1. トラックス<TVM>(1998)
《ネタバレ》 こういった代物の場合「○○のリメイクとして考えると微妙だけど、映画単品として考えれば面白い」ってパターンもある訳ですが…… 残念ながら、映画単品として評価しても微妙な出来栄えでしたね。 全体的なクオリティは五十歩百歩なのに「地獄のデビル・トラック」(1986年)にあった「馬鹿々々しさ」「愛嬌」が失われてるというのが、何より残念。 爆発シーンも控えめになってるし、今回の籠城場所には拳銃が一つあるだけなので「人間と機械が戦ってる」感じも薄いしで、どうもテンションが上がらない。 陰鬱な作風と併せて考えるに「地獄のデビル・トラック」はアクション映画だったが、本作はホラー映画であると解釈する事も出来そうなんだけど、それにしては「一応拳銃も出てくる」「終盤には爆発シーンもある」って形なので、何か中途半端なんですよね。 元ネタとは違う魅力を出そうとしたのであれば、変に媚びるというか、元ネタにあった要素を少しだけ再現するような真似はせず、もっと「陰鬱なSFホラー映画」という方向性に振り切った作りにすべきだったと思います。 機械からのモールス信号を解読した訳でもないのに「やっと分かったぞ」「奴らが欲しいのは燃料なんだよ」って言い出す場面も不自然だったし、脚本も褒めるのが難しいんですよね。 元ネタにあった馬鹿々々しさが薄れてる分だけ「脚本の整合性」という意味ではアップしてるだろうと思ってたのに、全然そんな事は無かったというか…… 全体的に「長所は失われ、欠点はそのまま」って形に思えちゃって、非常に残念でした。 それでも、あえて良かった箇所を探すとしたら…… ロズウェル事件と絡めて、一応は「機械が暴走した理由」に説得力を与えようとしてる所。 「有害なガス」という要素で、危険度を高めてる所。 あと「防護服が勝手に動いて、殺人鬼のように襲ってくる場面」は中々感心させられたとか、そのくらいになっちゃいそう。 最後も「助けに来てくれたヘリは無人だった」=「主人公達は決して助かった訳ではない」と感じさせるバッドエンドで後味悪いし、どうも好みじゃないです。 ……とはいえ、能天気なハッピーエンドだった「地獄のデビル・トラック」とは真逆のオチなので、こちらの方が好きという方もいそうですよね。 「トラックス」の方が先に作られており、後から「地獄のデビル・トラック」が作られていたとしたら「真面目なSFホラー映画が、馬鹿映画にされてしまった」って印象になってたかも知れないですし。 やはり、こういうリメイク物は評価が難しいし、どうしても厳しい目で見ちゃうから不利だなって思わされた一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2022-02-02 11:57:38)(良:1票) |
2. ドメスティック・フィアー
《ネタバレ》 実に豪華な俳優陣。 メイン三人の「濃い顔」を見てるだけでもワクワクしちゃいましたね。 今となってはコメディ映画のイメージが強いヴィンス・ヴォーンが、悪人を演じているのも新鮮。 当時は「サイコ」(1998年)の印象が色濃く残っていたがゆえの配役かとも思えますが、元々彼って「エリートな気品」「どこか不気味で冷たい顔立ち」を備え持ってる人でもありますし、本作についても適役だったと思います。 スティーヴ・ブシェミも胡散臭くて、妙に憎めない「殺され役」を演じているし、ジョン・トラヴォルタ演じる「頼れるパパさん」っぷりも、文句無し。 子役のマット・オリアリーも可愛らしく、守ってあげたいと思えるような息子のダニーを好演してましたね。 こういったストーリーの場合、演じる「子供」の魅力如何で評価が変わってきますし、そこは文句無しに合格だったんじゃないかと。 BGMも雰囲気があって良かったし、89分と短く纏まってるのも好印象でした。 ……ただ、脚本と演出は凡庸としか思えず、褒めるのが難しいです。 一応良い所もあって「ダニーは不良少年なので、周りが中々『殺人の目撃』を信じてくれない」って展開には説得力ありましたし、そんな中で、真っ先に信じてくれたのが父親のフランクっていうのも、グッと来るものはあったんですけどね。 父子の逃亡劇になるのかと思いきや、親権争いの裁判になったりするのも、意外な展開ではありました。 でも正直、それ以上に粗が目についちゃって…… 「脚本と演出の不備を、演者の力で誤魔化してるだけ」って印象は拭えないです。 そもそもダニーから「人殺しが同じ家に住んでる」「しかもそれが、義理の父である」っていう恐怖や、緊迫感が伝わってこないのが致命的。 これに関しては、いくら子役が怖がった演技をしても「何も対抗手段を取らず義父の言いなりになってるだけのキャラクター」「だから追い詰められてる感じがしないし、恐怖が窺えない」って形になってる訳だから、脚本の責任だと思います。 フランクの現在の妻であるダイアンの影が薄いのや、ダニーの母が妊娠したのを活かせてない辺りも不満。 恐らくは「フランクの孤立感を高める」「ダニーの疎外感を強める」為の要素だったんでしょうけど、ダイアンは途中から出てこなくなるし、妊娠についても言及されなくなっちゃいますからね(一応、最後に流産したのが示唆されるけど、後味が悪くなっただけ) この手の「必要無い人物、要素が多い脚本」って、どうしても評価が低くなっちゃいます。 極め付けは終盤における「ライター自爆着火」の間抜けさで、これには本当ガッカリしちゃいました。 ダニーの母が夫を疑うキッカケにしても「夫の衣類からガソリンの匂いがするのに気付き、彼が犯人と疑う」って流れでも成立したと思うし、もっと脚本を煮詰めて欲しかったですね。 たとえシンプルなストーリーでも、細部を丁寧に作れば良作、あるいは傑作と呼べる品に仕上がったのでしょうが…… 残念ながら本作は、それに当てはまらない例に思えました。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2021-09-22 21:14:47)(良:1票) |
3. 10日間で男を上手にフル方法
《ネタバレ》 ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。 男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。 それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。 これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。 これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。 主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。 相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。 ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。 その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。 クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。 よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。 中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。 それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな? ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。 [DVD(吹替)] 7点(2020-02-20 14:20:10)(良:2票) |
4. 同居人/背中の微かな笑い声
《ネタバレ》 これ、元々はTV映画だったんですね。 確かに画面作りが安っぽいし、劇場で流す程のスケール感は無いかも知れませんが、個人的には中々楽しめました。 主人公である殺人鬼が「妊娠」の事実を聞かされてショックを受ける描写に「他人とは思えなくて」という台詞など「狙われた一家の婦人と、この主人公とは、実は母子である」という伏線が、キチンと張られているんですよね。 こういったタイプの映画だと、インパクト重視で唐突なドンデン返しオチを用意する事も多いだけに、本作には感心させられるものがありました。 幼児期に性的虐待を受けていたという過去に関しても(あぁ……冒頭に出てきた養父、如何にもそういう事やりそうな雰囲気だったなぁ)って思えて、妙に納得。 始まって五分程のエレベーターのシーンで「相手を陥れる為に、自分から壁に顔をぶつけて出血する主人公」を描き(コイツは危ない奴だ……)と、早めの段階で観客に分からせてくれるのも良かったです。 気になったのは、ドナルド・サザーランドの扱い。 エンドロールでも真っ先に表記されているし、実際自分も途中までは「被害者家族の中での主人公格」と認識していたんですけど、終わってみれば一家三人の中で、最も出番が少ないくらいだったのですよね。 しかも終盤に焼死して途中退場という形なのだから、何とも消化不良。 作中で一番の大物俳優であるだけに「撮影時間を確保出来ず、出番が少ない形になってしまった」「でも大物なので序盤に主役っぽく描き、エンドロールでも優遇して誤魔化しておいた」という大人の事情が窺えて、流石に興醒めしちゃいました。 後は、ラストに主人公が死んで直ぐに終わってしまう為、余韻もへったくれも無いのも困りものですね。 あそこは、もうちょっと時間を掛けて「殺人鬼とはいえ、色々と可哀想な奴だった……」と思わせるような、寂寥感のある描写が欲しかったところ。 そんな訳で、完成度が高いとは言い難いものがある本作。 でも、ウィリアム・マクナマラの端正な容姿、純真さと狂気とを内包させた眼差しは「異常殺人者の青年」としての魅力を、確かに感じさせてくれましたね。 彼の存在だけでも、一見の価値ありかと。 [ビデオ(吹替)] 5点(2017-11-29 04:04:20) |
5. DOOM ドゥーム
《ネタバレ》 王道の娯楽アクション映画ですね。 序盤に研究所の職員達が逃げ惑い、閉ざされるドアに挟まれて手首が千切れちゃうシーンなど、掴みも上々。 盲腸の手術痕によって、怪物が元人間だと気が付く件も良かったし、BFGを発見するシーンに関しては、原作未プレイな自分ですらテンション上がるものがありました。 「後ろにいるんだな?」って台詞も、お約束だけど面白かったです。 そして何といっても、クライマックスのFPS風演出が楽しい。 ゲームならではの臨場感を映画的手法として取り入れたという意味においても、非常に価値ある数分間だったんじゃないかな、と思います。 その一方で、ゲームとは違い「主人公が誰なのか分からない」という映画ならではの特徴を活かし「隊長役のザ・ロックではなく、カール・アーバンこそが真の主人公だった」というネタも盛り込んでいるのですが…… これに関しては、ちょっと微妙に思えてしまいましたね。 まず、種明かしを勿体ぶっているせいで衝撃が薄れている点が痛い。 唐突に豹変させるのではなく、段階を踏んで丁寧に「実は隊長は主役ではなく、悪役」と描写するのは誠実だと思いますが、ちょっとやり過ぎかと。 せめて、命令に従わない部下を殺した時点で種明かしをしていても良かった気がしますね。 その時点で観客としては「こいつがラスボスか」と分かっているのに、その後も隊長は味方側のままストーリーが進行し、最後になってようやく明確な敵となる形なので「そんなの、とっくに分かっていたよ」と白けてしまうんです。 今となっては悪役のザ・ロックって結構貴重だし、上手く描いてくれていたら、ラスボスとしての暴れっ振りを素直に楽しめたかも知れないなと思うと、非常に残念。 ストーリーの流れとしては「隊長に殺された同僚達の仇を討つ主人公」という形なのに、主人公と同僚が全然仲良く見えなかったというのも難点ですね。 唯一まともに交流し、絆が窺えたのはヒロイン格の双子の姉だけであり、彼女だけは死なずに共に生還する訳だから、敵を倒しても復讐のカタルシスなんて皆無なんです。 これは如何にも寂しいし、勿体無い。 そういう細かい部分を、もうちょっと何とかしてくれたら「傑作」と言えそうなポテンシャルは窺えただけに、惜しくなってしまう一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-09-12 21:31:10) |
6. トリプルヘッド・ジョーズ<OV>
《ネタバレ》 前作と同様、冒頭から出し惜しみせず鮫の姿を見せてくれるサービス精神がありがたい。 ただ、作風としてはかなり違う方向性というか、緊迫感と悲壮感を重視した作りになっていた気がしますね。 スローモーション演出や音楽に、自己犠牲展開が多い点などからしても、あたかも観客を感動させようとしているかのよう。 それが完全に失敗していたという訳では無いのですが……正直「三つ首の鮫が人を襲いまくる」という馬鹿々々しい設定とは、食い合わせが悪かったように思います。 もっと真面目な、普通の巨大鮫が出てくる映画でやった方が自然だったんじゃないかな、と。 海上にある研究施設という設定。 そして、救世主の如く颯爽と現れ、鮫を殺すのに成功したかと思われたダニー・トレホが、アッサリ食い殺されるシーンなどは「ディープ・ブルー」(1999年)を彷彿とさせてくれるし、所謂「馬鹿映画」としての愛嬌も有るには有るんですが、上述の通り「真面目さ」の比重が大きいので、ちょっと歪なんですよね。 下品な物言いになりますが、水着姿の巨乳お姉さん達が全然画面に映らない辺りも、前作に比べると如何にも寂しい。 「大量の餌を与えれば、首同士で共食いを始めるはず」という作戦にも無理があったと思いますし、それがアッサリ成功しちゃうオチに関しては、唖然茫然。 男女二人が何とか生き残るハッピーエンドという意味では前作と同じなのですが、本作では(倒し方に無理があるんじゃないかなぁ)と思えてしまい、素直に彼らの生還を喜べなかったです。 鮫の首を斬り落とすと、そこから新たな首が三つも生えてくるという設定やビジュアルなんかは、中々グロテスクで良かったと思いますし「沈みゆく観光船の中で、人々が襲われていくシーン」なんかは、手に汗握るものがあったのですけどね。 自分の場合「前作と同じ、明るくお馬鹿な鮫映画」を予想していたから、それが外れちゃった形だし「わりと真面目な鮫映画」を期待して観た人がいたとしても、終盤の強引な展開には落胆しちゃいそうだしで、どっちつかずな映画という印象が強いです。 観ていて退屈もしなかったし、ある程度の満足感は得られたのですが…… ちょっと期待していた内容とは違った一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-07-19 12:11:16)(良:2票) |
7. ドッジボール
《ネタバレ》 「時には一人で二人ゲットする事だってある」という台詞が伏線であった事に吃驚。 主人公が二人の美女と同時に付き合う事になったと見るべきか、あるいはヒロインが男女の恋人を両方ゲットしたと見るべきか、いずれにしても予想外な形のハッピーエンドで楽しかったです。 基本的にはコメディなのですが、努力→成長→勝利というスポーツ物の王道の魅力も押さえている為「ドッジボール大会で優勝する」という約束された結末まで、安心して観賞する事が出来ましたね。 途中「コーチの死」「決勝戦の前日に主人公が戦意を喪失してしまう」などの、やや暗い展開が挟まれたとしても、最後は笑顔で終わるんだろうなと予測出来る形。 「ウルトラアメリカン教育映像」の悪趣味さとか、日本人チームが小馬鹿にされている感じ、ラストの「爆乳ダンス」披露なんかは観ていて鼻白むものがありましたけど、不愉快になるという程じゃなかったです。 それより一番悲しかったのは、ランス・アームストロングが「逆境にぶつかり挫折しかけた主人公に、勇気を与える者」として出演している事ですね。 偶然なのか皮肉なのかは不明だけど、作中で「選手のドーピングが発覚し、敵チームが失格になる」なんて展開まであったものだから、本当にやりきれない。 映画自体に罪は無いんですけど、ここだけは観ていて憂鬱になっちゃいました。 でも、基本的には「観ていて笑顔になる」要素の方が、ずっと大きかったと思いますね。 ヒロインが剛速球を投げられる理由を「ソフトボールやってたの」と一言で片付けちゃう大雑把さなんかは、実に気持ち良いです。 主人公がスポーツジムの経営破綻を受け入れて「一晩中飲み明かそう」と皆にビール缶を投げ配るシーンなんかも、妙にお気に入り。 気弱なオーウェンと、濃過ぎる顔のビッチスキーとのロマンスも良かったし、ジャスティンが片想いのチアリーダーにキスするシーンなんかも好きですね。 作中で結ばれたカップルが三組もいて、ドッジボールの大会を通し、多くの人が幸せになっているという、優しい雰囲気が伝わってきました。 大好きな俳優であるベン・スティラーも、憎たらしい悪役を楽し気に演じてくれていましたね。 彼が敗者となる結末に関しても、あんまり可哀想にはならないというか「こいつなら一度は挫折しても再起出来るんじゃないか」と思わせるようなパワーがあった為、ハッピーエンドにも水を差していない。 海賊ことスティーブも「とうとう宝物を見つけた」という形で、優勝の喜びに華を添えてくれているのですが……彼の扱いに関しては、ちょっと中途半端な印象も受けました。 決勝戦を欠場するなら「スティーブの活躍のお蔭で勝てた」という試合が、途中に一つくらいはあっても良かったかも。 あと、サドンデスで主人公が目隠しする展開に関しては、伏線が弱かった気もします。 特訓シーンでも一応目隠しはしているんだけど、さらっと流されていたし、目隠しする姿を見てチームメイトも「何をやっているんだ?」と言い出すしで、観客の自分としても、少し戸惑っちゃいました。 あそこは「目隠しして踊れるようになる事だ」などの、亡きコーチの台詞をオーバーラップさせてくれていたら、もっと感動出来ていた気がします。 こうして文章にしてみると「良かった部分」と同じくらい「気になった部分」も多くなっちゃう訳ですが、後者を「悪かった部分」と感じさせない愛嬌を備えているのが、この作品の特長なのでしょうね。 定期的に何度も観返したくなるような、親しみが湧いてくる映画でありました。 [DVD(吹替)] 7点(2017-07-11 19:51:01)(良:2票) |
8. 12ラウンド
《ネタバレ》 良くも悪くも古風でオーソドックスな作りの為 (これが八十年代の作品だったら「スピード」の元ネタとして評価されたんだろうなぁ……) なんて、つい考えてしまいましたね。 バスにエレベーターにヘリコプターと、様々な舞台装置を駆使して楽しませてくれるし、基本的には好みな作風のはずなのですが、この「既視感」は如何ともし難いものがありました。 主演にレスリングのスター選手であるジョン・シナを迎えており、身体を張ったアクションを見せてくれるのも嬉しいんだけど、基本的には「高所からの飛び降り」「飛び移り」という形であり、対人戦の要素が薄いというのも、何だか寂しい。 (こういうの好きだよ。好きなんだけど……もうちょっと、ココをこうして欲しかったなぁ)っていう、そんな歯痒さがあるんですよね。 この手の作品ではお約束の「実は目的は復讐ではなく金だった」オチに関しても(結局金だったのかよ!)と、落胆する気持ちが大きかったです。 一応、犯人としては「愛する女の仇を取りたいという想いは本物。でも、それはそれとして金も欲しい」という考えだった可能性もあるんですが、どっちにしても恰好悪いって話ですからね。 殆ど全編に亘って、主人公と犯人との戦いを描いた話である訳だから、もう少し犯人側にも魅力を感じさせてもらいたかったところ。 監督はレニー・ハーリンという大物ですし、演出には安定感があって、決して退屈はしなかったのですけどね。 序盤にてラブラブだった主人公とヒロインが、一年後には喧嘩しがちになっており、それがラストにて再び強く結ばれるというストーリーラインも、娯楽映画の王道を踏襲していたと思います。 それでも、あと一歩、自分が「好き」だと言える領域まで踏み込んできてくれなかった……そんな、もどかしくなる映画でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2017-07-06 19:21:45)(良:1票) |
9. 塔の上のラプンツェル
《ネタバレ》 基本的には女性向けのストーリーなのですが、所謂「王子様」役のフリンを語り部に配し、男性でも抵抗無く観られるバランスとしている事に感心。 名作童話が原作である為、どうしても「古き良きテイスト」を重視しそうなものなのに、演出から若々しい感性が伝わってくるのも良かったですね。 序盤にラプンツェルが唄う場面はスタイリッシュな魅力があったし、とうとう外に出た後に「はしゃぐ」→「落ち込む」を繰り返すギャグも分かり易く、好印象。 ラプンツェルの長髪をアクションの道具として活用している辺りも上手かったし、動きだけでなく「四十五回勝負」「三回勝負」という形で言葉の笑いも取り入れているし、感動的な自己犠牲もあるしで、本当に色んな面白さが詰め込まれているのですよね。 「女性客」「男性客」「恋愛が見たい人」「アクションが見たい人」「笑いたい人」「泣きたい人」と、幅広い観客層を意識して作られた、丁寧な品であると感じました。 中でも自分のお気に入りは、酒場で盗賊達が唄い出すシーン。 「命奪うより心奪いたい」 「こんな暮らししていても、夢見る心は未だ無くしてない」 といった具合に、歌詞も素敵でしたし、何より一見すると悪人にしか思えない盗賊が、実は良い人というか「悪人でも夢を持っている」という意外性を秘めていたのが、本当に好みでしたね。 劇中でも一番の名場面じゃないかな、と思います。 その一方で、終盤の展開は少し不満というか、予定調和過ぎるように感じたので、そこは残念。 上述の盗賊達が、それぞれ夢を叶えてくれるハッピーエンドだったのは、文句無しで素晴らしいと思うのですが、その直前の「フリンの自己犠牲がラプンツェルの涙によって覆される」「結局、ゴーデルは単なる悪人であり、育ての親としての情など無かった」という展開のせいで、興醒めしてしまったんですよね。 ここら辺を、もうちょっと自然に仕上げてくれたら、皆笑顔でハッピーエンドを迎える結末を、更に楽しむ事が出来たかも。 そんな具合に「本質的には女性向け」「終盤の展開が好みではない」などの要因があるにも拘らず、しっかり面白かったのだから、やはり質の高い作品なのでしょうね。 世の中には、色んな客層を意識し過ぎて、色々と盛り込み過ぎて、破綻してしまう映画もありますが…… 本作は、そういった類の中でも成功例としてカウントされそうです。 [DVD(吹替)] 6点(2017-05-15 07:07:10)(良:3票) |
10. ドッグ・ソルジャー(2002)
《ネタバレ》 冒頭にて「純銀のペーパーナイフ」が登場する時点で「じゃあ狼男が出てくるって事か」と観客に理解させてくれる、非常に親切な映画。 でも、こういった分かり易い籠城系ホラーは好みのジャンルのはずなのに、どうも最後までノリ切れないまま終わってしまった気がしますね。 恋愛要素を排した硬派なストーリーに、ユーモアの効いた会話、CGではなくあえて着ぐるみに拘った特撮部分など、文章にしてみれば褒めたくなるような要素ばかりなのに、何故楽しめなかったのか、自分でも不思議。 あえて理由を考えてみるなら、同監督の「ディセント」に比べ、全体的にカメラワークや画作りが粗削りで、洗練されていないように思えた辺りがネックになっているのでしょうか。 それと「分かり易い」を通り越して「分かり易過ぎる」脚本な辺りも気になります。 なんというか、フリが丁寧過ぎて 「どうせ狼男をペーパーナイフで倒すんでしょう?」 「このヒロインって絶対に敵側だよね?」 「これだけ伏線張ってるって事は、サッカーの試合結果も分かるんでしょう?」 と思ってしまうし、事実その通りになるのだから、全く意外性が無い。 特にペーパーナイフの件は深刻で、こんな軽い小ネタみたいな代物は、映画の中盤で窮地を脱するくらいの使い方しかしないだろうと思っていたら、とっておきの隠しネタみたいにラストで使われるものだから(そんな大層なネタじゃないでしょうに……)と、ガッカリしてしまったんです。 ヒロインが勿体ぶって正体を現したと思ったら、ヘッドショット一発で即退場しちゃう辺りも、何だか拍子抜け。 サッカーの試合結果ネタにしたって「狼男事件よりもサッカーの試合の方が記事が大きい」っていう皮肉さを出したかったとは思うんだけど、そこを写真無しで文字だけでスコアを表示しているから、写真付きの狼男事件の記事の方がスペースは小さくても重要に扱われているようにも見えちゃって、どうにもチグハグなんですよね。 その辺りに、作り手との「好みの違い」「感性の壁」があったように思えます。 狼に絡んだ童話の「赤ずきん」や「三匹の子豚」を連想させる台詞がある辺りはニヤリとさせられたし、主人公が何とか生き残るハッピーエンドに近い作りなのも好み。 低予算ながらも「面白い映画を撮ろう!」という意気込みは伝わってくる、好ましいタイプの映画であるだけに、楽しめなかった事が残念な一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2017-03-12 08:33:20)(良:1票) |
11. ドライヴ(2011)
《ネタバレ》 「男が抱いているヒーロー願望を、そのまま映画にしましたよ」という感じですね。 理由なんて全く語られないけど、とにかく主人公は強い。 幼い少年には無邪気に懐かれて、人妻と許されぬ恋に落ちたりする。 観ていて恥ずかしさも覚えるのだけど、それでも作り手のセンスの良さや、主演俳優の恰好良さに痺れる思いの方が強かったです。 派手なカーチェイスを繰り広げる訳ではなく、警察の目から巧みに車体を隠しながら逃げおおせるという冒頭のシーンが、特に素晴らしい。 「追いかけっこ」の興奮とは違う「かくれんぼ」の緊張感を味わえたように思えます。 それだけに、中盤にて車同士で火花を散らすような「普通のカーチェイス」の場面もあった事は(あっ、結局そっちもやっちゃうの?)という落胆もあったりしたのですが……まぁ、そちらはそちらで、やはり魅力的だったし「タイプの異なるカーチェイスを両方味わえる、お得な映画」と考えたいところ。 ちょっと気になるのは「恰好良い主人公」を意識し過ぎたあまりか、敵側の恐ろしさが欠けているように思えた事ですね。 丁寧に敵側の目線での物語も描いている為「底知れない不気味さ」なんてものとは無縁だし、単純に人数も少ないものだから、作中で「強敵と立ち向かう主人公の悲壮感」を醸し出す演出がなされていても、今一つ説得力が感じられなかったのです。 ここの部分は、少々バランスの取り方を間違えたのではないかな、と。 逆に「上手いなぁ」と感じたのは、エロティックな要素の挟み方。 バイオレンスな内容である以上、性的な場面が全く存在しないというのは不自然になってしまいそうだし、ある程度は必要になってくると思うのですが、この映画では、それを「敵地に乗り込んだ際に、そこに裸の女が沢山いる」って形でクリアしているのです。 こういった場合、ついつい安易に「人妻であるヒロインと許されぬ関係を結んでしまうベッドシーン」なんて形で性的な要素を満たそうとするものですが、そこを踏み止まって、あくまでもプラトニックな恋愛描写に留めてくれた事が、本当に嬉しかったですね。 夜の車内で二人きりになって、そっと手を握るだけでも充分に「背徳感」「許されぬ逢瀬」という雰囲気が伝わってきたのだから、これはもう大成功だったかと。 ヒロインの息子との交流シーンにて、普段は滅多に笑顔を見せぬ主人公が笑ってみせる描写を挟む辺りも、ベタだけど効果的で良かったと思います。 ベタといえば、そもそも「裏稼業のプロフェッショナルな主人公が、美女や子供と交流する事によって癒され、彼らを守ろうと戦う」というストーリーライン自体、ベタで陳腐で王道な代物なんですよね。 である以上「何度も使われてきた魅力的な骨組みである」という長所と「もう観客は見飽きているマンネリな内容」という短所が混在している訳ですが、この映画に関しては、前者の方を色濃く感じる事が出来ました。 ラストシーンも、これまたお約束の「主人公の生死は曖昧にしておきます」「お好みの後日談を想像して下さい」という、観客に委ねる形の結末だったのですが、音楽の使い方やカメラワークが上手いせいか、あんまり「ズルい」って感じはしませんでした。 自分としては「お腹を刺されたけど、病院に行けば治るんじゃない?」「とりあえず一番の脅威は排除したし、残党が襲ってきても主人公なら大丈夫でしょう」「あの奥さんと子供とも、きっと再会して三人で幸せになれるよ」なんていう、楽天的な未来を想像する訳だけど、それも有り得そうな気がするんです。 バッドエンドとは程遠い、不思議な爽やかさと明るさが感じられる終わり方だったからこそ、そう思う事が出来た訳で、非常に後味が良い。 ダメ男の現実逃避用とも言われてしまいそうな、そんな感じの代物なのですが…… やっぱり好きですね、こういう映画。 [DVD(字幕)] 7点(2017-02-20 21:44:39)(良:4票) |
12. ドラゴンハート
《ネタバレ》 王道のファンタジー映画として、綺麗に纏まっていますね。 何よりもドラゴンに存在感があって、彼が動き、喋り、飛ぶ姿を見ているだけでも楽しい。 ただ、主人公の設定が「凄腕のドラゴンハンター」というわりに、全然凄みが感じられないというか、ハッキリ言うなら強く見えないせいで、今一つ没頭出来なかったように思えます。 血生臭い発想ですが、彼がドレイコと出会う前の段階「凄腕のハンターとして各地のドラゴンを狩りまくる」話の方が面白くなるんじゃないか、なんてついつい考えてしまいました。 ストーリーの流れとしては「ドレイコと組んで村人相手に詐欺行為を働くほどに堕落していた主人公が、本物の騎士になる」という形でカタルシスを生み出そうとしているのは分かるのですが、その「詐欺行為」のパートが非常に楽しそうで、あんまり悪事を働いているようには見えなかった辺りも残念。 最後にドレイコが死ぬ自己犠牲展開になるのも、事前に「死んだら星座になりたい」と語られた通り、星座になってハッピーエンドというのが分かり切っており、完全に予定調和の内であるように思えて、ノリ切れませんでしたね。 この辺りは「王道の魅力」と褒める事も「先が読める退屈な内容」と貶す事も出来そうな、難しい部分。 そもそもドレイコが「心臓を分け与えて瀕死の王子を救う」理由が「善行を積めば死後に星座になれるから」というのだから、本作は非常に宗教的な話なのでしょうね。 その辺りが、信仰心の薄い自分の心には響かなかったのかも。 視覚的には十分に楽しめるし、キャラクター造形なども悪くない。 ハッピーエンドなので後味も良い。 色々と魅力的な要素は揃っているだけに、肌に合わない事が勿体無く思えた映画でした。 [DVD(字幕)] 5点(2017-01-30 03:37:17)(良:1票) |
13. トレジャー・プラネット
《ネタバレ》 基本的な設定を拝借しただけの別物かと思いきや、予想以上に「宝島」のストーリーを忠実になぞっていた事に驚かされました。 主人公のジムが青年に近い外見となっており、感情移入しやすくなっている事。 そしてシルバーがサイボーグという設定の為、武器をアタッチメントする描写が楽しかったり「目に油を差し過ぎたようだ」という台詞にホロリとさせられたりした辺りは、良かったですね。 その一方で、船長を女性に変えた事に関しては「女っ気の無さを改善する」という以上の意義は窺えず、最後に天文学者と結ばれる顛末に関しても予定調和で驚きも無かった為、ちょっぴり残念。 原作小説を既読の為、仕方無い事ではあるのですが、ストーリーとしては王道そのもの、全て決められたレールの上を走っているかのような印象を受けてしまい、少々退屈さを覚えたりもしましたね。 失望したり、落胆したりする事は無い代わりに、大きな興奮も味わえない感じ。 そんな中でも、欲深なシルバーが宝物を諦めて、息子のように可愛がっていたジムを助ける事を選ぶ場面に関しては、とても良かったと思います。 両者が絆を育む描写が丁寧であっただけに「そう来なくっちゃ!」と、声を出して歓迎したくなるような展開。 別れのシーンにて、ジムとシルバーが抱擁を交わす姿にも、涙腺を刺激されるものがありました。 「宝島」最大の魅力といえば、やはりシルバーの存在に尽きると思っているので、本作の扱いに関しては、大いに満足。 ジムとの交流を経て、段々と父性が芽生えていき、悪党から足を洗いそうになるも、最後の最後で善人にはなりきれないまま退場するという、その独特のキャラクター性が、しっかりと表現されていたと思います。 そういった具合に、原作と同じような魅力を秘めているからこそ (もし「宝島」のストーリーを全く知らない状態で、この作品を観ていたら、もっと感動出来ていたかも知れないな……) と思うと、何とも勿体無い気持ちになる。 そんな一品でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2016-09-29 23:15:43) |
14. ドラフト・デイ
《ネタバレ》 アメフトには詳しくない自分ですが、それでもジョー・モンタナやジョン・エルウェイの名前が出てきたり「ザ・ドライブ」の映像が流れたりすると、興奮するものがありましたね。 本作は、そんなスター選手の再来になれそうなくらいに将来有望なクォーターバックの指名権を獲得する為、GMである主人公が悪戦苦闘するというストーリー。 ドラフト全体の一位指名権を手に入れる為「三年分のドラフト一巡指名権」を手放してみせる冒頭の決断にも驚かされましたが、終盤にはそれを凌駕する程の「魔法の如き交渉術」を見せてもらう形となり、気持ちの良いドンデン返しを味わえました。 基本的に劇中では情報収集と交渉を重ねるだけで、派手なアクションは殆ど出て来ないのですが、それでも飽きずに最後まで観られるのだから、これは凄い事です。 恋愛模様やら、家族との感動エピソードやらも絡めている点に関しては、個人的には然程楽しめず (ドラフトの駆け引きオンリーに絞って欲しかったなぁ……) と思わされたりもしたのですが、それらに長尺を割いている訳でもない為、何とか許容出来る範囲内。 今になって振り返れば、そういった諸々の要素も、ハッピーエンド色を強める効果があって、良かったんじゃないかと思えてきます。 上述の一位指名候補に対し、疑問符を抱く最大のキッカケが「誕生日会にチームメイトが誰も来ていない事」だった辺りも面白い。 こういった些細な情報から「こいつはプロで通用するか否か」を見極めていく流れが、良質なミステリーのように知的昂奮を誘う形となっているのですよね。 最終的に、主人公は元々自チームに所属しているクォーターバックの能力、人格を再評価して、ドラフト指名は他のポジションに移す事となる訳ですが、そうなるに至るまでの描写も、実に丁寧。 「作戦書の最終ページに張り付けておいた百ドル札」のエピソードなんかは、特に良かったですね。 それまでの積み重ねも併せ (未知の新人よりも、このクォーターバックに投げさせて欲しい!) と思わされるからこそ、ドラフト指名の瞬間に痛快さがある訳で、本当に上手いなぁ……と感心させられます。 不満点というか、ちょっと気になった点としては、作中における主人公のドラフト戦略が「いくらなんでも絶賛され過ぎな事」が挙げられるでしょうか。 全体の流れを把握している観客ならともかく、断片的な情報しか知らないはずの地元のファンまで完全に掌を返して騒いでいるのは、少しやり過ぎな気がしましたね。 特に、成功の代償として「三年間の二巡目指名権」を失っている事が、終盤では意図的に無視されているような辺りが、どうも引っ掛かります。 また、上述の一位指名候補は、人格に問題ありとして指名を回避したはずなのに、暴行事件を起こした過去があるランニングバックを指名する辺りも、ちょっと一貫性を感じられなくて、残念。 クォーターバックの対比において「真に優れたプレイヤーは、人格的にも優れている」というメッセージ性があり、一位指名したラインバッカーも家族想いの良い奴だという描写があったのだから、暴行事件に関しても「あの時はイカれてた」で済まさず「実は冤罪だった」とか、もっと明確なフォローが欲しかったところ。 そして何といっても物足りないのは、このドラフトの結果が成功だったのか失敗だったのか、答え合わせが行われるシーズン開幕と同時に、映画が終わってしまう点ですね。 これはもう、実に残酷。 あそこで終わるからこそ「ドラフト」の映画として完成されるのだという事は分かりますが、だからといって納得出来るものでもありません。 無粋かも知れませんが、エンドロールにて「それぞれの選手達が、どんな活躍を果たしたのか」を、テロップで表示して欲しかったなぁ……と思わされました。 そして願わくば、チームがスーパーボウルを制し、勝利の喜びに包まれる瞬間まで、是非ともお付き合いさせてもらいたかったところです。 [DVD(字幕)] 7点(2016-08-31 15:04:11) |
15. トッツィー
《ネタバレ》 久々に再見してみたのですが、主人公が初めて女装するシーンまでに、二十分も掛かる事に驚かされました。 もっと早い段階というか、全編に亘って女装していたような印象があったのは、それだけ「ドロシー・マイケルズ」の印象が強かったという事なのでしょうね。 映画そのものに関しては、現代の目線からすると正直ノンビリし過ぎているというか、若干退屈。 これに関しては「主人公が女装する映画」というだけでも十分ショッキングだった当時と、それくらいの事では驚いたりしない現代の違いも影響しているのかも知れません。 一番引っ掛かったのが、ドロシーの正体が男性であると見破った人物が一人もおらず、周りが完璧に騙されているという点。 そりゃあ女装としては声や仕草まで洗練されていて見事ではありますが、だからといって「どこからどう見ても女」というレベルではなく「ん? よく見たら男?」と気付くのが自然な容貌に思えるのですよね。 だから「何時、周りに男とバレるんだろう?」と思っていたのに、結局最後まで騙し切って、自分から正体を明かしたという流れには、どうしても「そんな馬鹿な……」と感じてしまい、今一つカタルシスを得られず仕舞い。 作り手側が本気で「この女装ならば決してバレない」という自信を持って、堂々とストーリーを展開させているのか、それとも「バレるはずなのにバレない」というシュールな可笑しみを狙っていたのか、どちらなのか伝わって来なくて、中途半端な印象となってしまいました。 そんな具合に、物語の大筋には不満も残ってしまったのですが、作中のあちこちに散りばめられたユーモラスな場面だけでも、充分に楽しむ事が出来ましたね。 主人公がドンドン女装にのめり込み「ドロシーは僕より頭がいい」「髪をソフトにするかな、ドロシーには似合う」などといった具合に、自分の理想の女性像をドロシーに重ね合わせているような件も、非常に興味深い。 最も愉快だったのが、片想いの女性にキスしようとして、レズビアンだと誤解されてしまう場面。 自分は正常だと主張し、その証拠に「服を脱げば分かるわ」と口走ってしまい、ますます警戒されてしまう流れなんて、とっても面白かったです。 無事に「男女」が結ばれて、ハッピーエンドで終わってくれる点も含め、安心して観賞出来る一品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2016-08-22 22:07:14) |
16. 22ジャンプストリート
《ネタバレ》 シリーズ第二弾は、前作以上にメタフィクションな笑いが増えており、それが好みの分かれそうなところですね。 自分としては「ジャンプストリートの復活なんて誰も期待していなかったし、絶対大コケすると思っていた」「23ジャンプストリートマンション建設中」などのワードの数々に、クスッとさせられて、存分に楽しむ事が出来ました。 何といっても一番笑ったのは「もう予算が無い!」の件。 作中の捜査費用を指した言葉なのですが、それが映画の予算とも掛かっているのが分かる作りとなっているのですよね。 カーチェイスにて、主人公二人が「物を壊さないように」と怯えながら車を走らせたり、実際に物が壊れるシーンはカメラに映し出さずに「また壊しちゃった」という台詞だけで済ませたりと、本当に予算が足りないから仕方なくそうしたかのような演出が、もう可笑しくって仕方なかったです。 高校で仲良くなった三人組が、今度は同僚として登場するサプライズも嬉しかったですね。 ジェンコとの間に育まれた友情は偽りではなかったと分かり、じんわり胸に沁みるものがありました。 その一方で、シュミットと恋仲になったはずの前作ヒロインが登場しないのは残念でしたが、今作で新たに登場したヒロインの設定が面白過ぎたのだから、文句は言えません。 出会ったその日にベッドインまで済ませるなんて、初心なシュミットらしくないなぁ……と思っていたら、それが伏線だったのだから、もう脱帽。 「ヒロインが実は上司の娘さんだった」という展開自体は、ありふれたものかも知れませんが、その魅せ方が抜群に巧かったと思いますね。 二度目の観賞時には、シュミットと上司が笑顔でハイタッチするシーンにて、ついつい頬が緩んでしまいました。 互いに壁を感じている主人公達を、分割画面にて表現し、それがクライマックスにて一つの画面に繋がる演出なんかも良かったです。 また、前作を踏まえて(おおっ、今度はシュミットがジェンコを庇って撃たれるのか……)と思っていたら、やっぱりジェンコの方が撃たれてしまい「なんで俺ばっかり!」という叫びに繋がる辺りも面白い。 黒幕だった女の子も、悪役でありながら妙に憎めないキャラクターだったりしたので、次回作で登場するのかどうかも、気になるところです。 前作同様に、主人公コンビは聖人君子という訳ではなく、今作でも子供に対して石を投げて追い返す場面など、多少眉を顰めさせられる部分もありましたが、何とか許容範囲内。 クライマックスの「カッコいいことを言え」「カッコいいこと!」という掛け合いを目にした際には、もう二人の事が大好きになっており、映画が終わってしまうのが寂しく思えましたね。 そんな気持ちの中で始まったエンドロールの「ジャンプストリートシリーズ続編予告集」とも言うべき演出は、素晴らしいの一言。 契約で揉めて一時的に主役交代したり、原作ドラマの重要人物が登場したり、倒したはずの悪役が復活したりと、作り手も好き勝手にアイディアをぶち込んでみせている様子が、観ている側としても、非常に面白かったです。 個人的好みとしては、金髪美女が登場する「フライトアカデミー編」授業内容が気になる「マジック学校編」辺りに興味津々。 観賞後「一番観てみたいのは、どの続編?」と誰かと語り合いたくなるような、楽しい余韻が何時までも続いてくれる映画でした。 [DVD(吹替)] 9点(2016-06-13 22:02:26)(良:2票) |
17. 21ジャンプストリート
《ネタバレ》 ジョニー・デップ主演で、彼の出世作となったドラマを映画化した一品。 作中にて、ドラマ版主人公の未来の姿と思しき役どころで、ジョニー・デップ本人が出演しており、彼のファンには嬉しい驚きを提供してくれていますね。 残念ながら自分はドラマの方は未見なのですが、それでも情報として「元々はジョニー・デップが主演していた作品」という事は承知だった為、登場シーンでは大いにテンションが上がりました。 ただ、理由は何故か分からないのですが、彼の登場以降やたらと血が流れたり、目を背けたくなるような描写が続いたりして、せっかく盛り上がった気持ちに水を差されるような思いもありましたね。 撃ち合いのシーンなのだから、血が出るのは当たり前といえば当たり前なのですが、それまでは全くそんな素振りが無かったもので、少し戸惑いました。 今となっては、あの「急に血生臭い銃撃戦になる」という切り替えも一種のギャグなのかな、と思えてきますが、真相や如何に。 そんな訳で、クライマックスにて「あれ?」と違和感を覚えたりもしたのですが、全体的には楽しめる時間の方が、ずっと長かったですね。 何といっても「もう一度高校生に戻って、やり直したい」という願望を、疑似的に満たしてくれる作りとなっているのが心憎い。 例えば、両親が旅行に出掛けた隙に、家でパーティーを行うシーン。 二人が笑いながらアレコレと準備している様が、本当に楽しそうで、観ているこちらまでテンションが上がって来るのですよね。 「酒はどうする?」「偽のID無いよな……」と、惚けた会話を交わす辺りなんかも、お気に入り。 「子供の振りをしているけど、本当は大人」というズルい立場だからこその喜びを、上手く表現していたように思えます。 その一方で、過去に囚われる事を良しとする作風ではなく、きちんと作中で前向きな答えを出して終わる辺りも、好みのバランスでした。 他にも「スーパーマンII/冒険篇」に登場したゾッド将軍が、作中で妙にリスペクトされているのも可笑しかったし、やたらと扇情的な言動の女教師なんかも、魅惑的なアクセントになっていましたね。 特に後者に関しては、もっと出番を増やして欲しいと思ったくらい。 「俺は麻薬捜査官だ」「お前の盾になっても良い」などの台詞が、伏線として機能している辺りも心地良かったです。 人気の高さゆえに続編も制作されて、三作目では「メン・イン・ブラック」とのコラボも決定したという本シリーズ。 この一作目の終り方も、続編に直接繋がるような形となっており、観賞後もテンションの高さを持続させてくれたのが嬉しかったですね。 楽しい映画でした。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-06-13 06:33:22)(良:1票) |
18. トランスポーター
《ネタバレ》 これは度胆を抜かれた映画ですね。 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」でお馴染みの顔だったジェイソン・ステイサム。 彼が主演の映画という事で、軽い気持ちで観賞してみたら、予想を遥かに上回るアクション濃度。 特に終盤の上半身裸になっての格闘シーンは圧巻で 「えっ? この人こんなに強かったの!?」 と、画面の中で躍動する彼の姿に、呆気に取られ、次いで笑みが込み上げてきたのを覚えています。 序盤に繰り広げられるストーリーや、主人公とヒロインの設定に関しては 「あぁ、リュック・ベッソンだなぁ……」 としか思えず、完全に油断していただけに、今作で明かされた「強さ」というステイサムの強烈な個性に、痺れてしまいました。 今は日本でも気軽に購入出来るようになったジュースのオレンジーナを、作中でヒロインに飲ませてあげるシーンなんかも印象深いですね。 ラストも囚われの人々を開放するのと同時に、スパっと切れ味良く終わるのも好印象。 エンディング曲も好みでしたし、気持ちの良い時間を過ごせた一品でした。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-12 08:04:04)(良:1票) |
19. トランスポーター イグニション
《ネタバレ》 てっきりストーリーも第一作をなぞる形かと思っていたので、全く新しいストーリーが繰り広げられる事に吃驚。 とはいえ、脚本はリュック・ベッソンが担当している為か「あぁ、またこの展開か」と思ってしまうくらいに、観ていて安心感がありましたね。 謎のブロンド美女集団なんて如何にもといった感じで、相変わらずだなぁと嬉しくなってしまいます。 主人公フランクに関しては、クールでスタイリッシュな印象。 前シリーズのジェイソン・ステイサムに比べると、紅い唇が印象的なエド・スクラインは黒スーツが良く似合っており、冒頭のアクションにはエレガントさすら漂わせているのが、独特の魅力だと思えます。 一方で、あのスーツ姿とは不釣り合いな野性味、何をやらかすか分からない危なさが薄れているように感じられるという、後発ならではの弱みもあるかと。 それと、やはり目立つのは父親の存在ですね。 「これは孤独なプロフェッショナルという主人公のタイプには似合わない、恐らくは途中で殺されて復讐を誓う展開なのだろうな……」 という安易な予想を裏切ってくれたのは、素直に嬉しい。 序盤から「親父さんの職業に秘密があるな」と勘付かせて、そちらの期待は裏切らずに、元スパイという設定が中盤で判明する辺りなどは、好みのバランスでした。 ところが一転、終盤になると少し期待外れというか、テンションが下がる展開に。 まず、親父さんのキャラクターが目立ち過ぎた結果、主人公フランクの存在感が薄まってしまった事。 そしてストーリーの中核を担うのがヒロインのアンナであると判明し、フランクが単なる「アンナを手助けする相棒ポジション」にしか思えなくなってしまったのには困りました。 一番の難点は、父親が誘拐されてしまう流れを二度続けてやられた事で、これには思わず「またかよ!」と声が出てしまいましたね。 それにラスボスは主人公と因縁のあるキャラクターなのだし、アンナの手助けによって決着が付く展開にするのではなく、実力で気持ち良く勝って欲しかったところです。 恐らくはシリーズ第一作にて、ヒロインが拳銃で主人公の危機を救う結末へのオマージュなのでしょうが、それならラスボスを倒した後、満身創痍で端役に追い詰められた後に救われる展開でも良かったかな、と。 上記のように不満点もあったりするのですが、そういうものだと予め知った上で、割り切って観れば、主人公達の親子関係は微笑ましいものがありましたし、充分に楽しめる内容だと思います。 特に、カーアクションの面白さは折り紙付き。 路上の消火栓を破壊して道路を水浸しにする事によって追っ手を足止めする件や、空港でのジャンプなどは見応えがありました。 今回は「事前に期待した内容とは違っていた」という意味で、今一つ盛り上がれませんでしたが、また時間を置いて再見し、その魅力を確かめてみたくなる。 そんな一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2016-04-12 07:37:21) |
20. 東京島
《ネタバレ》 無人島が舞台で、しかも男達の中に女性が一人だけ、これは絶対に面白いはず! と期待して観た品なのですが…… 「面白くなかった」「期待外れだった」とまでは言わないけれど、物足りないものがありました。 元ネタであろうアナタハン事件に比べると「女を巡って男達が殺し合いする」という殺伐さもあまり感じられず、どこかノンビリした空気が全編に渡って漂っているんですよね。 それが心地良い、お気楽漂流ものとして楽しめる、という側面もあるのでしょうが、自分としては肩透かし。 主人公となる女性が「サバイバル」していると感じさせる場面が、冒頭で蛇を捕まえる部分くらいしかなかったのも残念でした。 ラスト、島を脱出するのを諦めた男達が「王子」を崇めて、平和に暮らしている姿なんかは、皮肉が利いていて良かったですね。 これはこれで一つの幸せの形なのだなぁ、と思わされたりもしました。 それに対し、脱出に成功した主人公の女性は、窪塚洋介演じるワタナベと結ばれた……のかな? だとしたら、何とも少女漫画的な顛末。 「口が悪くて何かと自分に突っかかってくるけど、本当は自分の事が好きだったイケメン」だなんて、如何にもといった感じですからね。 女性として感情移入して観たら、また違った感想になるかも。 ハッピーエンドという意味では文句の付けどころが無いし、観客が求めるものに応えようとした映画ではあった、と思います。 [DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 12:26:56) |