1. バーフバリ 王の凱旋
《ネタバレ》 前作では、回想シーンが長すぎて1作では終わらなかった、という驚異のバランス感覚の無さがいかんなく発揮されていたのだが、2作目の本作に入っても回想が延々と続く。何と、約1時間50分!残り30分しかないのにどうするの?というさらなるバランスの悪さ!しかも回想のうち30分くらいは、父バーフバリとデーヴァセーナが出会って恋に落ちるくだり「だけ」に遣われるという徹底したバランスの悪さ!そして前作では命がけの滝登りまでしてめぐり会った運命のアヴァンティカは、回想で出ないのは仕方ないとしても、いざ現在に戻ってからは、ほとんど出番がない上に戦闘シーンでもほとんどモブ扱い!あと、あの伯父さんは、悪辣ぶりではバラーラデーヴァと大して差がないんじゃないかと思うんだけど、最後はしれっと宮殿に残ってなかった?等々、まあ、突っ込むこちらの気力の維持も試される作品です。その辺の迷いのない歪みぶりを愛おしく感じます。水増し感ありありのCG戦闘シーンなどはどうでもいいです。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2025-03-24 00:59:04)★《新規》★ |
2. 幕末純情伝
これは何がいけないかというと、制作側が「自分たちで笑ってしまっている」という点です。「こんな感じにしたら面白いかもねーアッハッハ」とか身内でウケながら作ってしまった感満載です。だから、見る側はただ醒めるだけになります。こういう史実逸脱系突拍子もない作品だからこそ、ベースの部分はしっかり真面目に作り込まないといけないのにね。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2025-03-18 22:58:35)《新規》 |
3. バーフバリ 伝説誕生
《ネタバレ》 導入部の赤子を救うシーンで早くも表れる仰々しさ(そしてそれを裏打ちする母の誇り高さ)。真剣に戦っているはずなのに、武闘に紛れて服を脱がせ(!)、さらには化粧まで施し、そのまま恋に落ちるという、ご都合主義というフレーズすらもどかしいくらいの都合の良さ(一直線の迷いのなさ、とも言う)。回想シーンが延々続いて本編を凌駕しているというバランス感覚の悪さ。まさにインド映画の本領発揮、と言いたいのだが、難点は、肝心のクライマックス戦闘シーンがCGまる出しで、作り物感満載だということ。それを溢れ出すほどのエキストラで何とかしていたのがインド映画ではなかったのか。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2025-03-12 00:56:25) |
4. 裸の拍車
《ネタバレ》 冒頭、奇襲攻撃かと思わせてあっさり間の抜けた会話に突入する。するすると話が進む中で、自然と5人組が形成され、しかも立ち位置もはっきりしている。これはさぞかし押し引きの心理戦が、と大いに期待させる導入部だったのですが、その後は意外に話が広がりませんでした。一番の問題は、ジャネット・リー扮するリナを(キャラとしても役者としても)使いこなせなかった点じゃないかな、終始キーキーうるさいだけだし。この5人の設定だったら、この人こそが一番のキーパーソンになるべきだったのではと思います。もっとも、それとは別に、重要なシーンで垂直な岩場をじっくり使いまくり、西部劇らしからぬ息苦しさすら感じさせる演出は見事でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-12-27 00:20:21) |
5. 拝啓総理大臣様
《ネタバレ》 渥美清がベタベタの関西漫才師!その相方は長門裕之!という無茶極まりないキャスティングなのですが、これがもろに大外しで・・・。渥美さんは台詞はしっかり入ってるんですけど、演技のノリは完全に江戸っ子ですし。そもそも作品の内容自体がかなりいい加減で、なぜ漫才師を選んだのかも分からないし、周辺登場人物の存在理由も分からない(山本圭の無駄遣いぶりにも絶句します)。もし無名の人たちばかりで作られていたら、むしろカルト作品として語り継がれたのではとすら思ってしまいます。タイトルも最後に無理矢理こじつけているだけで、意味がありません。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2024-08-30 00:28:42) |
6. パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ
ニューヨーク・パンクの生ける伝説、パティ・スミスのドキュメンタリーです。全体の構成は、11年間にわたって撮影された各映像が並べられているというもので、特に体系立てられてはいません。また、ライブ映像は少なめで、ちょっとした身の回りの風景が多くを占めています。しかし、いろいろ整理されたり刈り込まれたりしているよりも、こういったランダムな散りばめ方の方が、この人の場合は適しているという気もします。また、そこに被さってくるのが自作と思しき詩の朗読で、ミュージシャンであると同時に詩人でもあるこの人ならではの作り方になっています。 [DVD(字幕)] 6点(2024-08-03 21:19:09) |
7. ハッシュ!
すべてが作為的です。特にヒロインの造形と描写にそれが顕著です。いかにもはみ出しキャラを作り出そうとして、かえって型にはまりかけています。撮り方としても、長回しが何か所にもわたって登場しますが、それほど機能しておらず、むしろ作品自体の停滞感を醸し出しています。唯一の見どころは、兄嫁役の堅実な存在感と演技だったのですが、誰だろうと思っていたら、秋野暢子ですか! [CS・衛星(邦画)] 3点(2024-07-12 00:51:50) |
8. 華岡青洲の妻
《ネタバレ》 秀子ちゃん姑と文ちゃん嫁(実は役者は9歳しか違わない)は、ギャーギャー対立するわけではなく、微妙な距離感を保ちながら、反発したり、時にはひっそり共感したりする。こういうところは、今日の映画制作でも見習ってほしいところです。そして雷蔵の青洲は、妻と母から「是非私で実験を!」と迫られると、断固拒否するかと思いきや、あるは深く思い悩むかと思いきや、ちょっとくらい駄目とは言うものの、割とあっさり了解している(この押し引きの呼吸が絶妙)。こういうところは、今日の映画制作でも見習ってほしいところです。安直な演出だったら、ここぞとばかりに言い合いが展開したり、青洲の種々のアクションを入れてみたりするはず。そうじゃないからいいのです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-04-16 01:21:29) |
9. ハードエイト
《ネタバレ》 何かが起こりそうで起こらない、程良いスリルで引っ張る前半はなかなかの内容でした。モーテルの一室で延々続く中盤も、いい感じの盛り上がりになっています。しかし、そこまでと比較すると終盤は特にひねりがなく、ジョン・Cとグウィネスが消えてしまったこともあって、収縮した終わり方になってしまいました。最初に凄腕ギャンブラーという仕込みがあって、しかもこのタイトルなのですから、その辺で何かなかったのかと思ってしまいます。ただし、P・B・ホールの終始安定した存在感はさすがであり、ほかにあまり主演作が見当たらないのが不思議です。あと、エンディングテーマがエイミー・マンとマイケル・ペンの夫婦デュエットなのはポイントが高い。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-02-29 00:22:02) |
10. ハーフネルソン
ダメ中学教師と女子生徒のどうのこうのがやりたかったんだろうけど、そもそも主人公がうじうじナヨナヨしているばっかりで、前提となるべき「生活」も「行動」もないので、結局何も起こっていません。女子生徒の方も、ただ喋っているだけで、やっぱり演技力が低いんじゃないかな・・・。輪をかけて、フラフラ落ち着かないカメラが、ドラマの醸成を阻害しまくっています。見どころといえば、まだ駆け出しだった頃のアンソニー・マッキーの出番が割と多い点くらいでしょうか。 [DVD(字幕)] 3点(2024-02-03 01:19:27) |
11. 8年越しの花嫁 奇跡の実話
《ネタバレ》 それなりに特殊な症状ではないかと思われるのに、医学的な説明なり描写がほとんどない。覚醒した後の主人公の認識や記憶はどうだったのか(そもそも昏睡中の出来事に意識はあったのかなかったのか、なかったとすればどこをどうたどって社会生活への回復を遂げたのか、とか)が、まったく無視されている。つまり、「婚約者の存在だけ忘れている」という設定に飛びついているだけ。8年も見守り続けるというのは相当な苦労だと思うが、それについての主人公の葛藤や労苦が見当たらないので、むしろあっさりこなしているように見える(ないならないで、何が主人公の原動力や後押しとなったのかという要因はあるのではと思うが、それもない)。つまり、全体的に、エピソードの上辺だけをまとめたものにしかなっていないのです。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-12-02 00:54:06) |
12. ハラスのいた日々
《ネタバレ》 中盤までがえらく年数飛ばしでたったか進んでいく。で、メインは何かというと、スキー場でいなくなったハラスが、後日戻ってきた、という、それだけ。そこに何かドラマがあるわけでも何でもない。いやそれだったら、別にハラスでなくても、犬でなくても、誰でも成立してしまうんではないの?しかもそこだけで30分くらいとってるし。というわけで、もっともらしい設定に比して、中身に欠ける内容でした。加藤剛と十朱幸代の安定の夫婦芝居で何とか保っている感じです。●中田喜子や東野英治郎や中谷一郎をカメオ出演レベルの使い捨てにしているのにも腹が立ちますが、本来、こういった周辺人物との有機的な重なりがあってこそ、ハラスという存在が浮かび上がるはずです。●あと、有森也実がエンドクレジットで「也美」になってますが、まさかチェックミスということはないよね。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-11-07 00:52:20) |
13. パッション(2003)
夫を亡くした高齢女性(ちなみに主演のアン・リードはこのとき68歳)が、いきなり大幅年下の男性と恋に落ちる!しかもその相手は娘の不倫相手でもある!となれば、どんな背徳心あふれる魅力ある設定かと思いますが、あまりその辺のドロドロぶりはありませんでした。こういう話であれば、タブーに直面する心理的ハードルであるとか、それを乗り越えるパッション(それこそ邦題どおり)とか、そういったものがあってしかるべきなのですが、全体にえらくあっさりしていて、むしろお上品にまとめようとする気配すらあります。なので、悪い出来ではないのですが、やっぱり物足りないのですね。ダニエル・クレイグもまだブレイク前で、期待していたワイルドさがありませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2023-10-30 20:12:02) |
14. はじまりのうた
《ネタバレ》 ストーリー自体はよくあるダメ人間再生コメディなのですが、やはりマーク・ラファロは偉大です。導入部分では、ダメ人間なはずなのに不快感がないという絶妙な存在を発揮していますし、逆に話が軌道に乗ってからも、決して浮つきません。ちょっとだけですが、ベースを弾く姿すらサマになっています。この作品は大半を彼に負っています。●キーラ・ナイトレイはミスキャストかなあ、こういうあれこれチマチマ考える役には、あまり合っていません。歌っている姿も妙に頼りないし、慣れないことをやらされて悩んでしまったのでは?とさえ思ってしまいます。●で、ひたすら王道展開なのはいいのですが、落ちぶれた(クビにもなった)プロデューサーという割には、有能ミュージシャンが(それもほとんどノーギャラと思われる状況で)あっという間に集まってしまうくだりなんかは、さすがに都合よすぎるだろ、という気が・・・。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-13 00:22:04) |
15. 二十才の微熱
主人公と周辺数人の設定をしたところで、力が尽きてしまったというか、その先に手が回りませんでした。全体の作りがどこまでも平坦で、登場人物が生きていません。随所で長回しにトライしているのは意欲的ではありますが、特段の効果が発生していないので、かえって作る側がその手法に依存しているようになってしまっています。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2023-06-02 00:19:58) |
16. パディントン2
《ネタバレ》 前作で登場人物の整理は終わっているので、今回は最初から飛ばしていきます。が、途中から冤罪だの脱獄だのとやたらと背景が重くなってきて、それもコメディっぽくまとめるのかと思ったら、何とストレートにそのまんま。刑務所の中をいろいろ変化させるというこの主人公ならではの展開はあるものの、やっぱり全体としては薄暗くなっています。一方で、家族4人+1人の個性も見えにくくなっています。●この作品の最大の功績は、ヒュー・グラントを使い倒していることです。少し前から映画自体にも興味を失ってきたっぽくて、まして(みんなが期待するはずの)コメディ演技はもうやらないんじゃないかと思われていたところに、これです。しかも、前作のニコール・キッドマン同様、絵に描いたようなザ・悪役を、嬉々として演じています。まだこういうヒューの芝居が見られたというだけで感涙ものですし、クマよりもむしろそっちに見入ってしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-20 00:17:26) |
17. パディントン
《ネタバレ》 所詮子供向けの動物コメディかな、と思っていたのですが、予想外にしっかりした内容でした。まず、キーパーソンのブラウン夫人が、サリー・ホーキンスですよ。この時点で制作者の本気度が分かります。そして彼女はやはり、こういった軽い路線でも仕事がしっかりできることを示しています。悪役のニコール・キッドマンも、ものすごく楽しそうに芝居をしていて、作品に一本の柱を埋め込んでいます。一方で、パディントンの声はちょっと老けすぎかなあ、もうちょっと若い人はいなかったのでしょうか。内容的にも、定番ばかりとはいえいろんなネタや伏線を散りばめていますが、美味しいところでもかなり切り詰めている感じで、もっと全体の尺を長くとってもよかったのではないかと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-15 01:16:11) |
18. ハンナ・アーレント
《ネタバレ》 凶悪な事件が起こったとき、人は、その犯罪者が常人には理解不能なモンスターであることを願う。もしそれが平凡などこにでもいる小市民であったならば、自分とも地続きであることになり、明日は我が身かもしれないという見たくない闇に直面せざるをえないからだ。その真理を明らかにしただけでも、アーレントの研究は、そしてこの作品は、貴重な意義がある。●終盤近くまで、アーレントは、じっと法廷を観察しているか、あるいは周囲の人たちと身近なやりとりをしているかである。わざとらしい事件は起こらない(理不尽な脅迫等はあるが、その描写も割とすっと流される)。しかしその中で主人公のスタンスは常に一貫しており、いつの間にかじわじわと意志の強さがにじみ出て、クライマックスの講演で一気に凝縮される仕掛け。見事な押し引きの呼吸、そして演出です。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-10 00:50:03)(良:1票) |
19. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 いや、これはびっくりしました。テーマはずばり「カンニング」、その一点がどこまでもぶれない。その上で、当初はごく素朴でシンプルな日常の一幕だったのが、いつしか国際的な作戦(!)に発展していく。中盤以降などは、その辺のサスペンス映画など吹っ飛ぶほどのスリリングぶりです。あくまでも「カンニング」からずれていないにも関わらず、です。また、どこぞのベンチャー企業のプロモーションかと思うような作戦説明シーンなど、ハッタリを堂々とぶち込んでくる姿勢にも好感です。●そしてそして、やはり主演の彼女が素晴らしい。いかにもクラスに一人はいそうな、頭は良さそうだけどちょっと近寄りがたいという風貌。この子ならこういう作戦も考えつくだろうと無理なく思えるほどの自然な存在感。そして、追い詰められたときの焦った表情なんかもしっかり表現できています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-04-12 01:04:25)(良:1票) |
20. 8月の家族たち
これはもう、明らかな「詰め込みすぎ」です。これだけの豪華キャストを揃えておいて、役者の見せ場というか本領発揮場面が全然ありません。みんな揃っての食卓のシーンなどは、よくぞこの全員のスケジュールを調整したな、とは思いますが、それだけです。元は舞台劇のようなのですが、舞台ではこうしてるんだろうということは想像できても、それを切り分けしてカメラの前でやっているだけでは、意味がありません。つまり、映画としての構成なり演出がないのです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-03-31 00:26:54) |