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1.  パシフィック・リム
これは4DXで鑑賞しないと意味がない。絶対に名古屋まで見に行ってもらいたい。伏屋駅で降りてそこから歩いて映画館へ行け。灼熱の名古屋だから熱中症に気をつけろ。ただし息は整えておけ。さもないと映画館で倒れるかもしれない。結論から言うと「パシフィックリム」は4DXと抜群に相性が良い。これはフルボッコ映画なのだ。怪獣に殴られると椅子から降り飛ばされそうになる。すごい。魂まで持って行かれそうになる。ただし体調を崩す可能性もある。私は映画館から出て鏡をみたら顔が真っ白になっていた。昔、ボーンシリーズで手ブレ映画が流行したが、4DXは観客そのものが揺れる。ジェットコースターと同様に少なくともポップコーンを食べながら見られる環境ではない。鑑賞中は背中をボコボコに殴られるし、しかも水をかけられるし、さらには閃光をあびせられるし、挙句の果てには映画館全体が霧に包まれてスクリーンじたいが見えなくなることだってある。もはや映画どころではない。しかし未来の映画の1つの形としては観る価値は充分にあると言っておこう。4DXでは我々観客もダメージを受ける。1つ忠告しておく。怪獣に殴られそうになるときは身構えろ。椅子にしがみついて、降り飛ばされないようにしろ。シートベルトをしないから平気だろ?と思ってはいけない。予想を遥かに超えるくらい激しいぞ。しかもマッサージ機で背中のツボをジャストフィットされる瞬間のようにピンポイントに観客が攻撃されるのだ。主人公ロボが倒されると観客も痛みを感じるために「やられた!」という実感がリアルすぎる。だが、冷静に周りの観客を観る余裕も欲しいところだ。よく見ると観客が空中に飛び上がっているように見える。上下に揺れるのだ。観客が悲鳴を上げている。おかしくて笑みさえこぼれてくる。もはや映画どころではない。クライマックスになってくると3Dメガネが水浸しだ。冗談じゃない。ストーリーなど理解できない。ていうか理解するな。考えるな、感じろ、体感しろ。それをさせてくれるのが4DXなのだ。はっきり言うと世界が救われたのかどうかさえ理解できなかった。乗り物酔いのアネロンは必須だ。4DXバンザイ!
[映画館(吹替)] 10点(2013-08-15 22:52:45)(笑:2票) (良:7票)
2.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
見どころは多い。今回の中島ゾンビは、ついにアリスにぶち殺される。ミラのコメントでは「中島ゾンビは強くて、もう倒すのが大変だったわ」と言っている。実際に観てみると、秒殺されている。それでも私は、中島ゾンビの壮絶な憤死を誇りに思う。和製ゾンビ万歳!しかしである。ゾンビ映画の第一人者として君臨してきた私は、ゾンビが、車やバイクに乗り、銃を乱射している様子を観ると、一抹の哀しみを感じずにはいられなかった。従って今回はゾンビの話はしない。見どころは映像です。3D画像は最高峰に近い。特に斧魔人。彼は3D映画の申し子。バスの中まで斧が飛んできやがる。まさに世紀末の映像。斧魔人VSアリスとチャイナ服ガールの戦闘シーンは、2Dでは絶対に到達できない映像レベルに達している。もはやボーンシリーズのアクション映像など過去の遺物だ。3Dという技術は、アクション映画の1つの壁を越えたと思っている。ゾンビの血しぶきが観客席にまで降りかかる。あれもすごい。観客を感染させる気かよ。あのリアル感は是非3Dで味わってもらいたい。もちろんストーリは理解する必要もない。ラスボスだと思われていたグラサン男が、突然いいやつになった。脳みそが割れなければ味方にしても良い。それからアリスは無敵の方が良い。むしろ強すぎるのがアリスの魅力だ。そういう意味ではグラサンに感謝したい。ちなみに私は過去作品の登場人物など、誰1人覚えてない。従ってオールスター映画などと、のたまわれても、ゲームに興味がない世代の我々にはピンとこない。しかしそれでも「映画」として楽しめると言っておく。バイオは3D映画の頂点に君臨するアクション映画だ。そして強き女性たちの物語だ。華麗なチャイナ服ガールや、肉食系金髪ガールが、3D映像で、縦横無尽に躍動する。そして男どもは爽快に全滅する。(痴漢男だけ生き残ったのは残念だ)ただ、久しぶりに三半規管がやられてしまった。私の場合、これほど激しい映像を凝視すると、決まって倒れそうになる。それでも私に一寸の悔いもない。たとえ自律神経が乱れたとしても、この映画を3Dで観なかったら一生後悔していただろう。では最後にひとこと言っておこう。アリス、サンキューフォーエバー!
[映画館(吹替)] 9点(2012-09-30 07:56:13)(良:2票)
3.  ハート・ロッカー 《ネタバレ》 
あの軍曹は戦地から帰ってくれば、オーラは消え、ただの凡人になってしまう理由は、彼が簿記の資格を持っていないことや、社労士の資格を持っていないことにも少しだけ関係があるのですが、ようするに戦地では優秀な軍曹が、ネクタイをして会社に出勤すれば、年下の大卒のガキから「仕事が遅いぞ!」と叱責されてしまうわけで、つまり軍人としてのスキルは最高のものを持っているが、サラリーマンとしてのスキルは雑魚に等しいということ、それだったら、もう一度、戦地に行き、栄光の軍曹さまとして、他人に尊敬されたいと思う気持ちが芽生えるのは自然な成り行きなのですね。特にアメリカのばあい、戦地から帰ってきた退役軍人の大半が、うつ病で苦しんでいる現状があるのですから、帰還した兵士の自殺が異常に多くて、その事実を知って欲しくて私が言いたいことは「戦争が麻薬」というキャッチコピーは少し誤解されやすいと思うことです。けっして彼らは戦争がしたいわけではなく、戦争しか自分の存在意義を見出せないという社会的な問題がそこに見え隠れするのです。それからこの映画をみていて日本の神風特攻を思い出しました。「イスラムの自爆テロと、神風を一緒にするなヨ!」と思うかもしれませんが、敗者の論理など、この際どうでも良いのです。アメリカの視点では、イラクも、日本も、自爆も、神風も、クソも、全部同じであり、率直に表現すれば、それはクレイジーなのである。そういえば日本には、男はつらいよ、という映画が昔ありましたね?さしずめ、この映画は「アメリカ人はつらいよ」というニュアンスが込められていました。すべての人間は相対的な悲劇を抱えている。これが世の法則なり。最後に爆弾を抱えて出てきたイラク人、彼は被害者でしょう。むしろ善人でしょう。しかしアメリカの視点では、彼は変人扱いなのです。突然、車で侵入してきたイラク人もしかり。映像のなかでイラク人が全員テロリストに見える、それはけっして客観性を排除した手法ではなく、あくまでも、アメリカの視点にたった、アメリカ兵の、消耗しきった心理状態を表現している。アメリカの病み具合がワカリマスカ?分からない?それならそれで良いです。この映画、けっこう難しいですよ。 
[DVD(字幕)] 9点(2011-09-14 20:48:21)(良:1票)
4.  パーフェクト・ゲッタウェイ 《ネタバレ》 
ぎゃああ!お、面白いっ。犯人が途中で分かった人がいるみたいだけど・・もしかして天才ぢゃないですか??ワタシはさっぱりわかりませんでしたね。えぇ見事に騙されましたとも!気持ちよく騙されました。だってそうぢゃありませんか、映画のパッケージでミラが必死で逃げるシーンがあるぢゃないですか?あれでもうイチコロで騙されませんでしたか?「絶世の美女、犯人に狙われる!」 そんな感じでしょう?おそらく世界で最も華麗に走ると言われているカール・ルイスのように腕を振上げて逃げるミラの映像を見せられて、ワタシは最初からバリバリに先入観を植え付けられてしまいました。まさに監督の思う壺。ミラファンの私はこう思った。「ミラは逃げているけど、どうせ最後に犯人を倒して勝つよ、正義は勝つ!」おまえは小学生か、というぐらいに無邪気に勝手にストーリーを予想して悦に入っていた。それなのにである、あのスター俳優のミラを追い抜いて、主役になってしまう女性がいるなんて誰が思うでしょうか?しかも肉屋のバイトで、動物の死体を解体する厚化粧の女がですよ?彼女が突然善人になって、ミラから主役を奪い取るなんてそれだけで衝撃的だ。悪人だと思われている人間が善人だった、もしくは善人だと思われていた人間が悪人だったという話はドンデン返しものにはよくあるオチですが、主役だと思われていたスター俳優がじつはスペシャルゲストよろしく脇役だった!この事実に驚かずにはいられないのだ。しかもミラと言えば、ゾンビと戦うアリスのイメージが強く、世界最強の女性として君臨している女傑である。そんな彼女が肉屋のバイト女と戦って苦戦しているという事実に、背筋に鳥はだがたった。ミラが悪役だと分かってもどうしても信じたくないというジレンマ、しかもミラが弱い!ふつうの女みたいに!そういう許し難い事実に対して、知らず知らずにうちに悔し涙が・・。しかし最後に強引にミラを善人にしてしまったことに感謝したい。なにかよく分からない物語だったが、こういう映画を楽しめた自分を褒めたい!ワタシの幼い感性にバンザイ!ついでにミラ、バンザイ!  
[DVD(字幕)] 9点(2011-04-03 21:36:14)(笑:1票)
5.  バイオハザードIV アフターライフ 《ネタバレ》 
今では世界的なゾンビ映画になったバイオハザード。そんなメジャーゾンビ映画に、ついに待望の日本人ゾンビが誕生した。中島美嘉は栄誉ある日本代表ゾンビである。雨に濡れた中島ゾンビは思わず噛まれたくなるほど美しい。それと私はTVゲームをしない。だから主人公が何を目指して、誰と戦っているのかあまりよく分からない。まずグラサン男が誰か分からない。彼は悪の親玉なのか?それからアリスに一撃でノサれた記憶喪失の女の子がいきなり強くなって、斧魔人をぶっ飛ばしたときも驚いた。どうやら彼女もゲームの中では有名人らしい。だがもちろん私はゲームの原作などまったく興味が無い。そんなことはどうでもいい、私はひたすらアリスが暴れまわっているだけで満足なのだ。シュワちゃん映画や沈黙シリーズのおじさんのように、主人公が無敵の強さで戦うのがこのシリーズの最大の魅力だと思っている。しかも絶世の美女が、汚くて臭い化け物になったバカ男たちを蹴り倒したり、ぶん殴ったり、ボコボコにするのだ。これほど痛快なことはない。刑務所の屋上でのシーンは実に印象的であった。仲間と一緒に逃げだすかと思ったら、1人だけで踵をかえして、津波のように押し寄せるゾンビの大軍に突っ込んでいくアリス。さらに刑務所の屋上からロープみたいなものをつかって地上に飛び降りるアリス。このターザンプレイは必見だ。そのあとは海を真っ二つに割って渡ったモーゼのように、ゾンビの海を分断し駆け抜けるアリス。ゾンビに噛まれそうで噛まれずに走るあの緊張感のなかでみせるアリスの神々しいまでの表情、額から流れる一筋の汗が素晴らしい。そしてお得意の二丁拳銃を見境なくぶっ放すアリス。ゾンビどころか仲間まで撃ち殺す気かよ。最後は間一髪の巨人の星ばりのスライディングでセーフ。全然弱くなっていないぞ、これだ、これが観たかったんだ、映画史上もっともクレイジーで強いヒロインだ、とにかくカッコいい、アリス、サンキューフォーエバー。 
[映画館(吹替)] 8点(2010-10-27 22:02:23)(笑:1票) (良:2票)
6.  ハイスクール・ミュージカル<TVM> 《ネタバレ》 
「おまえはおまえのしたいことをしろ」というメッセージがガンガン胸に響いてきます。自分らしさとなんでしょうか?考えたことはありますか?この映画は自分らしさとはなんなのかを再確認させてくれます。「歌を歌うのはおまえらしくないぞ」と周りから言われ続けた主人公を見ていると、人は誰もが他人の評価を気にして生きていることを実感します。これは簡単にいえばバスケの天才男と、数学の天才女というまったく違う世界に住む男女の恋愛ものです。今までずっと王道を歩いてきた2人は、歌という「邪道」を突き進む。これはいわゆるカミングアウトの物語でもあります。歌を歌う奴はゲイだ。歌を歌う奴は変態だ。そう言われるのは心外ですがこの作品では歌はカミングアウトの象徴として描かれていました。ですから歌はあくまでもこの映画の中では道を踏み外した人間の象徴として描かれているのでした。歴史に残るとまで言われたあの有名な「バスケットミュージカル」の場面は是非みてほしい。歌という邪道に目覚めた2人。しかし周りの取り巻き立ちは許さない。「歌?そんなのおまえらしない」「歌だって?おまえ、自分の輝かしい人生を棒にふるきか?」そういって歌の道に進ませようとしない友達たち。しまいには2人の恋愛を邪魔しようとする。はらはらどきどき・・。い、いったい結末はどうなるのだろうか??歌を諦めちゃうの??2人は別れちゃうの??も、ち、ろ、ん、100%予定調和!!だってディズニーだもんっっ! あーしあわせ~。
[DVD(字幕)] 9点(2009-08-15 20:00:39)
7.  ハプニング 《ネタバレ》 
人は生まれたときから闇を恐れるように、見えないものを本能的に恐れます。想像力こそが最大の恐怖なのです。それとは何なのか?私はそれの正体を知っています。それは見えるとすれば銀色です。風がそれを運んでくるらしい。ですが実はそれが空気よりも重いのです。じゃあなぜ風に流されるのか?その答えはあえて教えません。それに触れたら必ず感染するわけでもありません。これは多くの人が指摘する通りです。監督はそれの正体についてまともな答えは用意していませんが、その気持ちはよく分かります。それが化学兵器やウィルスであったり、もしくは自然界の復讐や、神の怒りが原因だったしても、姿が分かってしまえば意味がないのです。想像させる恐怖ではなくなってしまう。作り手の意図は明確です。見えないモノに襲われることにより、自分の想像力に恐怖する人間模様を描きたかった。つまり、暗闇の奥に潜んでいる魔物の姿は、人によって違うということです。私の作り出した魔物を人に教えても意味が無いでしょう。一番感心したのは、「それ」が鬱のメタファーとして見事に機能していたことです。鬱はまさにハプニング。それは突風のように、突然人の身に訪れ、人の人格まで変えてしまい、自分殺しを実行させます。よく勘違いする人がいるのですが、死にたい人が自殺するのではありません。自殺は自分に殺される行為であり、自分でも止めようがないハプニングなのです。現在の私は長生きしたいと思っています。しかしいつ自分の身に風が降りかかってくるかまったく分かりません。あなたは死ぬつもりがないから自殺の心配はないなんて思っていませんか?そんなことで防げるとは私は思いません。観れば観るほど、色々考えさせられてますます怖い映画でした。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-12 01:31:01)
8.  犯人に告ぐ
くだらない。邦画は地に堕ちた。いいですか?巻島史彦が主人公です。巻島を語る観客がいると思いますか?いませんよ、1人もいません。みんな豊川を語るのみです。俳優が役名の人物になりきれず、本名で呼ばれるようになったらオシマイだ。豊川に告ぐ。あんたの露出度の多さが、俳優からテレビのタレントに成り下がったのだ。もはやあんたが弁護士を演じようが、刑事を演じようが、殺人犯を演じようが、あんたは豊川という本名で批評されるだろう。俳優失格だ。彼だけじゃない。 日本の映画界はいつまでたっても俳優が育たない。この国は俳優不在だからどの映画もTVドラマに見えるのだ。はらがたつ。
[地上波(邦画)] 2点(2008-11-22 19:19:46)(良:2票)
9.  バーバー 《ネタバレ》 
率直にいうと面白くありません。何が不満かと聞かれたら、名シーンが1つもないことだと私は答えます。観終えたあとに1つ1つのシーンが脳裏に浮かんでこないのです。この物語の舞台は、床屋の店の中か法廷がメインになっています。低予算も結構ですが映画としてこれほど画にならない舞台設定も他にありません。わざわざ映像化する意味がどこにあるのでしょうか?あげくのはてに、けだるい夫婦仲や不倫、お金が絡んでの脅迫、そして殺人と続く。まるでTV番組でよくある○○殺人事件と同レベルでした。かりに監督の名を伏せて、サスペンス劇場としてこれがテレビで放映されていたら、誰も有名監督の作品だとは気づかないでしょう。それほどありきたりな物語なのです。ブラックジョークが笑えるよ、と言いたい気持ちだけど、この程度でいちいち笑っていたら胃を壊してしまう。コーエンから暴力描写を除外したら萎んで凡作になってしまった。そんな感じが否めません。そもそもなにゆえにバーバーなのか?タイトルのみが個性的で思わせぶりですが、主人公の職業が床屋である必然性はまるでありません。しかも床屋のくせに、くわえタバコをしてまわりに煙をもくもく充満させながら、お客様である子供の髪の毛を切る。ありえない。もしあれがかっこよさをみせるための演出ならば、バーバというよりもバーカと言ってやりたい。冗談じゃありませんよ。この兄弟は日常の中の非日常の世界観をいつもつくりだしてきた。いわば彼らの作り出す非日常の画はファンタジーに近いものがあった。それがこの作品にはまったく感じられない。モノクロだとかカラーだとかを議論する以前に、元の映像が兄弟のものとは思えないほど凡庸でした。期待していただけにがっかりです。 
[DVD(字幕)] 1点(2008-09-04 19:13:13)
10.  バイオハザードIII
これはひどい。監督の頭がすでにゾンビ化している。ゾンビよりむしろ監督にアリスの血清が必要かもしれない。 ただしアリスが強くなるのは大賛成です。今後もどんどんスキルアップしてもらいたい。沈黙シリーズにでてくるおじさんのように無敵になってください。
[DVD(字幕)] 4点(2008-04-28 23:08:03)(笑:1票)
11.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
グロテスクな映像ですら「娯楽」の1つとして魅せていました。「あなたの生まれてくる世の中は残念だけど、とってもつらいわ」と母親のおなかにいる赤ん坊に問いかけるオフェリアに泣かされます。大人が人生に苦しむのはまだ我慢できる。しかし幼い子供が人生に苦しむのは許しがたい。スペインの内戦といえば実際に自ら従軍したヘミングウェイの「誰がために鐘はなる」を読んで昔衝撃を受けたことがありますが、ここで展開される内戦はそんな壮大なものではなくて、あくまでも生きるという事の辛さを伝えるためのものでした。仮に戦争中ではなくて裕福な日本であっても、自殺に成功する人が毎年3万人、自殺に失敗する未遂者がその10倍、つまり1日に900人前後の人がどこかで自殺を試みているわけですから、人生の苦しみというのは、いつの時代であろうが、どこであろうが相対的なんだと思います。つまりこれは特別な人の、特別な場所で起きた、特別な物語ではなくて、誰にでも訪れるであろう普遍的な物語でした。だから共感できる。オフェリアが試練を乗り越えたら、悲しみのない幸せな国の王女様になれるという空想を持つ事だって、滑稽で同情すべきものではないと思います。たとえば仏教の教えは善行を積めば極楽浄土へ行けると言いますが、それはオフェリアの空想となんら変わりません。人間は不安に耐えるために空想を作り出すのです。オフェリアの不安の原因を「戦争」という遠大なものではなくて、もっと身近な「大尉」というものに焦点を絞ったのは分かりやすくてよかったです。この大尉は、自分の妻ですら、女は子供を生む機械だという態度で腹がたちます。彼は自分の遺伝子を残すという動物的な本能以外は何も思想がありません。ひどい男です。オフェリアの唯一の理解者であるメルセデスが大尉の口を裂いたときは痛快でした。ボクシング中継を観ているときのように、そこだ、右だ、よし左、やれ、ぶち殺せ、と叫んで応援してしまいました。この映画はメルセデスが一番輝いていたと思います。本当に哀しい物語ですが、この映画が終わった後、つまり監督が「はい、カット」と言った後に、メルセデスと死んだはずのオフェリアが立ち上がって、2人は仲よく微笑みながら珈琲を飲んでいる。そういう光景を空想して悲しみを紛らわせたいと思います。 空想は人間の特権です。
[DVD(字幕)] 9点(2008-04-28 22:37:54)(良:4票)
12.  バベル 《ネタバレ》 
1丁の銃が人々の不幸を招いたという見方もできるし、1丁の銃が人々の切れた絆を元に戻す役目を果たしたという見方もできる。皮肉なことに残酷な「銃」が、バベルな人々を再生させるきっかけになっています。「聾唖」は、コミニケーション不全の社会のメタファーだと考えるのが適当だと思いますので、聾唖者(又は日本人)が悪く描かれているという見方をすると、この作品の本質を見失う可能性もあります。つまりこの少女はバベルの塔をつくり、神からコミニケーションを奪われた罪深い人間の象徴として描かれているのです。この映画の本当の主人公でしょう。彼女はコミニケーションに飢えており、奇怪な行動を繰り返すようになる。しかし喋ることができる私たちでしたら、コミニケーションは正常に機能しているのでしょうか?神話の時代に言葉を「分断」されてしまった私たち人間は、今では言葉が通じ合う人たちに対しても、コミニケーション不全に陥ってしまいました。お互いを理解できないモロッコの兄弟や、アメリカの夫婦、日本の父娘をみて、まずそのことに気がつかされます。すべての登場人物たちが、同じ言葉を持つ人たちと意思疎通ができていません。彼らは「銃」をきっかけに、自分の罪を自覚し、一番大切なことに気がつきはじめる。たとえばアメリカの夫婦。妻にもっと努力しろと言っていた夫は、妻が凶弾に倒れ瀕死の状態になったときに、はじめて自分と向き合い、妻に懺悔する。罪の自覚がなかったモロッコの弟は、兄が銃殺されたことによって、死の恐怖を超越するほど強烈な罪の意識が芽生え、銃を持った警察の前に進み出て激しく懺悔する。また、善人であるはずのメキシコの家政婦は、子供に「あなたは悪い人じゃないの?」と言われて「私は悪い人間ではない。ただ愚かなだけなの」と弱々しく言い放つ。誰もが罪を背負って生きているという強烈なメッセージ。彼らは「銃」によって傷つき、そして自分たちの弱さを自覚する。こんな世の中で一番大切なことはまず自分の愚かさに気がつくことなんです。自分の罪を自覚したときにはじめて同じ罪を持った他人を理解できるようになる。バベルの塔を連想させる超高層ビルで抱き合う父娘のラストシーンについて。神から言葉を分断されても、また言葉すら失っても、人間はさまざまな手段でお互いを理解しようと試みる─。コミニケーションの重要性を訴えかけた素晴らしい作品でした。 
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-12 20:21:43)(良:3票)
13.  パフューム/ある人殺しの物語 《ネタバレ》 
これは、あるコレクターの物語でした。コレクターは異常者だとは言われません。蝶を殺して標本にする人間には蝶を殺すことに対する罪悪感はありませんし、動物を殺しまくってそれを剥製にするコレクターはそれが異常だという認識はない。しかしジャンのように人間を殺して収集欲を満たそうとすると犯罪になります。でも動物のコレクターも、本当はとんでもない異常な行為なんですよね。死体を収集するのだから当然です。ジャンよりも残酷かもしれません。考え方はジャンと同じなのに、一方は正常者で、もう一方は異常者と言われる。その理由は人間がこの世の中で一番偉いという価値観に基づいているからです。ジャンは異常者ではなく異邦人でした。主人公のジャンは誰とも人間関係を築くことができなかった。そのために他人を人間だと思う機能が麻痺していた。だからジャンにとって人間は美しい蝶と同じでした。彼は罪の意識はなかった。だからなぜ自分が民衆から裁かれるのか分からなかったはずです。彼はコレクターでした。 
[DVD(字幕)] 7点(2008-01-19 17:58:55)
14.  春にして君を想う
我慢できない状態になった。その状態を間接的に表現するならば、うとうと・・・。すやすや・・・(禁句だからストレートには表現しない) とにかく意識がもうろうとしてきた。私は果たして映画を観ていたのだろうか?それとも夢を見ていたのだろうか? 映画が始まって最初の15分くらいは台詞がなかったので、もしかしてこれはサイレント映画か?と、びびってしまいました。 登場人物は、おじいちゃんとおばあちゃん。 動きが信じられないくらいにスローであり、強制的に観客を眠りの世界へと引きずり込もうとする。この時点でわれわれ観客は、老人と同様に夢と現実の世界を彷徨する羽目になる。もしこれが監督の意図したものであるならば大したものである。 本作は、死に場所探しの物語だと思う。普通は、愛する人達に看取られて死にたいと考える人が多いかもしれない。しかし本作は、死に場所に、こだわっている。老人たちの死は、まるで死期を悟った象が、ひっそりと誰も見られぬ場所に行って息を引き取るのと似たような印象をもつ。そこに恐ろしい孤独を感じる。人はどれほど友人や愛する家族が存在していても死ぬ時は1人なのである。 
[DVD(字幕)] 6点(2006-11-20 19:50:16)(良:1票)
15.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 
じつにおかしい。子供のエヴァンが記憶もなく包丁を握っていた理由は、日記を使い、タイムトラベルでやってきたエヴァンに、体と意志を一時的に支配されていたためだと思われます。父親に首を絞められていた理由も同じです。けっきょく子供時代の記憶が抜けていた原因は、タイムトラベルでやってきたエヴァンに、子供のイヴァンが操られていたからという理由になっている。 ここでよく考えてみると、日記というのは本来、子供時代の記憶が抜けている場面に戻ることができるという設定になっている。しかし最初に説明したように「過去に戻るから記憶が抜ける」と言えるのではないでしょうか。すなわち、極論を言いますと、日記が存在するから記憶が抜け落ちたのです。それなのに、記憶が抜けるからという理由で日記はつけられはじめた。ここに大きな矛盾が生じてきます。まあいいか。どうでもよいことです(だったら最初から言うなと突っ込まれそうですが)基本的には映画に矛盾があるから面白くない、とは言いません。その逆で、面白くないから矛盾が気になるのです。けっきょく自分の都合の良いように過去を変えてしまったのだからギガゾンビと一緒だっつーの。 
[DVD(字幕)] 3点(2006-06-20 18:22:49)
16.  バグダッド・カフェ
この映画は、あの太ったおばさんを主人公に据えた時点で、外見の偏見に挑戦したものだったのではないでしょうか。 基本的にセピア色は好きですが、舞台が砂漠だということで、その色を自然に表現することができまていました。 しかしあの夕日の色彩には驚きました。 中国の巨匠チャン・イーモウも脱帽して裸足で逃げ出すほどに鮮やかな赤色です。 バグダットカフェだからこその色彩であり、これが色のある映画だと言われる所以ではないでしょうか。 その砂漠に帰る所がない者たちが集まってくる。監督は、これでもかと思えるくらいに、しけた連中を登場させて、最後には彼らを魅力的な人物へと変えていきます。黒人女はイライラ、太った女はノソノソ。そういう外見からくる偏見は、感情移入していくうちに気にならなくなっていきます。これをETの法則といいます。 美的感覚に優れ、想像力を養うにはもってこいの映画だとは思いますが、基本的には退屈な映画だと思って欲しいです。 考えることが好きな人、名作映画が好きな人にはお勧めします。 娯楽性はありませんが文学的な映画です。
[DVD(字幕)] 5点(2006-01-01 10:12:38)
17.  ハウルの動く城
大御所になってしまった宮崎監督は、もう「ラピュタ」のような単純爽快なアニメを作る気持ちはないのだろうか? これは知的な映画なのかもしれないけど、ワクワクしない映画でした。ハウルや、おばあちゃんの心の内面を思わせぶりに、ぐたぐたと見せることで、外国の映画祭で立派な賞を獲ってやろうという色気だけは感じました。それになんでヒロインが、おばあちゃんなの? シーターや、ナウシカやキキのような魅力溢れる女の子が映画を面白くするのです。 宮崎監督は「紅の豚」で、ただのクソ豚を主人公にして大コケしたのに、まだ懲りていないのでしょうか。 あげくの果てに倍賞千恵子の声を聞いていると、ふうてんの寅さんをどうしても思い出してしまいます。 ソフィーがいつ「お兄ちゃん」というのかずっと気になってしまいました。 だいいち、ハウルに「守りたいものができた。それは君だ」というセリフを言わせておいて、いったいお子様たちにどういう反応を期待しようとしているのか意味不明じゃないですか。 まさか子供さんに無償の愛の素晴らしさでも説こうとしているのでしょうか? 冗談じゃありませんよ。この映画には、メタファーもかなり多く盛り込まれており、それはそれで立派だと思いますよ。しかし子供を無視するのもいい加減にしてほしい。 たしかに考えさせられる映画ではありますが、私はあえて「考えさせるな!」と言いたいのです。 宮崎アニメは、徐々に子供から離れていっている。それを確信できた映画でした。 近い将来、親が「宮崎アニメは立派な映画だから観なくてはいけませんよ!」と言って、嫌がる子供を無理やり映画館に連れて行くという光景が社会現象を起すかもしれないと予言しておきましょう。
[DVD(吹替)] 1点(2005-12-04 19:00:48)(良:5票)
18.  パッチギ! 《ネタバレ》 
うーん、とにかく熱い映画でした。夏バテもこれ1本みればすぐに回復します(きっぱりと断言します) まず出だしのバスをひっくり返すシーンに圧倒されつつも思わず爆笑。まさにあれは「痛快無比」一気に映画の中に引き込まれました。 日本において在日というのは少数派であり「弱者」というイメージがあったのですが、それを吹き飛ばした瞬間でもあります。あの在日の3人の不良の存在感が素晴らしい。負け犬になっていないし卑怯でもありません。ひたすら熱い奴らでしたね。 ラストで「イムジン河」がラジオから聞こえてきたときは、不覚にもじーんときました。日本映画独特の、しんみりとした感動ではなく、胸が熱くなるような感動がこの映画にはあると思います。 監督はこの映画によって、日朝問題に対して「日本人は反省の意味も込めてもっと考えて欲しい」と言っていましたが、たぶんそのような見方をした人はあまりいないでしょう(笑) 監督がどういう意図でこの作品を作ったにしろ、すでのこの作品は、監督の手から離れていると思います・・。 ここのレビューをみてそれを強く感じたのでした。 しかしあのような熱い俳優たちを縦横無尽に使いこなせるのはやはりこの監督の手腕なんでしょうね。
[DVD(字幕)] 9点(2005-09-10 19:18:07)(良:1票)
19.  パラサイト
ロード・オブ・ザ・リングのイライジャ・ウッドが出ているので必見です。彼のヘタレぶりは天性のものだということが分かりました。エイリアンと闘っている最中、いつサムを呼ぶのか気になりましたが、やはりサムは現れませんでした。
[地上波(吹替)] 3点(2005-06-27 18:39:19)(笑:1票)
20.  花とアリス〈劇場版〉
こういう笑いをシュールと言うのでしょう。 かなり笑わされました。 「記憶喪失」と「三角関係」で思い出すのは、「冬のソナタ」ですが、この映画の「記憶喪失」はあくまでも笑いの1つだと思います。 それとアリスは、やはりかわいいです。 私は雨の中で踊るシーンと、髪の毛がぬれて、ずぶぬれの姿で笑っているアリスの顔の表情が好きでした。 それと最後に花さんの嘘が実ってよかったですね。 とりあえず4点です。わたしがもっとオヤジになって、もっとすけべになったら、もっと点数が上がるかと思います。
[DVD(字幕)] 4点(2005-04-02 00:43:29)
0304.66%
1426.52%
2172.64%
3324.97%
4132.02%
5426.52%
6477.30%
710716.61%
811417.70%
913721.27%
10639.78%

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