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プロフィール
コメント数 421
性別 男性
ホームページ http://onomichi.exblog.jp/
年齢 55歳
自己紹介 作品を観ることは個人的な体験ですが、それをレビューし、文章にすることには普遍さを求めようと思っています。但し、作品を悪し様にすることはしません。作品に対しては、その恣意性の中から多様性を汲み取るようにし、常に中立であり、素直でありたいと思っています。

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1.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》 
胸糞悪い映画。であると同時に心に響くものがあった。 この映画の登場人物達は皆、其々に設定されたキャラクターの演者である。僕は劇中でんでん演じる村田の姿を観て、昔のお笑いスター誕生当時の彼のひとり芝居を思い出した。彼は村田という登場人物が「村田」というキャラクターを演じるように芝居をしてみせる。だから彼の演技は不自然な程に芝居がかっている。それは、前作『愛のむきだし』の安藤サクラに匹敵する怪演、黒沢あすか演じる愛子も同じである。そして主人公も。まるで自己暗示のように誰もが自らをキャラクターで縛り、演じてみせる。そして、彼らは死ぬ間際になってようやく本当の自分を晒そうとするのだが、そこで今度は、「内面の自分」というキャラクターを、弱さ<強さ>として自ら認識した「自分」というキャラクターをまたしても否応なく演じてしまう。いろんな意味でエグい映像であったが、本当にグロテスクだったのは、そういった人間の本質であり、村田が「内面のないやつはダメなんだ」と言って強がる、その自分の内面がマトリョーシカのようにどこまで行ってもキャラクターでしかない地獄のような空っぽさを曝け出したことであった。 そういう意味で胸糞悪く、心に残る映画であった。
[DVD(邦画)] 9点(2012-01-18 01:16:29)
2.  ツリー・オブ・ライフ 《ネタバレ》 
生きていくということ。生命の系譜について。その大切なことの全てがこの映画には詰まっている。創世から神の国に至る道筋を個人の意識(記憶)を含めたイメージとして映像化し得たこと。素晴らしいと感じた。これまでに経験したことのない種類の感動が確かにあった。旧約の世界。創世から人類の誕生。生命の樹。楽園からの追放。カインとアベル。ヨブの物語。そしてイエスの愛。それは、キリスト教世界のエッセンス、歴史を辿るイメージであると共に、現実的な主人公の家族を巡る物語に重なる。壮大且つちっぽけな物語。  "There are two ways through life. The way of nature and the way of grace. You have to choose which one you will follow."  映画の冒頭で語られる言葉であり、一見この映画の主題そのものを言い当てているように思える。「世俗に染まるか、神に委ねるか」と訳されていたが、意味合いとして、世俗とnatureは少し違うような気もするけど、natureとgraceがキリスト教世界における対概念であることは確かである。しかし、この映画から僕が受けた印象は、その対立ではなく、融合。対立を含む一体化である。映像によって一体化されるnatureとgrace。それは地球と生命の歴史を含んだ旧約から新約に至るキリスト教的な世界の系譜そのものであり、イエスの愛に至る道筋そのものであり、同時にそれは個人の歴史に重なり合う。その物語、その映像。究極にエッセンシャルな物語。だからこそ、この映画はすごい。  National Geographic的な映像の美しさがこの映画の特徴でもある。その中に恐竜のCGが挿入されていて、最初は??と思ったが、あの映像こそ、この映画の主題そのものに通じていたのだと今にして思う。それは、兄弟や父子の確執が途中決定的な亀裂を垣間見せながら、最終的に和解へと至る道筋を示唆していたと言えないだろうか。そういう伏線も感動的である。  この作品は、確かにこれまでの映画という概念を易々と超えている。映画を評価する客観的な従来型の指標があるとして、それには到底当てはまらないし、自らの知識と理解を超えた内容に対して「これは酷い」と思わずつぶやいてしまう気持ちも分からないではない。しかし、それはすごく勿体ないことだ。この映画が誘う世界、想像力が導く世界は、新しいイコンである。僕は、この作品をもう一度観たいと思った。
[映画館(字幕)] 10点(2011-08-16 08:42:09)(良:1票)
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