1. BARに灯ともる頃
BARがタイトルに入っている映画を借りて、今度は当たりだった。成人してはいるものの、数年にわたる田舎漁港近くの軍役でモラトリアム生活を続けている息子と、ローマに住むやり手の弁護士として、キャリア的にも、金銭的にも成功しているらしい父親との間で繰り広げられる小品。父親は、自分が成功しているだけに、息子がくすぶっているようにみえるのが、歯がゆく、心配でしょうがない。そこで単身、息子の様子を見に、朝方兵舎の前に予告無く現れる。急に押しかけられた息子の側はいい迷惑だと思いながらも、実の親なので帰ってくれというわけにもいかず、一日相手をする、というストーリー。父親は親バカ丸出しで、息子に様々なプレゼントを用意していたのだが、ちゃらんぽらんな生活をしていると思っていた息子が、どういう贈り物ならいらなくて、どういう贈り物なら喜んでもらうのかの基準が結構しっかりしているので、好感が持てる。息子の彼女の家にまで行って、父親が彼女と二人だけになったときに発する質問が最高にお茶目で、かつ、涙は出ないけど泣ける。イタリア人らしく、父子の会話はジェスチャーを交え途切れることなく続き、日本人の私からするとよくもそんなにしゃべることがあるなと思うくらいなのだが、それだけに、最後に列車の客室で二人が言葉少なに正対する場面が印象的。そのときに、通路側の窓越しに交差する列車を見せてその音を聞かせているのが、お互いを初めて心から認め合った瞬間と重なり、堪らなくいい演出だと感じた。 8点(2005-02-23 14:14:13) |
2. バックドラフト
火消し役が消防車の上で燃え上がろうとしてどうする、などというツッコミはおいておきまして、世の中に無くてはならない、体を張った仕事をする者たちを描いたこの映画は、バブル崩壊中のこの国の空気に確かに合っていたのでしょう。公開された1991年は、大手就職情報会社が新しい雑誌を創刊した年でもあり、偶然の符合とはいえ、妙に「合点」がいってしまうのです。 7点(2004-12-16 08:06:51) |
3. 白鯨
復讐の発端となる、船長の顔が傷つき、片足を失う場面が全然描かれないので、なぜそんなに復讐を遂げなければならないのかがいまひとつわからないのが難点。ただ、帆船の頃、鯨をどのように捕っていたのかがよくわかるし(非常に勇壮、命知らずでないととてもできない仕事だ。ある意味合戦に通ずるものがある)、捕っていた理由も油をとって灯火用にするためだったことも描かれている。現在国際社会で捕鯨に反対の立場をとっているアメリカがかつては捕鯨国であったことを雄弁に示す映画でもある。グレゴリー・ペック主演の名作といわれる作品はたいがいDVDが発売されていたと思うが、本作品はまだなのだろうか。米国では販売中のようなので、まさかとは思うが、反捕鯨の立場上、意見を異にする日本では都合が悪い映画なのでDVD販売させていない、ということではないことを祈りたい。 6点(2004-12-12 14:50:09) |
4. バンビ、ゴジラに会う
たまたま知人のやっている紙芝居、活動写真の発表会によばれていて、その際に偶然観た作品。大笑いしてしまいました。一生忘れられない作品になりそうです。いままで数多くのネタバレレビューを書いてきた私でも、これのネタバレだけは、作品を完璧に踏み付けにする行為のような気がして、とてもできません。 9点(2004-10-31 19:08:56)(笑:1票) (良:2票) |
5. 伯爵夫人
サウジ・アラビアへの赴任が決まった外交官役を演じるマーロン・ブランドはコメディにはあまり向いていないのかもしれないと感じてしまった。時代が全然違うのだが、この役は、ヒュー・グラントが一番はまりそうだ。ソフィア・ローレンと脇のシドニー・チャップリン、パトリック・カーギルがなかなかセンスを感じさせる演技だっただけにやや残念。主役の二人とシドニー・チャップリンが船酔いであげてしまうシーンがあるのだが、このところの一連の韓流映画に比べてその描き方が上品なのはよかった。やはり、この作品のように内容物を観客に見せない演出のほうが好ましく思う。ただ、最後にかけての主人公の問題の解決方法は、ちょっと安直で拍子抜けがした。こどものころにかくれんぼが好きだった人はそこそこに楽しめる作品。 6点(2004-10-24 00:09:21) |
6. ハタリ!
いろいろな動物が追われて生け捕りにされるシーンが収められているが、そのときの動物の逃げ具合、生け捕られ具合が種によってさまざまなのが興味深い。動物を追うシーンは真剣かつ迫力にあふれるものの、そのほかはコミカルなタッチで全編通されているので、安心して観られる。リアルさを追求すると、蚊とか風土病とかいろいろな苦労があるのを撮らねばならないロケ地だが、そういうものを一切はしょったのが成功している。 7点(2004-05-19 14:56:35) |
7. バック・トゥ・ザ・フューチャー
本日初めて鑑賞。完全無欠(狙い通りの時代に正確に行け、かつ、再現可能)なタイムマシンを人間が発明できたという設定にまず乗れない(ウェルズのタイムマシンは、一往復だけが狙い通りで、再現性があるかないかはわからないままのはず)。アラジンの魔法のランプ、打ち出の小槌、ドラえもんのポケットなど歴史上人類が発明したオールマイティはおしなべて、魔人とか、鬼とかの、異界の住人の持ち物であり、人間自身がオールマイティを作り出せないところに妙味があったので、この作品はフィクションの作り手として、踏み越えてはいけない一線を越えてしまっていると思う。そのことを別においても、元の時代に戻りたいという筋書きから、ほとんどすべての笑わせどころやギャグが予測の範囲で意外性に欠け、コメディとしてちっとも面白く感じられなかった。自分の評点と平均点との差に、唖然呆然の一本。(以下追記。2004/5/18) ひねくれついでにもう少し。「歴史を変えられるオールマイティな道具を動かすのに必要な燃料がプルトニウム」という設定は国際政治の現実に対して何がしかいうためとも受け取れる(私はそう取って裏切られた)が、この作り手は何の考えも無く、ただ単にゲリラを登場させたいためにプルトニウムを持ち出したとしか思えない。被爆国の一員として、などと大上段に構えるつもりはさらさらないが、秘密の液体が必要、くらいの設定で何とでも作れたのではないかと思う。そのあたりが笑いの作り手として、無神経、または不注意、もしくは雑である。 2点(2004-05-16 23:21:23)(笑:3票) (良:1票) |
8. パンと恋と夢
思わず微笑ましくなる映画。イタリア人の男というと、女とみればすぐに声をかけるようなステレオタイプなイメージがあるが、この作品に出てくる警察軍の若者は、おくてで、恥ずかしがり屋で、なかなか自分の好きな村娘に声をかけられない。そこに共感を覚える。昔のイタリアの山村の、牧歌的な風景と村人の人情が、ほのぼのとした感じを与えてくれる軽いラブコメ。 7点(2004-04-30 08:44:51)(良:1票) |
9. 幕末太陽傳
左平次を演じるフランキー堺の独壇場。歩くカタチのさまになり具合ったらない。製作された1957年といえば、ラジオの時代。近所に寄席がなくても、落語は毎日のように放送されていたのだろう。そういう、ラジオで流されるいろいろな噺を知らず知らずのうちに覚えていた時代だからこの映画は成り立った。落語好きの私は大変面白く観ることができたし、脚本は傑作と自信を持っていえる(落語の噺の組み合わせの妙だけでなく、江戸の華の、火事と喧嘩の場面がちゃんとはいっているところがニクイ)のだが、古典落語を聴かない人がこれを果たして面白く観られるのかどうか、また、使われている言葉を全部聞き取れるのかどうか、はなはだ心もとない。私としては、古典落語を知らない人で、この映画を観たい人は、下敷きになっている落語を先に図書館のCDなどで予め聴いてみる事を勧めたい。私が認識できたネタについて、【エピソード・小ネタ情報】に記すので参照されたい。 7点(2004-04-28 16:02:57)(良:2票) |
10. バージニア・ウルフなんかこわくない
社交生活が何事も夫婦単位で行われる社会って、息苦しい。酒くらい気楽に気のおけない奴と飲んでいたい。我がニッポンはいい国だと再認識できる作品。ジョージが長いものを持ち出したシーンは、それまでの流れで十分説得力があり、本当に怖かった。 6点(2004-03-31 12:46:56) |
11. ハリーの災難
《ネタバレ》 ヒッチ・コックが、観客を怖がらせるでもなく、騙すでもなく、おとぼけに徹した作品。何ということもないアイデアだけで、100分近く見せてしまう技量は、やはり大した才能だと認めざるをえない。出演者が、例のものを、埋めたり、堀りおこしたり、また埋めたりをなんだか楽しそうに演じているので、現実にはありえない話が、ありえそうな感じの話として仕上がっているのがおかしく、私好みであった。ところで、IMDbなど細かくチェックしているわけではないが、この作品が、本作に先 駆けること6年前に製作された名画「第三の男」のパロディだという説を唱えているのは世界広しといえど、多分、私一人くらいのものであろう。ただし奇天烈な説と笑うことなかれ。至って私はマジメなのである。これからの説明をとくとご覧になってから、成否のほどを吟味していただこう。ご本家のストーリーをよく思い出していただきたい。ラストシーンがあまりにも有名な、男と女を描いた話として記憶されがちだが、そういう色っぽいところを捨象すると、ざっくりいって、埋めたり、掘りおこしたり、また埋めたりというストーリーではなかったか。だからこそ、この作品の主人公はトムでもなくジョンでもなく「ハリー」でなくてはならなったのである(本当はラストネームが別。でもこう考えたほうが楽しいではないですか)。 8点(2004-02-22 15:51:10)(笑:1票) (良:2票) |
12. ハリウッド的殺人事件
大物が出ているコケ作品のレビューを書きたくてうずうずしている失敗作ハンターの皆様、お求めの新作はこれです。そうでない方はご用とお急ぎでなくとも観る必要はないかと。一応コメディなのですけれど、失笑と苦笑以外の笑いは期待できません。ハリソン・フォードはいい歳なんだからもっと自分の体を大事にしてほしいです、ホントに。 2点(2004-01-26 20:25:21)(笑:1票) |