2. パイラン
《ネタバレ》 浅田次郎の原作には、妻の死後、チンピラが彼女の生き様に心動かされる蓋然性が、読者に次第に沁み込んでくる説得力がありました。映画のパイランは洗濯屋に住み込みで働くことになりますが、原作では売春宿で客を取る仕事をさせられます。救いようのない、落ちるところまで落ちた環境で、彼に宛てた手紙の中に「みんなやさしいです」と何度も述懐していたことに、チンピラも読者も共感を覚えるわけです。親切なおばちゃんが居る洗濯屋という設定は、この鮮やかさをぼかしちゃっているように思えてなりません。また、やっぱり殺人事件は必要ないんじゃないかなと思います。と、辛口のレビューになってしまいましたが、結構好きな作品だったりして。映画前半で徹底的に情けないチンピラを演出することで、後半、彼女の思いが彼の琴線に触れていく過程を、より感動的なものにしているように思えました。満足。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-26 22:36:10) |