1. ハメット
ヴェンダースのハードボイルドってことで飛びついてみたのですが、画面はいいけど、台詞がもう少し切れてくれないと、ハードボイルドとしては可どまりです。ハードボイルとといった瞬間にボガードと比較される運命にあるのは、どのハードボイルド映画にとっても不幸でしょうけれど。この作品は、探偵役が人間臭く描かれているので、ハードボイルドとして見ないほうがいいのかもしれません。 [DVD(字幕)] 5点(2008-07-20 10:03:15) |
2. バベル
《ネタバレ》 消化不良な一本である。この映画は混乱を描いているが、その混乱は、「そこに存在すべきでないものが、存在してしまった」という過剰感によって引き起こされている。モロッコ人の家庭には猟銃があり、アメリカ人夫妻は異境モロッコに滞在しており、その夫妻の子供たちはベビーシッターのメキシコ人の車に乗っている。その視点から考えると、日本はこの映画のなかで特殊な位置を占める。まず、日本では混乱とよべる状況がおきていない。また、妻を自殺で亡くした役所広司とその娘で聾ある菊池凛子の親子が、苦しみつつも、苦しみをどう受け入れるかを模索するという、モロッコパートやアメリカパートでは見られない葛藤が描かれている。その意味で、日本バートの苦しみは「そこに存在すべきものが存在していない」という欠如感に裏打ちされているといってもいいだろう。過剰なものは削ればよいが、欠如をどう埋めるかは難しい。埋められない欠如に対する日本パートの答えは、「欠如を常態としてみなす」という痛々しいものだが、抱き合った役所、菊池親子の美しい姿をしても猶、救いあるいは希望は訪れていないように思える。みていて辛い作品である。 [DVD(字幕)] 6点(2008-07-20 09:57:22) |
3. 幕末太陽傳
気合、ノリ、テンポは一流。痛快極まる。逆に言えば、それが全てであり、見終わった後に余韻が残るような作品ではない。そういう気がする。おそらく、フランキー堺演じる主人公がクールすぎるのだろう。たぶん、主人公自身、人生に飽きてるよね。まわりは馬鹿ばっかしだし。そういう雰囲気を出している映画には初めて遭遇した。もしかしたらすごい作品かもしれない。 [DVD(邦画)] 6点(2008-01-19 17:38:27) |
4. ハチミツとクローバー
この映画は予告編に惹かれて観ました。観てみると、あらゆる意味で予告編だけで事が足りた気がします。雰囲気も台詞も。 [DVD(邦画)] 5点(2007-04-29 22:20:10) |
5. パッチギ!
「うぉりゃー、いきおいじゃー。ヒロインかわいいんじゃー。根本がものがなしいんじゃー。なんか文句あるかー。」という監督の叫びが聞こえた。個人的には京都に住んでたことがあるので、八千代館とか哲学の道とか、思い出しながら激しく共感しながらみました。完全に観る前から敗北は決まっていたようなものだけど、やっぱ観たら完敗なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2007-01-14 13:39:24) |
6. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 人を好きになるということは人間関係に濃淡をつけることだ。好きな人と、好きではない人の間に線引きをすることだといってもいい。主人公が最終的に選んだ「最も大切な人と関わらない生き方」とは、この「濃淡をつけるという仕方で人を好きになること」を拒む生き方だといえる。記憶の作り変えが教えるのは、今生きている世界が偶然の産物だということ。そのことから今の世はかけがえないと考える人もいるだろう。しかし、大切な人を好きになることが偶然だとしたら、そのことに人間は耐え切れるか? 偶然だからこそ運命的なのかもしれないが、そんな空虚な理論的運命では人は生きれない。リアルに実感できる運命が必要だ。こんな風に、人間関係の濃淡付けに必然的な理由や意味合い(運命)が見いだせないとき、明晰な知性が選ぶのは「人間関係に濃淡をつけない」生き方ではないか? 「記憶を作りかえる能力」を「想像力」に置き換えれば、この映画の主題は全ての現代人にも通じる。思いのほか深い傷跡を残して。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-20 00:43:11) |
7. 麦秋(1951)
小津映画のポイント(常套句とも言うか?)が全部まとまって出てきて、これを見とけば、後の映画は全てバリエーションとして捉える事が可能。個人的には、この作品が小津作品の中で一番好きです。 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-09-21 17:07:24) |
8. 晩春
秀逸なのは、お見合い話を持ってきた父と一緒に歩くのがイヤで、友達の家に行くといって父から離れるシーン。広い道幅をいっぱいにつかい、まさに映画的な描写に成功している。蛇足だが、清水寺が今と全然変わらないのに、北鎌倉駅がかなり変わってるのにおどろいた。 [地上波(字幕)] 8点(2005-09-21 16:44:03) |
9. 半落ち
主題歌がとてもいい歌だった。それがすべてという気がする。 かたくなに自分の行動を打ち明けようとしない元刑事の態度の理由が判然としない。もちろん、映画の最後には明かされるのだが、別に言うのを拒まねばならないような種類の理由ではないと思う。一番のテーマは、苦しいながら、妻を殺すと言う選択肢を選んだ警官の苦悩である。裁判官がいうように、「魂がなくなった」ら人ではないというのは、僕は本当だと思うし、自分が壊れる前に殺して欲しいと願う妻の気持ちもよく分かるのである。この映画はとても重要な問題提起をしているとは思う。だがしかし、映画としては失敗作だと思う。 [映画館(字幕)] 4点(2005-06-05 22:39:35) |
10. 初恋のきた道
美しさと壮大さを兼ね備えた良いラブストーリーかもしれないということは分かるのですが…。きぶくれしたチャン・ツィーの走るフォームがあまりにもコメディーなので、残念ですが感情移入できませんでした。どんなにかわいい顔の女の子だろうとも、あの走り方を見せられると、好きになる前に、きぶくれ者専用ウォーキングスクールに通って欲しいと思ってしまうのは僕だけでしょうか? [映画館(字幕)] 6点(2005-05-03 12:30:03) |
11. パーマネント・バケーション
自ら音楽を口ずさみ、それに合わせて踊りだす主人公。世界のあらゆるものから音楽を聴き、それにあわせて舞うように生きるジャームッシュ。これはまさに荘子から連なる東洋的叡智の現在形である。観客にとっては90分強の短い「バケーション」だが、この映画はジャームッシュの根本的な態度の表明だから、その密度は異常に濃いし、重い。その一方で、軽やかな舞踊に似た雰囲気を表面に流していて、絶妙なバランスを成り立たせている。ラストは高層ビル群を背景に、少しづつ消えていく航跡のショット。私たちはそのうち消え去る。私たちの足跡すらもいずれは消える。ジャームッシュの存在論は、この映画に尽くされている。これ以降の課題は「時間への異常な愛情」となって振舞われることになる。 9点(2004-12-22 13:12:45)(良:1票) |
12. パンチドランク・ラブ
ぶち切れると何でもやってしまう人こそ、ぶち切れるまではほんとに静かな人が多い。バリーもそのタイプ。恋愛下手なわりに、ぶちきれた時の行動力は生半可じゃない。ストーリーはかなり飛躍を多用し、ギャグもちりばめられていて、まばゆい仕上がりになっている。個人的にはE・ワトソンの(女神+小悪魔)÷2的なキャラ設定が素晴らしいと思った。「あの時ああしておけば…」と恋愛について後悔している男性にとっては、まさに癒しの映画。相手の女性がリナのような人であれば…。でも、最後にはちゃんと自分の力で頑張ろうと思わせてくれる。 6点(2004-12-06 19:45:00) |
13. バタアシ金魚
今ではすっかり「お宝映画」になっている感があるが、映画そのものもとっても面白い。なんといっても、行動の脈絡のなさ(正常な感覚に比べてってこと)、ぶっ飛び度がいい。快感だ。これぞ漫画の醍醐味。とくに、筒井道隆やばい。声変わってねぇ。この人演技してないんじゃないかと思うぐらいはまってる。おまけに、歩く時ちょっと右側に傾いてるし。大勢で見てもおもろいし、一人でこっそり見るのもいいとおもう。 7点(2004-06-23 14:26:08) |
14. 春の日は過ぎゆく
愛ってかわるんですか? 変わるんです。っていうか、そもそも愛なんてありません。単なる錯覚です。錯覚という「ウソ」を「本当」だと互いに思い込むのが愛です。「ウソ」は皆が信じれば「本当」になります。だから、ちょっとしたできごとの偶発的な組み合わせで、愛があることになったり、愛がなくなったりするみたいです。そもそも愛って「確かめ合う」ものですし。この映画、そこら辺のところをものの見事にすくい取っています。ラスト近くになって、歩幅をあわせてくれない男に、腕を絡ませてゆっくりあるいてくれるように促す女。女をスキだった頃には自然と歩幅が合っていたのに…。今では、「わざわざ」歩幅を合わせるのがイヤになる。その瞬間に「愛は終わった」ことになった。もしこのとき、男が歩幅をあわそうと思ったら、「愛はまだある」ことになっていたかもしれない。こんな風に、瞬間瞬間がウソと本当のはざまでゆれ動いている映画。イ・ヨンエのインスタントラーメンかじる姿にもやられました。 9点(2004-06-05 23:12:56) |
15. パリ、テキサス
家族って不思議。家族だと思ったら家族だし、家族じゃないと思ったら家族じゃない。一緒に住んでるから家族なんだという人もあれば、一緒に住んでなくても家族だともいえる。愛しているから一緒に住むという論理もあれば、愛してるから一緒に住まないという論理もある。「家族らしい家族」やら「愛らしい愛」なんて幻想なんだなぁ。幻想を糧にする奇妙な生き物=人間。ヴェンダース監督はうまく掴まえていると思う。ナスターシャ・キンスキーの美しさ、父と息子の旅、学校に息子を迎えにいくトラヴィス、トラヴィスのひげ、トランシーバー。静かなトーンなのに、強烈な印象のシーンが多かった。素晴らしい映画だと思う。 10点(2004-06-05 21:53:24)(良:3票) |
16. 遥かなる山の呼び声
よく考えるまでもなく、「幸せの黄色いハンカチ」とストーリーだけが違う映画。出ている俳優陣がほとんど一緒。2作をまとめてみるとニヤリ。高倉健もいいが、倍賞千恵子の美しさを支持する僕にとっては、「遥かなる…」のほうがいい。ラストの列車のシーンに、じんわりと涙。 7点(2004-06-04 23:18:02) |