1. 太陽の帝国(1987)
《ネタバレ》 原作未読です。舞台は1941年から1945年までの上海。主人公は上海租界に住むイギリス人少年で、ゼロ戦の模型を肌身離さず身につけている飛行機っ子。イギリス人居留地に日本軍が侵攻した際に、避難民の群れに流されて、少年は、両親と離れ離れになってしまい、そこから少年のサバイバルがはじまります。最終的には日本軍が管理する民間人収容所?に収容されますが、貧しいながらも、食料と安全と行動の自由がそこそこ与えられており、その中で、したたかに成長していく少年の体験記となっています。連合国側の立場でありながら、日本に対して敵国としての先入観のない少年による戦時の記録という意味で、他にあまり類がなく貴重だと思います。また、上海租界の街の雰囲気、群集シーンの迫力など映像は見ごたえがあります。だが、しかし、エンターテインメントとして、あまり面白くないのですよね。それぞれのエピソードをうまく束ね切れていなくて、推進力がない感じです。日本軍人役を伊武雅刀やガッツ石松など日本人が演じているなど、それなりにリアル志向の作品で、日本人以外が見てもなんら違和感はないのでしょうが、それでも日本人が見れば、おかしな描写が多々あり、それはそれで楽しめます。 [DVD(字幕)] 6点(2024-04-22 18:49:32) |
2. ターミネーター3
《ネタバレ》 細かい設定はともかく、アクションはそこそこ笑えて、良かったと思います。ただ、感情面での盛り上がりがほとんどなく、前作と比べると作品としてのオーラが全く感じられないというか、時代に乗っかった勢いであるとか、周りを巻き込む力とか、何か憑き物がとれたように、まったくなくなっていたことに妙に感心。 [地上波(吹替)] 4点(2024-03-05 18:38:29) |
3. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 ひどく昭和の匂いがする映画です。また、ひどく映像が小汚いです。昭和的な、安っぽくて埃っぽい小汚さが、うまく再現されているのではないでしょうか。部屋の中に蝿が飛んでたりしますし。安っぽくて埃っぽいのは、たぶん、カラー映画がまだ小慣れていなくて、しっとりとした落ち着いた色がうまく出せなかったんでしょうね。アラン・ドロンがパスポートを偽造するシーンだけは、幼い頃に、テレビで、そこだけ切り出したものを見たことがあったのですが、そのときに勝手に想像した背徳感や、スリルや、ドキドキワクワク感をあまり感じることができなかったのが、少し残念です。 [DVD(字幕)] 4点(2024-02-01 17:24:03) |
4. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 ビョークが演じる主人公は、ミュージカルダンサーに憧れ、工場で働きながら、劇団で練習を積む毎日を送っているのですが、遺伝的な目の病で、日に日に視力を失い、1年以内には失明するという設定です。序盤の隣人との関係のごく自然な感じが好きです。工場での労働の姿は、今にもプレス機に手を挟みそうで、危なっかしくて目を背けたくなります。ミュージカル映画なので、登場人物が急に踊りだしたりするのですが、それはあくまで目があまり見えない主人公の妄想であって、現実世界とははっきり区別されています。現実世界と妄想世界との対比が面白いです。ミュージカルが苦手であっても、ミュージカル好きの妄想なら仕方ないと、受け入れることができます。中盤で主人公が犯罪に巻き込まれるのですが、そこからの主人公の行動が、すべて主人公が不都合になるようなご都合主義です。見てて歯がゆくなってきます。この部分がもうちょっと納得できるものなら傑作だと思うのですが。エンディングの余韻の部分で、頭に浮かんだのは、右記に示すイメージでした。J( 'ー`)し [DVD(字幕)] 7点(2024-01-24 18:19:58) |
5. 誰も知らない(2004)
《ネタバレ》 父親の違う子供4人と母親の計5人からなる母子家庭が、とあるアパートに引っ越してくるところから始まります。母親と長男だけの2人家族(近所迷惑になる小さな子がいない)としてアパートを借りていることから、長男以外の子供はアパート内に身を隠すような生活で、長男含めて学校には通っていないという設定です。しばらくは、昼間母親が働くことで生活が支えられているのですが、次の恋人(父親)探しのためか、母親が帰ってこなくなり、子供達だけの生活が始まるという話です。最初の30分くらいの状況描写は、説明っぽく感じることなく設定が理解でき、作品世界に入り込むことができました。流れに無駄がありません。ただ、そこから先がちょっと長すぎるかなと思いました。日常の生活が宿ったシーンを切り取るセンスに秀でてますね。母親役のYOU(タレント)は、あえて一つ挙げるとすれば声の出し方が嫌いなのですが、相変わらずなので、あれが素なんでしょうね。長男の柳楽氏は目力があるのはわかりますが、長女の大人びた雰囲気や、次男のきかん坊な感じや、次女のつぶらな感じも負けてはいません。 [DVD(字幕)] 6点(2023-12-25 17:45:38) |
6. ダンス・ウィズ・ウルブズ
《ネタバレ》 アメリカ大陸の広大な大地と空の映像が素晴らしいです。うっとりして見とれてしまいます。お話は、主人公のケビン・コスナーが、 インディアン(スー族)と仲良くなって、最終的にはインディアンとともに白人と闘うというものです。インディアンが味方で、白人が敵という役割の入替以外は、非常にわかりやすい勧善懲悪もので、味方のインディアンは人間的に魅力に溢れているのに対して、敵の白人は狡猾でいやらしい奴ばかりです。主人公側を引き立てるためのご都合主義が多々ありますが、かえってそれが皮肉にも取れるので、これはこれでいいのかなと思いました(役割を入れ替えるとこんな感じだけど、どんな気持ち?ねえ、どんな気持ち?というような意味で)。そう思う反面、それぞれの大義、心情を、それぞれ描くことができないものなのか?と思わないでもないですが。あまり難しいことは考えず、大自然と男の友情に素直に感動できました。 [DVD(字幕)] 7点(2023-10-31 18:43:41) |
7. 太平洋の地獄
《ネタバレ》 太平洋の無人島に漂着した日本兵とアメリカ兵の物語。他の人間は一切登場せず。アメリカ映画らしくないです。最初は敵対していたけど、孤島に二人きりということもあってか、相手を殺すまでには至らず。そのうち、なんとなく、いがみ合うのも面倒臭くなり、一緒に船をつくり島を脱出することに・・・と文字で書いてしまうと、いかにもねらったクサい感じがしてしまいますが、それを感じさせないのは、役者の魅力と、ロケーションの魅力、見せ方の魅力なのでしょうね。三船は、基本男前なのだけど、どこか滑稽さを感じさせるところが絶妙ですね。コンスタントに笑えます。エンディングが2バージョンあるのですが、どちらかというと本編じゃない方が唐突感がなく余韻が残って好きです。 [DVD(字幕)] 8点(2023-05-12 18:07:32) |
8. 太陽を盗んだ男
《ネタバレ》 人間、衣食足りると刺激を求めるのでしょうか。沢田研二が演じる高校の物理学教師は、傍目には何の鬱屈も不満もなく、好き勝手に生きてるいように見えますが・・・たいした理由もなく、狂気の行動をとるところ、作品として行動の理由を説明しようなどとしないところ、今なお古臭さを感じさせず、色褪せません。東京の街並みは、70年代臭が強く漂うのですが、これはこれで、味があります。いい撮り方をしています。原爆を組み上げるシーンは、なかなかマニアックな力作で、ワクワクしますね。作り手は、手を抜いちゃいけないところをよくわかっています。ただの爆弾ではなく、原子爆弾にした脚本の慧眼。役者の魅力を最大限引出し、ディテールの描写も疎かにしない。アクションも迫力があり、最後まで予想の付かない展開。日本でも、低予算であることに逃げない娯楽作品がつくれるのだなあと感じ入ることができる傑出した作品です。 [DVD(字幕)] 10点(2023-05-09 17:37:17)(良:1票) |
9. タクシードライバー(1976)
《ネタバレ》 顔がツルンとしていたので、主人公がデ・ニーロであることに気付いたのは、開始から30分くらいたってからでした。タクシードライバーの目から見る大都市ニューヨークの営み。大統領選挙活動をしているスタッフ女性を口説いてみたり、中学生売春婦の足を洗わせようとしたり、主人公の気まぐれで話が進んでいくのですが、何故か飽きずに見ることができてしまいます。選挙事務所のスタッフ女性が気が強そうな美人で、ポイント高いです。ちなみに中学生売春婦は、当時13歳のジョディ・フォスターで、こちらは、きつい化粧をしてる間は気付きませんでしたが、化粧をとったら超美少女なので、気付きました。ジョディ・フォスターは中2時点で完成されていたのですね。色気的にもほぼピークです。白人の早熟さときたら・・・。この人は劣化遅い方ですが。 [DVD(字幕)] 8点(2023-04-18 20:37:20) |
10. タクシデルミア ある剥製師の遺言
《ネタバレ》 かなり希少なハンガリー映画ですが、まごうことなき変態映画です。全体が3部に分かれています。最初は変態的な自慰に勤しむ唇が割れた青年下等兵の話。蝋燭の火で自分の体をいぢめてる映像から始まり、彫刻刀で削り取られたような唇の裂傷の凹凸の陰影が、炎により照らし出されて卑猥な感じで反則気味なのですが、その後いきなり、ちんぽから火炎放射器のように火を噴いたプレーには、呆気にとられると共に大笑いしました。木造の家の外壁の節穴にグリスを塗りオナホールにしてたら(無茶しやがって...AA略)、鶏に外からつつかれて更に大笑いでしたが。しかしこれは一人で見てたから笑えるけど、人と一緒に見たら辛いかもなぁと。ファミリーにはお薦めできません。次に、話は一気に飛んで、大食い選手権となります。フードファイトの間にゲロをしまくるのですが、そもそも食い物がゲロ並みにまずそうで、その食べ方も、ゲロの方がまだきれいだわと思うほどで、あまりに酷くて笑ってしまうというものです。なぜかフードファイター達が白いTシャツの上に、レスリングウェアを着用してるところもポイント高いです。最後は神経質そうな剥製師の話です。動物の肉から皮を捌く、ある種洗練された職人芸ですが、きちんとグロテスクです。ここで最後のオチを言うのは控えますが、やはり変態映画だなとおもわせるとともに、ちょっと高尚な後味も残しました。3部に分かれた短編それぞれが、どうつながってくるのかな?途中からそれを期待しながら見ていたのですが、結局、何もつながらずに終わってしまいました。で、少し調べてみると、これは、親子3代の話らしいのです。それがわかるような説明が作中にあったかしら?3編の共通点を考えるに、人体と欲望がテーマなんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-30 17:50:26) |
11. タッカー
1940年代後半にアメリカ自動車業界に話題を巻き起こしたタッカーの伝記的作品です。いい映画だと思うのですが、今一つ燃えないのは、敵が、すべて小役人、小物臭が強くて、しょぼいところですかね。敵キャラが分散されていて、強烈な個性があるわけでなく、すべてが、先見性や独創性をバカにする保守的な人たちで、金儲けや地位にしか興味がないといった分かりやすいステレオタイプ。実話の再現としてはあまりに単純化され過ぎてしまっていて、深みがないかなと。映像技術的には、距離的に離れて同時に起こるシーンをシームレスにつないだりとか、シーンの切り替え部分をシームレスにつないだりとか面白いけど、あまりテンポが良い感じもしなかったので、トータルで見ての効果は疑問でした。タッカー役は、特有のふてぶてしさがとても良いと思いました。ニンマリとした笑いの裏からにじみ出る苦々しさみたいなのが良い。奥さんはぱっと見美人だけどよくみるとそうでもない。娘はかわいい。 [DVD(字幕)] 6点(2023-02-15 19:38:07) |
12. ダ・ヴィンチ・コード
原作を読んでる人は、その早送りのような展開も、原作の映像的な確認という意味において、有効活用できるかと思います。ですが、原作未読の人が楽しめる要素が果たしてどこにあるのか?実際に原作未読で見た人に聞いてみたくなりますね。話の筋としては、おおむね原作を踏襲しているのですが、最終盤の展開、人間関係が改変されていて、原作で最も感動が得られるであろう場面のインパクトが、かなり弱くなってしまったと思います。尺を短くするためか、序盤にラングドンに暗号を瞬殺させるとともに、ヒロインが暗号解読官として活躍する場面がほとんど無く、なんの魅力もないただの孫娘になってしまっているのが、一番残念なところですかね。一方で、原作ではあやふやですっきりしない、司法警察が執拗に事件を追う理由付けが、映画版ではなされていたりするのですが、尺の都合からか完全な脇役扱いになっていて、もはや重要ではなく、随分どうでもいいところにこだわってしまったなと思いました。アリンガローサがほとんど機能してないのだから、アリンガローサを切るとか、他にやれることがあるのにと思ってしまいました。シラスはもうちょっと怪物っぽいのを期待してました。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-02-13 20:17:24) |
13. ダークナイト(2008)
映像の精緻さ、ディーテールへのこだわり、次が読めない展開など、アクションエンターテインメントとして、緻密に計算された穴のない作品。内容としては、・ジョーカーの神出鬼没のキチガイっぷり(アクション・サスペンス的要素)/・ジョーカーに心を操られる人たち、それによるバットマンの苦悩(サイコスリラー的要素)の2つが大きな柱になるかと思いますが、後者の描写が少しもの足りないような気がしました。言い換えるとジョーカーは、頭は切れるが、それほどねちっこく無くて、与えるダメージが可視化されていてわかりやすいというか。もう少し、そこはかとなく感じられる空恐ろしさや、バットマンのより深い苦悩が描写されると、ラストもグッとくるのかなぁと。時間が限られているので難しいですが。そのラストは、同年放送の「コードギアスR2」の逆パターンという感じでしょうか。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-02-13 19:34:02) |