1. チャップリンのニューヨークの王様
《ネタバレ》 チャップリン最後の映画ということでしたが、イマイチ何を描きたかったのかよく判らない作品になっています。色々と考察等読んでみると、どうやらアメリカの政治や社会に不満があってそれを皮肉っているようですが、イマイチそれも届いていないように感じます。そもそもアメリカを追放された後にそのようなメッセージを発しても負け惜しみにしかならず、このようなことはすべきではなかったようにすら感じました。 本作と併せて見た「ライムライト」のほうがずっと地に足がついた作品に仕上がっています。ただ、本作も酷評するほど悪くもなく、まあいってしまえば可もなく不可もなくといった凡唐な作品でした。チャップリン最後の作品として映画ファンとしては押さえておきたい作品ではありますが、個人的には本作ではなく「ライムライト」のほうを押さえるべきだとも感じます。 想像の域を出ませんが、第二次世界大戦が終わり10年も過ぎた時代です。アメリカ的にいうなら”アメリカの黄金期”ですので、色んな意味で新しい価値観や生き方が芽生えていた時期でしょう。そういった新しいジェネレーションの中で、チャップリンの価値観ではもう世の中にはついていけず、アメリカからもつまはじきにされた彼の心情をつづった作品なのかもしれません。しかしそれすらもイマイチ観客の心には届いていないように感じる寂しいラストを飾った作品だったといわざるを得ないです。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-14 16:52:54) |
2. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 本作はチャップリン作品の中ではイマイチですが、それでもギリギリ楽しむことが出来ました。誤解を恐れずにいってしまえば、本作の作風でしたら明らかにヒッチコックのほうが楽しめるし、ヒッチコック向けの題材でもありました。 個人的にはチャップリンはやはり無声映画時代が最高だと思っていますので、この年代の作品はストレートに心に入ってきません。彼がしゃべってしまうと、それだけでもうチャップリンである必要性がないようにすら感じてしまうのです。 【K&K】さんもおっしゃるように、原題「Monsieur Verdoux(ムッシュヴェルドゥ)」を邦題では「殺人狂時代」としており、なかなかウマいです。本作はフランスに実在した殺人鬼を元にオーソン・ウェルズが脚本を書く予定だったそうですが、結果的にチャップリンが仕上げたようです。後にオーソン・ウェルズ本人が自分が原案だと吹聴したような話がWikiに掲載されていますが、横取りしたチャップリンもチャップリンかもしれません。 映画全般、騙しの五重生活はまあそれなりに楽しめますが、問題はラスト付近で見られる有名なセリフ、「一人を殺せば殺人者だが、百万人を殺せば英雄だ。私などアマチュア」等のシーンです。あまりにも取って付けたようなセリフで違和感を感じずにはいられません。これでは遠巻きながら共産主義と呼ばれても仕方がないとすら感じました。この作品をもって「平和主義」とは少々無理があります。。また、中盤、出所したての若い美女をなぜ生かしたのかの行動心理がイマイチ理解できなかったところも解せません。まあ結果的に彼女のおかげで罪と向き合うことになるキーマンな訳ですから、もう少し丁寧な心理描写や説明が欲しかったところです。 個人的には、、やはり映画に政治的理念を含んだ難しい解釈を持ち込んではならないと感じた作品でした。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-14 16:19:00) |
3. チャップリンのゴルフ狂時代
《ネタバレ》 本作もスランプ時期といわれる時代の短編作品の一つ。ゴルフボールのコントは古典的ではありますが非常に面白く、、思わず変な声が出ちゃうくらいベタな展開で笑わせてくれます。当時ってまだルールが確立されていなかったのでしょうか。。といえるほど、ほのぼのしたコントが繰り広げられます。てか、大喧嘩ですがw 本作には話の根幹部分に大きな矛盾があります。前半のゴルフシーンでバトルを繰り広げた太っちょ紳士と浮浪者ですが、後半のパーティの席で「This is my daughter and her hasband」と、瓜二つの浮浪者が間違って知人に紹介されてしまいます。これはちょっと変で、本来なら前半のゴルフの時に浮浪者が娘の旦那と間違われていないとつじつまが合いません。(まあ、ここは華麗にスルーしましょうか) 本作ではチャップリンが上手い具合に一人二役を演じています。この一人二役のシーンは創意工夫の賜物で、最初に中の人(チャップリン)をじっくり見せることで、まるで本人が中に入っているかのような錯覚を観客に植え付けることに成功しています。古典的ですが非常に上手い演出でした。ただし、紳士と浮浪者が瓜二つである説明がありませんので少し不親切ではあります。まあこれは観客自身が脳内でシチュエーションを補完すればよいだけですが。 今の時代の映画に慣れた方には無声映画は面白くないかもしれません。でも考え様によっては無声映画は想像する楽しみが多く、半分小説、半分挿絵を見せられているような楽しさがあります。本作もなかなかウマいシチュエーションコメディで楽しませてくれます! [インターネット(字幕)] 7点(2024-11-10 14:22:44) |
4. チャップリンの給料日
《ネタバレ》 名作を知らずに死ぬのはもったいないと思い、一生懸命チャップリンとヒッチコックを鑑賞しています。本作「チャップリンの給料日」は中期の、いわゆるスランプ時代(ファースト・ナショナル時代)の作品ですが、なかなか面白いシーンのみで構成されています。悪くいえば粗削り、良くいえば説明臭いシーンが一切なくスッキリした作品です。この時期の、いわゆる声が無い短編時期の時代がチャップリンの絶頂期じゃないかと思っています。本作も30分程度しかありませんがとにかく面白いです。 皆さん同様、レンガ、電車、恐妻、目覚ましが非常に面白い。昔は映像トリックといえばフィルムを裏表反対にするか逆再生くらいしかなく、本作では逆再生技法を極めたテクニックが堪能できます。技術に頼らず「いかにして逆再生した時に違和感なく見えるか?」を究極まで煮詰め、役者の演技で映像技術のほうをフォローしています。皆さんがおっしゃるように逆再生に見えない完成度はお見事。 恐妻に一部始終を見られていて帽子のへそくりも没収されますが、一瞬のすきにメインの財布からもう一度抜き取るのは最高です。。電車のシーン、せっかく一番に乗り込んだのに前から押し出されるのも最高。目覚ましシーンでも、散々あくびの前振り直後からの”今起きたから出かけますよ”の演技は素晴らしいです。その後のお風呂のシーンも笑えるし・・ この頃のチャップリンは本当に冴えわたっていました。 ちなみに、、お昼のシーンで従業員らのお弁当が結局チャップリンの元に集まってしまうのは笑えますww でもどう考えても普通はエレベーターにお弁当やバナナは絶対置きませんので、、冷静に分析してはいけません。チャップリンは勢いのみで楽しむ映画なのですww [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-09 11:03:29) |
5. チャップリンの独裁者
面白いシーンもありましたが、総合的に考えるとラストの演説以外はイマイチだったように感じます。チャップリンの映画の中では最も売れた作品だそうですが、個人的にはマンセーするほどではありませんでした。いえいえ十分に面白い作品でしたが・・ 彼がしゃべるのが嫌なのです。個人的には1920年代までのしゃべらないチャップリンが好きです。 やはりこの作品の肝は1940年代当時、全世界に向けて自分の顔と名前を晒して、、(暗に)正々堂々と批判するのが凄いです。批判する相手が相手なだけに、、ほとんど正気の沙汰とは思えない行動です。ただし、演説のほうは決してヒルケン(ヒトラー)や独裁だけを批判している訳ではなく、民主主義や機械主義(産業主義)からくる貧欲によって世界がゆがんでいることを憂いています。また人類は知識や富を得たことで他人を思いやらなくなったとも。 人種を超えてもっと扶助精神で助け合って対等かつ自由であるべきといいいますが、この理念は一歩間違えば共産主義とも思えなくもない考え方です。最後には肌の色や上下は関係なく互いが互いの犠牲にならないよう、お互い様の精神で自由な人生を楽しめと締めくくります。非常によく出来た演説ではありますが、お金持ち&権力を持った人からこの理念を遂行しないといけない訳なので、やはりちょっと理想論過ぎるかなと感じてしまいました。(ゲットーの人たちは自分の命すら危うかった訳で、他人を助けている場合ではなかったはずです) で、本作のお笑いポイントはやはりコインのシーンや、ヒルケンがイタリアの首相に頭が上がらないところなどでしょうかw あと地味にヒルケンの秘書たちの態度や仕草も笑えました。。ヒルケンとゲットーの床屋が瓜二つの姿であった説明が一切なく少々違和感を覚えますし、本作は喜劇というには少し真面目過ぎる印象です。政治色が強い作品なのであえて厳しめの点数にしておきます。(評価的には7点ですがあえて6点としました) [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-08 17:38:27) |
6. チャップリンの黄金狂時代
《ネタバレ》 音楽とナレーションがあるバージョンを見ました。どうやら私は長編になる前のチャップリン作品が好みらしく、本作「黄金狂時代」もとても楽しく鑑賞することができました。長すぎず短すぎない60分前後の収録時間のほうがこのような作風には合っているように感じます。 本作は脚本とプロット(構成)の作りこみが素晴らしく、最初から最後までキレイな線でつながっています。このきれいなライン上にバランス良くちりばめられたチャップリンのお家芸が本当に素敵で、どのシーンを切り取っても安心して見ていられます。余談ですが本作では「孤独な金鉱探しチャーリー」となっており、トランプ氏ではないのは結末のことを考えてあえて別人にしたのでしょうか。 オープニング、冬山にタキシードでやってくるチャーリーでまず笑ってしまう訳ですが、その後続くストーリーは予想に反してかなりリアルな流れです。直接描写は無いものの殺されたり遭難したりとシッカリ死人も出ます。しかし切迫した状況のハズが、続くロッジでのシチュエーションコメディでは定番のパターンでシッカリ笑わせます。靴をまるで魚のように上品に食べるシーンは映画史に残る名シーンでしょうw 街に降りてからロマンス路線に切り替わる流れもスムーズで、今回チャップリンの意中の相手は「ジョージア(ジョージア・ヘイル)」で、こちらも若干高飛車な人間性を嫌味なく絶妙な塩梅で演じていて本当に上手な女優さんでした。残念ながら他に目立った映画出演はないようです。 枕に忍ばせてあった彼女の写真と造花、再訪があると聞いて枕を破壊してまで喜ぶチャーリーが伏線となっていて、大晦日のシーンはかなり泣ける展開です。パンのダンスも素敵だし駄馬突入の流れも素晴らしかったので、、本作で最も素敵なシーンの一つだと思います。 その後の流れもスムーズかつスマートで、プロポーズしておいて本物の大金持ちになる流れはお見事です。途中挟まれているシーソーネタも退屈させず最後の最後までシッカリ楽しませてくれます。ラスト、金持ちになった事実を知らずにチャーリーをかばうジョージアも愛らしく、この流れから「ハッピーエンドですね?」「その通り、ハッピーエンドです!」のナレーションは心底名セリフ(脚本)でした。素晴らしい作品! [インターネット(字幕)] 9点(2024-11-07 15:50:21) |
7. チャーリー(1992)
私の個人的な感覚でいえばロバート・ダウニー・Jrといえば性格俳優の趣きが強く、そういった意味でもチャップリン役は彼に最も適した役だったのではないかと思います。実際彼の役へのなり切り具合はとても素晴らしいものでしたがストーリーがそれに見合っておらず、どうにも軽い作品に成り下がっています。喜劇俳優を描いているにもかかわらず大して面白くもなく、また心に響くような深い映画にもなっていません。そもそも論ですが世界で最も有名な喜劇俳優かつ監督、いわゆる偉大な芸術家であったチャップリンの一生をたった2時間半で描こうとしたのがそもそもの間違いで、ガンジーのようにせめて3時間、いや3時間半でも良かったかもしれません。 幼少期も青春期も青年期も全てが早歩き過ぎて、見ている私たち観客の心には何も響きません。ロリコン気味の彼の女性遍歴も何となく早歩きで軽く紹介しただけで終わっています。更に成功期から晩秋期においてはアンソニー・ホプキンス(ジョージ・ヘイドン記者)が妙に幅を利かせてきて要らぬ存在感を放ちます。意味深なセリフも目立っていて妙に映画が散漫になっているのです。何か哲学めいた雰囲気からのあのイメージビデオのようなラスト。他の方もおっしゃっている通り、キャップリンの人となりを知りたかったら「街の灯」を一本見るだけで十分に彼のことが理解できるでしょう。 2時間半の伝記映画にするにはあまりにも偉大すぎたチャップリンの紹介映画は、それを作ってしまった時点で蛇足以外の何物でもなかったという感想です。ただし、早歩きでざっと彼の人生を見渡すにはよく出来た作品ではありました。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-09-13 11:28:04)(良:1票) |
8. チャッピー
《ネタバレ》 この監督特有の問題として、導入部で結構深い流れを感じさせつつ、エピソードにまで話題が降りてきた途端に稚拙になってしまうという致命的な問題があります。今作でもオープニングの食いつきは非常に良いものの、スマートな導入部と豪華なキャストをもってしてもこの稚拙な感じが払拭できていません。中盤、悪の夫婦がお手本になる流れとイジメのシーケンスで一気に意味深な作品に昇華するかと思いきや、結局のところイジメもあくまで通過儀礼にすぎず、結局はママの元に戻って泣くという浅い表現に収束します。 掘り下げ不足という意味では、教養がありそうな一流プログラマーのディオン(デーヴ・パテール)のキャラクター性も浅く、何度も創造主という言葉を使う割りにその意味合いはあくまで表面的で、チャッピーに単純な善悪を教えて彼らのファーストコンタクトは終わってしまいます。そもそもディオンの行動原理に一貫性がなく、この人物の人となりがよく理解できません。ヒュー・ジャックマン(ヴィンセント)とシガニー・ウィーバー(ミシェル)はよく引き受けたなというほどのクズな役回りですが、ディオンを含め、Tetravaal社側の連中の考えていることもよく理解できないため、単純なストーリー展開なハズのストーリー自体が違和感の塊と化してしまうという残念な事態に陥っています。これらの点は本当に残念でした。 予想外に素晴らしかったのがニンジャとヨーランディで、彼ら夫婦のおかげで最後まで見ることができたといっても過言ではないほどです。悪の夫婦とチャッピーの物語はイキイキしていて妙に心に響くセリフが多かったです。コミカルなのに哲学も含んでいて、そしてアクションのほうも破綻なく綺麗にラストまで流れます。ただし、こちらのパートでは意識や記憶の転送というイミフな事をねじ込んであるので、子供っぽく感じる部分もありました。まあ、このラストに持っていきたかったのなら、ある意味仕方がない部分かなといった印象ですが。。 チャッピーの強盗がTVで放送されたり、チャッピーに車を盗ませる理屈や犬を例えにした話など、素晴らしいシーンも多かっただけに惜しい作品です。エリジウムや第9地区でも感じましたが、この監督さん、あまり難しいことを考えずヨーランディ的な視点で気軽に映画を作ったほうが突き抜けたエンタメが出来上がるのではないかと思われます。センスが良い監督さんなだけに本当に残念、作品としてはギリギリ及第点かなといったところです。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-07-30 17:11:31) |