるほどコメディー色が強まると言うよく練られた脚本で、悲鳴を上げながら大笑いした。 キャストもほんのチョイ役まで見事に立っていて、小品ながら出来としては、結末も含めて非の打ち所が見つからない。 時間もタイトで気軽に見られる。 現時点で今年のマイ№1。 超オススメ! [DVD(字幕)] 9点(2006-06-10 02:20:18) |
3. 誰も知らない(2004)
子供たちの自然な表情は良く捉えられていて一見リアルに見えますが、それが親から見捨てられて身も心もせっぱ詰まった子供たちの心象をうまく表しているかと言うとそうでもなく、あの状況下でのあまりにも真っ当な子供たちの描写にリアルとは少し違う違和感と物足りなさを感じました。 主演の柳楽君は確かに画面栄えする良いつら構えと眼を持っていますが、映像的にそこに頼りすぎた感があり、過酷な状況を一人で支えている12歳の少年の震えるように不安な内面の描写が弱かったように感じました。 お涙頂戴にする必要は全く無いけど、通じない電話に唇噛んで嗚咽するシーンがひとつぐらいあっても良かったんじゃないかと思いました。 YOUのちゃらんぽらんな母親役はリアルでした。 何事も自分で考えようとせず、全てまわりにシワ寄せしておきながら悪びれもしない人って・・・結構います。 ベースとなった事件の記事を読みましたが、内容があまりに凄惨なため、子役を使った実写での映画化は不可能ではないでしょうか。 一般作として公開するには、表現を制限しなくてはならないのでジレンマがあったと思います。 そのため静かにまとまった作品になっていますが、薄味感は否めません 。 [DVD(字幕)] 7点(2005-07-27 18:00:13) |
4. ターミナル
不安定な国の情勢により空港で足止めされるというシチュエーションは、今の時代にあってもおかしくない出来事で目の付け所は良いと思うけど、いくらなんでも脚本が悪すぎでしょ。 というか、草稿のまま撮影しちゃったみたいに各エピソードが中途半端、この流れでラストにあざとく感動させようとしても少し無理があるかなと思いました。 目玉のターミナルのセットはかなり凄かったけど、凄すぎてセットには見えないのでこれも見所にはなりませんでした、残念。 主役のビクターの人物像も、場当たり的に振れ幅が大きくて、頭が良いのか悪いのかよく分からないし、恋愛の行方も「?」。作品の完成度は低いと思いますが、まあ暇つぶしにはなります。 [DVD(字幕)] 5点(2005-06-02 15:16:52) |
5. タイガーランド
敗色濃厚ベトナム戦争終盤の兵士達の士気の低さ統率の難しさが良くわかった。普通兵士物というと、士気を高めてえいえいおーな作品が多いが、その逆にスポットを当てたのは珍しい。比較的短めな作品だが、実戦の緊張感が無く物語が進むのでやや長く感じた。 5点(2004-05-14 11:30:20) |
6. タイムマシン(2002)
この映画はツッコミながら観るのが正しい。 穴だらけなので実際見終わってから友人と、あーだこーだ何だったんだと会話がはずんだ。 楽しい映画だった。 3点(2003-11-21 18:04:32) |
7. ターミネーター3
ターミネーターシリーズは最終的に人間対コンピューターの大戦争を描かなければ終わらないと思っていたので、当初3部作を予想していました。 ジョンとサラがT1、T2での経験を引っさげてT3で大戦争で大団円。 そしたらT2であっさりと優等生的に終わってしまいました。 T3のラストはそんなこともありこれでいいんだと納得しました。 むしろT2でこれをやってほしかったんですが・・・ T3については話の流れやアクションはこれでいいと思うんだけど、内容的にはもう少し「ボリューム」と「粘り」がほしかった。 どうやらT4も企画されているようで、T役にザ・ロックの名が挙がっているとか。 とうとう広げてしまった大風呂敷をどこにどう着地させるのかが今から楽しみ。 出来ればジェームズ・キャメロンに撮ってほしいが・・・ムリだろうな。(追記)DVDが発売されたので購入して再見しましたが、どうにも内容が薄くアクションシーンもひねりが無く、繰り返し観る程では無かったので明日にでも売りに出します。よって点数変更 8から6。 6点(2003-11-21 14:34:42) |
8. 大災難P.T.A.
最悪の状況が重なったとき、スティ-ブマーチンに笑わせてしまうというセンスの良さに脱帽。 つられて笑ってしまった。 そんな大笑い小笑いが続き、終盤には名作の香りすら漂うコメディー映画の傑作。 大好きです。 あと、エンドロールは最後まで見ましょう。 8点(2003-11-04 19:11:29) |
9. ダイ・ハード
この映画の面白さの謎を解き明かすために、ここ10数年来映画を見続けていると言っても過言ではないです。 この作品の面白さを端的に表す言葉が未だに見つかりません。 観るたびに熱くさせてくれるアクション映画の最高峰、登り甲斐のある山です。 巧妙に張られた伏線や、テロリストとの激しい攻防の全てが、結局のところマクレーン夫妻のごく私的な仲たがいを修復するためのひとつの「クリスマスイベント」としてのみ機能しているあたりは、まさに痛快の一言に尽きます。 10点(2003-11-04 01:04:07) |
10. タイタニック(1997)
《ネタバレ》 この映画は賛否両論に割れているけど、私は大傑作だと思う。 冒頭部分、ジャックとファブリッツィオがポーカーで勝ってチケットを手に入れ、まるで子犬のように喜んでタイタニックに走っていくシーン、血気盛んな青年2人に対するあまりにも皮肉な「運命のいたずら」に、早くも胸が熱くなりました。 この映画の凄いところは人物描写にあると思います。 一人一人の立場や性格や心情を限られたシーンとセリフ、そして細かな目配せや、仕草、表情できっちり印象付けている点が凄い。 そしてそれぞれの人物に,起、承、転、結、があり、それらを綿密な編集で違和感なくドラマの中にからめています。 ディナーのシーンのやり取りの妙、氷山にぶつかってしまってからの航海士達の表情の深刻さ、スペクタクルシーンもさることながらドラマ部分に印象に残るシーンが多いです。 二人の恋愛部分にしても、だだバカみたいにくっついた訳ではなく、お互いの中に他には無い見過ごせない輝きを見出し、命がけの恋に落ちてゆく様子も窮めて必然性を持って描かれています。 何度見ても新しい発見のある、示唆に富み、繊細さと大胆さを兼ね備えた「稀なる超大作」だと思います。 (追)みんなから色々叩かれてるケイト・ウィンスレット、この人うまいと思うよ。女優としての風格もあるし、いずれオスカーをとる人材だと思うのだが。 10点(2003-11-01 17:44:48)(良:5票) |