1. ドラゴン/ブルース・リー物語
今日7月20日はブルースの命日です。30年前「燃えよドラゴン」を観た衝撃は凄まじく、多くの方々と同じようにその瞬間からずっとブルースの影響を受け続けています。その心情は各作品のレビューに書かせて戴きました。この映画についていえば主役の俳優さんがどうしてもブルースの姿と重ならないことと、私が感動したブルースのエピソードがあまり描かれていなかったことで印象としてはブルースを慕う方々が敬愛心を持って作った作品の域を越えませんでした。ブルースは常に心の平安や自由を求め続けていたと思いますし、その表現の一つとして彼の武術ジークンドーを創造しました。その武術の意味するところは真の自由であり、こだわり、とらわれからの解放であることも伝えられています。相対する外敵と闘うのではなく内なる敵との闘いの表現ゆえ映画で見るようにブルースの人間技とは思えぬ動きや相手に与える衝撃は凄まじくかつ、美しい。それはブルースの突きや蹴りが互いの心の邪悪心を打ち砕くためのものであり、打った痛みと打たれた痛みの底には愛情や慈悲心があふれているからに他ならない・・・・・・。というようなイメージも映画に期待していました。(思い入れが強すぎてすみません)俳優として、武道家として世界に通用するスーパースターとなった最初の東洋人だった。 6点(2003-07-20 16:17:54) |
2. どですかでん
都会の目まぐるしい生活に追われ、疲れて、ふと遠出をしたその先々で日々の暮らしを営む人々がいるというあたりまえの事実に直面する。その人たちが笑っていたり、汗水流し一生懸命何かにうちこんでいたりすると何故か目頭が熱くなってしまう。部活帰りの女子高生がとてもいい子に見えてしまう。わんぱく坊主たちが将来の博士や大臣に思えてしまう・・・・。公開当時、中学生だった私には抽象画のような色彩映像と乞食の親子、頭師佳孝の電車のシーンくらいしか印象に残りませんでした。あれから30年以上経ち、時代が「物の無いことの豊かさ(心の豊かさ)」を取り上げ始めました。そのときふとこの映画を思い出しました。電車は目に見え「ない」のですが、確かに「ある」のです。昔から言われるように「本当に大切なものは目には見えない」のでしょう。映画の主題とは異なるかもしれませんが、私の記憶にはそのように残っていたようです。人間の成長とは清濁併せ呑むこと、とも言われます。映画の印象として残っていた色彩の美しさと現実シーンの汚さは、今の時代に求められる「物(の豊かさ)から心(の豊かさ)へ」をすでに暗示していたようにも思えます。(これより以下、冒頭の文章の続きです)~思えてしまう・・・・。そういえば、30年以上昔に行った場所に素敵な電車に乗った少年がいた。瞳の輝く乞食の親子がいた。みんな笑っていた。みんな一生懸命だった。あのときも私は大切なお土産をいただいた。 8点(2003-06-10 14:52:37)(良:2票) |
3. ドラゴン怒りの鉄拳
1973年、当時高校生だった私にとってブルースリーとの出会いはその後の人生に影響する大きな衝撃だった。この日本公開第3作(香港主演第2作)は初日に映画館に並んだ記憶があります。当日私は白いTシャツに白いジーンズという服装でした。冒頭ブルースが白の上下で恩師の葬儀に駆けつけるシーンで「おお!同じ白だ!」と(今では笑ってしまいますが)感動していたことを思い出します。そういえば帰りに寄った中華料理店の店員さんもみな白の上下でした。この作品でブルースは中国人としての、武道家としての誇りを真正面から演じています。昔何かの本に、来日の際ブルースがスーツを作ろうとしたところ店員の態度が非常に悪かったためにこの2作目で日本人が悪役になったとありましたが、昔も今も半信半疑です。もしかしたら別の意味があるのかもしれませんが・・。他の主演作品とは異なり道場で多勢相手の格闘シーンがありますが、この時のブルースは狂犬のような凄みがあります。また、この作品は香港に帰省後のブルースが自身の武術ジークンドーを世界に広め、同時に世界に通用するスーパースターとなるためのプロセスとして取り組んだ意味でも重要な作品です。1作目、2作目でブルースは香港を中心にアジアのスターとしての地位を不動にできると確信したはずです。観客に支持されるよう配慮しているせいか、設定当時の中国人になりきっています。アメリカ暮らしで洗練されたセンスは、あえて控えめにしているように観えます。演技力もすばらしいですが、格闘シーンは誰もが初めて目にする本物でした。主演作で死んでしまうのはこの作品だけですが、私には「東洋人としての誇りを失ってはならないが、東洋に偏ってはいけない」というブルースのメッセージに思えます。事実、次の作品でブルースは世界へ飛び出していきます。虎は死して皮を留め、龍(ブルース)は死して名を残しました。世界でスーパースターとなった最初の東洋人、そして武道家です。本物は美しい。 7点(2003-05-20 16:50:59) |
4. TOKYO EYES
映画館もおしゃれで観始める前から何となく楽しかった記憶があります。若いお客さんが多く照明がおちるまでは少し居心地が・・でも、まっ、いいかという感じでした。あくまで自然な演出、というのでしょうか。演技というよりも日常を自然な視点で映している感じでした。何も予定のない午後、オープンカフェでお茶を飲みながらぼんやりと見ている景色の中でちょっと目を引くカッコいい若い男女。そんな印象の映画でした。武田真治は瞬間を瞬間を自由な風になって流れていくように映っていました。大人と子供、正気と狂気、善と悪、嘘と真実・・比較されるすべてのものごとの境界線を自由に吹きぬけていました。私の目にはそのように映りました。武田真治、いい役者さんでありアーティストですね。 6点(2003-05-06 14:51:00) |
5. ドラゴン危機一発
「燃えよドラゴン」ですっかり心を奪われてしまった私は、公開初日に今は無き映画館丸の内東宝に駆けつけました。ブルースに出会わなければ後年ジョイ・ウォンを観に行くまで知らなかったであろう香港映画はとてもB級に感じてしまいましたが、ブルースの姿を観られるだけで満足でした。あれから30年、ブルースの実像がひとつひとつ見えてくる中で私がこの作品にひかれる理由は、おそらくブルースがこの作品に取り組むにあたり、自分の人生にコンマを打った心情がスクリーンの向こうに見えるからかもしれません。この時期、アメリカから家族で転居したブルースは俳優、武道家いずれも世界で通用する東洋人としての最終ラウンドをスタートさせたのでしょう。この作品から2年後、傑作「燃えよドラゴン」を完成させて人生のピリオドを迎えます。この作品はブルースの武術ジークンドーの原点と、俳優としてアメリカで身に付けた演技力を披露しています。東洋を世界へ知らしめたいとする意志は以降の作品にも色濃く表れています。 7点(2003-04-08 18:15:10) |
6. T.R.Y.
織田裕二、好きな俳優ですがこの作品では彼の個性を100%生かせなかったかな?「やばくなったらさっさと逃げる」にはまだ少し若く見えるかも。走らずに歩いて逃げるくらいの落ち着いた知能犯でもよかったのでは?暗黒社会を知っていても心底まで染まらずに生きてきた詐欺師としては、もう少しうんざり顔で冒険したり、失敗を自嘲したり、調子よく生きていても悪になりきれずに人が知らないところで罪滅ぼしをしていたり、と経歴や年齢不詳の影の部分が欲しかったかも。心情=表情では、はまり役の大捜査線のキャラクターに重なってしまうかな。風のように通りすぎる役柄でも、もう少し彼を重い存在に演出して欲しかった。ただ場面によってはさすが織田裕二でしたよ。新しい一面もみせてくれました。すんなりと軽いノリで観られます。 5点(2003-04-04 17:56:21) |
7. ドラゴンへの道/最後のブルース・リー
ブルースファンにとって最高傑作とされる名作。鋼のような肉体はこの作品がベストといわれ、神技ともいえるジークンドーのテクニックが随処に炸裂する。「燃えよドラゴン」で修行僧を思わせるストイックな求道者の一面を見せたブルースは、この作品でそこに到達するまでの武道家を演じているようにも見える。こっけいな姿や女性に対してのシャイな表情は生活のすべてを鍛錬に費やしている不器用な若者そのものである。が、しかし戦闘体制に入った瞬間、彼は無敵のファイター、唯一絶対のヒーローとなる。真似をしようにも真似できないブルースの凄さが凝縮された作品である。ブルースの人なつっこい笑顔が、静かな、無の表情に変わるとき、武道家そして俳優として伝説になったことがわかります。 8点(2003-03-06 18:11:53)(良:1票) |