1. トラ・トラ・トラ!
《ネタバレ》 真珠湾攻撃に至るまでの日米の外交と軍の動きを史実に基づき再現した作品です。監督、脚本ともに日米両陣営が名を連ねており、この手の映画としては、珍しく公平で客観的な作品になっているようです。スポーツマンヒップにもっこったような、もとい、スポーツマンシップに則ったような、清々しさすら感じさせる戦争映画です。ただし、公平な視点と、史実を重視したために、登場人物がやたら多くなり、物語が散漫になっていると感じました。それぞれの立場における様々な思惑が同時に渦巻いて、事が進行していったのは間違いないのでしょうが、エンターテインメントとしてこれを魅せるのは、なかなか難しいものだと感じました。真珠湾攻撃のスペクタクルは圧巻の一言。ですが、途中に挟まる役者の演技シーンが別撮りで、これがどうも照明が明るすぎ、セットの軽さが強調されて、壮大な景色から浮いてしまっています。今ならばデジタル処理で後からいくらでもいじれるのでしょうが、当時の技術だとそうも行かず、致し方ないのでしょうね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2024-03-11 17:51:59) |
2. トレマーズ
《ネタバレ》 NETFLIXでおすすめされていたので視聴することに。特に新規性のないモンスターパニック映画ですが、大枠においてはお約束通りという新規性のなさが、変な背伸びなどをすることなく、等身大でつくり手がつくりたいものをつくる姿勢につながり、逆に功を奏しているなと思いました。何かしらの小難しい新規的な設定などがあると、それをスポンサーや視聴者に理解させるために、説明過多になって、作品としてのバランスを崩すというのは、結構ありがちな失敗だと思いますが、そいういったものとは全く無縁の、B級映画の模範作と言えますね。多少チープながら手作り感の残るモンスターの造形は、むしろ生物的な生々しさ、生臭さ、存在感を感じさせるもので、CG全盛の今となっては新鮮さすら感じさせます。カラッカラに乾いた砂漠、スカッと晴れた空、軽妙な会話のやり取りが、悲愴感を緩和していて、他の同類作品にはあまりない味が出ています。あまり戦力にならないちょっとうるさい感じの爺さんが食われた後、まあ、もちろん食われないに越したことはないけど、むしろ都合よかったんじゃね?他の誰かよりは。盛り上がりも必要だし・・・くらいに感じている自分に気付かされました。よくない映画ですね(笑)とてもイイと思います。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-10-11 18:58:56)(良:1票) |
3. 永遠<とわ>の語らい
《ネタバレ》 序盤はポルトガル人の美人歴史学者が幼女を引き連れて、夫の勤務地インドに向けて、地中海、紅海沿いの古代文明都市を探訪する様子が延々と続きます(ポルトガル→フランス→イタリア→ギリシャ→トルコ→エジプト→イエメン)。古代都市の景色は、それぞれ特色があって面白いのですが、船での移動時には、船の舳が波を切る部分のアップが延々と続いたり、船の発着時には乗船客の乗降シーンを延々と映したり、ちょっと間が悪いなと思うほどにゆったりした時間が続きます。歴史の勉強にはなるものの、エンターテインメントとしてはどうしたものか、と思いつつ見ていると・・・/これまでとはうってかわって、カメラが船内の食堂に移動します。船長役にジョン・マルコヴィッチ、船長から夕食の席に招待された3人のマダムフランス人女性実業家役にカトリーヌ・ドヌーブ、イタリア人モデル役にステファニア・サンドレッリ、ギリシャ人女優役にイレーネ・パパスと一挙に役者が揃います。4人、4カ国語による語らいがごく自然に繰り広げられ、驚かされます。各界で名を成す癖のある熟女たちを相手に、しなやかに立ち回る船長に惚れてしまいます。そして次の日の夕食の席には、ポルトガル人美人歴史学者とその娘が加わり、5カ国語による語らいに・・・/そして、終盤には、さらに驚きの展開が・・・/大きく3つのパートに分かれていて、次のパートに進むとガラッと作品の色が変わり、驚かされるという作品です。ちょっと他の作品にない変わった感触で面白いのですが、反面、何回も使えない手法だなとも思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2023-09-27 17:12:41) |
4. トゥルーマン・ショー
《ネタバレ》 本人に気付かせないまま、リアリティ番組の主人公として、その生活をテレビ放映するというような話。リアリティ番組とは言え、リアルをそのまま垂れ流して成立するわけもなく、番組の人気を保つために、隠し撮りだけにとどまらず、主人公のリアルな人生にプロデューサーが介入し、演出的な意図で捻じ曲げ、掌の上で転がしていくところまで踏み込んだところがキモですかね。人権問題に加えて、リアリティ番組におけるフィクション性の問題まで取り込めていて、なかなか味わい深くなっているなと感じました。フィクション作品の中では普通に行われている演出を、超大掛かりな装置と、人海戦術により無理矢理に実現するなど、あえてリアリティを無視することにより、コミカルな味付けが得られているところはいいと思うのですが、それとは別に全体的に醸し出されているインチキ臭さ(絵に描いたような人物像とか、会話のやり取りとか?)は、狙いはわかるのですが、少しうるさく感じてしまいましたかね。友人と語り合う建造中の道路橋の端っこというロケーションも、何か、行く先が途絶した箱庭世界を暗示していて面白いですし、最後に辿り着く境界、一気に世界がブコツなハリボテに変化するところは好きですね。テッド・チャンの中編小説「バビロンの塔」の終盤を連想しました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-09-21 19:04:01) |
5. 永遠に美しく・・・
《ネタバレ》 NETFLIXで、たまたまサムネイルを見かけて、30年前にテレビ番組でおすぎ?が紹介していたの思い出して、懐かしく思ったので見ることにしました。不老不死の薬を飲んだ中年女性同士の壮絶で醜い闘いをコメディタッチで描く作品。わかりやすくて、まあまあ笑えますし、いいんじゃないでしょうか。深みがまったくないのが、逆に潔いとも言えます。私なら、どちらか選べと言われたら、首ひねっちゃう方の人よりは、腹に穴空いちゃう方の人でしょうかね。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-09-21 19:00:35) |
6. ドライブ・マイ・カー
《ネタバレ》 主人公の西島秀俊は舞台役者兼舞台演出家。その妻の霧島れいかは人気脚本家。主人公が主に仕事の移動で使う自動車にフォーカスし、その中や周辺で起こる、クリエーター夫婦の少し風変わりな日常や、思いがけない出来事など、エンターテインメントの題材にはあまりならないような事柄を、ごく自然に、あまり狙った感を出さずに、細かいところまで繊細に描いていくというような作品。映像も特別美しい風景があるわけではないのですが、現代日本の変哲のない風景が、しっとりと落とし込まれていて、心が落ち着く感じがします。文学的な雰囲気が醸し出されていて嫌いじゃないです。ただ、雰囲気は嫌いじゃないだけに、作品の着地点が今一つというか、主人公の感情に深いところで共感することはなく、大きく心動かされるものがないまま、終わってしまったなという感想です。原作があることをほとんど意識しないで見ていましたが、村上春樹原作と言われると、まあ、わからないでもない気もします。後半、三浦透子が主人公のマイ・カーのドライバーとなり、主人公との交流が描かれていくのですが、「三浦透子が運転がとても巧い」という設定があってもいいとは思いますが、それが強調され過ぎていて、そこだけは、少し不自然さを感じてしまいましたかね。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-07-05 19:27:45) |
7. トップガン マーヴェリック
《ネタバレ》 前作と比較して、映像技術の進歩の甲斐あって、空中戦の迫力も随分改善しているようですし(実はもう少し期待していた)、ポップソングに頼った、雰囲気重視の雑な展開も改善してると思いますが、同時に、良くも悪くも、普通のエンタメ作品になってしまったなとも思いました。結局あんたが主役かいっ!っていうのは、それはそれで、目をつむるとしても、トム・クルーズが昔に比べて、枯れて渋めになっているのだから、若き日のトム・クルーズに代わる華のある若手役を押し出してもいいし、個性溢れるキャラクターのぶつかりあいがあっても良かったかなと。全体的に登場人物の魅力が弱すぎると思いました。そんな感じの作品ですので、結局一番気になってしまったのは、ジェニファー・コネリーです。ジェニファーと言えば、まだ幼さが残り、輪郭が少しぼやけた感じの、透き通って潤いのある白い肌が、強く印象に残っているのですが・・・年月を経て、輪郭がシャープになって、肌が乾いて、役柄なのか少し浅黒くなって、特に鼻の下から口にかけて、そして顎のラインが、ルナシーのスギゾーさんみたいになってました。ルナシーのスギゾーに対して、何の悪意も持っていませんし、ミュージシャンとしては、むしろ尊敬もしてますし、イケメンと言えばイケメンなのですが、殊、ヒロインとしてはどうなのかな?と思ってしまった・・・というのが、率直な感想です。P.S.スギゾーさんに対する批判みたいになってしまって、本当に申し訳ない気持ちで一杯ですので、映画には関係ないものの、ギターが巧いし、バイオリンも巧い、とほめておきたいと思います。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-06-14 18:50:50)(笑:2票) (良:1票) |
8. 東京物語
《ネタバレ》 小津安二郎の作品を見るのは、5年前にみた「彼岸花」に続き2作目ですが、5分もたたずに、その世界に引き込まれて、安心して映像に身を委ねられてしまうから不思議です。映像の語り口の妙なのでしょうね。「子の親離れ」というシンプルなテーマですが、同時に奥が深い。大きなテーマを据えつつも、相変わらず、日常の何気ないおかし味をディテールとして織り込んでいく丁寧な仕事です。(メモ)ばあさん役の東山千栄子が60過ぎなのに対して、じいさん役の笠智衆は当時まだ50歳に達してないのですよね。驚きです。長女役の杉村春子と2歳しか違わないのですね。 [DVD(字幕)] 8点(2023-04-12 17:54:59) |
9. 独裁者と小さな孫
《ネタバレ》 とある国の調子こいた爺さん独裁者と、更に調子ぶっこいた孫男児の話です。独裁者が、官邸から街を一望しながら、電力停止の命令を発すると、街の灯りがすべて消えて真っ暗になり、孫も大喜び。孫にも同じように命令させて、何度もやっているうちに灯りが付かなくなります。ついに、反体制分子が蜂起したようです。独裁者は家族を先に自家用飛行機で国外に逃がしますが、孫息子だけは、爺さん独裁者と一緒に残るとダダをこねます。すぐに家族の後を追って国外逃亡するつもりが、味方と思っていた軍も反体制派に寝返ったので、官邸に戻れなくなり、国内を逃亡することになります。変装して、流しの興業者を装いつつ逃亡している間に、悪政によりすさんだ社会と、自分に対する不平不満を見聞きしてしまう という内容です。とてもシンプルな内容ですが、体制は、時が来れば、信じられないくらい簡単にあっけなくひっくり返るものであるという感じが良く出ていて、なるほど実際こんな感じなんだろうなぁと思いました。甘やかされて育った孫の、状況を飲み込まないお花畑なバカさ加減に、鬱陶しさが募っていき、しまいには殴りつけたくなってきます。まあ、それだけよく演じていると言うことができます。序盤だけ出てきて国外に逃げてしまう仲が悪くて罵り合う美人姉妹が、結構好き。 [DVD(字幕)] 6点(2023-03-06 19:16:16) |
10. ドグラ・マグラ(1988)
《ネタバレ》 原作既読です。映像化作品の存在は前から知っていたのですが、長年入手困難な状態で観ることかないませんでした。何がきっかけなのかわかりませんが、2016年に復刻し、レンタルDVDにも供されることになったので観ることとしました。原作は日本三大奇書の一つでもあり、作品世界が文体や技巧に依存している部分が大きいため、映像化のハードルは随分と高いと思われます。そのような条件の下では、よくやっているなと思いました。特に狂人治療場の雰囲気は、思い描いていたイメージに近かったです。正木教授役に桂枝雀は、最初はちょっと違う感じがしたのですが、なかなか、どうして、これを観てしまうと、他の人では代用がきかないように思えてきます。原作の深みを出すのは難しいですが、これはこれでありですね。 [DVD(字幕)] 6点(2023-03-06 18:48:02) |
11. トップガン
《ネタバレ》 大衆向け商業娯楽作品なので、細かい難癖をつけるつもりは毛頭ないのですが、全体的に作品のクウォリティが低いような感じがして、80年代とは言え、よく成功したものだなと思ってしまいました。まあ、でも、そういう時代だったよなと思い直したり。アメリカ空軍のエリートパイロットの話で、激しい空中戦あり、教官との恋愛あり、僚友の事故死あり、落ち込みからの立ち直りあり、ということなのですが、それら主要なイベントを切り貼りしただけという感じで、物語の展開、つなげ方が雑だなぁと思ってしまいました。説得力のあるつながりを放棄して、いかにもかっこよさげなシーンと音楽とでごまかしているような、うやむやにしているような。そういうスタイルこそが受けたという事なんでしょうけどね。本質的にあまり楽しめなかったのは、トム・クルーズが演じる主人公にあまり魅力を感じなかったところですかね。むしろライバル役の少しスカした感じの役柄の人の方が、初っ端から終始クールで、問題を起こすこともなければ、教官とイチャつくこともなく、好感度が高いと思ってしまいました。あと、恋愛要素の部分は、今の感覚で見ると、とても、こっ恥ずかしいです。これは時代の感覚なので致し方ない。ヒロインの教官も、立場的にせめてカッコよくあって欲しいところ。なんかガード低いし、低くて然るべきな気がするし・・・ [インターネット(字幕)] 3点(2023-02-12 16:10:22)(良:1票) |