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プロフィール
コメント数 250
性別 男性
自己紹介 サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。
評価はもちろん主観です。
評価基準 各2点ずつで計10点
1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか?
2.視覚的に何かを象徴できているか?
3.プロットの構成は適切か?
4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか?
5.作品のテーマに普遍性はあるか?

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1.  トロール
冒頭の女の子の容姿がグレタさんっぽいと思っていたらしっかり彼女について言及する台詞がありました(笑)。こういう映画ってたいてい登山の場面で始まりますよね。その後もずっとそんな調子で、軍隊の出動、科学者の会議、怪物に対し吠える犬、地響きで揺れる地面、ああこういう場面を怪獣映画で見た記憶があるなあというシーンばかり出てきます。舞台がノルウェーという点では新鮮さがあるのですが、既視感のある画やシチュエーションしか出てこない作品でもあります。一応描かれる親子のドラマもトロールと大して関係なくほとんどどうでもいい感じです。でも逆にこういう人物造形の薄っぺらさのようなダメなところも含めて怪獣映画を見ているなあという気分にはなれるんですよね(笑)。それに陳腐とはいえおとぎ話がもし本当だったらという想像力には単純に夢があるじゃないですか。製作者もトロールハンターの時のようなモキュメンタリーではない王道の怪獣映画を作りたいという以上の野心はなかったのでしょうし、王道だけに誤魔化しがなくVFXのクオリティは申し分ないです。上映時間も短くサクッと見られますし、これはこれでいいんじゃないでしょうか。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-09-02 21:54:10)
2.  道化師の夜
1950年代のグンナール・フィッシェルと組んでいた頃のイングマール・ベルイマン監督の作品は画が保守的でつまらないと思ってるのですが、スヴェン・ニクヴィストと初めて組んだこの作品は冒頭からバッチリですね。なぜ処女の泉まで再度組むことがなかったのか不思議なぐらいですが、この作品は興行的に大赤字だったみたいなので映像が斬新すぎたと判断されたのでしょうか(笑)。道化師が主人公のためどうしてもフェデリコ・フェリーニ監督の道と印象が被るのですが、あちらと異なり女性が決して男の犠牲になろうとしない辺りが作家性の違いですね。演劇の監督に侮辱される場面は映画監督という当時は賤業に近いものに携わっていたという監督の自虐でしょうか。雨の表現やクライマックスが男同士の決闘である点は黒澤明監督の羅生門からの影響が伺えます。冒頭の回想シーンでの大砲のカットバックは男根の暗喩という演出であることがあからさますぎてあまり好きではないですね。話は重苦しい割に後の作品ほど深いテーマはなく通俗的なメロドラマに近づいてしまっているとも感じます。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-08-26 23:21:49)
3.  特捜部Q 檻の中の女
北欧ミステリーに関してはほとんど知識がないのですがこれを見る限り日本やアメリカの刑事ものとそこまで印象が変わらないですね。例の中華テイクアウトまで出てきたのには笑っちゃいました。特別なテーマを扱っているわけでもなく捻った展開もありません。相棒だった刑事が負傷し、そこから代わりに若手と組む冒頭の展開から既視感しかなく面白味がないです。ただ主人公が陰気な一方アラブ人の相棒が陽気な性格というのは今まで見たことのないパターンでちょっとは新鮮味がありました、こういうのは逆のパターンが多い気がします。加圧室の中での監禁というシチュエーションもあまりリアリティが感じられず真面目な物語として見るのが難しかったです。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-07-27 22:28:01)
4.  特別な一日
古臭い不倫ドラマかなーと思って見ていたらあーそういうオチなんですね。これはむしろ現代の視点で見た方がより高く評価されるタイプの作品だと思います。単にファシズムによる弾圧という範囲を超えた男らしさや女らしさにまつわる抑圧がテーマとなっているからです。二人の個人的な出会いと対比させるためとはいえラジオのプロパガンダ放送が序盤からずっと流される演出にはちょっと単調さも感じてしまいました。冒頭5分近くも記録映像を見せる必要性もあまり感じません。舞台のもぬけの殻となった街の光景はヒッチコックの裏窓も想起させるところもあり単純にワクワクするものがありますね。何かが変わってしまったが変わらない日常を生きていくしかない、余韻を残すラストも素敵です。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-11 23:04:23)
5.  ドント・ブリーズ
スクリームクイーンという表現がありますがそれを逆手にとって叫ぶことを禁じられた設定にしたわけですね、そこは面白いです。空撮や長回しを入れたり結構贅沢な撮影です。ストーリーのベースは時計じかけのオレンジあたりでしょうか。設定を掘り下げれば社会派スリラーにもなりそうです。ゲット・アウトのような作品が生まれる下地は既に整っていたということですね。ただ良くも悪くもそっち方向には進まずただのホラー映画に仕上がってます。スティーヴン・ラングが出てきてからの方がドラマ性が希薄になりつまらなくすらあります。座頭市の国の人間としては盲人で銃使いというのも変な感じです。暗闇ですのでマズルフラッシュを演出に使いたかっただけなんでしょうけど銃はいわば視覚で殺す武器ですし、銃がないと普通に女性に打ちのめされるのもがっかり感があります。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-05-09 22:45:41)
6.  ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
ドラゴンクエストに関しては無知な人間ですので、失礼ながら一本のアニメーション映画として評価します。物語に起伏もありラストの妙にひねった展開がなければ普通に冒険ファンタジー映画として評価される出来だと思います。CGも動きの硬さは感じますがよくできてると思います。特に顔の生傷には相当こだわっていますね。2Dアニメは基本的に単色で塗られたのっぺりした肌しか表現できませんので、これは3Dアニメであることの強みを生かしていると思います。それで例のラストなんですが、まあ失敗ですし悪評も仕方ないです。でも一部に支持派がいるのは納得できます、というか支持します。やるならもっと序盤からわかりやすく示唆すべきというのも尤もな批判ではあります。でもラストのメッセージ的にもここまでは全てが本物であるかのように語られる必要性はあったと思います。我々はなぜフィクションに対して本物以上に思い入れを抱くことができるのか。それは単にフィクションが傷つくことのない別の世界へ逃れることを可能とする現実逃避の対象だからでしょうか?いやむしろ現実では傷つくことから本能的に逃げようとしてしまうからこそ、それに真剣に向き合う場としてのフィクションが必要なのだと思います。そしてそこで前述の生傷へのこだわりが生きてくると思います。この映画の裏メッセージは傷つくことこそが生きていると感じられる本物の証であるということだと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2023-05-07 23:24:28)
7.  東京物語
家族なんて幻想、というよりは家族なんてこんなものでしょ?というお話です。意外と原節子の出番は少ないなあという印象を受けます。それよりほとんど杉村春子の映画かもしれませんね。終始親に対して毒づいているんですが親の死を目の前に突然泣き崩れるシーン、あれはすごい演出だと思います。個人的には原節子と杉村春子の役は逆にした方が面白いと思います、今のままですといかにもな美人の聖女と憎まれ役のように受け取られてしまいますから。孝行したい時分に親はなしなんて映画を見ていれば普通にわかるものを台詞で言っちゃうのもなんだかなあという感じです。間違いなくいい映画ですけどもうちょっとつまんないと文句を言う人間が多いぐらいでバランスが取れるんじゃないかと思いますね。小津安二郎の真似なんて誰もできないのにこれが神格化されたせいで日本映画がつまんなくなった部分もあるんじゃないでしょうか。まあそれでも大多数から支持を受けているのはきっと似たような経験をした家族が日本にはたくさんいるからなんでしょうね。世界にも似たような人たちがたくさんいるんだったらいいのですが、批評家や作家しか見てない上にオリエンタリズムでも評価されてそうなのが嫌な感じではあります、ってこれは当の日本人にも言えるんでしょうけどね。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-04-24 23:06:38)(良:2票)
8.  トップガン マーヴェリック
なんて夢のない映画でしょう。この映画が娯楽映画の王道と持ち上げられてるのは理解不能です。戦闘機マニアやトム・クルーズのファンが面白いというのはわかります。しかしふだん軍隊と関係ない生活を送っている人間がこの映画のどこに感情移入できるのかさっぱりわかりません。こんなものは懐古主義だ、所詮米軍のプロパガンダだ、ステレオタイプな人物像しか描かれていない、こういう批判を口にする人間がいてもいいと思いますので私が言います、それで救われる人間もいるでしょうから。昔のようにジェリー・ブラッカイマーの映画なんぞ真面目に語る価値がないとバカにするぐらいの余裕こそ必要です。今の時代に続編を作るべきなのはトップガンではなく7月4日に生まれての方である、このぐらいの皮肉は言わなきゃいけないのです。
[インターネット(字幕)] 0点(2023-03-31 23:07:29)(笑:1票) (良:3票)
9.  トイ・ストーリー4
この映画でのウッディの立ち位置はかつてのプロスペクターやロッツォ・ハグベアに近くなっています。自らの規範とエゴのために他者を巻き込んでしまい、過ちを犯す側になっています。この映画は過ちを犯す不完全な存在に対する断罪ではなく共感の物語です。ボニーに対するウッディの共感、ギャビーに対するウッディの共感、そしてウッディに対するボーの共感。悪役に対しざまあみろと言う気持ちにさせる結末ではなく自分と同じ部分を見出し救いの手を差し伸べる物語です。むしろ前作までのストーリーに違和感を感じていた側なのでこちらの方がしっくり来ました。フィクションの存在意義があるとすれば嫌なものがない都合の良い世界を描くことでも、嫌いなものを攻撃して気持ちよくなることでもなく、他者の立場を理解し共感することだと思います。このシリーズがそちら側に変化したことはとても嬉しいことだと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2023-03-26 22:31:32)
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