1. ダ・ヴィンチ・コード
全国のカトリック教会から猛抗議を受け、ソニー製品の不買運動まで起こさせたという話だが、実際に見てみれば抗議するほどのものではない出来だった。そもそも、原作も題材勝ちなだけでサスペンスとしては決して評価が高くなかったのだが、監督とキャストに惹かれて見てしまった。実際、俳優の演技は悪くない。トム・ハンクス、イアン・マッケランのオーラは毎度ながら流石だし、ポール・べタニーも圧倒的な存在感。しかし、ロン・ハワード監督としては失敗作だろう。キャラ描写が浅いとか、突っ込みどころ満載とか、オチがありきたりとか、そういうのは原作が原作だから仕方ないのだが・・・とにかく、全体的に駆け足的すぎるというのが素直な感想。与えられた膨大な情報を主人公たちが苦も無く解決する様子が映し出され、観客は考える暇も与えられないまま次の場面へ移ってしまう。ここに謎解きの爽快感が決定的に欠けているのだ。ラストの驚愕の事実も衝撃を衝撃として扱えていないのが勿体無い。さすがにこの映画に3時間以上はかけられなかったのはわかるが、そこを上手く削るのが脚本家と監督の仕事だろう。これは監督には向かない題材だったのだろうか。それとも、本作に対するカトリックのヒステリックな反応に笑いながら見るべき映画なのかもしれない。 [試写会(字幕)] 4点(2006-05-20 14:46:25) |
2. TAXi3
リュック・ベッソン、またしてもやってしまった、というぐらいの駄作。前作までは独特のテンポのある「凡作」に収まっていたが、今回は脚本の荒唐無稽さにまさに「ブレーキが効かなくなった」状態。オープニング、出産騒動、強盗計画、とにかくいろんな映画からパクリまくっている上に、突っ込みどころは多いが、与太映画としてもまるで面白みがない。観客も審査員もいないスキー大会、ダニエルのいい加減な推理。それはともかく、データの盗み方やスイス式処刑装置にはただ呆れるしかなかった。おまけに人種差別ギャグ(ハリウッドでは絶対に出来ないだろう)や下ネタまで出てくるのは何とかならなかったのか。ジベール署長は相変わらず良い味出しているが、この作品を救うまでには至らない。肝心なカーアクションにはまるで爽快感がなく、そもそも映像のごまかし方がいい加減すぎてとても時速300キロには見えない(普通の電車に追いついたかと思えば、次の瞬間電車がTGVに早変わり)。見たことを後悔するまではないが、ハッキリ言っていいとこなしの映画。 [地上波(吹替)] 3点(2005-06-04 16:07:41)(良:1票) |
3. ターミナル
予想以上にコメディタッチで面白かったです。特に前半部のビクターが空港内で徐々に生活の場を確保してくところが素晴らしく、空港の舞台を活かした脚本と監督の力量を実感しました(同じハンクスの出演作の「キャスト・アウェイ」でも工夫して欲しかった)。トム・ハンクスも好演で、最初に話しているときは外国人エキストラのような印象を受けながらもだんだんと一般人と変わらなくなっていく様子が見事です。後半部にかけてドラマが希薄になっていくのは問題ですが、空港内の人々に認められあのラストに持っていく展開には感動させられます。自己犠牲を選んだグプタとアメリアの二人が切なく、いい味を出していました。その点を考えると旅の目的は蛇足な気がします。しかし、やはり「未知との遭遇」や「E.T」を監督しただけあってスピルバーグ監督はファンタジックな光の使い方がうまいです。わざとらしいと言ってしまえばそれまでですが、とにかくいいのです。ラストのニューヨークの夜景も綺麗で幕切れとして最高でした。 [映画館(字幕)] 7点(2004-12-21 04:00:19) |
4. 太陽に灼かれて
ロシア映画は初めてですがこれは名作だと思います。話自体は非常にゆったり進みますが、最後まで退屈せずに見られました。前半部でコトフ大佐とその家族の生活が美しい風景の中で牧歌的に描かれ戦車や戦闘訓練すらも村人は淡々と捉えています。しかし、後半でミーチャの正体が明らかになるにつれ画面に緊張感が漂ってきました。劇中に登場する巨大な気球と火の玉(偽りの太陽)が彼らを陥れる政治の影のメタファーになっているのだと思います。前半で登場する運転手をラストに持ってくるのもそういったコントラストを明示しているのでしょう。ラストはいつまでも余韻を残します。前半部は役者の演技でまとめていますが、特にナージャは映画に明るさをもたらす意味で「都会のアリス」のアリス同様、魅力的なキャラクターでした。 [ビデオ(字幕)] 9点(2004-12-15 17:01:13)(良:1票) |
5. ターミネーター3
《ネタバレ》 出来としてはそこそこ面白かった方です。一晩の出来事に終わった1作目に対し、日中の出来事になっていますね。アクションの出来は2作目に比べT-850は重い、などSF色の濃い戦いになりましたが、無駄が多く、特徴をあまりうまく活かしきれた戦いになっていません(T-850のプログラムの設定もそう)。ラストがあっさりしすぎた印象を受けるのも、脚本の弱さからくるのでしょう。しかし、1本のアクション映画としてみれば結構面白く、1,2作からの雰囲気はしっかりと受け継いでいるし、1,2作目のオマージュともいえるシーンが連続するのは見ていて楽しかったです。T-850がヘリコプターで登場するシーンなどの見せ場を抑えた演出もよかったです。ストーリー的には少々説明的になりすぎているのが痛いですが、現在と未来のエピソードが交差していてなかなか良いと思いました。なによりも、2作目のラストで生じる矛盾をどう解決するか、という点では「12モンキーズ」のようなラストがやっぱり一番だったのでしょう。ジョン・コナーのキャラにはがっかりさせられた人も多いですが、私にとっては彼の人間的なところが逆に魅力でした。ジャッジメント・デイが起こらなかったことでただの犯罪者に成り下がり、T-850の出現で再び人類救済のリーダーとなる重荷を背負わされる事になった彼の心情を理解できた人はいたのでしょうか。そんなコナーに対し、T-800とは明らかに異なるT-850が「君は私の探していた人物ではない」というシーンが辛辣でした。こういった一連の出来事が逆に彼を成長させたのでしょう。T-850のキャラは乾いた雰囲気を作り出していてよかったと思います。「命令を聞くようにプログラムされていない」というエピソードをもうちょっと工夫すれば、ジョンの指導者としての成長過程を描く事も可能だったんではないでしょうか。それでも、ラストで人気のないシェルターで終末観を漂わせる演出は悪くないと思いました。ただ、劇中で未来で起こる事もいくつか言ってしまっているので(ジョン・コナーは暗殺される、など)、あまり4作目には期待し切れません。 [映画館(字幕)] 7点(2004-11-22 23:46:59) |
6. ターミネーター2
私は特別編の方を先に見ましたが、こっちはやはり「不完全版」というしかないほど足りな過ぎです。キャラ説明における重要なシーンをいくつか省いているため、サラが警備員を半殺しにしたり、T-800が学習したり、ラストのジョンの一連の行動に説得力がなさ過ぎます。というわけで、特別編の評価から-2させていただきます(「真」のT-2の評価は特別編のレビューを見てください)。 [地上波(吹替)] 8点(2004-11-20 23:29:18) |
7. ターミネーター
最初から最後まで緊張感に満ち溢れた雰囲気がすごいです。大抵のアクション映画はサイドストーリーを詰め込みすぎることが多いですが、この映画はT-800に追われる恐怖そのものを描けている正統派サスペンスアクションになっています。核戦争後の世界で生まれ育ったカイルがなぜすぐに電話帳などが使えるのか、といった突っ込みどころはありますが、無表情でサラに狙いをつけたり、サングラス姿で警察署を襲撃するシーンなどがとにかくスタイリッシュで、シュワルツェネッガーのストイックな悪役ぶりが素晴らしかったです。ただ、映像にこだわる私としてはやっぱり「T2」を見た後では映像も音楽もB級っぽさを大いに残しているところが気になってしまいます(ラストはアニメ制作スタッフが担当した方がよかったのでは?)。サラとカイルのドラマもなんとなく違和感があるように思えました。ただ、ラストシーンはかっこよくていいです。どうせなら監督にはA級作品としてセルフリメイクして欲しかったのですが、シュワルツェネッガーの後継者になれるような俳優がいるかどうかを考えると仕方ない気もします。あと、未来から来たのになぜ過去で?と考えられた方がいるようですが、どこがおかしいんでしょう?彼が死んでも親は生きてるんですから。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2004-10-28 17:22:13) |
8. タイタニック(1997)
SFアクション監督の本格ドラマ、ということで見るのは遠ざけていたのですが、やはり観てみると予想通りの出来でした。なにしろ、前半と後半で雰囲気がガラッと変わっています。後半のパニック演出はさすがに本領発揮だけあって素晴らしいできでしたが、前半の恋の描写が妙にだらだらしていましたし、かなりストレートな流れで疑問すら覚えました。大河ドラマ的な恋愛なのにどこかとぼけた感じで、後半になってやっと感情移入できる、といったふうでした。ジャックの友達やモリーなど妙に気になる人物たちのキャラの描き方も中途半端でした。4時間退屈はしませんでしたが、これだけシンプルなストーリーならもっと短くしてもいいはずだし、長い映画にするならもっと全体的に丁寧に作る事も可能だったんじゃないかと。内容が内容なだけに、もっと前半部もロマンチックに作って欲しかったです。後半部も映画のテーマから考えるとやっぱり長すぎかな。本格パニック映画として作ればもっと点があげられたんですが・・・ [地上波(吹替)] 6点(2004-10-22 22:08:56) |
9. ターミネーター2/特別編
《ネタバレ》 私は特別編しか見ませんが、私の映画ではベスト3に入ります。キャメロン監督の作品の中でも特にアクションのキレがいいと思います。ダイナミックなアクションでありながら、無駄な破壊物はほとんどなく、ラストの工場の戦いなど舞台設定が非常に優れています。前回はT-800の圧倒的「強さ」によって他を威圧する緊張感を作り出していたわけですが、今回はT-1000の疲れ知らずな設定による「しぶとさ」で襲われたときに危機を打開する緊張感が高まりました(T-1000が再生するシーンがかなり恐い)。見せ場の雰囲気を盛り上げる演出も素晴らしく、無表情の中にも時折クールなセリフを放つシュワルツェネッガーがすごくかっこよかったです。後半部で一見戦いが終わったと思わせるのは、キャメロンアクションの定番ですね(笑)。しかも、ドラマという面から見ても感動的でありながら、ハードボイルドでした。それと、やっぱりラストの平和な2029年のショットをカットしたのは正解でした。3が出なきゃ結末としても納得のいかないものになりますからね。 [DVD(字幕)] 10点(2004-07-22 23:27:39) |