1. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
《ネタバレ》 『序』の内容が本当に素晴らしかったので、今回のこの『破』も、大変期待しながら劇場に足を運びました。そしてその期待は、個人的に全く裏切られることがありませんでした。 例えばミサトとリョウジの関係から「ただれた」「腐れ縁」的なにおいが綺麗に洗い流された事なども印象的でしたし、終盤の展開も大変感動的だったのですが、ここでは特に劇中での「音楽の扱い」について書きたいと思います。 旧TV版では「遠景」的にしか流れなかった挿入歌が、この『破』では人物たちの生活に食い込む形で積極的に扱われています。懐メロ(外界)が否応なく人物たちの生活(内面)に食い込んでくるさまは新鮮なものでした(この点旧TV版の場合、街中などで流れている歌はあくまで背景という感じであり、作中人物たちの心情とも殆どリンクしていません。個人的にはTV版における、外界と人物の内面との隔たりを強く感じさせられる瞬間でもありました)。 個人的に「内面に閉じこもってばかり」という印象を残しがちだった旧TV版とは違い、その「閉じこもる」方向を根本から打ち消す「外界」としての役割を与えられた劇中音楽に違和感を感じることはありませんでしたし、そのような「外部の音」を自然に受け入れるシンジやミサト達の姿に、ある種のたくましさや強さを感じたりもしました。 そしてその延長線上にある演出として、劇中での「今日の日はさようなら」や「翼をください」の使用があるのだと思います。僕は実は「(某人物)が3号機に乗る」事の重要性を、劇場鑑賞後に確認するまで気が付きませんでした。また物語後半における有名な「最強の使徒」戦の場合、耳学問という形でしか旧TV版の展開を知りませんでした。しかしそれにも関らず、上記2曲の効果的な使用とも相まって、僕自身はそれらのシーンを、この『破』単独の見所として楽しめました。 旧TV版を良く知っている方なら、「一粒で二度おいしい」的な楽しみ方をすることができると思います(むしろ個人的には、庵野監督は旧作からエヴァをフォローし続けている古くからのファンにこそサービスをしたいという意図もあって、このエヴァの「破」壊を試みられたのではないかという気がします)。しかしそれと同時に僕自身は、「旧作との比較」という点で極めて不十分な形でしか鑑賞できなかったこの『破』に対して、作品単独で非常に満足できたことも重ねて書いておきたいと思います。 [映画館(邦画)] 10点(2009-07-19 01:23:07)(良:1票) |
2. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
《ネタバレ》 最近になって庵野監督の奥様である安野モヨコさんの結婚生活マンガ(「監督不行届」)を読んだのですが、その後書きで、庵野監督が「大きな心境の変化」を吐露されていることを知ったこともあって、この劇場版「ヱヴァ」に興味が湧いた次第です。 ある程度TV版「エヴァ」の流れを踏まえた上でこの「ヱヴァ」を見返してみると、一番強く感じるのは劇場版の方がより「開かれた」ものになっている・・・と言うより「人と人の繋がり」と「その暖かみ」がより直接的に描かれている、という点です。この点、とかくシンジ君の孤独な心象が強調されるTV版「エヴァ」とは対照的だと思います(電信柱やビルはシンジ君には何の関係もなく突っ立っており、時にシンジ君はそこに無言の重圧を感じますし、街の喧騒やクラスメイトの暢気な軽口はますますシンジ君を追い詰めます)。 上記庵野監督の「心情の変化」というのもこういう所からうかがえるのかな、と僕自身は感じます。この「ヱヴァ」では、シンジ君の引き受ける「運命」は非常に重いものとして描かれ、それだけに彼のその「運命」を(暖かく、というのが大きなポイントなのでしょう)見守る周囲の人々の気持ちの変化も、TV版と比べて(さりげなくではあるものの)より鮮明に描かれているように感じます。鑑賞中に「『自分』と『外』を隔てる扉がふっと開かれる」ような、何か暖かい気持ちになる瞬間を何度か感じたのも、恐らくこのシンジ君の周囲の人々の心情に強く関係しているからなのだと、僕は思います。 そしてその重い運命を引き受けるシンジ君の主体性と強い意志が、この劇場版でははっきりと見て取る事ができました。正直言って僕は、この劇場版のシンジ君程に強い気持ちを持つ事ができるのか(あるいは今の時点で持っているのか)、自信がありません。それ程に、僕はこの劇場版の方のシンジ君に強く心引かれるのです(今の僕にとって、この劇場版のシンジ君は非常に眩しい、魅力的な少年に見えます)。 個人的な、そして極めて勝手な感想ですが、TV版のシンジ君は、この劇場版のシンジ君になる可能性を秘めた発展途上のシンジ君だったのではないかと、僕は思うのです。庵野監督は、小さくてか弱く、しかし極めて偉大な少年像を、もしかしたら生み出しているのかもしれません。 [映画館(邦画)] 9点(2007-11-07 00:05:02)(良:1票) |
3. es[エス](2001)
《ネタバレ》 アメリカの大学での実験を元にした映画ということで、どこまで脚色されているのかわかりませんが、全体的に人間の心理の動きに関してはとても生々しいと感じました。 8点(2003-10-18 01:54:44) |
4. A.I.
《ネタバレ》 このレビューを書いた時を最後にこの作品を見返すことはなかったのですが、映像表現が比較的きらびやかなのに対して作品全体に寂寥感が色濃く漂っていたという点が、良い意味でいつまでも印象に残り続け、「今ならもっといろいろ楽しめるのではないか」と思い、最近になって見返してみた次第です。そして結論から言うと、心底「見て良かった」と思えました。 今回見直してみて初めて感じたことですが、劇中で『ピノキオ』が重要なモチーフとして登場するのと同様、この作品そのものもどうやら一種の「おとぎ話」になぞらえて形作られているみたいだという点が、非常に印象的でした。それも「『愛』を主題にした、哀しいおとぎ話」として、です。 例えば人間が人間に対して持つ「愛」の場合、どうしてもそこにいろいろな夾雑物が混じる場合が多いと思います。それは必ずしも「欲」とか「打算」といったあからさまに悪い感情ばかりではなく、「遠慮」とか「行き違い」といった、ある意味「愛する故に不可避的に湧き出る感情」も含まれます。要するに愛に限らず、「何かを感じる時には分析不可能なくらいに様々な感情が入り混じる」からこそ、「生身の人間」なのではないかと思います。 それがこの作品の場合、「愛するために生まれてきた」と言っても過言ではないデイヴィッドという存在により、ストレートに「人を愛すること」という主題が胸に迫ってくると感じました。作中デイヴィッドが見せる、2000年を越えても消えることのない純化された「母への愛」は、まさに「おとぎ話」のようです。 そしてそのようなおとぎ話が、どうしてあれだけ哀しい寂しさをまとわなければならなかったのか・・・僕自身は、「イノセントに愛が満たされる」物語ではなく、むしろ「愛を渇望する物語」を描いてこそ、映画を見た後に観客に残るものはより確かなものになるのではないかと思います。いやそれが一般論として広げすぎなのであれば、少なくともこの作品に限っては、はっきりとそういう方向性を取って作られていると思いました。そしてこの作品のそういう「満たされない愛情から生まれる寂寥感」は、日々虐待やネグレクトといった「満たされなかった愛」にまつわる痛ましい事件が報道される現代において、より重い意味を持ってくるのではないかと思います。 そういう意味で僕自身は、この作品を「愛すべき作品」と捉えることにしました。そして告白すると、劇中最後の最後になるまでその「愛への渇望」を満たされることのなかったデイヴィッドの姿を思うと、なおさらこの作品は「愛されるべき作品だ」と(一観客として)思えます。 最後に一つ戯言を書かせてもらうと、このレビューを書いている途中で思いつきましたが、『A.I.』とは「愛」とも読めます。これ自体は単なる偶然でしかないでしょうが、しかしこの作品が「愛」という事柄を、哀しく美しく描き出している事だけは間違いないと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2002-03-22 18:29:40) |
5. エクソシスト ディレクターズカット版
僕は映画館で見たから良かったのでしょうか、メチャクチャ面白かったです(ちなみに「エクソシスト」を見たのは生涯通じてこれが初めてです)。テーマ的にも、根源的な「善と悪」の戦いが描かれていると僕は感じたのですが、考えすぎでしょうか? 8点(2002-02-12 22:39:51) |