1. 江戸川乱歩の陰獣
ただひたすら、夫人が「怖い!」と震え、主人公が行き当たりばったりにああだこうだしているだけであって、推理もサスペンスもあったものではありません。また、乱歩ならではのおどろおどろしさも、登場人物の内面から湧き出ているレベルには至っておらず、表層をなぞっているだけですね。キャスティングは普段はテレビメインのなかなか貴重な方々が多めだったので、ちょっと期待していたのですが。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2024-10-15 01:56:39) |
2. エイトメン・アウト
《ネタバレ》 アメリカの、というか世界の野球史に今でも残るブラックソックス事件なのだから、ドラマチックに盛り上げようとすればいくらでもできるのだろうが、そうはなっていない。情緒にも流れないし、わざとらしい強調もない。むしろ、何というか、ある種必然的に淡々と、選手たちは八百長に巻き込まれていく。黒幕側はよく分からないけどとりあえず怪しい連中がうろうろしているし、選手側は、キューザックもチャーリー・シーンも特に目立つことなく、むしろみんなで無表情に事を進めていく。このあたりの描写のトーンが、かえって容赦なさというか、逃げられなさを感じさせます。また、中盤ではシリーズは全8戦あるのですが、その一つ一つにきちんと時間をとっています(というか、そうしようとしたら、いくつもの球場でロケをすることになるはずで、エキストラの動員も含めて、手間がかかってるなあ)。その上で、終盤では、裁判無罪の打ち上げと永久追放処分のクロスカッティング、それを受けた選手たちのリアクションを出さない(一気に話が飛ぶ)突き放した冷たさ、さらにはエンドクレジットに乗せてのもともとの笑顔の無邪気なプレーと、一つ一つの演出が見事にはまっています。 [DVD(字幕)] 7点(2024-09-08 00:15:54) |
3. エレファント・ソング(2014)
《ネタバレ》 ある病院から医師がいなくなったので、最後に会ったであろう患者から話を聞き出す、という設定。そこからぶれずに、地道に、しかし緊張感に満ちた会話が切り返されるのが、何とも心地よい。そしてそれは、終末部分まで、必然性と一本の筋をもって突き進んでいく。ただし、こういう展開のときには、限られた場面の中にいかに多角的な要素を盛り込めるかが一つのポイントなのだが、その辺はやや手が回らなかったようである。主人公の家族なんて、キャリー=アン・モスまでつぎ込んでいながら、ほとんど活用されてないし・・・。院長から話を聞いているおじさんも、何かあるのかと思っていたら、本当にただ聞いていただけでした。 [DVD(字幕)] 6点(2024-09-01 00:21:13) |
4. Sダイアリー
《ネタバレ》 ヒロインがかつての自分の日記を見て、3人の元彼への恨みを思い出して復讐に行くという設定なのですが・・・いや、この元彼たちって、十分アホではあるけど、復讐されるほどではないんじゃない?しかもヒロインがやっていることって、えらくしょぼいというか、こぢんまりしているというか、わざわざもっともらしい前フリをしてまですることではありません。というか、第三者目線から見たら、むしろヒロインの方が未練ストーカー扱いされるだけなんじゃないでしょうか。というわけで、何とも中身に乏しい内容でした。そして最後は何かいい話だった的に無理矢理まとめているのも驚きです。 [DVD(字幕)] 2点(2023-08-26 00:10:08) |
5. 栄光のランナー/1936ベルリン
《ネタバレ》 1936年のベルリン・オリンピック陸上で4冠を成し遂げた伝説のアスリート、ジェシー・オーエンスの伝記です。全体の作りは真面目で実直です。主人公は黙々と競技に向かっていきます。ですが、制作側がネタを掘り起こすことができなかったのか、結局はただ単に主人公は頑張りました、そして勝利しました、というだけで終わっています。リレーなんかは、直前のメンバー入れ替えなどという事態もあったわけですから、他のチームメンバーに上手くスポットを当てれば、もう少し盛り上げられたと思うんですけどね。一方で、単調になるのを避けようとしたのか、ある意味で映画史の伝説の人物であるレニ・リーフェンシュタールを登場させ、さらにそこにゲッベルスを絡ませるということもしていますが、これも主人公の物語とは別個に進行しているだけであり、あまり機能していません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-08-14 01:33:47) |
6. エターナル 奇蹟の出会い
《ネタバレ》 まさかロシア映画にこんなハリウッド・テイストなハッピー・コメディがあるとはね~。中身としては「サッカーの大会を早く切り上げて(負けて)自分の結婚式に行きたい」の一点集中なのですが、その集中ぶりが良い。そしてその中に、「子供たちとの信頼関係」「新婦に近づく元彼」「悪のラスボスとの対決」という課題を自然と盛り込んでいます。笑わせ方は王道手段ばかりなのですが、こういうのはそれでいいのです。まあさすがに、無理矢理全部収束するラストは相当強引ですけどね。 [DVD(字幕)] 6点(2023-06-15 00:26:25) |
7. エマニュエル・ベアール 赤と黒の誘惑
《ネタバレ》 エマニュエル・ベアールが少年に恋愛指南!という素晴らしすぎる設定なのですが、もう入口から意味不明なドギツメイクと下品な口調にげんなりしてしまいました。話が進むうちに、その辺も変化していって本来のベアールが・・・と何とか期待するも、それもなし。何でわざわざそんなもったいないことをするのかなあ。あと、一つのテーマになっているっぽいのが、ずばりSMです。ですが、それも入れたかったから入れた程度というか、つまみ食いレベルというか、大して機能していません。最後は唐突に切ない過去のお話っぽくまとまりますが、それもちょっと無理があります。 [DVD(字幕)] 4点(2023-03-22 01:06:28) |
8. エイリアン3
ひたすらジメジメしていて陰鬱で、覇気のない世界が続く。それはそれで後のフィンチャーの源流っぽいといえなくはないのですが、肝心の各登場人物に個性も魅力もなく、エイリアン自体も大して強そうに見えないので、緊迫感が全然ありませんでした。しかも、設定を刑務所内とかにしたせいで、閉塞感もまる出しです。映画的なものがあったのは、最初の漂着宇宙船の中の描写だけでした。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2023-03-21 02:24:53) |
9. 映画 ビリギャル
見る前は、アホギャルのアホ会話を延々と聞かされるのかなーとか思っていてあまり期待しておらず、導入部で割と長いナレーションが入ってきたときは、ああやっぱりと思っていた。しかしその後は予想外に悪くない内容でした。MVPは吉田羊さんです、この人ってこんなに自然な落ち着きと説得力のある演技ができたんですね。塾の先生という枠組をきちんと確立している伊藤淳史の役作りもなかなかです。それに助けられて、主演の有村さんも、気負わない伸び伸びとした演技ができています。脚本は数箇所余計なシーンもありますが、まあ許容範囲内です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-04-04 01:32:14) |
10. AMY エイミー
《ネタバレ》 早世したスターの映像関係は必然的に元の母数が少ないわけで、その意味からしても貴重。と言いたいが、前半は、もしかしたらスマホで撮っているかもしれないような、アングルも何も考えられていない日常映像の断片が続く。そしていつの間にかトップシンガーになっていたような感じで、その過程を忠実に追っているとはいいがたい。終盤には日付その他データ関係もいろいろ入ってきてドキュメンタリーっぽくはなります。その中でも、トニー・ベネットとデュエットしているときの彼女の無邪気な明るさには、何ともいえない気分になります。一方で「あの」ベオグラード公演の実映像がもたらす負のインパクトも強力です。彼女はライブなんかは実は元々嫌で、スタジオで誰の目もなく集中して歌っているときこそが幸福だったのではないでしょうか。判断と管理を誤った周囲の責任は重いです。 [DVD(字幕)] 6点(2021-09-10 00:52:27) |
11. エイミー(1997)
《ネタバレ》 よくまとまってはいますし、周りの人たちの変なキャラもいい感じ(車の修理ばかりしている2人組がツボ)なのですが・・・何かいろいろちぐはぐで、素材を生かし切れていないのです。まず、母親は常時ヒステリックな割に具体的な愛情を感じる場面がなく、少女が喋れなくなったのも4分の1くらいはこの母に原因があるのでは?と思ってしまいます。歌の兄ちゃんや少年はまだしも、頑固お婆ちゃんや変な姉ちゃんと少女が打ち解けている(っぽい)のも経過不明。精神科医や児童福祉局も含めて、登場人物をちょっと詰め込みすぎちゃったのでしょう。最後は追跡サスペンスみたいになって、主題の歌やそれに伴う心理描写がどこかに行ってしまっている。そうそう、少女の歌がやたらプロっぽいのも気になりました。●ただし、最後の多視点解明のトリッキーさはなかなかインパクトあり。そう、年少者の心理に何があるかなんて、大人からは想像もつかないんです。そこに焦点を定めた点には大いに意味があります。 [DVD(字幕)] 6点(2021-09-09 01:02:16) |
12. 映画に愛をこめて/アメリカの夜
映画製作の裏側をこれでもかというくらい見せて(再現して)くれるのは、それはそれで興味深いのですが、そのまんま何のひねりもなく最後まで行ってしまわれると・・・。鑑賞の対象が「この映画はどうなるのか」ではなく「作中の映画はどうなるのか」になってしまいます。ジャクリーン・ビセットの美しさを保存した功績に+1点。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-24 00:59:33) |
13. エリシャ・カスバートの ラブ・ゲーム(TVM)
《ネタバレ》 とりあえずこの邦題は「ニコール・キッドマンの恋愛天国」に匹敵するほど最悪でありまして、中身はラブゲームでも何でもありません。ギャンブルにのめり込んで着実に破滅してしまう女子高生(!)を対象としたものであり、かなり真面目です。ドラッグや酒にのめり込むというのは映画作品ではありましたが、ギャンブル転落を正面から描いたものって、意外と珍しいんじゃないのかな。で、そのように志は高いんですが、それを見落とす両親とか周囲が何とも甘いというかほとんど節穴で、それだけハードルが低いと、逆に破滅の生々しさが感じられないのがやや残念。ただし、オチは強力だと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2020-05-18 00:40:10) |
14. エクス・マキナ(2015)
AIがどうとか視覚効果がどうとかいう以前に、まず、あの会話群が心地よいわけですよ。「羊たちの沈黙」を彷彿とさせる、双方が分析と観察を脳内で駆使している、ガラス越しのやりとり。また、主人公と社長の間で展開される、斬り合い寸前の切り返しの連続。そして、ここがコケたら全部コケてしまう重圧の中で、ポイントとなる人工人間役をきっちり演じ切ったアリシア・ヴィキャンデルも見事でした。他方、全体的にカメラワークに今ひとつ冴えがないのが残念でした。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-12-29 01:16:28)(良:1票) |
15. エンジェル&インセクト 背徳の館
昆虫学者と屋敷のお嬢様の地味系恋愛譚・・・らしいのですが、ほとんどは何も前に進まないようなやりとりを延々と繰り返しているばかりで、制作者は何がしたかったのかが分かりません。お嬢様役にパッツィというのも、いろいろな意味で違うような気がするし、K・S・トーマスは全然目立たないし、マーク・ライランスもこの頃は棒読み演技だったというのにびっくりだし、役者方面にも見るべきところなし。 [DVD(字幕)] 3点(2019-11-16 22:29:13) |
16. エスケープ・フロム・L.A.
《ネタバレ》 何かもう、最初の超都合の良いナレーションだけで、もう見えてくるわけですよ。そして本編突入後は、どこまでも、全力で作り出したB級感まる出しです。突然意味もなく出てくるバスケットにもサーフィンにもグライダーにも、制作側には何の迷いもありません。大統領娘との関係がちっともいい感じにならないのも、作品の一貫性を高めています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-10-22 00:47:27)(良:1票) |
17. 映画 深夜食堂
中核登場人物はもちろん、カウンターに座る端役に至るまでの平坦で凡庸な造形。説明台詞以前の「説明」そのもののオンパレードの脚本(ナレーション含む)。調理の手元が明らかに別撮りなのを隠そうともしないカメラ。「そこでそんなことしねーだろ」ばかりの登場人物の行動の数々(多部未華子がいきなり調理場に突入して勝手に包丁を手にしている時点で、この監督には調理に対する何の敬意もないことが分かる)。一体どこを見ろと? [CS・衛星(邦画)] 0点(2019-03-15 00:30:13) |
18. エレニの帰郷
《ネタバレ》 あの大傑作「エレニの旅」との一連作ともなれば、期待半分、「いや、そう簡単にあのレベルには達しないはずだ」という警戒が半分なのですが・・・導入部から何か空回りし続きで、最後まで何も押し寄せてこない。展開を頭で整理すれば、かなり壮大な内容になっているはずなのですが、それが映像から伝わってこない。得意の長回しっぽい箇所もいくつかありますが、そうすべき必然性を伴っていないので、妙に軽い。やはり、現代パートは、最初と最後に固めるべきだったのでしょう(せっかくの過去パートがブツブツに寸断されているので、回想以下の扱いになっています)。 [DVD(字幕)] 6点(2018-07-07 23:31:22) |
19. エルダー兄弟
《ネタバレ》 中盤くらいまで、何をやっていても妙にのんびりした雰囲気が漂っていて。画面上では、4人を同一フレームに入れたショットが妙に多いのですが、つまり、せっかく4人いるのに、それがひとかたまりになっていて、個性が殺されてしまっているのです。罠にかけられて捕らえられるあたりは、一つの盛り上がりどころなのでしょうが、あまり反撃らしい反撃もしないので、さらに陰気な雰囲気が立ちこめてくる。橋での銃撃戦くらいからやっと面白くなってきますが、その後の個々の処理も割と雑でした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-11-21 02:02:00) |
20. 駅馬車(1939)
《ネタバレ》 前半の、いろんな立場の人が1台の馬車に収斂していく過程は、80年近く前の作品とは思えないほどの洗練ぶり。逆に、アパッチの襲撃以降は、その辺の心理の綾が消え去ってしまい、かえってもったいないことになってしまいました。まあ、演出者の意図としては、前半のじわじわした描写との対比をしたかったんでしょうけど。あと、登場人物の中では、うるさいだけで人間的魅力がなさそうな人(悪役であっても)が何人かいたのが残念でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-11-11 01:14:23)(良:1票) |