1. 女狙撃兵マリュートカ
《ネタバレ》 よくまあこれだけ帝国側に温情ある作品を描いて共産党にパージされなかったなあ、と思える作品(とは言え、後々の「君たちのことは忘れない」という作品で監督は完全に失脚したらしい)。自国の成立がいかに栄光の歴史に彩られていようと、どうしても戦争はいやだという立場に立って描かれた作品。ロシヤ革命は、男女の平等を訴えて婦女層の支持を得たが、そのために殺戮がなされることに何の意義があるんだ?という懐疑は、男女問題でズタズタに分裂させられた今の日本に住む僕が見ても、その意義を失うものではない。兵士マリュートカは、女でありながら小隊一の狙撃の名手。その初めて殺し損ねた男をアラル海経由で護送する途中船が転覆してしまい、小島に打ち上げられた2人は束の間の停戦を手にする。そこでこの男の平和を願う心、その知識の広さなどに打ちのめされる。それにもまして、敵であるはずのこの男が誰よりも一人の人間、という風に見えてしまうのだ。この男に初めて恋心を抱くが、敵味方の間柄で叶う筈がない。白軍の捜索隊がやって来て、男がそこに向かって行く所でマリュートカは彼を射殺してしまう。自分のした業の取り返しのつかなさ、そして、労農赤軍への忠誠の空しさをいやというほど余韻に残しながら話は終る。 9点(2004-07-29 20:31:18) |
2. 王様のサンドウィッチ
《ネタバレ》 絵はかわいらしいが痛烈な文明批判。この映画と前後したペレストロイカによって旧ソ連は市場経済になるが、この文明批判は資本主義もソ連型社会主義も根は一つ、と言っているだけに、ソ連批判に留まらずその後の西欧化にまで批判が生きたことで、この監督フルジャノフスキーはローカルな監督に終わらなくなった。 一個のサンドウィッチを作るためには膨大な人員が資材獲得の為に動き、それで得られる物は一人の一食にも満たない。それを王様は「ワシのことをワガママだと言ったものはいない ワシは朝食においしいサンドウィッチを食べたいだけなんだ」と言う。確かに王様はサンドウィッチを作るために領土を侵略して来いとか略奪して来いとは一つも言っていない。 「ワシのことを独裁者だというのか?!」というセリフも、自分がたいしたことをしていないと思っていることを示している。そんなことを言いつつも王様はふて腐れて閉じこもって国政をおっぽり出したり、あとでバターが手に入るとそこにいる人皆に勲章をあげるという無茶苦茶ぶり。市場機構は巨大で、ましてその頂点に立つ人がどうしょうもない人だったらどうなってしまうのか?! なおこの話では資本主義経済の社会分業を分業者を牛や何かに置き換えて漫画化している。この辺資本主義化もペレストロイカの影響なのだろう。 7点(2004-06-28 10:04:32) |
3. おろしや国酔夢譚
僕は面白かったですよ。同朋が異国で足をなくしたシーンなど悲劇の極みです。ただ映画ではなくて1年もののテレビドラマ向けのネタであるのも本当。 この映画を見て光太夫記念館にも行きました(小学校の一室。近畿日本鉄道・名古屋線&鈴鹿線 伊勢若松駅より徒歩15分)。鎖国時代ロシヤに流された人々ってだけでも絵にしてみたくなりますからね。この手のものは今の所映像もないですし。 冗長なのは原作の方にも非があると思います。 9点(2004-06-19 12:08:25) |
4. お姫様と怪人
《ネタバレ》 短編。同じ人物を使って可愛い性格・乱暴な性格2通りの性格を演じさせる構図。反転の際映像が巻戻されていくのがいい。音楽も前後編とも同じ旋律を使う。 お姫様はどっちの編でも怪物の穴に落ちてしまうが、どっちにしても食べられない。理由はどっちも王女の性格によるとされるが、僕は違うと思うぞ。はっきりいって「王女だから」食べられなかったんじゃなかったのかなと僕は勘ぐる。 7点(2004-06-13 01:36:13) |