1. はじまりのうた
《ネタバレ》 音楽の魅力を最大限位伝える素晴らしい作品でした。ストーリーとしてはさほど抑揚のあるタイプの映画ではありませんが、それを補って余りある音楽がこの作品にはあります。単純な楽曲のクオリティの高さだけではなく、資産のないゼロの状態から自分たちの手で音楽を作っていく喜びが、ストーリーと相俟って伝わってくるところがよいです。グレタとダンが夜中にスプリッタを使用しながら「音楽があるだけで、ただの風景が宝石のように変わる」なんてセリフを吐く場面も印象的です。セリフとしてはやや月並みだとしても、嬉しいときや傷ついたときに音楽を聴きながら街を歩いてみて、誰もが同じことを感じたことがあるだろうという印象的なワンシーンです。この映画は本気で好きな仕事をする楽しさや、もう一度何かをやり直す気持ちの素晴らしさを観る者に教えてくれます。アダム・レヴィーンのファルセットを駆使した圧倒的な歌唱力もさることながら、キーラ・ナイトレイの自然体な歌声、マーク・ラファロの才能豊かなプロデューサぶりも見事。安心して人に薦められる良作です。 [映画館(字幕)] 7点(2015-03-08 20:58:45)(良:2票) |
2. her 世界でひとつの彼女
《ネタバレ》 移動中の飛行機の中で鑑賞。ひいきにしているホアキン・フェニックスとエイミー・アダムスの俳優陣と、お世辞にもひいきにしているとは言えないスパイク・ジョーンズの組み合わせで少々不安な中鑑賞しましたが、様々な愛について考えさせられる傑作でした。 まず何よりも絶妙だと感じたのはこの映画が製作されたのが『この時期』だということ。確かに近未来を描いたSF作品なのですが、不思議とこういう未来はもうすぐやってきそうだ、という気にさせられるくらい、未来の描写が自然に受け入れられるものになっていることです。これはやはり音声認識技術が発達し、ウェアラブル端末が待望され、人工知能がクイズやゲームで人類を凌駕しているイマだからこそだと思います。もう少し前の時代に製作されていたら『こんな時代くるの?』とか『あのガジェットすごいね』といったように、観客が作中で描かれている愛というテーマにフォーカスできなかったのではないでしょうか。 さて、作品の本題についてですが、愛って何だろう?人と人とのつながりって何だろう?というテーマについて、様々な角度から事例を投げかけてきます。離婚した相手をいつまでも思う反面、リアルな女性との交際には新たな一歩を踏み出せない主人公がOS上の声だけの女性に恋をする、その主人公は学生時代に1度だけデートをした友人の女性と今でもよい友人として関係を続けている、その友人の女性も8年間続いた結婚生活がたった10分の喧嘩で破綻に追い込まれてしまう、OSが用意した擬似彼女との情事、肉体や嫉妬や後悔、友情や反発。この映画を見た多くの人が、これまでに愛した人に対して抱いた複雑な感情や、その人との間に抱えた様々な問題について、思い出したり考え直したりすることになると思います。 個人的には後半の『彼女の足が好きだ』と言う男性(ポールだったかな)と『彼女のすべてが好きだ』という主人公のダブルデートのシーンがとても好きです。その足が別の人についていたらその別の人を好きになるわけではないでしょうし、主人公も実体として声しか存在しないOSの彼女について何が好きかをうまく言い表せない感じが、どことなく切なくて深かったです。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-06-13 01:56:49)(良:1票) |
3. バリー・リンドン
《ネタバレ》 個人的に自然物の映像美は下手な映画監督の手にかかると安易になりがちなので、人工物による手作りな感じの映像美の方が好みなのですが、さすがはキューブリック、この映画のフィルムは美しいですね。大自然と対比させ、レドモンドが所詮世界の中ではただの一人の人間でしかないことを再三印象づけた後の、最後のダメ押しのようなあの一言はさすが心に響きました。模範的でない人物が登りつめ、結局は失墜してしまうストーリーを決して道徳的だったり説教じみた演出ではなく、人生の無常観をして鮮烈に観る者に与えてくれる作品です。長さを感じさせない演出も見事ですが、最初にレドモンドが恋した従姉が、ある時期を境に一度として風の噂にもならなかった辺りがレドモンドの変わっていった現実さを象徴している気もしました。まぁ終盤でまた例の従姉が登場したら随分と陳腐な映画になってしまっていたでしょうが。 [DVD(字幕)] 7点(2007-04-10 01:40:47) |
4. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 うーん、キューブリックファンを自称している私としてはかなり期待していたのですが、残念ながら私の好きなキューブリックではありませんでした。ブラックテイストの利いたシニカルな描写は相変わらずでしたが、いつもの圧倒的な映像美が観られずがっかりでした。飛行機の飛ぶシーンは元より、とりわけ爆弾と共に少佐が落ちていくシーンは映像までもがコメディタッチになっていて、当時の技術ではしょうがなかったのかもしれませんが納得いかなかったです。せいぜい会議室での独特なアングルからのカメラワークが少し見所があったくらいでしょうか。しかしこの時代にこういった世界情勢を食いモノにしたような作品が作られていたとは驚きです。英空軍大佐が公衆電話から大統領に連絡をしようとするシーンや、会議室でのソ連の大使とアメリカ首脳とのやり取りも傑作でした。特に最後の「歩けます!」はツボです。 [ビデオ(字幕)] 4点(2007-04-10 01:05:51) |
5. パルプ・フィクション
メッセージ性も特になく、物語に起伏もなければ大きなオチもない…にもかかわらず随所にお洒落な描写があったり、あえてうけを狙わずに作ったような感じがなかなかよかったです。ブルース・ウィリスの物語は正直印象として薄いのですが、その前後の2本の物語が見事でした。娯楽作品以外の何ものにもなれない、逆に言えば最高の娯楽作品だと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2007-01-25 01:13:55) |
6. パール・ハーバー
スケールの大きさと宣伝のうまさだけは評価したいと思います。今はなきベン・アフレックと、顔が全くかっこよくもなく且つスター性のないジョシュ・ハートネットが主演というだけで今なら興味も示さないはずなのですが、大作ばかりを中心に見ていたあの頃の私はあっさり宣伝効果に乗せられてしまいました。ケイト・ベッキンセールの自分勝手さも腹立たしいばかりです。こんなしょうもない恋愛劇を描くのならわざわざ戦争を背景にしなくてもよかったのでは?スケールを大きくしたいがために戦争を題材に選び、それに付け加えるように俗な恋愛劇を付属させた感が強く、当時調子に乗っていたであろうマイケル・ベイの卑しい心の隙間が見えたような気がしました。 [映画館(字幕)] 1点(2007-01-08 18:50:35)(良:1票) |
7. パンチドランク・ラブ
映像は部分的に綺麗だったりしてよかったと思います。ちょっと色彩が鮮やかすぎかとも思いましたが。あとやっぱりシュールすぎる内容には正直ついていけない部分がありました。人物設定や台詞などを非現実的にするならもっとストーリーも大胆な展開の仕方をしてもよかったのでは。 [DVD(字幕)] 1点(2006-12-28 00:28:02) |