1. オリエント急行殺人事件(1974)
《ネタバレ》 ※原作ネタバレあり、2017年版のネタバレあり注意 原作既読。2017年版視聴後。 2017年版と比較すると、こちらの方が原作に忠実であり、原作を映像化した作品として、純粋に面白いと感じる。 冒頭のデブナムと大佐の会話をポアロが偶然聞いた場所とか、伯爵夫人に「H」について尋ねる場面は客室の中とか、本当に細かいところは原作と異なるが、これは映画の尺の都合でそうした、という理由で十分納得でき、重要な点について重要な改変は行われていないため、問題ないと感じる。 大筋、重要点、及び大部分の細部において原作どおりなこちらの作品の方が原作を読んだ者としては好感が持てる。 第一の推理(外部犯説)と第二の推理(全員が犯人説)についてどちらを採るかについては、原作では列車の重役と医師の2人の判断に任せられる。 ポアロは警察でもなければ検事でもないため、真実を探求したにすぎず、自らその後どうすべきかの結論を下すことはせず、2人に任せる。 この点、2017年版ではポアロ自身が「第一の推理を採る」的なことを言ってしまっているのはマイナス点。 一方で本作では原作にほぼ近いが、私個人としては、それまで合理的かつ理性的で、躍起になって乗客犯人説を推していた医師が、事情を知って最後に「まあ私の検死結果もたまには間違えることもあるかもね」的なことを言って第一の推理を採る、という最後の描写が非常に好みであるため、その描写が無かった点だけはちょっとだけ残念。 「実際に殺人が犯されており、犯人も特定できてはいるが、その犯人が裁かれない」という見え方もする、というのは事実であるが、原作者アガサ・クリスティーはコナン・ドイルのホームズシリーズが大好きだったらしく、ホームズ作品でもそのような結論で幕を閉じるエピソードが少なからずあるため、本作もそういうところが取り入れられているのかな、と思ったり。 また、本エピソードは実際に起こった事件を元にしているらしく、現実世界では誰の目から見ても残酷で犯人を許せない事件という世間的感情になっている中、事件に関係する12人が陪審員12人に成り代わり裁きを下す、というifの世界を描いた物語である、という点も、(これは個人の好みになるであろうが)私にとっては好みである、と感じられる作品である。 [DVD(吹替)] 8点(2024-08-24 22:12:59) |
2. オリエント急行殺人事件(2017)
《ネタバレ》 <原作のネタバレあり> 原作既読。映像化されたオリエント急行を見たのは本作が初。 上映時間の関係からというのは当然あるだろうが、それ故「本来は別の人だった2人(医者と大佐)が1人にまとめられている」「1人ずつ話を聞く過程の詳細が省略」といった作りになっている。 原作は「事件発生→クローズドサークルなので警察等外部の協力者の手を借りられない→1人1人丹念に話を聞く→答を導き出す」というもの。 ポアロは元々会話によってそれぞれの不審な点に目を付ける、矛盾に気づく、要素を繋ぎ合わせて1本の線にする、という型の探偵。 故に「1人1人からしっかり話を聞く」という原作の描き方が重要かつ面白いポイントになるわけだが、そこが省略されていたのはまあ仕方ないとはいえ残念。だったら冒頭のシーンとか謎に追加されてるアクションシーンとかバランス(卵やネクタイ)のくだりとかを入れなきゃ良かったのでは、と思ってしまう。 また、原作は「殺されたラチェットは社会的にとんでもない悪党であり、アームストロング事件を知る者すなわち世間一般の全員から嫌悪される対象で、例の事件を起こしながらも金の力で無罪判決を得た。それ故事件に強く関係した人物12人が陪審員12人に成り代わり、ラチェットに社会的制裁を下す(死刑を執行する)」というもの。 本作の描き方でも結果としては変わらないが、そのくだりの主張が相対的に弱く感じる。 また、ポアロは警察でも検事でもないため、「真実を明らかにする」ことを目的とし、行動する。つまり、真実は明らかにするがその後犯人をどう扱うかについては自分の関与するところではない、というスタンスであるため、原作では本事件が成り立つ「推理A(外部犯説)」「推理B(全員が犯人説)」を提示するが、そのどちらを取るか、どういう裁定を取るかは責任者であるブークと検死を行った医者(原作では犯人の1人ではない)に委ねる、という形になる。 原作では、それまで理知的で合理的だった医者が、最終的に事件の背景、事情が明らかになり乗客たちの心情に触れたことで、「まあ私の検死結果も完璧ではなかったかもしれませんね」と言い、つまり12人の乗客の心情に傾く形、推理Aを取る形で幕を閉じる。 しかし本作ではポアロ自身が「今回は推理Aのパターンとしていいでしょう」としてしまっていて、それだと話というかキャラというかスタンス違うことになっちゃいません?と思ってしまった。 その他、原作では夫人にナイフが刺されるくだりは無いし、凶器の発見のされ方も違うし、夫人はペラペラ娘のことを喋りまくるお喋りおばさんと思わせて実は稀代の名女優だった、といった点も異なるため、結論は同じでも見え方が異なる。 マックイーンもアームストロング事件に関与する一人で計画のためラチェットの秘書になった人物だったはずだが、本作の場合横領という謎概念が入った結果そういう描かれ方がされていなかったような。それだと「社会正義を下す陪審員12人という強い信念を持った12人」じゃなくなっちゃうのでは?と思ったり。 原作は「犯人は1人、せいぜい共犯で2人という先入観があるでしょ?」という古典推理小説のメタを利用したところに名作と呼ばれる所以の1つがあり、それ故原作の超序盤で描写される「刺し傷が12か所、しかも右利きの刺し傷と左利きの刺し傷があり、致命となる深い刺し傷(男の力じゃなきゃ無理な傷)もあればかすり傷程度の刺し傷もある」というのがまさかそのまんま答(シンプルに12人が別々に刺しただけ)だとは思うまい、という点が衝撃ポイントだったはずで、原作が発売された当時、ある程度当時の推理小説を読んだ後で、当時の先入観がある状態で読んでみたかったなあ、と思わせる作品の筆頭だな、と感じます。 [インターネット(吹替)] 7点(2024-08-04 02:08:50) |
3. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 ■飛行機で視聴。従って吹替。いつもは字幕なので違和感がありましたが、吹替もまあ無くは無いのかなといった印象。もう一度3D字幕で見たい気がしています。 ■宇宙ものという観点からは、「2001年宇宙の旅」「アポロ13」「ゼロ・グラビティ(映像的に)」「インターステラー」の方が私的には好みですが、本作も決してつまらないというわけではない、という印象です。これからはジャンル「宇宙もの」が来るのでしょうか。楽しみな限りです。 ■本作は「宇宙(というか火星)でサバイバル」という点が新しく、アドベンチャー要素が強いです。中盤くらいまで火星に取り残されたデイモンさんのサバイバルっぷりと他のNASAメンバー特に司令部視点を交互に描き、後半ないし終盤あたりで両者合同の作戦にて地球への帰還を目指す、という作り。政治色も絡むけど、薄め。中盤まではあまり動きが無く淡々と進んで行き、逆に後半は「そんな無茶苦茶な」というくらいの動きの連発です。「アドベンチャーものの舞台が宇宙になった版」というのがしっくりきます。 ■マイナス点として、まず深刻さが無いです。主人公のキャラクターがどうとかではなく、取り残された後の火星にも探索の拠点やら設備やらが普通にあるので空気あり食料ありコンピュータあり車ありシャワーありだったり、ジャガイモ栽培にあっさり成功しちゃったり、割と簡単に水を精製しちゃったり、しれっと通信できちゃったり。問題は起これど、全然死ぬ気がしない。あと後半について、宇宙素人の私から見ても「さすがにあり得なくないかい?」と思ってしまった点がいくつか。いくら時間がないとは言っても適当に作戦決めすぎでは?宇宙服に穴開けて推進力で、ってそんな都合よく飛べないのでは?等々。 [地上波(吹替)] 7点(2016-02-11 23:57:32) |
4. オール・ユー・ニード・イズ・キル
《ネタバレ》 面白かったです。が、何回か見直す必要がありそう・・・。 こういうタイムループ系の作品は、①設定を理解し②その上で矛盾ないし不自然な点がないか、というところが面白さに直結すると思います。特に、本作のような終始シリアスな作品は、条件設定にツッコミどころがあれば全てが台無しになる、というリスクがかなり高いと思います。その点、「時をかける少女」よりも「デスノート」に近い感覚を覚えました。 アルファが殺されればオメガが時間をループさせる、アルファの体液を浴びる(取り込む?)とタイムループできるようになる、いう設定は、相当に重要なポイントな気がします。オメガからすれば自分を守るためには目となり矛となり、ループの条件になるアルファが必要だけど、もし人間がアルファの体液を浴びるようなことがあればループ人間が誕生してしまう・・・。上陸作戦が先読みされていたことからも、ギタイはループしている=アルファが殺されているわけで、そんなことを繰り返していたらどの道いつかはループ人間がゴリゴリ誕生していたのでは、とか思ったり。あと主人公視点で、自分ひとりで何とかするんじゃなくアルファの体液を他の仲間にも浴びさせることを目的としてみるのも面白いのでは?とか思ったり。 本作で違和感を感じたのは、車からヘリの一連のシーン。タイムループ系の作品でやっちゃいけないのは、「ループ能力の持ち主(主人公)が私利私欲に走る」ことだと思います。実際に行動しなくても、匂わせた時点でアウトなタブーのレベル。で、ヘリのシーンではそれが垣間見えてしまったんですよね。「リタから見たら私利私欲に見えるが、主人公は本当に心からリタを助けたかった」とは言い切れない違和感・・・。わざわざあんな状況になってる時点で非合理な印象を受けます。それ故に逆に「ミドルネームはローズ」は上手いですね。 [DVD(字幕)] 7点(2015-02-15 00:14:24) |
5. オレゴン魂
《ネタバレ》 「勇気ある追跡」よりもこちらの方が好みですね~。キャラクターにしても展開にしても映像にしても全て上回っている印象です。 ルースターは太っちょジョン・ウェインにはハマり役な気がしますね。若かりし頃のイケメン版ジョン・ウェインがこの役を演じたら全く別物になってた気がする。冒頭から腹の出具合をイジる感じは素晴らしい。みんな思うよね、うんうん。的な。ガトリングをぶっ放すシスターも良い味だしてました。某天使系映画の俗世に詳しい院長の姿が思い出されます。あと聖書の引用はよくありますがここまで面白いと思って聞けたのは初めて。邪道なのかはさて置き、上手いこというもんだなあ、と。 展開も追う側と追われる側が良いタイミングで切り替わり飽きませんし、何より各シーンの風景がほんと素晴らしいですね。そのまま絵葉書とか壁紙とかに使えそう。野原と河と森と山と青空がひとつの画面の中に・・・。彼らの仲間に加わりたくなりました。 [DVD(字幕)] 7点(2014-05-26 22:01:49) |
6. OK牧場の決斗
2周目鑑賞。1周目観た時はこの一連の事件や登場人物はおろか西部劇自体も全然知らない状態だったため、シーンが切り替わる度に誰が誰でどういう立場の人で・・・とかいちいち考えながら観てた。そのため中身に入り込めず、状況も把握しきれず、退屈に感じてしまった記憶があります。当時の印象だと5点。しかし今観るとアープ→兄弟あり保安官、ドク→医者ギャンブラー銃の名手病気持ち、クラントン→敵・・・といった前提情報があるため、素直に中身に入り込めました。 荒野の決闘に比べるとこちらは娯楽性が強く、見た目も含めアープとドクのキャラが立っていてグッドな気がします。私はどちらかというと前半~中盤にかけてが好みで、二人の気の利いた細かい会話がすごく好きだったりします。アープとドクそれぞれの、先に情報を与えるが見返りはゲットできず、といったところとか上手いですね~。ただなんといってもドクのパートナーのケート。彼女の魅力は1周目も2周目も最初っから最後までまっっったく理解できませんでしたね・・・ [DVD(字幕)] 7点(2014-02-16 05:00:08) |
7. 大いなる勇者
うーん渋い。渋すぎる。良曲と山の大自然を背景にした情緒溢れる物語・・・なのですが、情緒溢れすぎて私には今一つピンと来ず。深いテーマがどうこうじゃなく、ストレートに山で生きた男を描いた作品、と見れば良いのだろうか。とりあえず、最初から最後まで山の中というのは予想外だった。 [DVD(字幕)] 4点(2014-02-04 23:41:55) |
8. 大いなる男たち
う~む自国をヒーロー側にもってくるところがさすがアメリカですな。しかも劇中2回も。立場が逆で、北軍側が南軍に助けられる方が良かった。あれだと「仲良くしてやってもいいぜ?」「俺たちって器大きいだろ?」になっちゃうような気が・・・ 全体としてはほぼまったりほっこりな男の友情映画ですね。次第に友情が芽生えるとか立場を超えた恋愛とかはベタ中のベタ。特徴的なのは3000頭の馬の大移動や大量の馬が入り乱れての戦闘シーンで、何よりその画がすごかった。「赤い河」の馬バージョンですなw [DVD(字幕)] 5点(2014-01-26 02:06:41) |
9. 大いなる西部
《ネタバレ》 いやー面白い。58年の映画なのに現代の価値観で見ても面白いと言える映画です。むしろ現代の価値観で見られた方が理解が得られるのかも。 この映画のテーマは、価値観の違い。理屈面重視か感情面重視か。西部の人たちとは違う価値観をもった東部から来たマッケーは、簡単に言えば「ビッグマディーの資源を平等に使えばこの争いは無くなるはず」という発想のもと行動を起こす。また、「表面だけ取り繕っても大した意味はない」という考え方ももちます。しかし、マッケー以外の昔から西部に暮らす人々にとってはそうではない。パットが主張したようにプライドや見栄、「周りからどう見えるか」といったことを重視します。最初は相反するマッケーと西部の面々ですが、物語が進むにつれ多少なり相手の考え方を尊重・理解するようになっていく。マッケーとリーチの喧嘩シーンからのその後のリーチの変化、最後のテリルとヘネシーの一騎打ちをマッケーが止めない点などにそれが表れています。 なお、好きになれなかったのはパット(とバック)。マッケーが馬鹿にされることによって「自分が」どう思われるかということに終始こだわる点、喧嘩別れしかけたがマッケーがビッグマディーの所有権を得ると知るや否や態度を翻す点(シーン的に誤解だったと気付いたからともいえるが、ちょっと違和感)、しかしマッケーがビッグマディーの資源を平等に分け与えると聞くや否やまたも態度を翻す点など、おいおいという感じでした。 [DVD(字幕)] 8点(2013-12-16 20:33:31) |