1. 逃走迷路
《ネタバレ》 “Saboteur”『破壊活動員』。“Sabotageは”妨害工作や破壊活動を意味するんだけど、日本語ではサボる=怠けるって意味合いが強いから、別な邦題にしたのかと。あとヒッチコックの『サボタージュ』('36)って作品があるため、ややこしいから区別の意味もあるんでしょう。 '80年代の中盤に、確か金曜ロードショーとかで放送されたと思います。当時ヒッチコックの作品はよく流れていましたが、私が小中学生の頃、ゴールデンタイムに昔のモノクロ映画を流したのは、本作とローマの休日くらいしか記憶にありません。それだけ有名というか、ヒッチコックの中でも重要な作品なんだと思っていましたが…そんな訳でもないのかな?あの放送は、どのような意図があったんでしょうかね?番組スタッフの“推し”だったんでしょうか?ちなみに私のモノクロ映画デビュー作です。思い返せば、工場火災で友人が焼け死ぬシーンでさえ怖かった記憶があります。当時私は何歳だったんだろう?相当幼かったのかなぁ?でもテンポが良くて面白かったなぁ。 初視聴から20年以上経って、BSで観た時も、内容全然覚えてなかったけど楽しめました。手錠をしたままのバリーが盲目の紳士に助けられるシーンはハラハラしたし、全てを見通してバリーを助けることにしたこと、サーカスの見世物にされている人達が彼らを助けることを選んだのもホロリとさせられます。要所要所で出てくるパットの看板もシャレが効いています。 劇場での映画のセリフとシンクロした銃撃戦や、自由の女神の追跡シーンもインパクトが大きいですね。自由の女神、案外小さいような気もしますが、実物大のセットなんでしょうかね?頭の部分の展望室、あの広さだと現地に行っても混んでて登れなさそう。腕の先まで登れるとは驚き。 ヒッチコックの初期作品って、アイデアがたくさん詰まってて、それを1作品に惜しげもなく注ぎ込んでる感じがして、大好きです。 [地上波(吹替)] 7点(2025-01-27 11:14:37) |
2. 東京ゴッドファーザーズ
《ネタバレ》 今年のクリスマス映画に選びました。ホームレスとして一緒に生活する3人。ホームレスになったそれぞれの事情…というのが、ざっくり自分の身勝手さなんですね。それが、拾った赤ん坊を助けたい一心で次々と奇跡が起きていく。 赤ん坊を拾った時から、ペンキ缶が当たりそうになる、転倒バイクに轢かれそうになる…ってわかりやすい奇跡が起きます。簡単な奇跡から巡り巡っての奇跡まで、いろんな奇跡が詰め込まれた温かい映画でした。 この映画を観たいと思ったキッカケが、春から放送されてた朝ドラ『オードリー』の再放送を観て、主演の岡本綾に光るものを感じたからです。『続けていれば凄い女優さんになったろうに、早々に引退しちゃったんだな』って。そんな彼女が恐らく最初で最後の声優をしたのが本作でした。オードリーの彼女からは想像も付かない、不貞腐れた声と独特なイントネーションがとても良かったです。 全身厚手のフル装備だからよく解らなかったけど、以前はもっとぽっちゃりしてたミユキ。父を刺した回想が面白い。横たわる父の後ろでその事件を取り上げるテレビのワイドショー。「血なんかこれで拭けばいいじゃん」美由紀からのプレゼントだけど、服装から季節は夏だし、さすがにマフラーは使わないだろう。電車で偶然会った時、父はちゃんとマフラーしてました。両親がハナたちに代わり、家が段ボールハウスになり、今の痩せたミユキになってる。この境界線があいまいな夢の表現が実に今監督らしい。 察するに夏からホームレスになったミユキ。暗殺者にさらわれた際、ここにきて自分が売られる恐怖を感じます。それまでギンに拾われたために、闇落ちせずにノビノビ育ってたのも奇跡ですね。 父の愛情を感じられなかった美由紀が、赤ん坊をさらった幸子に、必死に親元に返すよう説得する言葉が、全部自分に跳ね返ってます。 ギンが助けた行倒れ爺さんがギンと(パッと見)同じ格好してる=将来の自分。娘を難病で亡くし妻を失った医者=ギンが自分語りするときの架空の自分。 そしてギャンブル好きで身を滅ぼした泰男=過去の自分。泰男を殴って言う言葉が、そのまんま過去の自分に言ってます。そんな過去の自分(泰男)が自殺しようとする幸子に「生まれ変わって、もう一度やり直そう」と叫ぶ。奇跡的に娘に会えたギンは、今後どうするんでしょうか? ホームレスが本当のホーム(家族)を再発見する奇跡の話。だけどハナちゃんどうなるんだろ?ギンが妻のもとに帰ったらそれこそ独りぼっちです。「泣いた赤鬼」の青鬼になってしまいます。なのできっとギンとハナちゃんは一緒に暮らすのかな。 2億円当選の宝くじ。やりすぎな気もするけど“赤ん坊の命はそれ以上の価値がある”って意味かなぁ? 最後、ゴッドファーザーズ(名付け親たち)のタイトル回収も巧いです。あの子が何て名前になるか一発で解る優しさ。年末にお酒を飲んで回らないアタマには、こういうのが丁度いいんだよ。ホント。 本作のモトになった西部劇『三人の名付け親』も観てみたいですね。 [DVD(邦画)] 8点(2024-12-29 11:47:08) |
3. トラック野郎 御意見無用
《ネタバレ》 子供の頃、近所の玩具屋さんのお爺さん店主が、大きなデコトラのプラモデルを見せてくれました。「見ててごらん」とお店の照明消してスイッチ入れると、トラックに仕込まれた沢山の装飾電球がチカチカ点灯する、それは綺麗なプラモデルでした。…当時LEDなんて無かった時代、あれはムギ球で光らせてたのかな?今となっては謎です。 さてトラック野郎。土曜の昼とかに流れてた気がしますが、子供の頃は観せてもらえませんでした。だってエロいシーンがあるんだもん。ヤクザ映画の人が主役だし、想像では、ヤクザがデコトラ乗って殺し合いとかするんだろう…と思っていました。実際観ると人情ものでした。当時は東映の看板作品として、松竹の寅さんと『トラトラ対決』なんてしてたんですね。 人情ものではありますが、まぁムチャクチャです。スピード違反に過積載。仕事終わりはソープでくつろぐ。ソープ嬢へのお土産は盗んだスイカ。'75年8月と言えば松竹のトラは『メロン騒動』の回。奇遇ですね。食堂では殴り合いの大喧嘩。この食堂が『くるまや』。当時はまだ『とらや』だけど、これまた奇遇ですね。やもめのジョナサンは家に帰ると子だくさん。更にもう一人産まれて、身寄りのない子も養子にしちゃおうなんて、ホントムチャクチャです。でもこのムチャクチャ加減が、当時の日本のパワーを感じさせます。後先考えないエネルギッシュさ。若者が老後のためにコツコツ積立NISAなんかしてる今と大違い。 汚い便所からマドンナが出てきてキラキラ星が輝くなんて、ベタだけど笑っちゃいます。桃次郎の付け焼き刃な紳士的な振る舞いも微笑ましいです。何よりオッサン二人が褌一丁でキャッキャ・ウフフと戯れる姿が可愛くて。桃もジョナサンも、トラック降りて、履き物をバンザイして掲げてから放り投げるのがシンクロしてて、また可愛いのさ。 惚れた女のために、愛車をボロボロの泥だらけにして送り届ける姿は、ちょっとホロリと来ます。1作品に色々詰め込み過ぎな気もしますが、面白かったなぁ、続きも観てみたいなぁ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2024-11-09 11:07:30) |
4. 東京物語
《ネタバレ》 やっぱり、オリジナルを観てからリメイクを観るべきだなぁと、大いに思いました。リメイク版で大筋は覚えていたので、その通りに進んでいくシナリオに、何か映画を楽しむというより、確認作業をしているような、そんな“もったいない事したなぁ”って、気持ちになってしまいました。70年も昔のモノクロ作品ですが、デジタルリマスターの恩恵か、映像もクリアで音声も聞き取りやすかったです。なので、オリジナルから観たほうが、いいよ。 小津監督といえば、セリフの際のカメラ目線。突然こっちに語りかけてくる演出は、ふとセリフを喋る役者を観ているような、映画として逆効果に感じるんじゃないかと思っていましたが、いやいや、映画の登場人物が、映画の世界にいる自分に語りかけてくるような、そんな効果があったのかと、今さらながら気が付きました。そしてこちらも小津監督が多用するローアングル(じゃなくってローポジションだそうです)の、床から足先まで入るカメラポジション。その少し引いた画は、まるで部屋の隅っこで寝そべって、登場人物をぼんやり観ているような錯覚を感じさせます。そして登場人物のカメラ目線に切り替わる。フッと『あ、私に話してたのか』なんて思いながら、物語の中に自然に入りこませてくれるのです。 技術的な事は詳しくないので、あくまで私の主観ですが、リメイク作では感じ取れなかった部分でした。カラーだったりSEだったり映像の奥行きだったり、新しいものは情報量が多すぎて気が付かなかったのかもしれません。 上京した高齢の両親と、東京で家族を持って、新しい生活を始めている長男と長女。この冷たく感じる子どもたちの対応と、次男の嫁の紀子の対応の違いがとても印象深いです。 戦争が終わって8年。復興から発展へ、新しい時代の象徴と言える、生まれ変わった東京。その時代の流れに身を任せる東京の子供たちと、昔と変わらぬのんびりとした生活を送っていた両親。両親にとって子供はいつまでも子供です。それを肌身で感じている同居の次女と、戦争で夫を失い、時間が止まったままの紀子。両親と彼女たちは、復興・発展のために日本が“あの時代に置いていったもの”のように感じました。 紀子と京子の本音の会話がとても心に残ります。京子の親への思いを受け止めながら、嫌でも前を向かなければいけない時代だと、まるで自分に言い聞かせるように語る紀子。そんな自分を「ずるい」と、父に心の内を言う紀子。その言葉を受けて、妻の残した懐中時計を渡す父。戦争で時間が止まったままだった紀子に、亡き夫の両親が、前に進むよう後押しをしているように感じました。 東京物語というタイトル。そんなに、東京か?と思って観ていましたが、なるほど、東京=日本の未来だったんですね。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2024-09-16 12:10:42)(良:2票) |
5. 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2007)
《ネタバレ》 オカンにゲロシャワー、「私にも写せます(当時のCM)」からのフライパン一撃。こういう路線か。当時ブームだった'60年代ノスタルジーとちょっとオーバーなコメディの融合。少年時代は炭鉱町の再現度も素晴らしく見応えがありました。 オカンも樹木希林と雰囲気の似た女優さんだなと思っていたら、内田也哉子だったのか、劇中のオカンがスゴく違和感なくお年を召したので、ちょっと不思議な感じで良かったです。 ボクが大人になるにつれ、平栗くんのモヒカン辺りからオーバーなコメディ色は減っていき、徐々に観ていて辛い闘病ドラマになっていきます。自由奔放なオトンから離れて、女手一つでボクを育て、内職、料理屋と働いたお金で仕送りするオカン。ボクの誘いでアッサリと東京に出てきてしまうオカン。地元に未練とか無かったんだろうか?精一杯頑張って生きてきて、なんであんなに苦しんで死んでいかなければならないんだろう。ベッドの上で苦しむ小さな身体を観て、恐らく多くの人が自分の母親とダブらせて観てしまうことでしょう。そして順番からして先に逝く母親に、いま、どれだけ親孝行ができるだろう?と考えるでしょうね。 タイトルの東京タワーの意味が、ちょっと解りにくかったです。オカンとボクは、いつか東京タワーに登ろうと約束をします。それほど重要なイベントでもなかったと思いますが、ミズエと別れたためか、オカンの生前は果たされることはなかったようです。東京タワーは、行こうと思えばいつでも行けたけど、結局行けず終いになったことの象徴でしょうか。後悔のない生き方とは、思いつく限りの、そんな些細なやり残しを、一つ一つ果たしていくことの積み重ねなのかも知れません。 最後にボクがオトンに「仏像の絵がほしい」というけど、オトンは「描き上がったらの、もうちょっとや」と。そういえばオトン、船の模型ももう少しで完成するのに、やめてしまっていましたね。8mm撮っても映写機がない。そして未完成の東京タワーとの写真。東京に弾き飛ばされ、地方に出戻ったオトン。敢えて色々をやり残すことで、未練は多くても後悔の少ない生き方をしていたのかも知れません。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-09-05 21:10:00) |
6. 特攻大作戦
《ネタバレ》 “The Dirty Dozen”『汚らわしい12人(≒1ダースの囚人兵)』。私がレビューを書くようになってから既に2回もNHK-BSで放送されていることから、結構支持されている映画なんだと思う。リー・マービンにチャールズ・ブロンソン。更にドナルド・サザーランドやら刑事コジャックやらエアウルフのドミニクやら、内容的にも'60年代版のエクスペンダブルズって感じでなかなか豪華。 何より『めぐり逢えたら』の男が泣ける映画として紹介されてたのが印象深くて、変に期待してしまいました。 考え方も罪歴もバラバラの死刑囚たちが、少佐のもと、一つにまとまって大きな作戦に取り組む。少佐への反発が徐々に信頼に代わり、軍事演習で、いけ好かない大佐に一泡吹かせる前半部分は、痛快な戦争スポ根モノって感じで楽しめます。 問題は後半、作戦本番ですね。ヘミネスが台詞のみの説明であっさり死んで、戦争の無情さを感じさせます。そこまでは良いとして、そもそも潜入作戦なのにウラディスロー以外ドイツ語が喋れないってダメでしょ。本部もよくゴーサイン出したよ。 なかなか引っ掛からない登りロープ。抜ける屋根。マゴットたちは米兵の格好のまま建物に侵入(せめて撃ち殺したドイツ兵の服着たらどうだ?)。マゴットの暴走で作戦失敗、からの少佐たちも作戦中に米軍服に着替え(これ必要か?味方の誤射を防ぐため?)。何ともグズグズである。 それに負けじとドイツ軍の対応もグズグズ。女の悲鳴がしても銃声がしても2階に確認に行かない杜撰さ。ロクな抵抗をせずあっさり地下室に閉じ込められる将校と御婦人たち…なにコレ? やはり、主人公側が女性も含む無抵抗な人間を殺害する結末は、いくら戦争とは言え、とてもモヤモヤします。ここで彼らの目的を再確認しましょう。 彼らの作戦は、ノルマンディー上陸作戦に合わせた将校の殺害と後方撹乱。そのターゲットはドイツ国防軍の将校。つまり憎きナチスではなく、どこの国にもいる普通の軍人さん達です。 目的地は軍の保養所…日本で言えばKKRの宿泊施設みたいな場所ですね。フランス領の施設だから、建物の詳細な模型も作れたんでしょう。戦地から離れてる田舎の施設だから、通信施設や弾薬は置いてあっても(他に安全に置ける場所がない)、国防軍の中でも練度の高い兵隊は配備されていません。 Dデイ直前だし、当時のドイツは人材不足。あの施設に居たのは再任官された退役将校と、非戦闘員の文官、動員された予備役兵たちじゃないでしょうか(想像ですよ)?それなら、最初の銃声からドイツ軍の抵抗が少なかった理由も納得。遅れてやって来たどこかの基地の増援部隊が、軍隊らしい普通の抵抗をするのも納得。あのパーティは、退役将校に国のために再度働いてもらう、決起集会のようなものでしょう。言わばKKRで開かれる、奥様同伴の退職者の慰安行事。 そんな、居ても居なくても戦局に影響のない、国防軍の退役将校(想像)をたくさん殺すのが、彼ら囚人兵の仕事です。まさに汚れ仕事ですね。戦局に影響はなくても、ガソリンで無慈悲に焼き殺されたとあっては、ドイツ兵は戦意喪失したことでしょう。 アメリカ軍ももし世論に非難されても『少佐が囚人兵を使って勝手にやったこと』と切り捨てたでしょうし、少佐も『ジェファーソン(黒人)が勝手に暴走した不幸な事故』にしたかもしれません。運良く作戦は成功し、囚人兵の大半は死にました。ウラディスローは恩赦を受けますが、どこかの戦場で口封じされたんじゃないかなぁ…原作読んでないから全部想像ですけど。 詰まらなくはないんだけど、なんか、めぐり逢えたらで詳細に紹介された意味も、BSでよく放送される意味も、この作品がどんな人達に支持されてるのかも、よく解らない映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-03-20 15:35:49) |
7. 遠い夜明け
《ネタバレ》 “Cry Freedom”『自由を叫ぶ』。邦題も良いタイトルです。 社会科の授業で、アパルトヘイト政策なんてものが、この世の中にまだ存在していることに驚いたっけ。大学時代、ピーター・ガブリエルにハマり、ビコの存在を知ったんだわ。そしてこの映画の7年後に政策が撤廃されたのにも驚いたっけ。ただこの映画、私は相当怖い映画だと思っていました。実話系の人種差別モノ=人を人と思わない殺人描写がいっぱい。そんな先入観から、鑑賞したのは今回初です。 私はこの映画の、前段に興味が湧きました。貧しい家庭に産まれたビコが、如何にして反アパルトヘイトに目覚め、活動の中心人物になっていったのか。それとアパルトヘイト真っ只中の南アフリカ生まれのウッズが、如何にして黒人に対し中立なスタンスを取ることが出来たのか。人間は弱いもので、自分が優位な立場でいる以上、自分を貶めてまで他者を救う行動は取りにくい。まして差別対象の黒人に対し、白人のウッズはどうしてあそこまで戦えたのか。 前半のドキュメント映画な展開から、ビコが殺され、今度はウッズがビコと同じ監視される立場になります。後半は家族の脱出劇に変わります。原作の著者自身の物語だけに、映画的にスリリングな展開です。 時系列的に最初の方に出てくるべきソウェト蜂起は、映画の最後の方、ウッズの回想として出てきます。蜂起の映像にはビコもウッズも出てこないけど、映画的にはそれぞれの当時の感情や動きなどを描いてもらえると、2人の人物像がより解りやすかったかと思います。 この映画で妙に印象に残ったのがクルーガー長官の歴史の話。「1652年にこの地に白人が来て、荒れ地を耕し町を作った。この地を植民地にしたのではなく築き上げたんだ。それをビコは手放せという。」確かに、300年以上掛けて、白人が住みやすい街に作り上げたのが、今の南アフリカ。白人が1994年まで、時代錯誤なアパルトヘイト政策を続けた根深い理由が、そこにあるんだなぁ。 この映画を観て平等の大切さ、差別される側から観た人種差別の理不尽さを学ぶとともに、昨今の過剰なポリコレ風潮には嫌悪感を抱いてしまう私って、根底ではこの映画の時代の白人と大差無いのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-26 23:42:36) |
8. ドランク・モンキー/酔拳
《ネタバレ》 “Drunken Master”『大酒飲みの達人』。ジャッキーのカンフー映画黄金期の作品はほとんど好きだけど、一番完成度が高いのがこの酔拳でしょうか?いろんな格闘技がある中で、酔っ払いの動作で敵と闘うって発想が凄い。ダンスのような酔拳の動きは小学生にも真似しやすく、カンフーの組手ごっこは、プロレスごっこみたく痛くないからか、男子はみんなやってましたね。 殺し屋の鉄心良いですよね。生意気な飛鴻をさんざん痛めつけるけど、殺したりしないオトナな対応。たぶん初めて見る酔八仙に対し、封じ技の無影拳で対抗するのは殺しのプロらしくてカッコいい。 あと棒のオッサンが結構好きです。相手が蘇と聞いて帰ろうとするトコが最高。腹から出血してたけど、生きていてほしいなぁ。 今改めて見ると、ストーリーは結構雑です。街で見かけた可愛い娘が従姉妹、叔母さんは拳法の達人だけど2人の出番は前半のみ。個性の強い師範代(ディーン・セキ)も出番は最初の方だけ。街で喧嘩したキザ男の父親が飛鴻のお父さんの商売敵だったけど、特に掘り下げなし。殺し屋鉄心を倒して…商売敵とのその後は?飛鴻とお父さんのその後は? なんかツギハギだらけの話でモヤモヤしそうだけど、一切ご心配なく。華麗なカンフーの動き。だんだんランクアップする敵。観たこともない修行方法。合間に入るコメディ要素。CGの無い時代、人間の身体能力のと華麗な組み手が、観ていて飽きさせない、観ていて疑問を感じさせない、観ていて退屈させない、すごく前向きで明るくてパワフルな、素晴らしい娯楽映画だと思います。 やっぱりジャッキー映画は石丸さんの吹替版が良いよね。カーーーンフーージョーーーーnデデッテーーーーン♪ [地上波(吹替)] 10点(2023-05-20 20:18:46) |
9. ドライビング Miss デイジー
《ネタバレ》 “Driving Miss Daisy”『人使いの荒いデイジーさん』。アカデミー作品賞受賞作。 当時映画に興味を持ったばかりの私は、アカデミー作品賞とは『その年の数ある(アメリカ)映画の中で優勝を勝ち取った映画』が受賞するモンだってイメージを持っていました。優勝って、つまり一番すごい作品が勝ち取るモンだと。すごい問題作。すごい壮大な作品。すごい話題作… なのに、俳優もテーマも地味なこの作品が、大きな大事件が起きるわけでもないこの映画が、しかも前年のレインマンとちょっぴりイメージが被るロードムービーが、何で優勝したんだ??何だろ?アカデミー作品賞って?って、謎が膨らむきっかけとなった作品です。 この映画、歳を重ねる度に好きになっていきます。たった99分の作品なのに、デイジーとホークの半生が、ゆったりとした心地よい時間とともに流れていきます。のちのち笑い話になったであろうサケの缶詰事件。デイジーのツンデレっぷりが可愛らしいクリスマスの贈り物。恐怖、アラバマの路上で一人ぼっち。安らかな日常生活のまま穏やかに迎えたアデイラの死。老後のドラマとしてこのくらいのハプニング、事件が丁度いい、これくらいが良い。 デイジーは食卓で食事をし、ホークはキッチンで食事をする。それが主従関係。アラバマの道中もデイジーは車内、ホークは外。それが彼らの立場。人種の壁が生んだ立場。明らかな差別を受ける黒人と、目に見えぬ差別を受けるユダヤ人。二人の間に徐々に生まれる友情。ホークがデイジーと同じテーブルに座り、パイを食べさせるのに要した時間は30年。 このゆっくり、ゆったりした映画、人種間の見えない壁。生まれた時から知らずに出来ていた壁。それが壊れていくのに必要な時間を解りやすく観せてくれる。30年だって。 SDGs?2030年までに実現可能?ハァ?だよね。 あ、私にとってアカデミー作品賞の基準って、今でも謎です。多くの受賞作品を観るたび、むしろ謎が深まってます。 [ビデオ(字幕)] 8点(2023-03-28 22:17:29) |
10. トランスポーター2
《ネタバレ》 そうそう、これこれ。トランスポーターと言えばこのアウディの印象が強かったから、最初にコッチを観たのかなぁ? オープニングから車強盗相手にアクション。今回の任務が子供の送り迎えって、前作で我々に植え付けられたフランクのキャラクターとのギャップがしっかり活きている。 下着姿で二丁拳銃(マシンガン?)を撃ちまくるローラがインパクト大。スプリンクラーで水浸しなんて必要性のないセクシーなアクション含め、いかにもリュック・ベッソン好みなキャラだなぁ。 カーアクションとカンフーアクションは前作同様。そしてCGアクションが増えたかな。車で回転ジャンプして爆弾削ぎ落とすとか、ビルから落下中に薬瓶キャッチとか、最後の飛行機とか。フランクの超人感が増した印象。 相変わらず安心して楽しめる娯楽アクションなんだけど、最後あまり印象になかったんだよ。今回改めて観て、ローラがあんなふうに死んだとか忘れてるし。で、サミットであっちこっちに広がったであろう殺人ウイルスって、どう解決したんだろう?ビリングス家が助かったのは解ったけど、どうやってジャンニの身体から解毒剤出したんだろう?? そんな事考えず一件落着!って楽しむ映画。 [地上波(吹替)] 5点(2023-03-21 21:59:07) |
11. ドライヴ(2011)
《ネタバレ》 “Drive”『運転する』『運ぶ』以外に『追いやる・至らせる』『人をこき使う』なんて意味もあるそう。 主人公はウォルター・ヒルの『ザ・ドライバー』みたく名前がないようだけど、劇中シャノンが「キッド」って呼んでたから、それが名前だと思ってたわ。設定のアッサリした'80年代風の映画を、'90年代の味付けで撮ったような、そんな2011年の映画。 キャリー・マリガン演じるアイリーンの美しさが光る。最初のエレベーターで何気にすれ違うところから美しい。キッドにはアイリーンがどう輝いて見えているかがよくわかる撮り方。 スーパーで見かける時の、最初ベニッシオを観せない撮り方も上手い。『あぁ、子持ちなのか』ってキッドの心の声が聞こえそう。水を汲む時の鏡越しのアイリーンの美しさ。からのスタンダードとベニッシオのツーショット写真。ここも『あぁ、旦那居るのか』って心の声が。そして「刑務所」って聞いた時も。キッドの気持ちがとてもわかり易く書かれている。 親子と幸せな日々を過ごしてからの出所。スタンダードがクズであってほしかった。キッドとアイリーンの仲を割く邪魔者であってほしかった。けど、人生の再出発を考えてる良いヤツで困ってしまう。このやり場のないキッドの感情が手に取る様にわかってしまう撮り方の上手さ。だからエレベーターのキスシーンからの暴力が活きる。理解できる。エレベーターのすれ違いで始まり、エレベーターの見つめ合いで終わる。 なので電話は蛇足だった気がする。けど、キッドの気持ちを考えると、伝えてしまうんだろうな。映画らしくカッコいい主人公じゃないキッドの人間臭さがエンディング曲“A Real Hero”に繋がる演出も上手い。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-03-21 10:01:39) |
12. トランスポーター
《ネタバレ》 “The Transporter”『運び屋』。あれれ、トランスポーターと言うとアウディの印象が強かったけど、1作めはBMWなんだ。そしてBMWの退場早っ!全編パリッとしたスーツを着たステイサムが、高級外車を転がすイメージだったんだけど、そういうの序盤だけだったわ。 強盗団に銃を付きつけられてるのに、自分のルールをタテに言う事聞かない肝の座りっぷり。初っ端からかなり個性を全面に打ち出せていて面白い。 …と思いきやアッサリ自分のルール破ってんの。強盗のドライバーを引き受けるくらいなら、過去に生きた人間を運ぶ依頼だって受けたことあるだろうに。 そもそもあんな、もぞもぞ動けるバッグにライを詰め込む意味が不明。睡眠薬で眠らせておくとか、あれやこれや他に方法もあったろうに。 なんて些細なツッコミを入れていったらキリがないけど、個人的には、前半の“クールでスタイリッシュな運び屋”が格好良かっただけに、後半が良くある“罪のない人のために悪と戦うヒーロー”になるのが、せっかくの個性を殺してしまってるように思えてしまったかな。 日本人から見ても可愛いアジア人スー・チー。カーアクションにカンフーアクションてんこ盛り。93分と丁度良い上映時間と相まって、テレビの深夜放送で流れてたら、ついつい最後まで観てしまう安心設計の娯楽作品。 [地上波(吹替)] 6点(2023-03-12 20:50:58) |
13. 突破口!
《ネタバレ》 - Charley Varrick - “チャーリー・ヴァリック”主人公の名前タイトルで来たか、そう来たか。 タイトル・イメージからコミカルな強盗映画かと思いきや、ガチなクライムサスペンスでした。 アンドリュー・ロビンソンがダーティ・ハリーのさそりそのまんまの顔で出てたからもう嬉しくって。インパクトある顔立ちだよなぁ。 ちょっと欲求不満気味で妄想癖のある隣のお婆さんが、シャツをはだけて自分に向かって走ってくるハーマンに、ちょっと身の危険を感じてる仕草が可愛い。 あとアルバート・ポップウェルもチラッと出てて、ダーティ・ハリーよろしくアッサリ伸されて、そっちも嬉しかった。 のどかなオープニングからいきなりの銀行強盗。序盤から仲間が撃たれる展開に、レザボア・ドッグスが思い浮かんだ。 予定外にマフィアのカネを手に入れて…って展開にシンプル・プランを思い浮かべた。 なんかこの映画、後のいろんなサスペンス映画にちぃちょい影響を与えてる気がする。 計画がどんどん狂っていく後手後手のチャーリーに対し、追い掛けるモリーの容赦無さと嗅覚の鋭さ。 今までの作風と不釣り合いな、緊張感が有るようでないような、不思議な飛行機と車のチェイス。 最後の爆破で綺麗に絡め取る抜け目の無さ。歯医者のカルテすり替えがここで活きてくるなんて。 一件落着と、緊張の糸が解れたところで車のセルモーター。最後までハラハラさせる見事な終わり方。 こういうテンポが良くてアイデア勝負の映画って、古さを感じさせない面白さがあるよ。凄く良かった。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-11-13 18:26:46) |
14. TRICK トリック 劇場版 ラストステージ
《ネタバレ》 TVシリーズの1作目をリアルタイムで観られたのは、本当に幸運だったと思っています。金曜の深夜、さぁ寝ようか…って時にたまたま流れていた新番組。ぼんやり観ていたら目が離せなくなって…こんな夜中にこんな凄いドラマ流して良いのか?って。 TVドラマのDVDセットを買ったのは、後にも先にもTRICKとTRICK2だけ。私にとって本当に特別な作品でした。 TRICK劇場版の出来がイマイチで、金曜ナイトドラマからゴールデン帯に進出した第3シーズンで、ガッツ石まっ虫とかって悪ノリキャラが出た時点でTRICK熱が冷めて、パタッと観なくなりました。 前置きが長くなりましたが、劇場版4作目にして最後の最後との事で、自分の中でもこの作品群に決着を付ける意味で、劇場に足を運びました。 まぁ酷い出来です。第3シーズン以降の悪ノリ・テイストはそのまま。マンネリ化したドラマパート。面白くないギャグ。ノルマでもあるのか?ってくらいに、質より量と言わんばかりに、1分に1回ペースでコテコテのつまらないギャグを入れてくる。稀に初期の頃みたいな面白いギャグもあるんだけど、つまらないギャグのラッシュに埋没してしまうのが残念に思います。 ギャグとドラマのバランスが逆転しているから、奈緒子も上田や矢部に対して最初からタメ口・呼び捨て。いや基本は“さん付け”で呼ぶから、ギャグパートの“呼び捨て”が活きるんでしょ。 劇場版になるとどうしても人がどんどん死んで、重たい空気になるのは相変わらずです。ただ、そもそもこのドラマは、本物の霊能力者に殺された父の真相を追い求める奈緒子の物語。結構重いんです。菅井きんと母之泉って、視聴者に1作目エピソード1を意識させる演出が、本当に最後の作品として創ってるんだなぁって思わせます。 最後の最後で芸能界を引退した前原さん登場。やっぱTRICKは菊池でも秋葉でもなく、石原なんだと再認識。瀬田くんも出てほしかったな。大病される前の元気な野際陽子さんが観られるのも、今思うと嬉しいです。 上田次郎は、あのキャラのままで現在まで続けても、何ら違和感を感じないキャラクターですね。矢部謙三も。 だけど山田奈緒子は…仲間由紀恵も本作では34歳。マンネリドラマだけに、20歳の頃から成長してないキャラを演じ続けるのは、彼女もきっと苦しかったと思います。気になったのが南国が舞台なのに奈緒子は、昼夜問わず終始長袖&ロングスカート。単に日焼けできないのか、肌が弱いのか、自分の代表作の最後だから、頑張ってくれたんだと思います。でも最後は半袖でしたね、ひと安心。 フーディーニで始まりフーディーニで終わる。「上田さん、最後に一つ賭けをしましょう・・・そしたら、餃子と寿司を死ぬほど奢ってくれ!」死を前に上田に見せた、奈緒子の寂しそうな精一杯の笑顔。 「生まれた時から、笑ったり、冗談を言ったりすることが苦手だった…練習しても上手くいかない。」第一話で一番最初の奈緒子の自己紹介。そんな彼女の14年ぶんの笑顔に、もう涙が止まらない。そして鬼束ちひろの神曲『月光』。ギャグパートにクスリとも笑わなかった劇場の、あっちこっちからすすり泣きが…みんな照喜名みたいにTRICKが大好きな人たちなんだな。だってみんな、公開初日の最終上映に来るくらいなんだもの。 単にこの映画が終わるのではなく、14年前の金曜深夜から続いた物語が、いま終わる。 この作品でブレイクした仲間由紀恵と阿部寛は、今後も芸能界の第一線で活躍するだろうけど、山田奈緒子と上田次郎には、もう会えないんだなって。 深夜0時直前の研究室。出会った時と同じマジックを見せる奈緒子と、目に涙一杯貯めて嬉しそうに微笑む次郎。山田と上田の2人だけの“ラストステージ”。 なんと完璧なエンディングを用意してくれたんだろう。あまりの余韻に劇場が明るくなっても暫く立てませんでした。 客観的に観て中身は3~4点です。だけど14年も続いた物語の、期待を大きく上回る素晴らしいエンディングに、この点数を付けさせていただきます。 [映画館(邦画)] 8点(2022-10-24 23:56:53) |
15. 読書する女
《ネタバレ》 -La Lectrice- Laは女性名詞なので“読み手(女)”とかかな。味気ないタイトルになるので邦題でいいと思います。 当時ハリウッド映画中心に見ていたから、良くまぁこんなテーマで映画を作るものだって感心した記憶があるわ。だって訪問して読書するだけなんて。当時はまだ、例えば“レンタルなんもしない人”とか“デブカリ”なんて存在しない時代。読書というサービスに金額を付けて売買が成立するなんて、それだけで興味が湧いたっけ。ミュウ・ミュウというインパクトある女優さんもまた、おしゃれの国フランスっぽくて独特の雰囲気があったっけ。 結局今回初視聴になったけど、ムム?なんだ?エロか?エロ要素か?ちょっと笑えるところもあるからエロコメか?下半身裸のミュウ・ミュウのお尻にキスしてるおじさんの写真を雑誌で見ていたから、そっちもあるんだろうなとは思っていたけど。あと思ったより年齢高い印象。ミュウ・ミュウってもっと若い女性な印象を持ってたけど。車いすの少年に読んで聞かせている間の足の組み換え。雨の日は素肌が透けるくらい濡れてくる。膝から太ももへ徐々に上がる裾。お母さんが入ってきたら直した!うぅ~ん、エロいですね。 読書したいのにエロ目線で邪魔する客との攻防を楽しむようでいて、ゆるいところはゆるい。結構本人も楽しんでるあたりフランスなのかなぁ? 帽子やマフラーと手袋を同色にするワンポイントのセンス。本の世界のマリーが歩くパリは人が歩いてないこの映像センス。やっぱり生粋のフランス映画はおしゃれです。メイドのベラとの変な魔のある会話が好き。あとダーグ先生の看護婦とか、不思議の国のアリス読みに行く家の母親とか、色んなタイプのフランス美人が登場するのも観どころの一つ。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-10-05 20:55:36) |
16. 動乱
《ネタバレ》 上映48分ほどで『第二部に続きます』と来たモンだから、三部構成だと思ったわ。だって150分の映画でしょ?不思議な… 国の未来を思う青年将校たちが二・二六事件に至る経緯が丁寧に書かれている。娘を売らないと生活できない貧しい農民。横行する武器や物資の横流し。日本製の弾に撃たれる同胞の無念。 だから二・二六事件は起こるべくして起きたんだ…って第二部に繋がるんだけど、宮城と薫の恋模様が6割以上な感じで、事件自体は短時間であっさりしている。宮城の存在含め創作部分が含まれるので、より史実に近い形で、事件の状況を解りやすく描いた“226”と両方を合わせて観ればバランスよく理解できるかも知れない。※226のレビューで、銃殺なのにどうして銃声は一発なんだ?って書いたけど、コレ観てなるほどって思った。 健さんは相変わらず。男らしさと優しさを併せ持つ不器用な男のイメージまんま。この頃の健さん映画はどの役を見ても安定の健さん役だ。吉永小百合は、この頃はもう中年女性なイメージだったけど、最初の村娘役なんて、充分に'60~'70年代のままの面影があったから驚いた。まぁでも当時35歳位だから、今の基準で考えると、若く見えても不思議はないか。う~ん…日本映画界が彼女をずっとヒロインで使いたがる理由が解った気がした。宮城を追う島憲兵。子供に握り飯あげたり、毒を盛られた宮城を助けたり、なんかとっても好人物。たった一人、宮城たちに対峙する彼の最後は悲しいものがあったな。 史実モノだけど創作部分が多い割に、今ひとつ淡々とした創り。高倉健&吉永小百合の人気俳優の初共演に頼った作品ぽいなって印象だったけど、当初企画していた原作を使えず、止む無く削るところを削った結果がこの作品なんだろう。それにしちゃ上映時間の長さは削れなかったのかな。 そうそう二・二六事件の時の音楽が、結構Zガンダムだった。三枝成章さんが参加しているからだろうけど、正規軍VS反乱軍なイメージの曲なんだろうか? [CS・衛星(邦画)] 4点(2022-10-01 22:39:56) |
17. トップガン マーヴェリック
《ネタバレ》 -Maverick- “焼印の押されていない子牛”≒“群れに馴染めない存在”=“一匹狼” なんか久しぶりに『映画館で映画を観る醍醐味』を味わわせてくれたわ。懐かしさと新しさ。ジェットエンジンの爆音とトップガンアンセム→デンジャー・ゾーンの流れは鳥肌モノだった。本作の主役機はF/A-18スーパーホーネット。前作の時代から現在まで活躍している、ちょい古い世代の戦闘機(の子孫)。 現役バリバリの第5世代戦闘機F-35をチラッとだけ映しといて、「お前の出番じゃねぇよ」と言わんばかりに力強く空に舞い上がるF/A-18の勇姿。 60歳近いのに未だに現役パイロットで大佐止まり。コールサインのせいじゃないだろうけど、彼があの年齢まで結婚しないのも、年上で野心家のシャーロット(チャーリー)と続かなかったのも、なんか頷ける。 そしてカワサキGPZ900R(まだ持ってたの?)にまたがるマーヴェリック。懐かしい革ジャン(これもまだ持ってたの?)、背中の日/台ワッペンもバッチリでひと安心。トムは映画でしょっちゅう観てるけど、ホント久しぶりにマーヴェリックに会えた気分。 当時と変わらない彼が、現代の若者とのジェネレーション・ギャップに苦労したり、トレーニングでついて行けなくなって年齢を感じさせたりするのかと思いきや、「まだお前等の出番じゃねぇよ」と言わんばかりに、衰えを知らない体力と精神力で、若者たちを軽くあしらう様子が痛快。いい意味でヤンチャなままのマーヴェリックだったわ。M:Iシリーズのイーサンみたく若い女性パイロットに手を出さないで安心したわ。 ペニー・ベンジャミン。前作で2回ほど出た名前だけど、そうか、彼女が“司令官の御令嬢”か。グースの妻・キャロルが名前を知ってたくらいだから、カラオケでマーヴェリックを『1回目は撃墜され黒焦げ』にしたのも、きっと彼女だろう。 ジェニファー・コネリーが懐かしく、それでいて若い。前作のレビューで『懐メロが~』とか書いたけど、まさかデビッド・ボウイを懐メロ枠で聴くことになるなんてね。懐かしいねラビリンス。 デートのあとドア開けっ放しにしてピートを招き入れ、そのまま受け入れるトコなんて特に若い。あの年齢でメイク直したり照明消したりしない潔さがカッコいい。前作のチャーリーもペニーも古いポルシェ乗りなのは、なにかの縁なのかな。 中盤のブリーフィングのシーンで猫みたく耳がピン!と立った。え?ええっ?これ前フリ?絶対そうでしょ!? 達成困難なミッション。からの絶体絶命。そこから先はもう、今までとは別な映画のよう。これ以上のサービスは思い付かいゾってくらい、素晴らしいご褒美。やっぱカッコいいわ。こんなカタチで全部解決してしまう説得力。まぁ細かいことなんてどうでもいいわ。 私は何の不満も無いわ。もう全部許す。これでいい。CGとかアニメとかじゃなく、こういう映画を映画館で観たかったんだ。 「でもそれは今日じゃない」これはかつて、トップガンで熱くなってた世代へのメッセージ。 あれから36年の年齢を重ね、当時の想像とは違った現実と日々戦っている、私たち当時の若者達すべての胸に、熱く響く言葉だった。 [映画館(字幕)] 10点(2022-07-10 23:12:51) |
18. 12モンキーズ
《ネタバレ》 -Twelve Monkeys- ・・・と言う名の過激な自然保護団体。 テリー・ギリアム作品のなかでは珍しく、エンターテインメントとして、かなりスッキリしていると思う。未来の世界とタイムスリップを扱っているので、最初観ていて??って思うような部分も、後々きちんと事情が解る創りで、私はこの監督ではこの作品が一番好きかもしれない。 ブラッド・ピット演じるジェフリーの狂人演技、ハイテンションのヤバいヤツ感が抜群に素晴らしく、また人を引き付ける魅力も感じさせる。 そして主人公のジェームズ。主人公としてマトモなハズの彼だけど、キャサリン視点で観るとマトモとは思えず、怖くて仕方ない。妄想に思える人類滅亡のシナリオが、オオカミ少年の顛末や(出来すぎ感があるけど)第一次大戦の写真で、キャサリンが信じるまでを、一歩一歩踏みしめるように追っていけるシナリオが見事。 キャサリンが未来を信じた所に、未来を妄想と思い込んだジェームズをぶつけるのも面白い。あの不気味なテープから正気を取り戻し、テンポ良く結末に向かっていく流れも秀逸。 12モンキーズの起こした事件の清々しさ。・・・そりゃ危険なのもウロウロするわけだから、手放しじゃ喜べないんだけど、今までのドロドロしたダークな雰囲気を吹き飛ばす爽快さを感じた。 ここまで観ると、結末は悲しいものになることも想像できるけど、タイム・パラドックスを信じるなら、あの場に居たジェームズ少年には、空気の美味い明るい未来が待っている。と思えるかな。 サッチモの“この素晴らしき世界”がとても印象深く耳に残る。観終わって『良い映画観たな』って思える作品。 [地上波(吹替)] 8点(2022-07-06 20:41:49) |
19. トップガン
《ネタバレ》 -TOP GUN- “アメリカ海軍戦闘機兵器学校(NFWS)”の通称。 当時大ヒット&大ブレイクしました。トム・クルーズもトム・キャットも格好良かった。音速のドッグファイトとノリの良いサウンドの組み合わせ。デンジャー・ゾーンのノリも好きだけど、トップガンアンセムの静かに盛り上がる曲も好き。どうしてサントラ盤はギターが激しいんだろう、大人しいバージョンも入れてほしかったわ。 ミサイルが同じ場所から出てたり、洋上なのに陸地が見えたり、敵機が残り1機なのに2機映ってたり、そんな事が些細に思えるほどに本物のF-14Aの美しさ。特撮じゃない空撮の迫力。世界最強の航空戦力。あの雰囲気、あの格好良さに勝るもの無し。 カラオケで告白なんて、アメリカ人があの陽気なノリでやるから、もう格好良いのなんの。マーヴェリックてかトム・クルーズが相当歌が下手なのも見事にノリでカバーしてる。最後トイレまで追い掛けていって、グースとの賭けにインチキで勝つところもオチャメ。 アイスマンって嫌な奴&あの事故ってわざと?って思ってたけど、規律を守る常識人だし、本当に不可抗力な事故だったんだろう。ロッカールームでマーヴェリックに、一旦呼吸を整えてから「・・・ミッチェル」って名前で話しかけるトコ、ホント根が優しい人って感じ。 トップガンと言えば格好良いシーンで掛かるノリノリのロックが目立つけど、面白いのは懐メロが3曲ほど出てきたとこ。 カラオケで歌ったライチャス・ブラザーズの“ふられた気持ち”はピートとチャーリーのお互いの告白に。 グースが愛する妻キャロルにピアノ弾いて歌ったのはジェリー・リー・ルイスの“火の玉ロック”。 ピートの両親が好きだった曲としてオーティス・レディングの“ドック・オブ・ベイ” ノリノリのトップガンのサントラには入ってない3曲だけど、この映画では2人の愛を懐メロで表現しているのが面白い。 ベルリンの“愛は吐息のように”この曲も今ではずいぶん懐メロだけど、ピートとチャーリーの愛のテーマであり、デートムービーとしてトップガンを観た私たちの愛のテーマにもなっていた(と思われる)。だってみんなサントラ持ってたし。クラスに1人はサントラCD持っていて、それをみんなカセットテープにダビングして聞いてましたよ当時は。私もTDKのADに入れてたっけ…あぁ懐かしい。 最後にマーリンについて書いておこうと思う。今ではネットで簡単に調べられるから、ご存じの方は飛ばしてください。 公開から暫くして、ビデオとかで観てる時、最後の甲板で突然ヌゥっと出てきて「え!?もしかしてティム・ロビンス?」って、私たちををびっくりさせてくれたのが、マーリン。公開当時は無名だったから気にもしてなかった。 彼はいつから居て、どこで何してた?実は最後、マーヴェリックのレーダー要員、つまりグースの後任を努めてました。グースの死後、トップガンでは日章ヘルメットの黒人レーダー員(サンダウン)が後任だったけど、卒業式の緊急命令の時にヴァイパーが「レーダー員が居なければ私が飛ぶ」って言ってたから、この2人のどっちかがレーダー員を努めてたと思ってた。なのにどうしてマーリン? 実はマーリンは最初のミグ遭遇時の、クーガー機のレーダー員。本来だと空母エンタープライズからはクーガー/マーリン組がトップガンに行く予定だったけど、クーガーが辞職してマーヴェリック/グース組が行くことに。マーリンはそのまま空母に残ってたんだろう。腕は良いんだろうに。 で最後の緊急命令時もたまたまエンタープライズが母艦に選ばれて、最初の編隊チームだったマーヴェリックとマーリンの2人が、お互い固定パートナーが居ないから組めた。って流れでした。最後に突然登場したと思ってたけど、最初から映ってて、けっこう喋ってたんですねぇ。 [映画館(字幕)] 7点(2022-07-04 00:38:39)(良:1票) |
20. トイ・ストーリー4
《ネタバレ》 やはり私も『最高の終わり方をした3の後日談を創る意味ってあるの?』って疑問もあったためか、4は劇場で観るつもりだったけどタイミング悪く観られず。1~3はそのうち円盤を買おうと思っていたけど、4は賛否両論あることを知り、どんなタイミングで観るか迷っていたところ、ネットニュースの『金ロー最悪。3の翌週4やるなんて』って記事にまんまと踊らされた。どんだけ酷いんだ?ようし、テレビで観てやるべ!って…観たんです。 今回のテーマは「子供は毎日のようにオモチャを失くす」そう、確かに。 “あげる”“壊す”“捨てる“売る”あと“あの場所で失くして、探したけど見つからなかった”そんな、最後どうなったか?を覚えているオモチャはともかく、もう一つ“どうしたか忘れた”があると思う。この4はその持ち主のもとで天寿を全うできなかった“忘れたオモチャ”のアンサーだ。 序盤の回想が、3から出なくなったボーとRCがメイン。漠然と“どっかの時点で捨てたんだな”って思っていたボーのその後が、ここでようやく解る。みんなのところへ戻そうとするウッディだけど、ボーの持ち主は妹のモリー。モリーがあげると決めたなら、ボーは貰われて行くしか無い。 ここで一瞬、ウッディも箱に入ろうとするトコ。最後に繋がる見逃しちゃ駄目なポイント。これがオモチャのウッディの自我、意志。だけどまだ自分がアンディに必要とされていることを自覚して残るウッディ。 ボニーのお気に入りになれなかったウッディ。まだ持ち主のモトにあるのに、既に忘れられつつある存在になっていて、このまま居てもきっと最後どうなったか、ボニーは覚えてないし、探しもしないだろう。 その後ボニーが大人になって、アンディと会った時「ウッディってカウボーイのオモチャ覚えてる?」とか言われて「あれ?う~ん・・・近所の子に全部あげたと思う」とかってなるかも。そんな未来が観える中、ボニーのことを思い続けるウッディが涙ぐましい。 そして最後、ボニーに必要とされないからではなく、9年前に思いとどまった事を実行したウッディ。迷うウッディの背中を押してやるバズの友情。 これでトイ・ストーリーを観た子供に「そういえばわたしの○○(オモチャの名前)、どこにいったの?」と聞かれた時「自分でどっかに捨てたんだろ」と冷たく言う以外の回答「○○もきっと、ウッディやボーのようにじぶんのかんがえで、たくましくいきているんだよ」って言える。このテーマを1~3の劇中に挟むのも難しかったろうし、単独の話として創って正解だったと思う。 トイ・ストーリーは1~3まで、公開年と劇中の時系列が一緒だったハズ。3が2010年の話で、この4も同じ2010年の話。だからカブーンの決め台詞がオバマ大統領のキャッチコピー。ちなみに9年前の回想シーンは実は2001年になる。 別に2019年のウッディたちの話でも良かったろうに、シリーズで例外的に時系列から外して創ったのは、やはり1~3が完璧と思う層(4を受け容れられない層)に配慮したように思える。そしてトイ・ストーリーは2010年で終わったシリーズを意味するんだと。4って付けてるけど、番外編でいいですよ。って。だから5は無いんじゃないかなぁ? 私は、4大丈夫だった。この出来なら劇場で観たかった。 ちなみにRCのその後、成れの果てが、スカンク・ラジコンなのかな?いやそんなウマい話無いだろう。たぶん壊れて捨てたんだろうけど。 ただフォーキーは…本作のスカンク・ラジコンみたく、オモチャなのに命のないものも居る中で、アレをオモチャとして良いのかどうか…これが例えば“お婆ちゃんが創った刺繍の人形”とかなら命も入りそうだけど。 アレだと、鉛筆さんや消しゴム君にも命があるってことになりそう。そういうので遊ぶ子供への配慮かもしれないけど、コッチの“どこまでがオモチャ?”の線引は、どうかなぁ?って思った。 [地上波(吹替)] 8点(2022-06-25 12:42:10) |