Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さん
ザ・チャンバラさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  バンド・オブ・ブラザース<TVM> 《ネタバレ》 
1話1話が充実していて、1時間とは思えないボリュームを全話に渡って味わえます。また全10話を通した時のバランス感覚も見事で、訓練の第1話にはじまり、そこいらの戦争映画を軽く超える圧巻の戦闘シーンを見せる2~4話(戦場における戦車の圧倒的なパワーが描かれた『補充兵』は特に気に入ってます)、エピソードごとに主人公を変え、毎回違った切り口でドラマを見せる5~8話(無能な司令官に振り回される『雪原の死闘』にはサラリーマンとして共感を禁じえませんでした)、第二次大戦の悲劇をシリアスに描いた第9話、そして締めくくりの第10話。どのエピソードも素晴らしいのですが、最終回の第10話には特に意義を感じました。戦場における友情や英雄物語を描きたいのなら8話で終ればよかったし、第二次大戦の歴史を描くのであれば9話まででよかった。しかし戦争が終わって占領軍となったアメリカ兵達の姿を描いた10話を終わりに持ってきたことで、この作品は他にない奥行きを得たように思います。ナチスが残した高級品を「戦利品」と言って勝手に持ち帰り、敗戦国民に対して横暴に振る舞い、元ナチスと言われる老人(真偽は不明)を不確かな情報から射殺する、そんな姿を最終話できっちり見せてくるのです。そしてラスト、ウィンターズからE中隊に対して言われるべき言葉を、ナチスの将校に喋らせるという演出も見事。このシリーズに対しては「アメリカ万歳ではないか」という否定的な意見もあります。確かに第9話まではアメリカ兵の視点のみで描かれており、悪役であるドイツにとっては公平性に欠ける描写もあったように思いますが、この非常に冷静な締めくくりを持ってきたことで、普遍的な物語になったように思います。あえて難点を言えば、戦争ものの宿命として個人の判別が難しかったことでしょうか。10話見ても顔と名前が一致しない隊員が何名かおり、「で、いま死んだの誰だっけ?」ということが毎話あったのが残念。「これが登場人物ですよ。みなさんしっかり覚えてくださいね」という意味で第1話があったんだなと、10話全部見て気付きました。ま、この混乱を逆手にとれば1周目は圧巻の映像に驚き、2周目は緻密なドラマを発見する、そんな楽しみ方もできそうなわけで、これは何度も見返し、そのたびに新しい楽しみに気付く作品になりそうです。
[DVD(吹替)] 9点(2008-08-21 02:06:16)
2.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版
映画館で見て、そしてDVDであらためて見直したんですけど、DVDに収録されてるディレクターズ・カット版が大変なことになってますね。劇場版ではいくつか不明な部分があったんです。冒頭、警備員から逃れてメモを残すシーンの伏線がいまいちつながっていなかったり、7歳のエヴァンが残虐な絵を書いたり包丁持ってたりする理由がよくわからなかったり。ディレクターズ・カット版ではそのあたりの伏線もきちんと回収されていて、実に納得のいく出来となっていました。そして問題のクライマックス。(あえて詳細は書きませんが)劇場版とはまったく異なるこのクライマックスこそが冒頭につながっていくわけで、確かにディレクターズ版のクライマックスこそ正当、劇場版はとってつけたものと言えます。映画館で「え、これで終わり?」と思った私は、すっごく納得ができました。がしかし、確かにあんなオチを映画館で上映はできませんよね。そんなわけでいろんな意味で納得できるディレクターズ・カット版ですので、DVDをお持ちの方はぜひ見比べてみてください。ちなみに私はディレクターズ・カット版の方が好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2005-11-13 22:28:22)
3.  バンク・ジョブ
“Based on true story”とはいうものの、真相が闇の中にある事件を好き勝手に解釈して作り上げた物語であり、内容はほぼフィクションです。我が国における3億円事件ものと同様の立ち位置にある作品なのですが、本作が掲げる仮説には大胆さと遊びがあって非常に楽しめました。この脚本を引き受けたロジャー・ドナルドソンによる演出も絶好調であり、終始勢いのある犯罪ドラマとして見事に成立しています。この監督さんは物語の交通整理が抜群に巧い人で、『追いつめられて』や『13デイズ』でも雑多なキャラクターの入り乱れる複雑な物語を簡潔な切り口でまとめてみせていましたが、本作においては過去作品以上に洗練された演出を披露しています。これだけ複雑な物語を、ここまでシンプルに見せられる監督は他にいないのではないでしょうか。さらには、30年超のキャリアを誇るベテランでありながら、ガイ・リッチーやマシュー・ヴォーンの演出をうまく吸収してみせるという柔軟性も披露。文句なしの仕事ぶりだと思います。。。 主人公を演じるジェイソン・ステイサムはさすがの安定感で、男にも女にも惚れられるかっこいいあんちゃんという役どころを完璧にモノにしています。サフラン・バロウズは過去最高の美しさを披露。彼女があまりに美人すぎて、時にステイサムがちんちくりんに見えてしまっていたほどです。デビッド・スーシェはベテランならではの威圧感で映画全体を引き締めているし、キャストの動かし方は総じて素晴らしいと感じました。。。 以上の通り、本作は文句つけ所がないほどによくできた犯罪サスペンスだと評価できます。このジャンルで本作以上のものを作ることは、ちょっと無理ではないかと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2012-12-10 01:35:29)(良:1票)
4.  パンドラム 《ネタバレ》 
ポール・W・S・アンダーソン(通称:ダメな方のポール・アンダーソン)率いるインパクト・ピクチャーズ製作なので『イベント・ホライゾン』のやり直しかと思ったのですが、微妙な出来だった『イベント~』とは比較にならないほどの素晴らしいSF映画でした。とにかく脚本が良すぎます。『エイリアン』から『猿の惑星』、果ては『宇宙空母ギャラクティカ』まで、既存のSF映画のアイデアを総動員した内容ではあるのですが、それらの元ネタを思いもよらぬ形で料理しており、二転三転どころか五転も六転もするストーリーには驚かされました。『パンドラム(原題も同じ)』というタイトルのチョイスも素晴らしく、このタイトルによって脳内オチ系の物語と勘違いさせておいて、誰も予測しない意外な結末へと導いていくという見事な動線を作り上げています。ここまで見事にやられた映画は久しぶりでした。お見事。。。 これだけ盛りだくさんの内容をコンパクトにまとめ上げた監督の手腕も光っています。観客に与える情報量のコントロールや、ネタを明かすタイミングなどはほぼ完璧。同時にカッコいいメカ描写や音を使ったショック演出などポール・W・S・アンダーソンの得意技はうまく吸収しており、なかなかやってくれます。監督を担当したクリスティアン・アルヴァルドはサイコサスペンスの佳作『アンチボディ/死への駆け引き』を手掛けた人物なのですが、この人のアレンジ力は非常に高く、要注目の監督さんだと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2012-09-05 23:29:43)(笑:1票)
5.  パーフェクト・ゲッタウェイ 《ネタバレ》 
デヴィッド・トゥーヒーはハリソン・フォード版「逃亡者」のオリジナル脚本を書いたことで注目され、当初は子供向けアドベンチャーだった「ウォーターワールド」をダークなディストピアSFに書き直すなど(ケビン・コスナーがせっかくの毒気を消したために映画の出来は散々でしたが)90年代のハリウッドでは一目置かれる脚本家でしたが、2004年にユニバーサルが年間最高クラスの予算を投じて製作したSF大作「リディック」を微妙な結果に終わらせてしまい、それ以降はハリウッドの表舞台から姿を消していました。そんな御大が5年ぶりに手掛けたのがこの「パーフェクト・ゲッタウェイ」なのですが、大物脚本家の満を持しての復帰作とだけあって、これが壮絶な仕上がりとなっています。あまりに面白くてぶったまげました。。。 この映画、不気味な予兆を重ねる前半部分からイヤ~な汗をかかせてくれます。ちょっとした不親切からヤバイ相手に絡まれ、凄惨な事件に引きずり込まれていくという導入部はいわゆる「テキサスもの」の流れなのですが、これを閉塞感のあるテキサスではなく開放感あるハワイでやったところが本作の新しいところ。陰惨な連続殺人とハワイとはイメージ的に結びつかないのですが、浮かれた新婚カップルが他人とトラブルを起こして楽しい気分がブチ壊されるという誰もが容易に想像できる不快感を間に挟んだことで、両者をうまく結び付けています。主人公カップルが疑心暗鬼に陥る中盤も巧く作られていて、現在行動を共にしているカップルはどうやらヤバそうだが、もっとヤバいカップルから目を付けられている手前、このカップルからは離れられないという緩やかな八方塞がり感がお見事です。そしてラストには空前絶後のオチが待っているのですが、加害者と被害者が逆転し、主役と脇役が交代するという大胆なオチには意表を突かれました。「ズルい!」とも思ったのですが、犯人カップルの会話を振り返ると、これがオチと見事に整合しています。観客の先入観を利用して彼らを被害者であると錯覚させていただけで、彼らの会話は獲物を選別する犯人の会話としてきちんと成立しているのです。この大胆さと緻密さには完全にやられました。お見事!
[DVD(吹替)] 8点(2011-10-31 19:52:29)(良:1票)
6.  パッション(2004)
この映画は初日に見に行ったんですよ。映画館の前では宗教関係の人が「パッションは最高の映画です」と通行人に熱心におすすめし、さらにGW、初日、映画の日ということで館内は超満員。中には無知な家族連れもいて、「子供が見たらトラウマになるぞ」と他人ながらちょっと心配などなど、テンション上がりまくりの環境で見ることができました。そして映画が始まると、隣の人が明らかにショックを受けていて、こちとらさらに盛りあがってしまいました。そんなわけで、私的には大満足の鑑賞だったので8点。やっぱり映画ってイベントですね。て、映画の採点になってません?でもこの映画自体がショックを与えることのみに集中しすぎていて、起承転結すらなかったでしょ。やっぱりこれは映画というよりもイベントだと思いますね。USJのアトラクションにすれば行列できますよ。
8点(2004-06-09 21:11:13)
7.  バビロン A.D. 《ネタバレ》 
宗教団体が政治利用目的で聖母マリアのレプリカを作ったら、思いがけず本物が出来てしまったという簡単なお話なのですが、完成した映画は「どうすればここまで意味不明にできるのか」と思うほどにとっ散らかっていて、もう何が何だかでした。個々の登場人物が何を考えているのか分からない、序盤はダラダラしている割に、終盤では物凄い勢いでネタが明かされて理解が追いつかない等、この映画の語り口は大いに問題ありです。。。 本作はマチュー・カソヴィッツが映画化権を取得し、5年もの時間をかけて脚本を練り上げたという入魂の作品。しかし、撮影に入ると悪天候が原因で大幅な予算超過に陥り、保険会社からの追加融資を受けるまでの状況となりました。この状況になれば映画会社は損切りを考え始めるわけで、「芸術性とかメッセージ性とかどうでもいいから、早く映画を完成させろよ」という雰囲気になってきます。一方でカソヴィッツは自己のビジョンの実現に拘り、現場は泥沼化しました。苦しい中でも会社と現場が協力しながら製作を進めればそれなりの映画になったかもしれないのですが、両者が完璧な対立関係になってしまったことが本作の出来にトドメを刺しました。フォックスはカソヴィッツから無理矢理に映画を取り上げ、監督の意向を無視して適当に編集したものが劇場公開版となったのです。。。 本作の舌っ足らず感、どこかで観たことあるなぁと思ったら、デヴィッド・リンチの『デューン/砂の惑星』でした。あちらは年月とともに熟成してカルト映画化し、現在では一定数のファンを獲得するに至っていますが、本作もカルト化する要素は充分に持っています。アクションなどの完成度を見れば映画としてのベースは非常にしっかりとしていることが分かるし、主題に関わる部分も悪くありません。宗教とテクノロジーという壮大なテーマをたった一人の少女にまで圧縮し、さらには信仰心とは何かという深淵なテーマをミシェル・ヨー一人に象徴させているのです。語り口が不十分だからこそ、観る度に新たな発見があって飽きさせず、カルトに必要な中毒性というものも備わっています。実際、私は連続で二度鑑賞してしまったし、こんなレビューを書いているうちにまた見たくなってきました。フォックスとカソヴィッツの関係を見る限り実現は難しいようですが、アラン・スミシー名義でもいいから全長版をリリースして欲しいものです。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-07-02 22:27:52)
8.  バーダー・マインホフ 理想の果てに 《ネタバレ》 
めちゃくちゃな力作だったと思います。よくぞここまで作り込んだものだと感心しました。脚色のバランスもよく、雑多な登場人物の溢れ返る物語をうまく整理し、統一感のあるドラマにまとめてみせた腕前は高く評価できます。さらには思想的な偏りなく作っている点も良く、史実の再現のみにこだわっていることには作り手の良心を感じました。ハリウッドや日本でこの手の映画を作れば、たいていの場合は事件の当事者を礼賛するか罵倒するかのどちらかに寄った作品になってしまうところです。。。とまぁ映画としての完成度の高さは認めるのですが、私の目からではドイツ赤軍は単なるテロ集団にしか見えず、彼らの「蛮行」を2時間半にも渡って淡々と眺めることは少々つらかったです。自分は80年代生まれなので、60年代後半から70年代にかけて世界中の若者達が共有していた革命的な空気というものを知りません。そのためかマインホフ達の主張にはまったく共感できず、彼らの姿を見て感じるのは嫌悪感だけでした。身勝手な主張から平気で人を殺し、時にヘラヘラと笑いながら去っていく様は「時計じかけのオレンジ」のアレックスを彷彿とさせますが、「自分達は正しい行いをやっているのだ」と信じ込んでいるだけマインホフ達の方がタチが悪い。確かに世界史上には何度も革命が起こっており、それらは過激な暴力を伴ったものでしたが、そうした革命の主人公は虐げられてもうどうしようもなくなった民衆たちであって、70年代の西ドイツでそれなりに豊かな生活を送っている若者達が「俺らが世界を何とかしなければ!」と言っても空虚なだけ。彼らは大義名分を語ってはいるものの、結局のところ個人的な自己実現欲求の塊のような連中なのです。それがよくわかるのがヨルダンでのエピソードで、米帝国主義に立ち向かう仲間としてパレスチナ解放戦線に合流するのですが、そこで彼らはムスリムの慣習等を無視してわがまま放題に振舞い、完全に厄介者となってしまいます。他の民族の価値観を平気で踏みにじるということは、彼ら自身にも切実に守りたい何かがあるわけではないということ。つまり彼らはただ暴れたいだけのどうしようもない輩である、その姿勢がよく現れたエピソードでした。そんな彼らが最終的に己の蛮行を反省するわけでもなく自殺するという結末も腑に落ちず(史実なのだから仕方ないのですが)、なんともやるせない映画なのでした。
[DVD(字幕)] 7点(2011-05-17 18:48:57)
9.  パトリオット 《ネタバレ》 
アメリカ独立戦争を描いた恐らく初のハリウッド大作ですが、日本企業が出資し、ドイツ人が監督、オーストラリア人が主演という、ある意味で狂いまくった作品です。その内容もアメリカ独立戦争の戦史を描くものではなく、「幽霊」と恐れられる伝説的な戦士が、農民やら牧師やら犯罪者やらを率いてゲリラ軍を結成するという恐ろしくB級なもの。つまりこれ、「特攻大作戦」の18世紀版だと思って鑑賞すべき作品なのです。そう割り切って見ると、この映画はかなり燃えます。20人の部隊をたったひとりで壊滅させ、その光景を見たわが子がドン引きするほど強い隊長にメル・ギブソン。当初はハリソン・フォードが予定されていた役なのですが、この異常な強さ、男ぶり、B級感にはメル・ギブソンがピッタリです。彼に対するタヴィントン大佐は「そんな奴が本当にいたのか?」と思わせるほどの冷血漢ですが、この人物のありえないほどの卑怯さ、人徳のなさ、そして強さは、メル隊長の相手として不足なし。本作は基本的にこの二人の対決が描かれ、「どこがパトリオットなんだよ」と思わせます。しかし、タイトルの所以はクライマックスの大決戦で突然やってきました。わが子を二人も殺したタヴィントンへの復讐の機会がメル隊長にようやく訪れますが、一方で大陸軍は総崩れ寸前の状態となっており、大陸軍中佐として軍を立て直すことも求められます。ここでメル隊長は私怨ではなく軍人としての職務を選び、星条旗を手に自軍を鼓舞。そうして大陸軍は勢いを取り戻し、勝利が確定したのを見届けてから、メル隊長はタヴィントンとの最後の決戦へと向かうのです。ここでは燃えましたとも。かっこよすぎです、メル隊長。ちなみに本作はスミソニアン博物館が監修を務めており、戦闘シーンはやたらリアル。VFXの扱いに慣れたエメリッヒ監督の手腕と相俟って、迫真のビジュアルを見せます。。。なお、これは作り手がどれほど意識しているのか分かりませんが、イギリス正規軍と真っ正面から戦っても勝てないからとゲリラ戦術をとる大陸軍の行動は、現在アメリカを悩ませるテロリストに酷似しており、またゲリラに悩まされたイギリス軍が村の一般人を標的にする行動は、ベトナム戦争でアメリカ軍がとった戦略に酷似しています。もしこれらをすべて意図的に放り込んでいるのなら、本作は歴史的傑作だと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-08 23:42:21)(良:1票)
10.  ハプニング 《ネタバレ》 
死にたくなる毒素が撒かれるというアイデアがまず凄い。異様な死に方の数々はかなり衝撃的で、他の映画とは違うもの、今までなかったものをちゃんと作り上げているのですからシャマランはやはり何かあるクリエイターだと思います。生き延びるためには集団から離れていなければならないというルールも秀逸で、群れをなす性質のある人類にとって、追いこまれるほど集団に依拠できず個人で対応するしかないのは恐ろしいことであり、またその状況で生き延びている他人は常日頃から集団に馴染まない変わり者であったり、人に手を貸さない自己中心的な人物である可能性が必然的に高くなるのですから、人間関係も非常に不安定なものとなります。主人公達は人智の及ばぬ現象と、常識の通用しない理不尽な人間を同時に相手にせねばならないわけですから、「ゾンビ」と「悪魔のいけにえ」の良いとこ取りが可能な、極めて秀逸な設定を作り出したと言えます。人間の描き方も相変わらずユニーク。夫婦の絆の再生というありがちなテーマをとりつつも、この夫婦の亀裂は他愛のないもので、一度ティラミスを食べに行った相手が勘違いして彼氏気取り、それを必要以上に後ろめたく思って旦那に言い出せない奥さんと、その話を聞いて機嫌を悪くする旦那という、「この深刻な世界観でそんな話かい」と呆れるほどどうでもいいものです。シャマラン作品の登場人物は皆平凡で、映画向きではない普通の人たちが常識を超えた現象に立ち会い、これに戸惑い、時にちぐはぐな行動をとり、そして最後には成長してこれを乗り越えるというパターンをとりますが、人間の描き方が抜群にうまいため、SF設定とほのぼのドラマという普通は馴染まないものを綺麗にまとめてみせます。子役の扱いも毎度うまいもので、映画に登場する子供は嫌味なほど良い子か、劇中のイベントを起こすためわがまま放題かの両極端なのですが、本作の子供は緊急事態であることを認識し、何も言わずひたすら大人についていくという現実的な描かれ方となっています。本作で残念なのはラストがあまりに安直だったことで、かなりの人口が失われたはずの街が何事もなかったかのように復興していたり、現象の正体を必要以上に説明してくれたりと、危機の余韻がまるでありません。三人仲良く暮らして新しい子供を妊娠しましたというのもありきたりで、ここで一気にドラマの良さも失われたように感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-06-08 14:53:41)
11.  バンテージ・ポイント 《ネタバレ》 
テロが起こった23分間をグルグルと違う視点から映し出し、少しずつ全体像を見せるというのはこれまでありそうでなかった手法。なかなか面白い見せ方だし、「現時点で観客に何を見せるべきか」という情報の取捨選択も非常に的を射ていたように思います。デニス・クェイドがモニターで何かを発見し、「これは大変だ!」と言って突然走りだすシーンなどのじらし方は本当に絶妙でした。脚本もよく練られていて、この手法を最大限活かせる体裁になっていたように思います。テロリストが一枚岩ではなく、騙されたり脅されたりして犯行に加わっている者が混ざったことで、事実が解明されていく過程の面白みが格段に上がっています。また、広場でのテロはあくまで陽動作戦だったというアイデアを挟んできたのも、23分間を何度も何度も見せるという、ともすれば同じ画を見せられてアクション映画としての面白みを失いかねない本作において、舞台を増やす為の得策だったと思います。テロリストが女の子を避けようとした為に事件が解決というオチのつけ方も面白かった。まぁ観終わった後考えれば近年稀に見るほどご都合主義の連続ではありますが、複数の視点から語るアクション映画という特性をいかに盛り上げるかのみに集中して作られているので、90分はきちんと楽しめる作品となっています。作り手も話がムチャすぎるという点には十分自覚的で、一気に見せて一気に終わるという一発芸的な作りに専念しているのです。例えば、テロリストの背景や動機の説明がもっと欲しいようにも思いましたが、本作においてこれ以上描きすぎるとかえって犯人像が陳腐化してしまうし話のテンポも奪ってしまうので、作り手もうまいところで切り上げています。本作で唯一背景を語られる主人公のデニス・クェイドにしても、過去のいきさつや現在の心理状況、組織内での立ち位置をほんの数シーンで説明してみせるという、神業的な要約のみで終らせています。とにかく切るものは切って見せるべきものだけ見せるという、実に潔い映画なのです。唯一残念だったのが視覚的な斬新さに欠けたことで、映画自体が斬新な割に視覚的には普通だったので、妙なバランスの悪さを感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2008-08-25 22:20:24)(良:1票)
12.  パニック・フライト 《ネタバレ》 
まさに良質のB級作品といった感じで、余分なものは省いて手際よく見せているのが好印象でした。感じの良い人から怖い人への変貌をとげるキリアン・マーフィと、それに怯えるレイチェル・マクアダムスはどちらもよくハマっていて、ふたりのやりとりだけで進む話をよく支えていました。このふたりのやりとりがあまりに良かったので、機内でのエピソードにもうひとひねりふたひねり欲しいような気もしましたが。一方で飛行機を降りてからのエピソードは作品全体のバランスからすると不釣合いなほど長く、暗殺計画に巻き込まれたヒロインという主題のこの映画において、暗殺を防いだ後の話をあそこまで長くやる必要はなかったと思います。逃げるに逃げられないというサスペンスをメインにしながら平然と場面転換してしまう無神経な映画は意外と多いのですが、残念ながら本作もその失敗を犯しているのが残念。究極に追い詰められた状況からいかにトンチを利かせて逃れるかがこの手の映画のキモなので、場面転換してしまうと一気にテンションが落ちるのです。ま、追っかけとなると途端に演出が活き活きとしてくるのはウェス・クレイブンらしいと言えばそうでしたが。機内の会話だけで展開するメインパートは「ただ撮ってるだけ」な感じ(そのアッサリ加減がこの映画では吉と出ていた)だった一方で、飛行機を降りての追っかけになった途端に演出が明らかにノリノリになってるのが面白かったです。ヒロインも人が変わったようになってるし。そんなこんな言いつつジョディ・フォスターの映画をふたつつなげただけのあんまりなタイトルの未公開作とは思えないほど充実しており、自信をもって人に勧められる映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-04 18:37:33)
13.  ハンテッド(2003)
要するにランボーを追うトラウトマン大佐の物語なのですが、贅肉を極力落とし、男と男の対決という荒削りな話にしていることには好感を持ちました。また、殺人マシーン・デルトロが「俺の父親」とまで尊敬するトミー・リーが、実践経験がなく軍に籍も置いていない非正規職員だったという設定も興味深く、この手の作品としてはなかなか良い脚本だったと思います。ただし、30年も前に全盛期を終えたフリードキンの手腕がところどころサビついており、21世紀のアクション作品においてこの程度の演出ではツライなという印象です。冒頭の戦闘シーンからして残念な仕上がりで、「プライベート・ライアン」も「ブラックホーク・ダウン」も存在していた2003年においてこんな古臭い戦闘シーンを見せられてもという感じでした。また、デルトロを連行する軍の管理体制や、FBIの捜査態勢が甘く、デルトロの強さよりも彼らの無能さの方が目立っていました。一方、70年代の監督だけあってトミー・リーとデルトロの対決はよく出来ています。彼らの執念とも言える追っかけは見ごたえがありました。市街地でのアクションなど入れず、「アポカリプト」のように90分間ひたすら密林での追っかけをやった方がよかったのではと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2009-07-26 18:46:05)
14.  バットマン ビギンズ
いやぁ、なんだか惜しい映画でしたね。アメコミ番長デイビッド・S・ゴイヤーの書いた脚本は非常に秀逸。ブルース・ウェインがなぜバットマンになったのかが素晴らしいドラマとして描かれており、きれいに伏線まで張っていくという丁寧なお仕事には参りました。ドラマパートがメインとなる前半では、「これは史上空前の傑作になるのでは?」と期待しましたよ。続々と登場する豪華俳優陣にも唸りっぱなし。マイケル・ケインを見れば英国人の執事が世界最高であることがよくわかるし、やっぱりリーアム・ニーソンはかっこいいです。クリスチャン・ベールも期待以上によかった。当初ブルース・ウェインをオファーされていたキアヌ・リーブスとも、こうして見ればなんだか似てるし。しかし問題は、ブルース・ウェインがバットマンになってからです。バットマンが・・・ダサイ・・・。それはデザインがティム・バートン版を超えていないのもそうですが、見せ方がうまくないんですね。ヒーローに必要なケレンとか色気が完全に欠けていて、普通のアクションになってしまってるんです。コミックヒーローのアクションが他と大きく違うのは、動きではなく画にこだわらねばならないことです。例えば「スパイダーマン」の場合、サム・ライミは実際のコミックのカットをそのままアクションの画の中に取り込んだと言います。バートン版バットマンも同様で、両者共にポーズにこだわりがありました。しかし今回のバットマンはやたらカットを細かく切っているため、もう何がなんだかわかりません。バットマンの全身像がほとんど写らないことからも、そのあたりの感覚が決定的に欠けていたことがわかります。クリストファー・ノーランは才能のある監督だとは思うのですが、コミックをやるには演出が硬すぎましたね。もっと自分のセンスに自信があり、躊躇することなく遊び心を出せる監督が必要でした。つまり悪ふざけが出来るというのが、すれすれの過剰演出が要求されるアメコミ映画の監督に必要な条件なんです。バートン、ライミともに悪ノリが得意な監督だったでしょ。あともうひとつ。ヒーローには「バットマン参上!」って感じの特徴的なテーマ曲が必要なのですが、音楽もいまいちでした。H・ジマーとJ・N・ハワードの共作だというのに、あまりよくありませんでしたね。やっぱりアメコミはダニー・エルフマンじゃないとダメなんですね。
[映画館(字幕)] 6点(2005-06-24 00:50:36)(良:2票)
15.  ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝 《ネタバレ》 
『インディ・ジョーンズ』の新作に合わせてのシリーズ復活、おまけに同年開催の北京五輪に因んで舞台は中国という商業的打算の塊のような本作ですが、出来は想像通りでした。バカバカしいストーリーにVFX満載のアクション、良くも悪くもシリーズの個性をきちんと継承した内容となっているのです。前作までの舞台だったエジプトをあっさり捨ててもなお『ハムナプトラ』として成立していることが驚きで、このシリーズにおいて設定やストーリーとはあってないようなものであることを再認識させられました。その分、見せ場は特盛大サービス状態です。主人公達の窮地を救う雪男、キングギドラに変身する始皇帝、兵馬俑vsミイラ軍団の大戦争、この突き抜けたバカさ加減には大いに楽しませていただきました。これぐらいやってこその『ハムナプトラ』です。娯楽作を多く手がけるロブ・コーエンによる演出は抜群の安定感で、速すぎず遅すぎず見やすいテンポを終始維持しています。役者としての達成感はゼロに近い仕事にあって出演者達は楽しげに役柄を演じており、本作の関係者は皆、期待される仕事を十分にこなしていると言えます。。。 問題なのは、『ハムナプトラ』というコンテンツの賞味期限が完全に切れていたということです。90年代末に登場したハムナプトラの魅力とは、CGという新しいツールを用いて古き良き冒険活劇を甦らせたという点にあり、CGによる映像そのものが観客を動員する力を持っていた時代だからこそヒットした作品でした。しかし、現在ではアクション映画にCGを用いることは当たり前であり、見せ場をどうやって面白く撮るか、見せ場以外の部分をどう充実させるかという、脚本力や演出力を問われる時代となっています。CGによる見せ場の連続を売りとしていた『ハムナプトラ』にとって、これは非常に厳しい状況であると言わざるをえません。おまけに、過去と同一メンバーで製作されたこと自体に意義のあった『インディ4』と違って、このシリーズに骨董品としての価値があるわけでもなく、結果は単なる時代遅れのアクション大作。数あるコンテンツの中で、なぜユニバーサルは『ハムナプトラ』をチョイスしたのだろうかと不思議で仕方ありません。。。 最後に、吹き替えはどうにかならんもんですかね。話題作りのためとはいえ下手すぎるでしょ。作品をぶち壊さない程度の品質を維持することは、映画を扱う業者さんの義務だと思います。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2012-11-23 21:57:34)
16.  パニッシャー:ウォー・ゾーン
そこそこ面白かったものの、普通のバイオレンスアクションとして製作され『パニッシャー』である必要のなかったドルフ・ラングレン版、悪い意味でマンガだったトーマス・ジェーン版と来て、三度目の正直で製作された本作ですが、ようやく『パニッシャー』実写版を見られたなという印象です。躊躇のない残酷描写、良い意味でやりすぎなアクション、キャラ立ちしまくりの悪党と、『パニッシャー』に必要なものは揃っています。『ソウ』のライオンズゲートに製作会社が移行したことで残酷描写には恐ろしく気合いが入っており、脳天吹っ飛びまくり。銃撃戦の演出もなかなかカッコよく、三度に及ぶ実写化企画の中では一番だと思います(前2作が酷過ぎただけとも言えますが)。。。 ただし、映画としての完成度はイマイチ。フランク・キャッスルに魅力がなかったことが主な原因で、冒頭からチョンボを重ねるわ、大きなこと言ってる割にサシの殴り合いになると簡単に劣勢に立たされるわと、カッコが悪すぎるのです。こんなことでは悪党をバッタバッタと倒して回る爽快感など味わえるわけもなく、部分評価はできても全体としてはつまらん映画だと言わざるをえません。
[DVD(吹替)] 5点(2012-06-30 18:20:04)
17.  パブリック・エネミーズ
「ヒート」や「インサイダー」はもちろん、評価の割れる「コラテラル」や概ね不評の「マイアミ・バイス」まで気に入っている私ですが、この映画はダメでした。実話であるため仕方のない部分もあるのですが、物語に大きな山がないため141分が非常に長く感じられます。口数の少ない登場人物による淡々としたドラマという点では過去作品と同様なのですが、本作は対決という点が強調されていないため、物語に一本筋が通っていません。パーヴィス捜査官からは社会の敵ナンバー1を何としてでも捕まえてやるという執念が感じられないし、またカリスマ的な犯罪者の魅力に呑まれたり、ともに戦いを知る者としての共感を抱くということもなく、上司から預かった大事な仕事を誠実にこなしている程度の印象に留まっています。デリンジャーに至ってはパーヴィスの存在を気にもかけていない様子であり、これではドラマが淡白にならざるをえません。監督自身、パーヴィスという人物をあまり気に入っていないようです。パーヴィスは名家出身のエリートにして、若いうちから注目されていたFBIのホープ。経験に裏打ちされた職人的な戦士を好むマイケル・マンにとって、あまり得意とするタイプの人物ではありません。実際、劇中ではパーヴィスの存在感は薄く、後半になると老練のウィンステッド捜査官が実質的に物語の中心にやってきます。だったらウィンステッドをクローズアップすればいいのですが、スターであるクリスチャン・ベールが演じている手前か形式的にはパーヴィスを主役扱いし続けるため、映画が中途半端なものとなっています。中途半端と言えばデリンジャーの行動についてもで、彼の信念や美学というものがうまく表現できていません。「アウトローが義賊として称賛される時代は終わった。外国に逃げたところでアメリカ政府が自分の罪を忘れることはなく、愛するビリーと静かな余生を過ごすという夢が叶うことはないだろう。ならばここで命を絶ってしまえ」おおまかにまとめるとこんな心境だったのでしょう。それは分かるのですが、これをドラマに昇華できていないため映画が面白くなっていません。本来、マイケル・マンが得意とする題材だったのに、なぜここまで中途半端になってしまったのかと不思議で仕方ありません。。。なお、毎度のことビジュアルへのこだわりは完璧で唸らされます。銃撃戦の激しさや美しさは、もはや芸術の域に達しています。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2010-09-07 20:35:46)(良:4票)
18.  パッチギ!
活き活きとした不良達が画面を席巻し、間に入る笑いのタイミングも絶妙。井筒監督はもっとも得意とするジャンルにおいて、本当に良い仕事をしています。メイキングを見ると俳優を追い込む鬼のような演出をしていますが、そのしごきの甲斐あってか俳優たちの演技も見どころとなっています。「良い俳優・良い演技を見たなぁ」と素直に思わせる邦画は久しぶりです。また細かい部分では、主要な登場人物達の髪型をすべて別々にし、服装も人物特定しやすいようにそれとなく色分けがしてあります。時代ものの映画では全員が同じような髪型・服装をするため人物の特定が難しいことがあるのですが、監督は観客が混乱しないよう、視覚的な工夫をきちんと入れてきているのです。以上、いくらお金をかけても「映画になっていない映画」が多い中、井筒監督はお金の力ではなくプロとしての腕前で「映画らしい映画」を撮ってみせる、現在の日本映画界においては稀有な存在だと評価できます。。。と非常に楽しく鑑賞していたのですが、ラスト30分で一気に冷めてしまいました。葬式に出席した主人公康介が、在日の老人から「在日朝鮮人がいかに酷い目に遭ってきたか」を聞かされる場面です。。。私が生まれ育った地域には朝鮮学校があり、学生時代には在日の店長のお店で4年間アルバイトしたし、妹の彼氏が在日朝鮮人だったこともありました。私は在日社会のすぐ近くで生きてきて、日本人と在日朝鮮人双方に対してフラットな認識を持っているつもりなのですが、その私がこの場面には強い違和感を覚えます。他のレビュワーのみなさんも指摘されている通り、事実誤認の嵐。調べればすぐにわかるようなウソを映画で堂々と主張し、ありもしないことの反省を日本人に強要するのは、ちょっとどうなのよと思います。監督は在日の人達のためにこの場面を入れたのかもしれません。しかし、このような形で必要以上の贖罪意識を押しつけることが日本人のストレスとなり、それが在日のみなさんに対する反発へつながっているという現実を私は目にしています。もちろん、監督がどんな主張をするかは自由です。日本が悪いと思うのならそれでも良いのですが、ウソやデマを言ってでも日本が悪かったことにしようとする姿勢は作り手として問題だし、それが日本人のストレスを煽っていて、かえって溝を作っているという現実もよく認識されるべきです。
[DVD(邦画)] 5点(2009-09-14 01:30:35)(笑:1票) (良:2票)
19.  ハルク
正直、展開がちんたらしてて面白い映画ではありませんでした。しかしVFXは非常に素晴らしかったです。ただ技術レベルがすごいというだけでなく、細かいところにまでトンチが利いていて、実に凝った映像になってるんですね。「GODZILLA」や「スパイダーマン」と比較しても、ハルク大暴れの圧倒的なボリュームや密度にはまったく及びません。というのもこの映画、VFXにはものすごい準備期間があったんです。ユニバーサルの目玉企画として期待されていた映画版ハルクは、製作開始どころかメンバーすら決まっていない98年の段階でVFXのテストに2000万ドルを注ぎ込んでおり、映像が段違いなのは当たり前。しかしその準備期間があだとなってる場面もいくつかあって、ハルクがピョンピョン跳び跳ねるシーンは完全にやりすぎだし、ニック・ノルティが電気や水とまで融合するシーンに至っては理解不能でした。脚本レベルでも「練りすぎ」というのが私の印象です。登場人物たちの抱える苦悩はしっかり描かれているし、人物同士の関係もよく整理されていて混乱を起こしていないのはさすがで、こうして振り返って見ると「実はいい映画だったの?」などと思うのですが、ただし練りすぎたせいで、頭で理解させる部分では成功していても、アクション映画としての高揚感が決定的に欠落してるんですね。もっと素直に作ってくれれば、十分に面白い映画になったと思います。
5点(2004-09-02 17:17:29)(良:1票)
20.  バンコック・デンジャラス
殺し屋とはフィクションの世界でこそメジャーな職業ではありますが、現実の世界で彼らに会ったことのある者はごく少数。ほとんどの人がよく知らない職業だけに、これをどう描くかには脚本家や監督の発想力が重要となってくるわけですが、その点について本作は完全に赤点です。。。 本作の殺し屋は、なんと現地入りしてからターゲットの情報を受け取ります。プロならば事前に依頼内容を精査し、ジョブの成功と身の安全を考慮した上でこれを引き受けるかどうかを決定すると思うのですが、そういう慎重さは皆無のようです。現地での行動もかなり適当。金に困っていそうな地元のチンピラを助手として雇い、そのチンピラに依頼者との間の連絡係をいきなり任せるという、恐ろしく危険な行動をとります。自分との関係を第三者に洩らされたり、敵対組織や公安に捕まって尋問を受けるというリスクは考えないのでしょうか?肝心の暗殺場面も脱力で、簡単に現場の下見を済ませるとその翌日には早速殺しを実行するというお手軽加減。よくぞこれでヤクザな世界を生き抜いてこられたものだと感心します。。。 その上、この殺し屋の心はオープンカフェ状態。使い捨てのつもりで雇った助手に対して素直に友情を抱き、彼に頼まれれば殺しの技を伝授してやるし、街を歩けば聾唖の薬剤師に一目惚れし、彼女の実家にまでお邪魔する始末。もはや車寅次郎に匹敵するレベルのおおらかさであり、ストイックなプロの世界など微塵も感じさせられません。冒頭で得意げに披露した殺し屋4箇条も言った端から破っていくという有様で、どうしてこんなにおかしな脚本になったのかが不思議で仕方ありません。
[DVD(字幕)] 4点(2012-10-07 01:56:06)(笑:1票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS