1. 浪花の恋の物語
《ネタバレ》 「冥途の飛脚」、つまり飛脚の物語なのだ。 有名な題だが、やっとその意味が分かった。 小生、一時期、郵便配達をしていたことがあったが、 その研修で現金書留に手をつけると犯罪と、何度も教えられたが、 江戸のころの、飛脚にもこんなリスクがあったと、改めてびっくり。 この映画のユニークなとこは、心中物で有名な近松門左衛門が、 この事件を見聞きし、新作のネタにしようとする点。 ラストが決まらない近松は、二人をなんとか幸せにしたいと考える。 そこで、運送途中のお金で、芸者を身請けして、逃走途中、 故郷に立ち寄り、父親がせめて自分の見えないところで捕まってくれと言い、 二人は逃げるというラストにしている。 これは、元の話では、男が捕まって、幕らしいが、 浄瑠璃や歌舞伎で、この話は何回も再構成、上演されることにより、 ラストが、逃げて終わりとか、捕まって終わりとか、いろんなバージョンができたらしい。 面白い!ただ近松を映画化するだけじゃなく、 近松がラストをどうするかというスリリングな要素を付け加えている内田監督の 力技に脱帽! [DVD(邦画)] 8点(2025-02-05 00:10:40) |
2. ナイロビの蜂
《ネタバレ》 レンタルで、サスペンスのコーナーに置かれてあったが、 この手のものにしては、銃撃戦とかもなく、人間がよく描かれてあった。 正義感が強く、革命気質の女性と、お役人体質の旦那の、ラブストーリーでもあった。 レイチェルワイズの神々しいヌードに感動♪ え?これ、ジョン・ル・カレなの?ええ!? [DVD(字幕)] 7点(2024-09-21 17:19:50) |
3. 長い灰色の線
《ネタバレ》 士官学校ものといえば、「愛と青春の旅だち」をすぐ思い浮かべますが、 あの映画の黒人の鬼教官は、このマーティですね・・ 鬼教官のもうひとつの側面が見られて、面白かったです。 しかし教え子たちは戦場へと向かいます。 そこで何が起こるか・・しかも相手が日本となると、観てる側は複雑な気持ちです。 教官マーティと士官のレッド一家の子弟を超えた親子のようなつきあいに ジョンフォードの巧さを感じました。 ポイント絞って、きちっと話を盛り上げるとこが見事です。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-17 22:14:12) |
4. ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
《ネタバレ》 今年のクリスマスの1本はこれ! 楽しい♪ キリスト教文化の結晶みたいなアニメーションです。 キャラクターといい、カボチャの王がサンタを誘拐するという設定といい、 本作は、あの国の文化の輝きが際立ってます! しかし、この映画にもクリスマスの幸せの日々は軍隊で守られてるというのがチラリと出てきますが、 あの国は、その幸せを壊した他の者には手厳しいのも確か。 他の国の子どもが小さい頃、これを観たら、強烈なインパクトに自分はどこの国の子じゃ?と悩むのでは・・ 例えば香港とか。そんな可哀そうな人がいるのでは?とチラリと思いました。 「ハウル」も、そんなんあるかも・・ スヌーピーで子どもの頃育った僕は、10点満点にしても良かったのですが、 同時にサザエさんにもお世話になったので、満点にできなかった(笑) [DVD(字幕)] 9点(2021-12-24 23:16:47) |
5. 名もなく貧しく美しく
《ネタバレ》 高峰秀子、「二十四の瞳」に並ぶ感動傑作。 聾唖者カップルの家庭の激動人生である。 健康な弟が足を引っ張るのが、スゴイ。 でも、それをこの二人は愛で乗り切る。 それが、電車の中での手話での会話。 騒がしい列車音もお構いなく、二人の間には優しいメロディが流れてたんですね。 ただ最後の事故は、キツイ・・ 僕が警備員の仕事をしていた時、声をかけてくれた通行人の人たちは、 こんな「名もなく貧しく美し」い人たちだったんだろうなぁ(シミジミ) [DVD(邦画)] 8点(2021-08-01 01:14:07) |
6. 凪待ち
《ネタバレ》 白石監督は、今、突っ走ってる。 「虎狼の血」「ひとよ」と、観てきたが、 事件よりも、事件の周辺の人間関係を丁寧に描き、 そして再生を歌う監督とお見受けした。 事件と、その再生。 ちょっと毛色は違うが、アメリカのジョンアービングと どこか似てると思った。 ギャンブル依存症の切れやすい青年を、香取君が全身で演じてた。 「台風家族」の草薙君、「半世界」の稲垣君、そして本作の香取君。 SMAPは映画界に大きな置き土産を残してくれたようだ。 [DVD(邦画)] 7点(2020-10-02 02:51:27) |
7. 茄子 アンダルシアの夏
《ネタバレ》 原作が、濃い作風になっているので、 この映画を観ると、原作の漫画が読みやすい。 驚くのは、50分の映画だが、ほぼ46頁の原作と内容が同じということ。 細かい部分まで同じ。 原作へのリスペクトと同時に、 50分の内容まで飽きずに見せられた、アニメ現場のレベルの高さ。 この監督は宮崎駿監督に鍛えられた人材とのこと。 大泉洋が声優やってたのが、新鮮。 [ビデオ(邦画)] 7点(2020-09-21 01:28:41) |
8. 何者
《ネタバレ》 令和版「就職戦線異状なし」という趣。 就活のリアルが感じられて良かった。 でも話は「認められる」というのはどういうことか?という方に話が行くのが新しい。 この青年も、演劇やってて、カミソリのような批評にグサリと来たんだろうなぁ。 それで自分の身を守るために、観察者になった。 しかし、だからこそ彼が演劇に向き合ってこその就活の勝利ではないかなぁ? (上から目線ですね‥スイマセン) でもどんな批評も対象を殺す、って何かで読んだけど、 愛のあるレビューを心がけたい。 [DVD(邦画)] 7点(2020-03-22 20:42:00) |
9. 七つの会議
《ネタバレ》 池井戸潤の作品、おっもしろいなぁ! サラリーマンの哀しさを描きつつ、こうあるべき理想を語る物語。 これも野村萬斎のユーモアさがあって、楽しく見れました。 次の池井戸作品が楽しみです。 [DVD(邦画)] 7点(2020-01-18 17:42:02) |
10. 楢山節考(1983)
《ネタバレ》 とにかくこの頃の日本映画は不評だった。 日本映画はつまらない、というのが映画を観ない人には常識だった。 その頃のカンヌを「戦メリ」と競い合って、この映画に軍配が上がった。 前半はそれほどの映画か?と思うのだが、観終わると感動がある。 舞台はいつの時代かは不明だが、貧しい山の農村。 そこでの姥捨てを描いた話だが、「生と死」というテーマは多いのだが「性と老死」というのは 今村監督ならではのユーモアというかセンスというか・・ 戦後、アメリカ文化がどっと流れ込んでくる中で、多くの映画監督がアメリカ文化に影響を受けたが、 今村監督はセックスを果敢に映画にとり入れた。 そもそもがセックスの日本語訳はないので、日本に相性のいいものかどうかは置いといて、 前半はとにかく童貞喪失のドタバタが続く。しかしそれは山の生活を描写するためで、 本筋は後半の姥捨てである。 もう坂本スミ子と緒形拳の別れのシーンはもう涙なしでは観られない。 カンヌを取ったのもうなづける逸品だ。 [DVD(邦画)] 7点(2019-09-21 18:32:32) |
11. 長屋紳士録
《ネタバレ》 小津さんの映画は、ほっこりするね。 昭和の戦後の高度成長の頃だろうか? 出稼ぎで上京してきた親子の子供がはぐれて、長屋にお世話になる。 まぁそういう話なのだが、この頃は本当に貧しくて、ルンペンと言われるような 乞食のような子供もいたから、長屋の人たちは、最初は子どもを邪険にする。 ところが強情なのだが、どこか憎めないこの子に、情が移って来る。 最後のおたねさんの涙の訳を聞いて、長屋のみんなは「ほう」と思う。 分かれて悲しくて泣いたのでなく、その子供がどんなに嬉しいだろうか、思って泣くのである。 もうこういうハートの分かりやすい映画は昨今ではないねぇ・・ [ビデオ(邦画)] 8点(2019-08-09 14:34:14) |
12. 内海の輪
《ネタバレ》 清張映画。 岩下志麻の体当たりの全力演技が光る。 絶叫、嗚咽、放心。 特に不倫道中ラストの方の蓬莱狭の場面。 ヒッチコックぽくてイイ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2019-04-29 20:38:28) |
13. 永い言い訳
《ネタバレ》 面白い。そして良い!最初は、日本版「チョコレートドーナツ」かと思ってた。奥さんを亡くした二人の男が、なんか本木君なんかもうゲイっぽくて疑似家族みたいに見えたから。子役がいいね。かなり異質なおじさんの存在を、軽く自然体で受け入れてる。そのやりとりがもう絶妙で。巧いなぁと感心して観てた。でもラストまで来ると泣けてきてね。これは数々の巨匠たちの名作を超えてるよと思った時に、はたと気がついた。そうか!男の映画監督が創る「空っぽ」人間たちの織りなす数々の名画は、女性から見れば、「永い言い訳」に過ぎないんだと思ったわけ。やられた~って感じを受けたなぁ。西川美和は、「蛇イチゴ」の時から、切れ味のある監督だなぁと思ってた。その後、色々試行錯誤繰り返してたみたいだけど、ここに来て、また初期の切れ味を思い出させるような、名作を創り上げた。大体、男を描くなら女性が創る方が有利なんだけど、それでも見事だよね。もう一度言います。面白い。そして良い! [DVD(邦画)] 8点(2017-07-08 04:58:02) |
14. なごり雪
《ネタバレ》 最近、大林映画に興味がある。この映画では大林特撮ワールドは、すごく抑えられていて、とても初々しい女性の映画だった。最後の駅でのベンガルの号泣は、国民的ソング「なごり雪」の歌詞の名セリフのためではなく、親友(三浦友和の扮してた役)の死を直感したためではないか?と思った。奥さんと親友を一気に二人亡くした、その物凄い孤独に襲われたためではないか?そんな風に思った。それにしても方言なかったね。同じ九州人として、観終わってあれ?そういえば九州弁は?と思った(笑) [ビデオ(邦画)] 7点(2016-12-11 00:03:03) |
15. ナイトクローラー
《ネタバレ》 サングラスをかけた姿がもうタクシードライバーのトラヴィスだもんね。もう創り手が意識してることアリアリ。話は面白かったけど、もうアメリカでは、ヒーローになって、町のみんなから握手を求められるのは、勝利ではないんだね。それよりも起業して、会社を大きくすることの方が価値は上のような国になってしまったのかなぁ。金なんだろうね。この主人公の行動が、それを意味してるもんね。ある意味、アメリカはベトナム戦争の頃より病んでるのかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-16 16:59:00) |
16. 眺めのいい部屋
《ネタバレ》 まったく少女というものは、周囲が鬱陶しくなるくらいの瑞々しい感性を持ってるくせに、自分に嘘をついた結婚に飄々と突き進む、怖いくらいの鈍感さをも持ち合わす。まったく正しいかどうか分かんないなら、結婚なんかせずに生きなさいヨ!と説教の一つもしたいもんだが・・。全く今の世、どのくらいの若夫婦が「?」を感じることか・・。それで生まれた子どもが気の毒だよ、などと思うのは、独身貴族のまま、中年の終わりに差し掛かったおっさんの愚痴なのだろうか。身持ちの固い金持ちやエリートから、下品な人ねと蔑まされても、嘘は嘘だよ、と言える嫌な年寄りになりたいものだ。見よ!この映画のラストの、主人公の女性の生き生きとした表情からこぼれる輝く笑顔を!演技と分かってたって、やっぱり嬉しいね、こういうラストは・・。 [ビデオ(字幕)] 8点(2014-10-09 05:18:37) |
17. 夏の嵐(1954)
《ネタバレ》 敵兵と恋に落ちる?う~ん、そこでもう、感情移入ちょっとできなかった。映像は、さすが貴族の出。今でもきれい。当時のインパクトはすごかったろうと思います。フランコゼッフィレリ、ヴィスコンティの助監督だったんだね。「ロミオとジュリエット」の完成度に深く納得。 [ビデオ(字幕)] 6点(2014-07-03 21:31:55) |
18. 嘆きのピエタ
《ネタバレ》 もう何で韓国映画って、こんなに凄いの!?社会に訴えかける物語の創り方を完全に消化して、使いこなしてるもん。後ろめたい人が、お金を消費しに来てる文化とは、レベルが違う。本当に社会の問題点を深く見つめた上での問題意識で成り立ってる。キムギドクってキツイんだよね、すっごく。だけど、そのキツさの向うの、浄化された世界を見事に映像化しちゃうんだよね。「春夏秋冬」とか「弓」とかさ・・。だから、キツイ場面にも耐え甲斐があるんだよね、最後まで観ると。しかも教訓めいた展開にするのか?って思ったら、もう一捻り加えて、ドラマにもしてしまう。分かんない人にも、それなりに面白く観てもらうためにサービスするんだよね。キムギドクは若いんだよね。それに驚いちゃう。韓国の潜り抜けてきた世界がいかに半端ないか、分かる。この国、侮ったら、いかん!コワイよ、俺は・・。 [DVD(字幕)] 10点(2014-01-18 23:11:45) |
19. ナインハーフ
《ネタバレ》 ウォール街などの非人間的な仕事につく人間のおかしな部分をすぐさま取り入れたエイドリアン監督。「フラッシュダンス」で僕らの世代には神様みたいな監督だった。だから影響も大きかった。そしてこの映画のせいで女性関係がむちゃくちゃになった知人がいる。文化のもたらす毒というものを真剣に考えるべきかもしれない。よく映倫通ったな~!!まっとうな人間が眉をひそめるシーンをもっと大きく描写すべきだった。ラスト、一人の女性をここまで貶めた、この男がもっとひどい仕打ちを受けるとこまで描くべきだった。元夫がおかしいと感じて、行動するとこまで描くべきだった。じゃないとこんな壊れた男女関係を、思春期に見た人間がどうなるか?この後、「運命の女」で似たような話を創り、ちゃんとした映画にエイドリアンはしたてている。やはりお叱りを受けたんだろうね、いろんなとこから。まったく!(・・と言えないほど、酷い事態になってんだよね、俺の知人) [DVD(字幕)] 6点(2013-05-04 01:46:00) |
20. ナッシュビル
《ネタバレ》 ついにこの映画を字幕で観ることができた!!ニューシネマ好きの自分にはホント嬉しい。輸入盤はもっていたが、群像劇なので観ても分からないだろ、と思ってた。それが某レンタル会社の企画でついに鑑賞することができたのだ!最初は、登場人物が多いので、誰に感情移入したらいいのか分からなかった。まずはショービジネスの舞台裏で話を引張り、そして中盤では音楽の内容で見せ、そして終盤、それぞれの登場人物が行くとこまで行くのだ。プレイボーイはついに堅物の女性を落とし、音痴の夢見る女性は町の有力者の前でストリップをやらされる。心の弱い女性歌手は最後、銃で撃たれる。なんとまぁ凄い映画だった。ルメットの「ネットワーク」にどこか似ている。ニューシネマのもつ華やかな世界への疑問。それがこの映画にもよく表れている。当初は8時間の映画だったらしい。それをどんどん短くして行って、2時間40分にまとめたのだ。いやはや、よくまぁここまで短くしたわ。ちゃんと人物が描けているし。アルトマンの群像劇への感性が飛躍した、記念すべき一本だ。たまらんです。 [DVD(字幕)] 8点(2012-02-12 02:44:28)(良:1票) |